上 下
70 / 493
6月

本屋にて

しおりを挟む
 ある日の放課後。涼香りょうか涼音すずねは本屋に来ていた。電車を途中下車して、ショッピングモールに入っている本屋に。

「今日はなにを買いに来たんですか?」

 特に今日は漫画の新刊の発売日でもないし、本屋に来る用事は無かったはず。

 そんなことを思いながら涼音が本屋の奥へと進む涼香についていく。

 真新しい紙の香りが漂う静かな空間。中心を通る広い通路の横に涼音の背丈よりもはるかに高い書架が等間隔に並んでおり、数多くの細い道を作る。

 平日の夕方の本屋には客の姿はほとんど無い。そんば広い通路を二人は進む。

「面白そうな漫画でも見つけたんですか?」

 本屋の中は、入口に近い場所で話題になっている本、ドラマ化やアニメ化、大人気漫画の新刊などが陳列されてある。少し中に入ると、広い通路の両端にファッション誌や文芸誌などの書架がある。

 二人はその通路を素通りして、本屋の一番奥にある漫画コーナーへと向かう。

「別に今日は漫画を買いに来たわけではないのよ」

 そう言って涼香は立ち止まる。立ち止まったのは漫画コーナーの入口、新刊が積まれているテーブルの前だ。

「涼音、お腹が痛くなってきたかしら?」
「いえ別に」

 急になに言ってるんですか? と首を捻る涼音の姿に、涼香は腕を組んで眉根を寄せている。

「本屋に来るとお腹が痛くなったりするでしょう?」
「確かに聞いたことありますね」
「あれには名前があるのよ」
「へー。どうでもいいです」
「冷たいわね」
「そう言う先輩はどうなんですか?」

 涼音が投げやりに聞き返す。

「全く痛くならないわね」
「帰っていいですか?」
「そうね」

 あっさりと頷いた涼香と共に本屋を後にする。

 青木まりこ現象を確かめるために本屋へ涼音を連れてきた涼香、お腹が痛くならなければ、もう本屋に留まる理由は無い。

 帰ろうとした涼音だったが、せっかく途中下車したのだからもう少しなにかしたかった。

「ゲームセンター寄りましょうよ」

 そう涼音は提案する。多分涼香ならその提案に乗ってくれるであろう。

「もちろんよ」

 こうしていつも通りの緩慢な放課後が過ぎていく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

処理中です...