6 / 13
友人
しおりを挟む
「彼が死んで4か月ぐらい経った時に、久しぶりにあのゲームにダイブしてみたんです。そしたら死んだはずの秀人がそこにいたんです」
「え?なんだって?死んだ友達がゲーム内で生きていたって?交通事故時にゲームにダイブでもしていたのか?」
「いえ違います。普通に自転車に乗っているところをダンプに轢かれて死にました」
「……なのに彼はそこにいたっていう事か……」
僕はあまりの話に声が出なかった。
考えてみればゲーム内に取り残されるというのもあまりの話ではあるが……。
「まだ話は続くのよ。聞いて」
ゆかり先輩が話を続けるように弟に促した。
「で、僕は彼と付き合っていた杏奈をゲーム内に呼んで二人を合わせました。本当に二人は喜んでました。僕も二度と会えないと思っていた彼に会えたのでとても嬉しかったです」
「だろうねえ……」
「それからは暫くは、いつものようにゲームにダイブしては一緒にモンスター狩りをしてました。ある日、杏奈が『このままずっとここに居たい。ずっと秀人と一緒にいたい』と言い出したんです」
「僕と秀人はその意見には反対でした。それにそんな事は実現不可能だって思ってましたし……ところが、最初に意識が無くなって、ゲーム内から戻ってこれなくなった……いや、彼女の場合戻らなかったと言った方が正しいかもしれませんが……そう、意識が無くなって救急車に乗せられたのは彼女……杏奈です」
「なんと……」
「その日、僕はレベリングが終わるといつも通りネットからログオフしたんですが、杏奈はしませんでした。僕も秀人も何度も説得しましたが言う事を聞いてくれませんでした……そうしたら、翌朝杏奈が病院に運ばれったって話を聞いたんです」
「だから言ったでしょ。自分の意思で戻ってこないかもしれないって。事実うちの弟はちゃんと戻って来ているからね」
ゆかり先輩はそう言って今の話をまとめた。
僕はゆっくりとこの打合せ室にいる3人の顔を見回した。
「これって本当の事ですよねえ?」
ゆかり先輩も弟も安達も黙って同じように頷いた。
「それから……それ以降も、その杏奈って子にはゲーム内で会ったの?」
「はい。何度も会ってます。病院に担ぎ込まれた事も言いました。ヘッドギアももう被ってません。完全に接続は切れているはずなんですが、いまだに彼女はあの世界にいます」
「こうなった原因は分かっていないんですよね?」
僕は腕を組み考えた。
またもや3人が同じように頷いた。
安達が
「理論的な予想は出来ているが、まだ確証に至っていない」
とひとことだけ言った。
「その杏奈からなのよ。リアルの世界に帰らずにバーチャルの世界に留まる様になったのは……」
ゆかり先輩はそう言うと小さくため息をついた。
「で、そこでお願いなんだけど……」
「はいはい。もうなんだっていう事聞きますよ。ここに潜って秀人と杏奈に会ってこいっていうんでしょ?」
僕はもう腹を括っていた……と言うより諦めていた。この状況でゆかり先輩が何を言うかなんて聞かなくても分かる。
「うん。そう。うちの弟も連れて行ってね」
「え?」
「だってそうでしょう?あんた秀人も杏奈も面識ないでしょう?」
「そりゃそうですけど……良いんですか?弟さん連れて行っても」
「元はと言えばこいつらが発端の様だし、さっきも言ったけどその発端の二人を知っているのも弟だし、今回のこのに関してもこいつの友達の秀人が何か知っているんじゃないかと私は思っている。でも弟一人で行かせたらこいつも帰ってこれなくなるという危惧は残るのね。だからあんたに弟の面倒を見てもらおうかと思ったのよ。分かったぁ?」
最後は何故か明るく話すゆかり先輩だった。
「え?なんだって?死んだ友達がゲーム内で生きていたって?交通事故時にゲームにダイブでもしていたのか?」
「いえ違います。普通に自転車に乗っているところをダンプに轢かれて死にました」
「……なのに彼はそこにいたっていう事か……」
僕はあまりの話に声が出なかった。
考えてみればゲーム内に取り残されるというのもあまりの話ではあるが……。
「まだ話は続くのよ。聞いて」
ゆかり先輩が話を続けるように弟に促した。
「で、僕は彼と付き合っていた杏奈をゲーム内に呼んで二人を合わせました。本当に二人は喜んでました。僕も二度と会えないと思っていた彼に会えたのでとても嬉しかったです」
「だろうねえ……」
「それからは暫くは、いつものようにゲームにダイブしては一緒にモンスター狩りをしてました。ある日、杏奈が『このままずっとここに居たい。ずっと秀人と一緒にいたい』と言い出したんです」
「僕と秀人はその意見には反対でした。それにそんな事は実現不可能だって思ってましたし……ところが、最初に意識が無くなって、ゲーム内から戻ってこれなくなった……いや、彼女の場合戻らなかったと言った方が正しいかもしれませんが……そう、意識が無くなって救急車に乗せられたのは彼女……杏奈です」
「なんと……」
