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その時、ローリーの背後から聞き慣れた鎧のこすれる音が近づいてきた。
ローリーの表情がみるみる変わっていった。一気に血の気が引いていった。
僕はローリーの気持ちが手に取る様に分かった。
目にうっすらと涙も浮かんでいる。彼女は首を軽く左右に振ると一気に振り向いた。
そこには、ただれた顔の鎧姿の戦士が立っていた。
「こんにちは~」
とシュートは言ったが、その言葉はローリーの絶叫でかき消された。
可愛そうなローリーはそのまま気絶した。
「あ~あ。気絶したぞぉ。シュート」
「え?本当に?」
シュートは慌ててお面を取った。
「うん。やっぱりこれはやり過ぎだろう?」
「いや、つい……」
シュートは頭を掻きながら、ローリーの傍にひざまづくいて心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
こんな狼狽しているシュートを見るのは初めてだった。
「ついって……全く……完全に逝ってしまっているぞぉ……」
ローリーは白目をむいて気絶している。
「うん……」
「で、なに?こんにちは~って」
「黙って立っているのも味気ないと思って……」
「それ以前の問題だな……お面を被った時点でおかしいと思え」
「……だな」
シュートは白目をむいて気絶している彼女を見て猛烈に反省した様だった。
それでも暫くして彼女は気が付いて目を開けた。
そして目の前で彼女の手を握り心配そうにのぞき込んでいるシュートに気が付いた。
彼女は寝転がったまま右手を差し出し、シュートの頬を撫でた。
「私も死んだの?」
ローリーはシュートの瞳を見つめて呟いた。
「いや、君は死んでない」
シュートもローリーの瞳をじっと見つめて応えた。
「じゃあ、何故あなたがここに居るの?」
「それは俺にも分からないが、気が付いたらこの世界にいた」
「この世界?」
ローリーはやっと体を起こして周りの状況を確かめるように首を回した。
シュートはローリーの背中に手をまわして支えていた。
「ここは?」
「シルバーソードストーリーの中だよ」
僕が声を掛けた。
ローリーは僕の顔を見て
「さっき変なバケモンが……」
と言った。
「ああ、それはこいつがお面を被ってローリーを驚かせたんだよ」
と僕は地面に落ちている指さした。
ボーとそれを見ていたローリーの目に一瞬で炎が灯った。
一気に剣を抜くと飛び起きてシュートに切りかかった。
「おんのれぇ!!なにしくさるんや、こんだぼ!!めっちゃ驚いたやんけ!殺すぞ!」
ローリ―は怒り狂うと大阪弁に戻る。そう彼女の出身は大阪だ。
「いや、もう一度死んでるから」
シュートは笑いながら一気に逃げた。
「お前さあ、ローリーのもう一つの呼び名を忘れていただろう?」
僕はシュートにそう叫んだ。彼は飛ぶようにローリーから逃げ回っていた。
彼女はバーサクヒーラ―と呼ばれている。暴れ出したら止まらない。
「おんどれぇ!!待たんかい!コラぁ!!しばきまわしたるぅ~!!」
とローリーの罵声が響く。
「なんとかしてくれ!ジュリー」
「あれはお前が悪い。さっさと潔く殺されろ」
「いや、だからもう死んでいるって。今度死んだら生き返られないかもしれない……」
とシュートは情けない声を上げていた。
逃げ回っていたシュートはとうとうローリーに捕まった。
ローリーは剣を振り上げて……振り上げて……振り投げて……シュートに泣きながら抱きついた。
「会いたかった……本当に会いたかった……私も一緒に逝こうかと何度も思った……悲しくて悲しくてどうしようもなかった……」
ローリーは嗚咽をこらえながらシュートにそう言うと堰を切ったように号泣した。
「ばかぁ~~~!!」
ローリーはやっと愛するシュートの胸に飛び込んで想いのたけをぶつける事が出来たようだ。
「ごめんね。黙って逝ってしまって……」
シュートは優しくローリーの背中に腕を回して抱きしめた。
僕は黙って遠くから二人の様子を見守った。これで僕の役目は終わった。
しかしこれではシュートが生きていた時と何も変わらんなぁ……。本当にこれで良いのだろうかと思わなくもないが後は二人の問題だ。
無事に再会クエストは終了した。しかしこのクエストにはご褒美が無いのが不満だ。
案外いい仕事したのになぁ……ま、これからはここでシュートにも会えるし、僕も嬉しい。それでよしとしよう。
そして僕が死んだらここに転移できないかシュートに聞いてもらおう。
彼なら神様に聞けるような気がする。
死んでしまってこの異世界に転移した僕の親友。転移もせずにダイブする僕と親友の彼女。
僕らにとってこのVRMMOは異世界と現世界を繋ぐ貴重な世界。
