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「ゲームをしたまま意識が戻ってこないって?」
「それが数十名もいるってか?」
ゆかり先輩はそのどよめきが収まるのを待ってから話を始めた。
「はい。その通りです。現在はサーバーメンテナンス中という事で、2か月ほど前からサービスは停止しております」
「しかしながら……これをご覧ください」
参加者の目はモニターに注がれた。
「サービスは停止し、アクセスも出来ない状況の今、通常ならゲームフィールドには誰も居ない状態……オンライン中のユーザーは0という事になりますが……」
白板の横のモニターにはゆかり先輩の説明とは反するゲーム内に佇む数十人のキャラクターが見えた。
「ご覧のように誰もアクセスできないフィールドにキャラクターが存在しています。勿論これはNPCではありません」
ゆかり先輩はモニター画面を指し示しながら説明を続けた。
またどよめきが起きた。
「ここに映っている人は、先程ゲーム中に意識が戻らなくなった人と思しきキャラクターです」
「え?意識が戻らないのではなく、文字通りあっちの世界に行ったまま帰れなくなったっていう事ですか?」
僕は思わず声を出して聞いた。他の参加者の視線が一斉に僕に集中した。
「はい。その通りだと思われます。こちらでは意識不明の状態になっていますが、ゲーム内では普通にゲームを遂行中です。またIDとキャラ名と個人の氏名の全てが意識を無くした人達と一致します。勿論、紐づけされている個人データも一致します」
会議室はまた再びどよめいた。さっきよりも大きなどよめきだった。
説明は聞いたがそれをどう解釈して良いのか誰もが皆迷っている……そんな感じだった。
「……っていう事は戻ってこれない人はまだヘッドギアを被ったままなんですか?」
「いいえ。それは違います。最初に発見された方はヘッドギアを外された状態で病院に搬送され、未だに意識が戻っておりません。つまり病院に緊急搬送された時点で何もかぶっておりませんでした。しかしこの人物と思われるキャラクターはこのゲームの中に存在し、いまだにゲームを楽しんでいると思われます」
「え?という事は身体は病院のベッドの上で、意識だけがゲームの中っていう事ですか?」
「そういう事になります。まさに転移症候群と名付けたくなる状況です」
「転移症候群ねぇ……なるほど……で、彼らはいまだにモンスター退治をしていると……」
「多分」
「多分って?」
「このモニター上で見られる範囲ではモンスターと戦っている場面は見られませんが……」
その時運営会社のマルチマテリアル社の技術者が手を挙げて発言の許可を求めた。
「どうぞ」
ゆかり先輩はその人の発言を促した。
「マルチマテリアル社のゲーム運営責任者の安達です。え~、現在、モンスターはほとんど現れないように設定を変更しております。ただ、若干のモンスターは現在も稼働しており、バトルフィールドに於いては、可能性は低いですがイベントが発生する恐れがあります」
安達と名乗った男は無表情に話を始めた。
「街とか村、城内部ではモンスターとのイベントは発生することはありません。また、ログ解析の結果では2回ほどバトルフィールドでの戦闘が確認されているだけです」
「……という事です」
ゆかり先輩は安達と名乗る技術者の話を受けて説明を終えた。
「現在の対策は?」
先ほどの挨拶で厚生労働省の三上と名乗った男が質問した。
「今のところ手立てがありません。現在サービスを中止しておりますが、この事象に関しての情報が少なすぎます。今後考えられる手段は、実際にこのゲームの中にダイブして、今この中に取り込まれた……転移したというのでしょうか?そういう人たちと直接接触を試みる事を検討しております」
「誰が行くんですか?」
「それも今から検討します」
「それが数十名もいるってか?」
ゆかり先輩はそのどよめきが収まるのを待ってから話を始めた。
「はい。その通りです。現在はサーバーメンテナンス中という事で、2か月ほど前からサービスは停止しております」
「しかしながら……これをご覧ください」
参加者の目はモニターに注がれた。
「サービスは停止し、アクセスも出来ない状況の今、通常ならゲームフィールドには誰も居ない状態……オンライン中のユーザーは0という事になりますが……」
白板の横のモニターにはゆかり先輩の説明とは反するゲーム内に佇む数十人のキャラクターが見えた。
「ご覧のように誰もアクセスできないフィールドにキャラクターが存在しています。勿論これはNPCではありません」
ゆかり先輩はモニター画面を指し示しながら説明を続けた。
またどよめきが起きた。
「ここに映っている人は、先程ゲーム中に意識が戻らなくなった人と思しきキャラクターです」
「え?意識が戻らないのではなく、文字通りあっちの世界に行ったまま帰れなくなったっていう事ですか?」
僕は思わず声を出して聞いた。他の参加者の視線が一斉に僕に集中した。
「はい。その通りだと思われます。こちらでは意識不明の状態になっていますが、ゲーム内では普通にゲームを遂行中です。またIDとキャラ名と個人の氏名の全てが意識を無くした人達と一致します。勿論、紐づけされている個人データも一致します」
会議室はまた再びどよめいた。さっきよりも大きなどよめきだった。
説明は聞いたがそれをどう解釈して良いのか誰もが皆迷っている……そんな感じだった。
「……っていう事は戻ってこれない人はまだヘッドギアを被ったままなんですか?」
「いいえ。それは違います。最初に発見された方はヘッドギアを外された状態で病院に搬送され、未だに意識が戻っておりません。つまり病院に緊急搬送された時点で何もかぶっておりませんでした。しかしこの人物と思われるキャラクターはこのゲームの中に存在し、いまだにゲームを楽しんでいると思われます」
「え?という事は身体は病院のベッドの上で、意識だけがゲームの中っていう事ですか?」
「そういう事になります。まさに転移症候群と名付けたくなる状況です」
「転移症候群ねぇ……なるほど……で、彼らはいまだにモンスター退治をしていると……」
「多分」
「多分って?」
「このモニター上で見られる範囲ではモンスターと戦っている場面は見られませんが……」
その時運営会社のマルチマテリアル社の技術者が手を挙げて発言の許可を求めた。
「どうぞ」
ゆかり先輩はその人の発言を促した。
「マルチマテリアル社のゲーム運営責任者の安達です。え~、現在、モンスターはほとんど現れないように設定を変更しております。ただ、若干のモンスターは現在も稼働しており、バトルフィールドに於いては、可能性は低いですがイベントが発生する恐れがあります」
安達と名乗った男は無表情に話を始めた。
「街とか村、城内部ではモンスターとのイベントは発生することはありません。また、ログ解析の結果では2回ほどバトルフィールドでの戦闘が確認されているだけです」
「……という事です」
ゆかり先輩は安達と名乗る技術者の話を受けて説明を終えた。
「現在の対策は?」
先ほどの挨拶で厚生労働省の三上と名乗った男が質問した。
「今のところ手立てがありません。現在サービスを中止しておりますが、この事象に関しての情報が少なすぎます。今後考えられる手段は、実際にこのゲームの中にダイブして、今この中に取り込まれた……転移したというのでしょうか?そういう人たちと直接接触を試みる事を検討しております」
「誰が行くんですか?」
「それも今から検討します」
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