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セークスバッコン国にて
にわめ
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清々しい朝、ゆっくりと宛てがわれた部屋で選り好みをしながら朝食を終えた俺は、お城の中庭を散策中です。
何故朝食を選り好みしたかというと、思考を鈍らせる薬入りだとか、体を鈍らせる薬入りだとか、色々入っていたから。
状態異常耐性というスキルを持っているけれど、そんな薬入りのご飯は食べたくなかったです、はい。
そしてそれを誤魔化すわけじゃないけれど、ちょっと……夜中にも呼んでない人が部屋の周辺を彷徨(うろつ)いていたりしたので、早目にこの国を出たいと思っています。
これらを回避したのは勇者としての能力かなぁ?って言えば問題なかった。
事実だしね。
なのに何故こんな散歩をしているかというと……目的地へさり気なく向かおうとしている所ですね!
あっちへふらふら、こっちへふらふらしながらも向かう先は既に決定済みの俺。
監視役のお付きという名の綺麗な男の子を連れて移動中なのです。
最初から目的地を告げて止められたりしたら嫌だから、徘徊という形を見せてさりげなーく向かってるんだよ。
そしてこの子、宰相の『ゴシュジンサマ』なんだって。
……やめよう、想像したくない。
そしてここで勇者のチートのご紹介!
てっててーん!
地図ー!
拡大縮小の出来るスグレモノ!
ステータス表示と同じように画面が空中に浮かび、脳内で指定だとか色々出来るシロモノでございます!
この世界全体のマップについてはまた後日。
ふらふらと彷徨うフリをしながら辿り着いたのは開けた広場ですね。
そこには重そうな鎧を着ている人達が集まり、何やらしています。
はっきり言えばこの国の騎士達が訓練中です。
野太いでっかい声で返事をして、そして並んで走り出しました。
あんな重そうな鎧を着てよく走れるなぁ、なんて感心していると、教官らしき人物が俺の方へぐりん、と顔を向けた。
1人だけ軽装で、野球のバットのような物を持っている。
「誰だ」
鋭い眼光は俺を射抜きそうでいて、探るようでもあった。
歴戦の名将と言われたら納得してしまいそうだ。
肉厚の身体がシャツ越しにもわかる。
手も大きく、ゴツゴツと節が目立つその手は男らしい。
そして身長も高く、強面の顔面も相まって威圧感が半端ない。
国王と宰相はちょっと食指が動かなかったけど、この人──騎士団長──ならイイかも。
そんなことを内心で思っている間に、お付きの男の子がすすす、と騎士団長の側に近寄り耳打ちをする。
すると目を丸くして俺を見て、お付きの男の子を見て、また俺を見た。
多分魔王と戦うはずの勇者がひょろいからだろう。
俺は細身で剣も持ったことがないからね!
まあこの世界に来る前に造り直されたんだけど。
元々の身体はぷにぷにの女だったし。
「失礼しました。私はセークスバッコン王国騎士団団長のジューク・オーラルと申します」
「あ、ご丁寧にどうも。藤村……シオン・フジムラです。シオンと呼んでください」
俺の前まで近付いてきて片膝を地面につき、胸の前で両手を交差させて頭を下げた騎士団長、ジュークさん。
ジュークさんの傍らに浮かぶ画面をちらりと見て、にっこり笑顔を浮かべる。
この人に決めた。
「目立ちますから、立ってください」
手を差し伸べるけれど、どう見ても俺の腕力じゃあ支えたり引き上げたり出来なさそうだ。
それはジュークさんも思っただろう。
俺の見た目は元々の女体をベースにしている上に、とある人物の好みで細身ときた。
ジュークさんと比べたら厚みは半分程、一回りも二回りも俺の方が小さく見える。
頼りなく感じるだろうけど、差し伸べた俺の手を放置するのも躊躇われたのだろう。
そのごつくて硬い掌が俺の手に重ねられた。
その手を握手するようにぎゅっと握り、軽く引っ張る。
立ち上がったジュークさんは俺より頭1個分……いや2個分程高い。
間近でチラ見した体はイイ体をしていると思う。
「突然来てすいません」
「いえ、勇者様にお会い出来て光栄です」
彼は本当にそう思っているのだろう。
目に暗さや陰りはないし、綺麗な澄んだ目で優しく俺を見下ろしている。
綺麗な空色の瞳だ。
髪は栗色で、オールバックでかっちり決めている。
美味しそうなジュークさんに舌なめずりしそうになるけど、そこをぐっと堪えて申し訳なさそうな顔を作る。
「あの、お時間ある時でいいので少しお伺いしたいことがあるんですけど……」
「勇者様」
お付きの男の子が僅かに眉を寄せて俺を止めようと声を掛けてきた。
思わず手も伸びて、俺の加護にバチッと弾かれている。
それをジュークさんに見られてしまったと顔を歪める。
ジュークさんもビックリして目を僅かに丸くしている。
俺はどうしたの?風の顔を見せて、スルーしておく。
「いや、恥ずかしいお話しですが俺、武器とかそういうのわからなくて、騎士の方に少しお話を聞きたかったんですよ。こういうのってそこら辺の人に聞いても独自で持たれてたりするでしょ?基本もわからないのに応用なんて出来ないじゃないですか」
弾かれたお付きの男の子にもへらりと笑みを向けてそう言うと、ジュークさんはなるほど、と呟いて呟いて少しお待ち下さいと俺に背を向けた。
遠ざかるジュークさんの背中からお付きの男の子に顔を向けて軽く謝る。
「ごめんね、勝手して。でも俺も知識なく出来ないからさ」
「……わかりました。場所はどうなさいますか」
「うーん……俺が借りてる部屋……じゃああれか。いや、いっそ武器とか見せてもらいながら?騎士団団長さんと決めてもいいかも」
何故朝食を選り好みしたかというと、思考を鈍らせる薬入りだとか、体を鈍らせる薬入りだとか、色々入っていたから。
状態異常耐性というスキルを持っているけれど、そんな薬入りのご飯は食べたくなかったです、はい。
そしてそれを誤魔化すわけじゃないけれど、ちょっと……夜中にも呼んでない人が部屋の周辺を彷徨(うろつ)いていたりしたので、早目にこの国を出たいと思っています。
これらを回避したのは勇者としての能力かなぁ?って言えば問題なかった。
事実だしね。
なのに何故こんな散歩をしているかというと……目的地へさり気なく向かおうとしている所ですね!
あっちへふらふら、こっちへふらふらしながらも向かう先は既に決定済みの俺。
監視役のお付きという名の綺麗な男の子を連れて移動中なのです。
最初から目的地を告げて止められたりしたら嫌だから、徘徊という形を見せてさりげなーく向かってるんだよ。
そしてこの子、宰相の『ゴシュジンサマ』なんだって。
……やめよう、想像したくない。
そしてここで勇者のチートのご紹介!
てっててーん!
地図ー!
拡大縮小の出来るスグレモノ!
ステータス表示と同じように画面が空中に浮かび、脳内で指定だとか色々出来るシロモノでございます!
この世界全体のマップについてはまた後日。
ふらふらと彷徨うフリをしながら辿り着いたのは開けた広場ですね。
そこには重そうな鎧を着ている人達が集まり、何やらしています。
はっきり言えばこの国の騎士達が訓練中です。
野太いでっかい声で返事をして、そして並んで走り出しました。
あんな重そうな鎧を着てよく走れるなぁ、なんて感心していると、教官らしき人物が俺の方へぐりん、と顔を向けた。
1人だけ軽装で、野球のバットのような物を持っている。
「誰だ」
鋭い眼光は俺を射抜きそうでいて、探るようでもあった。
歴戦の名将と言われたら納得してしまいそうだ。
肉厚の身体がシャツ越しにもわかる。
手も大きく、ゴツゴツと節が目立つその手は男らしい。
そして身長も高く、強面の顔面も相まって威圧感が半端ない。
国王と宰相はちょっと食指が動かなかったけど、この人──騎士団長──ならイイかも。
そんなことを内心で思っている間に、お付きの男の子がすすす、と騎士団長の側に近寄り耳打ちをする。
すると目を丸くして俺を見て、お付きの男の子を見て、また俺を見た。
多分魔王と戦うはずの勇者がひょろいからだろう。
俺は細身で剣も持ったことがないからね!
まあこの世界に来る前に造り直されたんだけど。
元々の身体はぷにぷにの女だったし。
「失礼しました。私はセークスバッコン王国騎士団団長のジューク・オーラルと申します」
「あ、ご丁寧にどうも。藤村……シオン・フジムラです。シオンと呼んでください」
俺の前まで近付いてきて片膝を地面につき、胸の前で両手を交差させて頭を下げた騎士団長、ジュークさん。
ジュークさんの傍らに浮かぶ画面をちらりと見て、にっこり笑顔を浮かべる。
この人に決めた。
「目立ちますから、立ってください」
手を差し伸べるけれど、どう見ても俺の腕力じゃあ支えたり引き上げたり出来なさそうだ。
それはジュークさんも思っただろう。
俺の見た目は元々の女体をベースにしている上に、とある人物の好みで細身ときた。
ジュークさんと比べたら厚みは半分程、一回りも二回りも俺の方が小さく見える。
頼りなく感じるだろうけど、差し伸べた俺の手を放置するのも躊躇われたのだろう。
そのごつくて硬い掌が俺の手に重ねられた。
その手を握手するようにぎゅっと握り、軽く引っ張る。
立ち上がったジュークさんは俺より頭1個分……いや2個分程高い。
間近でチラ見した体はイイ体をしていると思う。
「突然来てすいません」
「いえ、勇者様にお会い出来て光栄です」
彼は本当にそう思っているのだろう。
目に暗さや陰りはないし、綺麗な澄んだ目で優しく俺を見下ろしている。
綺麗な空色の瞳だ。
髪は栗色で、オールバックでかっちり決めている。
美味しそうなジュークさんに舌なめずりしそうになるけど、そこをぐっと堪えて申し訳なさそうな顔を作る。
「あの、お時間ある時でいいので少しお伺いしたいことがあるんですけど……」
「勇者様」
お付きの男の子が僅かに眉を寄せて俺を止めようと声を掛けてきた。
思わず手も伸びて、俺の加護にバチッと弾かれている。
それをジュークさんに見られてしまったと顔を歪める。
ジュークさんもビックリして目を僅かに丸くしている。
俺はどうしたの?風の顔を見せて、スルーしておく。
「いや、恥ずかしいお話しですが俺、武器とかそういうのわからなくて、騎士の方に少しお話を聞きたかったんですよ。こういうのってそこら辺の人に聞いても独自で持たれてたりするでしょ?基本もわからないのに応用なんて出来ないじゃないですか」
弾かれたお付きの男の子にもへらりと笑みを向けてそう言うと、ジュークさんはなるほど、と呟いて呟いて少しお待ち下さいと俺に背を向けた。
遠ざかるジュークさんの背中からお付きの男の子に顔を向けて軽く謝る。
「ごめんね、勝手して。でも俺も知識なく出来ないからさ」
「……わかりました。場所はどうなさいますか」
「うーん……俺が借りてる部屋……じゃああれか。いや、いっそ武器とか見せてもらいながら?騎士団団長さんと決めてもいいかも」
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