さて、これからどんなクエストが待っているのか……今から楽しみだ。
ローリーの表情がみるみる変わっていった。一気に血の気が引いていった。
僕はローリーの気持ちが手に取る様に分かった。
目にうっすらと涙も浮かんでいる。彼女は首を軽く左右に振ると一気に振り向いた。
そこには、ただれた顔の鎧姿の戦士が立っていた。
「こんにちは~」
とシュートは言ったが、その言葉はローリーの絶叫でかき消された。
可愛そうなローリーはそのまま気絶した。
「あ~あ。気絶したぞぉ。シュート」
「え?本当に?」
シュートは慌ててお面を取った。
「うん。やっぱりこれはやり過ぎだろう?」
「いや、つい……」
シュートは頭を掻きながら、ローリーの傍にひざまづくいて心配そうに彼女の顔を覗き込んだ。
こんな狼狽しているシュートを見るのは初めてだった。
「ついって……全く……完全に逝ってしまっているぞぉ……」
ローリーは白目をむいて気絶している。
「うん……」
「で、なに?こんにちは~って」
「黙って立っているのも味気ないと思って……」
「それ以前の問題だな……お面を被った時点でおかしいと思え」
「……だな」
シュートは白目をむいて気絶している彼女を見て猛烈に反省した様だった。
それでも暫くして彼女は気が付いて目を開けた。
そして目の前で彼女の手を握り心配そうにのぞき込んでいるシュートに気が付いた。
彼女は寝転がったまま右手を差し出し、シュートの頬を撫でた。
「私も死んだの?」
ローリーはシュートの瞳を見つめて呟いた。
「いや、君は死んでない」
シュートもローリーの瞳をじっと見つめて応えた。
「じゃあ、何故あなたがここに居るの?」
「それは俺にも分からないが、気が付いたらこの世界にいた」
「この世界?」
ローリーはやっと体を起こして周りの状況を確かめるように首を回した。
シュートはローリーの背中に手をまわして支えていた。
「ここは?」
「シルバーソードストーリーの中だよ」
僕が声を掛けた。
ローリーは僕の顔を見て
「さっき変なバケモンが……」
と言った。
「ああ、それはこいつがお面を被ってローリーを驚かせたんだよ」
と僕は地面に落ちている指さした。
ボーとそれを見ていたローリーの目に一瞬で炎が灯った。
一気に剣を抜くと飛び起きてシュートに切りかかった。
「おんのれぇ!!なにしくさるんや、こんだぼ!!めっちゃ驚いたやんけ!殺すぞ!」
ローリ―は怒り狂うと大阪弁に戻る。そう彼女の出身は大阪だ。
「いや、もう一度死んでるから」
シュートは笑いながら一気に逃げた。
「お前さあ、ローリーのもう一つの呼び名を忘れていただろう?」
僕はシュートにそう叫んだ。彼は飛ぶようにローリーから逃げ回っていた。
彼女はバーサクヒーラ―と呼ばれている。暴れ出したら止まらない。
「おんどれぇ!!待たんかい!コラぁ!!しばきまわしたるぅ~!!」
とローリーの罵声が響く。
「なんとかしてくれ!ジュリー」
「あれはお前が悪い。さっさと潔く殺されろ」
「いや、だからもう死んでいるって。今度死んだら生き返られないかもしれない……」
とシュートは情けない声を上げていた。
逃げ回っていたシュートはとうとうローリーに捕まった。
ローリーは剣を振り上げて……振り上げて……振り投げて……シュートに泣きながら抱きついた。
「会いたかった……本当に会いたかった……私も一緒に逝こうかと何度も思った……悲しくて悲しくてどうしようもなかった……」
ローリーは嗚咽をこらえながらシュートにそう言うと堰を切ったように号泣した。
「ばかぁ~~~!!」
ローリーはやっと愛するシュートの胸に飛び込んで想いのたけをぶつける事が出来たようだ。
「ごめんね。黙って逝ってしまって……」
シュートは優しくローリーの背中に腕を回して抱きしめた。
僕は黙って遠くから二人の様子を見守った。これで僕の役目は終わった。
しかしこれではシュートが生きていた時と何も変わらんなぁ……。本当にこれで良いのだろうかと思わなくもないが後は二人の問題だ。
無事に再会クエストは終了した。しかしこのクエストにはご褒美が無いのが不満だ。
案外いい仕事したのになぁ……ま、これからはここでシュートにも会えるし、僕も嬉しい。それでよしとしよう。
そして僕が死んだらここに転移できないかシュートに聞いてもらおう。
彼なら神様に聞けるような気がする。
死んでしまってこの異世界に転移した僕の親友。転移もせずにダイブする僕と親友の彼女。
僕らにとってこのVRMMOは異世界と現世界を繋ぐ貴重な世界。
さて、これからどんなクエストが待っているのか……今から楽しみだ。
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