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ヴォーカリストとギタリスト
不心得者
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その愚か者たちは和樹と弓削翔だった。
「お! 居た!」
と和樹が嬉しそうな顔で叫んでズカズカと近づいてきた。
音楽室には不釣り合いな顔と騒々しさだ。
「なんや? どないしたんや?」
と僕が聞くと
「食後の憩いの時を君のピアノで癒されに来たんや」
と和樹はぬけぬけとふざけた事をほざいたが、それは全くの口実だとすぐに分かった。
この二人はおおかた僕のピアノをBGMに昼寝でもしに来たんだろう。
「嘘言うな」
「はは、ばれたか」
と和樹は笑った。やはりそんな気は全くないようだ。
「ぽっぽちゃん。もしかしてもう終わったん?」
と和樹は澪に声を掛けた。どうやら僕にではなく彼女に用があるみたいだった。こんなところで待ち合わせか? ともかく和樹たちは昼寝をしに音楽室に来たわけでも無かったのは分かった。
「うん。やっと藤崎君の伴奏で心置きなく歌えたわ」
と澪は満面の笑みを見せて答えた。
「一体、なんなん? 話が見えへんねんけど」
と僕はこの状況が全く理解できていなかった。何故、和樹と澪がこんなに親し気に話をしているのだ?
「実はさぁ、ぽっぽちゃんをうちのバンドのヴォーカルにスカウトしようと口説いてたんや」
と和樹が何故かどや顔で言った。
「うちのバンドって、あのイカレタコミックバンドかえ?」
と僕は聞き返した。
やっぱりこいつらが何かを仕組んだようだ。なんとなくそれだけは理解できたが、まだ繋がらない。
「コミックバンド言うな!……そうかもしれんけど」
と和樹は歯切れの悪い否定をした。自分たちがコミックバンドである事を認めはじめたのかもしれない。
少しだけ『真実から目を背けずに直視する姿勢は好感が持てる』と褒めてやりたくなったが、
「自分でツッコむんやったら言うな。で、ぽっぽちゃんを口説くのと、ここにお前らがおるのとはどういう関係があんねん?」
とまずは僕の疑問を解く方を優先した。
しかし『イカレタ』はスルーか? 自覚があるのか? と思ったが、そもそもどうでも良い事なのでツッコむのは止めた。
そんな僕の思いも知るはずもない和樹は
「だからさっきぽっぽちゃんが言うたやん。『やっと藤崎の伴奏で歌えた』って」
と言った。
「ほげ?」
僕は和樹が何を言いたいのかまだ理解していない。
「だから亮の伴奏で歌を歌わせてくれたらヴォーカル引き受けてくれるって言うから、ちょっとお前に頼もうと思ってここで待ち合わせしてたんや」
と和樹は少しいらだったような感じで言った。
僕の事を『鈍い奴だな』と思っているぞオーラがヒシヒシと伝わってくる。
「で、俺らが来る前にお前ら二人は先にもう会ってしまってた上に、さっさとぽっぽちゃんはお前の伴奏で歌ってしまっていたという訳や」
「ふん! とっても分かりやすい説明をどうもありがとう」
と眉間に皺を寄せながら言った。
なんかバカにものを教えるみたいな言い方が気に食わなかったが、状況ははっきりと理解できた。
「いえいえ。どういたしまして。分かってもらえてほっとしたよ」
と和樹も嫌味な笑顔を見せて応えた。
僕と和樹との会話を聞いてぽっぽちゃんは笑っていた。
僕と目が合ったぽっぽちゃんは
「藤崎君ゴメンねえ。なんか騙したみたいで……」
と両手を合わせて拝むようにして僕に謝った。
「いや、まあ、良いんやけど……ええ声聞けたし……」
彼女に対しては何も思うところはない。この声に伴奏を付けられたというだけも嬉しかった。
「お! 居た!」
と和樹が嬉しそうな顔で叫んでズカズカと近づいてきた。
音楽室には不釣り合いな顔と騒々しさだ。
「なんや? どないしたんや?」
と僕が聞くと
「食後の憩いの時を君のピアノで癒されに来たんや」
と和樹はぬけぬけとふざけた事をほざいたが、それは全くの口実だとすぐに分かった。
この二人はおおかた僕のピアノをBGMに昼寝でもしに来たんだろう。
「嘘言うな」
「はは、ばれたか」
と和樹は笑った。やはりそんな気は全くないようだ。
「ぽっぽちゃん。もしかしてもう終わったん?」
と和樹は澪に声を掛けた。どうやら僕にではなく彼女に用があるみたいだった。こんなところで待ち合わせか? ともかく和樹たちは昼寝をしに音楽室に来たわけでも無かったのは分かった。
「うん。やっと藤崎君の伴奏で心置きなく歌えたわ」
と澪は満面の笑みを見せて答えた。
「一体、なんなん? 話が見えへんねんけど」
と僕はこの状況が全く理解できていなかった。何故、和樹と澪がこんなに親し気に話をしているのだ?
「実はさぁ、ぽっぽちゃんをうちのバンドのヴォーカルにスカウトしようと口説いてたんや」
と和樹が何故かどや顔で言った。
「うちのバンドって、あのイカレタコミックバンドかえ?」
と僕は聞き返した。
やっぱりこいつらが何かを仕組んだようだ。なんとなくそれだけは理解できたが、まだ繋がらない。
「コミックバンド言うな!……そうかもしれんけど」
と和樹は歯切れの悪い否定をした。自分たちがコミックバンドである事を認めはじめたのかもしれない。
少しだけ『真実から目を背けずに直視する姿勢は好感が持てる』と褒めてやりたくなったが、
「自分でツッコむんやったら言うな。で、ぽっぽちゃんを口説くのと、ここにお前らがおるのとはどういう関係があんねん?」
とまずは僕の疑問を解く方を優先した。
しかし『イカレタ』はスルーか? 自覚があるのか? と思ったが、そもそもどうでも良い事なのでツッコむのは止めた。
そんな僕の思いも知るはずもない和樹は
「だからさっきぽっぽちゃんが言うたやん。『やっと藤崎の伴奏で歌えた』って」
と言った。
「ほげ?」
僕は和樹が何を言いたいのかまだ理解していない。
「だから亮の伴奏で歌を歌わせてくれたらヴォーカル引き受けてくれるって言うから、ちょっとお前に頼もうと思ってここで待ち合わせしてたんや」
と和樹は少しいらだったような感じで言った。
僕の事を『鈍い奴だな』と思っているぞオーラがヒシヒシと伝わってくる。
「で、俺らが来る前にお前ら二人は先にもう会ってしまってた上に、さっさとぽっぽちゃんはお前の伴奏で歌ってしまっていたという訳や」
「ふん! とっても分かりやすい説明をどうもありがとう」
と眉間に皺を寄せながら言った。
なんかバカにものを教えるみたいな言い方が気に食わなかったが、状況ははっきりと理解できた。
「いえいえ。どういたしまして。分かってもらえてほっとしたよ」
と和樹も嫌味な笑顔を見せて応えた。
僕と和樹との会話を聞いてぽっぽちゃんは笑っていた。
僕と目が合ったぽっぽちゃんは
「藤崎君ゴメンねえ。なんか騙したみたいで……」
と両手を合わせて拝むようにして僕に謝った。
「いや、まあ、良いんやけど……ええ声聞けたし……」
彼女に対しては何も思うところはない。この声に伴奏を付けられたというだけも嬉しかった。
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