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第5章 未知なる猛獣との遭遇
④
しおりを挟む最初、なんだかわからなくって、菜津子のスマホ奪い取って、拡大したり縮小したりして、まじまじと眺めてしまった。
モノクロの写真に、頭と手足のシルエットぽいものが写ってる。
「…これ、エコー写真…?」
「じゃない? 私もあんまり見たことないけど」
頭が大きくて、手足が短く、そしてロボットやぬいぐるみみたい。
サイドのコメントを見ると、10週の写真らしい。妊娠してたのは、ホントなんだ(ちょっと疑ってかかってた)
他にも、透らしい人影がピンク色の病院(おそらく産婦人科)に入っていく後ろ姿とか、母子手帳の上で、美雪の手ともう1人男の手(多分透)が重ねられてる写真とか。
しかも、サイドに必ず文章が添えられてるんだけれど。
――今日、初めて彼と病院に?
内診、ちょっと恥ずかしかったぁ(*ノωノ)
――産んで欲しい。彼が言ってくれて、涙ぽろっ。
私、お母さんになれるんだ、なるんだ。頑張ろう。
いちいち、私の癇に障るものが多い。
「…なんなん、これ」
勝利宣言かよ、幸せアピールかよ。人が、あんたと透のやらかした不適切で無責任な行為のおかげで、散々迷惑こうむってるって言うのに。
「…なんかすごいよね」
流石の菜津子も、反応に困ったらしく、いつもの地雷発言も影を潜めてる。
「つか、こういうの載せる?」
「いや、まあ、記念?」
「記念ねえ…」
いいんですよ。――普通の夫婦だったら。
子どもが出来て嬉しい気持ちわかるし。それを内外にアピールしたい気持ちも、記念に残しておきたい気持ちもわかる。
もしかしたら、将来私だって、そういうことやるかもしんない。(まあ、今の時点では、全く想像出来なくなっちゃったけど)
けど、あんたの幸せは、多大なる他の人への迷惑と不幸の上に成り立ってる、ってわかってないのか、この女。
少しでも、奪った彼女への謝罪の気持ちとか、後ろめたさとかあるんだったら、誰が見てるかわかんないこんな場所で、こんな神経逆撫でする写真公開しないよね。
しかも日付見たら、私と透が、別れる前から、こんな投稿しゃあしゃあとやってる。
既に透は私のモノ扱いかよ。
「私、割と感情的にならない方だと思うんだけど、この写真はマジで頭来た…」
「咲良は、なが~くしずか~に怒るんだよね。根に持つタイプ?」
「菜津子、うっさい」
ムカつくムカつく。今までは、透に対しての怒りと憎しみの方が強かったけど、これで逆転した。
美雪への慰謝料請求は、書面でも対決でも構わない、って冴木さんは言ってた。
どっちでも構わないと、今、この時までは思っていたけれど、方向転換。自分でやらないと気が済まない。
白井美雪、絶対許さない。
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