「その日、僕はレベリングが終わるといつも通りネットからログオフしたんですが、杏奈はしませんでした。僕も秀人も何度も説得しましたが言う事を聞いてくれませんでした……そうしたら、翌朝杏奈が病院に運ばれったって話を聞いたんです」
「だから言ったでしょ。自分の意思で戻ってこないかもしれないって。事実うちの弟はちゃんと戻って来ているからね」
ゆかり先輩はそう言って今の話をまとめた。
僕はゆっくりとこの打合せ室にいる3人の顔を見回した。
「これって本当の事ですよねえ?」
ゆかり先輩も弟も安達も黙って同じように頷いた。
「それから……それ以降も、その杏奈って子にはゲーム内で会ったの?」
「はい。何度も会ってます。病院に担ぎ込まれた事も言いました。ヘッドギアももう被ってません。完全に接続は切れているはずなんですが、いまだに彼女はあの世界にいます」
「こうなった原因は分かっていないんですよね?」
僕は腕を組み考えた。
またもや3人が同じように頷いた。
安達が
「理論的な予想は出来ているが、まだ確証に至っていない」
とひとことだけ言った。
「その杏奈からなのよ。リアルの世界に帰らずにバーチャルの世界に留まる様になったのは……」
ゆかり先輩はそう言うと小さくため息をついた。
「で、そこでお願いなんだけど……」
「はいはい。もうなんだっていう事聞きますよ。ここに潜って秀人と杏奈に会ってこいっていうんでしょ?」
僕はもう腹を括っていた……と言うより諦めていた。この状況でゆかり先輩が何を言うかなんて聞かなくても分かる。
「うん。そう。うちの弟も連れて行ってね」
「え?」
「だってそうでしょう?あんた秀人も杏奈も面識ないでしょう?」
「そりゃそうですけど……良いんですか?弟さん連れて行っても」
「元はと言えばこいつらが発端の様だし、さっきも言ったけどその発端の二人を知っているのも弟だし、今回のこのに関してもこいつの友達の秀人が何か知っているんじゃないかと私は思っている。でも弟一人で行かせたらこいつも帰ってこれなくなるという危惧は残るのね。だからあんたに弟の面倒を見てもらおうかと思ったのよ。分かったぁ?」
最後は何故か明るく話すゆかり先輩だった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
アルケディア・オンライン ~のんびりしたいけど好奇心が勝ってしまうのです~
志位斗 茂家波
ファンタジー
新入社員として社会の波にもまれていた「青葉 春」。
社会人としての苦労を味わいつつ、のんびりと過ごしたいと思い、VRMMOなるものに手を出し、ゆったりとした生活をゲームの中に「ハル」としてのプレイヤーになって求めてみることにした。
‥‥‥でも、その想いとは裏腹に、日常生活では出てこないであろう才能が開花しまくり、何かと注目されるようになってきてしまう…‥‥のんびりはどこへいった!?
――
作者が初めて挑むVRMMOもの。初めての分野ゆえに稚拙な部分もあるかもしれないし、投稿頻度は遅めだけど、読者の皆様はのんびりと待てるようにしたいと思います。
コメントや誤字報告に指摘、アドバイスなどもしっかりと受け付けますのでお楽しみください。
小説家になろう様でも掲載しています。
一話あたり1500~6000字を目途に頑張ります。
Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~
神城弥生
ファンタジー
なろう小説サイトにて「HJ文庫2018」一次審査突破しました!!
皆様のおかげでなろうサイトで120万pv達成しました!
ありがとうございます!
VRMMOを造った山下グループの最高傑作「Another Of Life Game」。
山下哲二が、死ぬ間際に完成させたこのゲームに込めた思いとは・・・?
それでは皆様、AOLの世界をお楽しみ下さい!
毎週土曜日更新(偶に休み)
運極さんが通る
スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。
そして、今日、新作『Live Online』が発売された。
主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
Ancient Unfair Online ~万能武器ブーメラン使いの冒険記~
草乃葉オウル
ファンタジー
『Ancient Unfair Online(エンシェント アンフェア オンライン)』。
それは「不平等」をウリにした最新VRMMORPG。
多くの独自スキルやアイテムにイベントなどなど、様々な不確定要素が織りなすある意味自由な世界。
そんな風変わりな世界に大好きなブーメランを最強武器とするために飛び込む、さらに風変わりな者がいた!
レベルを上げ、スキルを習得、装備を強化。
そして、お気に入りの武器と独自の戦闘スタイルで強大なボスをも撃破する。
そんなユニークなプレイヤーの気ままな冒険記。
※小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる