2 / 2
気が付いたら天界
呆然
しおりを挟む
とりあえず、主神曰く、俺はここに居ればいいらしい。何かあればその都度勝手に記憶を覗いたり、俺に聞いたりするからって。……物凄く軽いっていうか、なんていうか……本当に暇潰しだなぁ。でも、あれをしろこれをしろ、とかないみたいだし、命の危険みたいなのもないみたいだし、いっかな。
まあ、命の危険って言っても元々死んで魂だった俺を拾ってきたようなものらしいし、まずこの場所──神の居る場所だから天界としておく──には生き物的なものは主神と俺しかいないから、危険も何もあったものじゃない。天界にあるのは草原と四阿しかないそうだ。空も晴天のようで、でも太陽はどこにも見えない。ただ明るいだけだ。主神が創ったのか?と聞いたらそうあるだけだと言われた。そういうものらしい。俺の脳みそじゃよくわからんし、多分詳しく説明されても理解できるとは限らない。それなら、考えるだけ無駄だろう、ってことでそういうものだとして受け止めるしかないよね。
俺のこの体も人間でいう所の肉体はないとのこと。精神体?みたいなものらしい。ただ、意識に引っ張られやすいとか言ってたから、元人間の俺は人間らしい体とか?
しかし、ここで人間という意識を持った俺には問題が起こる。人間ってのは、飯を食うし、寝るんだ。排泄もあるけど。じゃあ主神は?ってなると何もない!寝る必要もないし、飯を食う必要も、排泄もない。ふっしぎぃ。ただ、水的なものは飲む。その水的なものだけ摂取したらそれで終わり、ってことらしい。
今俺は排泄を必要とはしていないけど、意識に引っ張られる?のか腹は減るし眠気もある。しかし、食うものはないし、寝る場所もない。更に付け足すならば夜もない。ずーーーっと晴天のような昼間の明るさなのだ。それでも遮蔽物があれば影が出来ると思うだろ?実はない。これはきつい。だって、休む場所がないのだ。
主神との会話の後、どれだけかの時間をフラフラと草原を歩いていた俺は主神の元へと向かう。主神は四阿の石のベンチにごろりと横になり目を閉じていた。
「あの、主神様」
「……なんだ」
「夜ってないんでしょうか?」
「夜?」
「はい、一日っていうのは昼と夜が交互に来るもの……では、ないんでしょう、か……?」
俺の意識ではそうだけど、此処では違うのだろうか……。
この世界には太陽とか月とか、えーっと、なんだっけ、惑星も自転したりとか公転してたりとか……もしかして、世界っていうか、下界は丸くないんだろうか?それでも、太陽がなかったら植物が出来たら光合成とかどうなるんだろ?それに夜がなかったらいつ休む時間かとかわからないんじゃ?後夜寝ないと体のバランスが崩れるとか何かなかったっけ?……ん?夜に明るい照明とかに当たってると体内時計が狂うんだっけ?
ぐるぐると思いつく限りを考えていると主神が動いた。片手を顎鬚へと伸ばしその束を軽く掴むと根元から毛先へと動かす。数度髭を撫でるとその手をぱっと開いた。キラキラとした何か……あれは髭だ。主神の髭が光を反射させているのか、キラキラと輝き一瞬ぱぁっとその輝きを強くした。その光の強さに片腕で目元を覆い影を作る。
「私は太陽」
「私は月」
ふわふわと空中に浮かぶのはよく似た女性が二人だった。顔立ちはとても良く似ていて、双子なのだとすぐ思い当たった。
太陽と名乗った方は、背中の中ほどまでの柔らかそうに揺れるウェーブのかかったオレンジの髪に、赤味がかった瞳をしている。ニコニコとした笑顔をしていて、どこかこちらもほっこりしてくる。
月と名乗った方は、太陽よりは短いが黒く艶やかなストレートの髪で、瞳は青っぽい紫に見える。落ち着いた微笑みを見せていて、系統は違えどどちらも美女だ。
そして腰布一枚の主神とは違って、二人は豊満……とまではいかなくても、女性らしい曲線を描く体をしっかりと布で隠している。不思議なことに体の線は透けて見えるのに、肝心な場所は透けて見えない。なんか……惜しい!と思うような、これはこれでクるものがあるような……。
クスクスと楽しそうに笑う声が聞こえて、ぽーっと二人の女神を見つめていたことに気付いた俺は慌てて目を泳がせるが、神たちはそんな俺を怒るようなことはなかった。寛大で助かったといえるだろう。
「それではお父様」
「御前を失礼しますわ」
双子神は一度地面へと足をつけると足首までを隠す薄布を摘まんで腰を落とし、更に頭を下げてから再び宙へ浮き上がるとふわーっとどこかへ去って行ってしまった。目の前で起こった一連の出来事を見ていた俺は、ここで漸く神の誕生の瞬間に立ち会ったのだと気付いた。すごい……!もうこの一言に集約される。神話も詳しくはないけれど、これで太陽が昇る時間と月が昇る時間が出来て、昼と夜が出来るようになるのか。
そうなると天界はどうなるのか、ときょろきょろと周囲に目を走らせてみる。……うーん?今のとこ、変わったことは、ない?あ、いや!空に太陽がある!それで、四阿に影が出来てる!さっきまではなかったものが、そこに存在するようになった不思議。
天体としてはどうなんだろうか……。これってもう、現実っていうよりファンタジーだよね。双子神も主神の髭から生まれたし。でも、これで夜も出来るし、俺もゆっくり休むことが出来るようになるな。……あれ、でも俺、家とかない、じゃん……。それに、俺、仕事もしないでただ起きて、寝るだけの存在になっちゃうんじゃ……!?それって人間としてヤバくない!?
「しゅ、主神様、主神様!」
「なんだ、先ほどから騒々しいな」
「俺、じゃない、私に何か仕事はありませんか!?」
慌てる俺を主神は『なんだこいつ』って目で見てきた。だって働かないと俺、ただのごく潰しじゃん!?それはヤバいと思うんですけど!?
まあ、命の危険って言っても元々死んで魂だった俺を拾ってきたようなものらしいし、まずこの場所──神の居る場所だから天界としておく──には生き物的なものは主神と俺しかいないから、危険も何もあったものじゃない。天界にあるのは草原と四阿しかないそうだ。空も晴天のようで、でも太陽はどこにも見えない。ただ明るいだけだ。主神が創ったのか?と聞いたらそうあるだけだと言われた。そういうものらしい。俺の脳みそじゃよくわからんし、多分詳しく説明されても理解できるとは限らない。それなら、考えるだけ無駄だろう、ってことでそういうものだとして受け止めるしかないよね。
俺のこの体も人間でいう所の肉体はないとのこと。精神体?みたいなものらしい。ただ、意識に引っ張られやすいとか言ってたから、元人間の俺は人間らしい体とか?
しかし、ここで人間という意識を持った俺には問題が起こる。人間ってのは、飯を食うし、寝るんだ。排泄もあるけど。じゃあ主神は?ってなると何もない!寝る必要もないし、飯を食う必要も、排泄もない。ふっしぎぃ。ただ、水的なものは飲む。その水的なものだけ摂取したらそれで終わり、ってことらしい。
今俺は排泄を必要とはしていないけど、意識に引っ張られる?のか腹は減るし眠気もある。しかし、食うものはないし、寝る場所もない。更に付け足すならば夜もない。ずーーーっと晴天のような昼間の明るさなのだ。それでも遮蔽物があれば影が出来ると思うだろ?実はない。これはきつい。だって、休む場所がないのだ。
主神との会話の後、どれだけかの時間をフラフラと草原を歩いていた俺は主神の元へと向かう。主神は四阿の石のベンチにごろりと横になり目を閉じていた。
「あの、主神様」
「……なんだ」
「夜ってないんでしょうか?」
「夜?」
「はい、一日っていうのは昼と夜が交互に来るもの……では、ないんでしょう、か……?」
俺の意識ではそうだけど、此処では違うのだろうか……。
この世界には太陽とか月とか、えーっと、なんだっけ、惑星も自転したりとか公転してたりとか……もしかして、世界っていうか、下界は丸くないんだろうか?それでも、太陽がなかったら植物が出来たら光合成とかどうなるんだろ?それに夜がなかったらいつ休む時間かとかわからないんじゃ?後夜寝ないと体のバランスが崩れるとか何かなかったっけ?……ん?夜に明るい照明とかに当たってると体内時計が狂うんだっけ?
ぐるぐると思いつく限りを考えていると主神が動いた。片手を顎鬚へと伸ばしその束を軽く掴むと根元から毛先へと動かす。数度髭を撫でるとその手をぱっと開いた。キラキラとした何か……あれは髭だ。主神の髭が光を反射させているのか、キラキラと輝き一瞬ぱぁっとその輝きを強くした。その光の強さに片腕で目元を覆い影を作る。
「私は太陽」
「私は月」
ふわふわと空中に浮かぶのはよく似た女性が二人だった。顔立ちはとても良く似ていて、双子なのだとすぐ思い当たった。
太陽と名乗った方は、背中の中ほどまでの柔らかそうに揺れるウェーブのかかったオレンジの髪に、赤味がかった瞳をしている。ニコニコとした笑顔をしていて、どこかこちらもほっこりしてくる。
月と名乗った方は、太陽よりは短いが黒く艶やかなストレートの髪で、瞳は青っぽい紫に見える。落ち着いた微笑みを見せていて、系統は違えどどちらも美女だ。
そして腰布一枚の主神とは違って、二人は豊満……とまではいかなくても、女性らしい曲線を描く体をしっかりと布で隠している。不思議なことに体の線は透けて見えるのに、肝心な場所は透けて見えない。なんか……惜しい!と思うような、これはこれでクるものがあるような……。
クスクスと楽しそうに笑う声が聞こえて、ぽーっと二人の女神を見つめていたことに気付いた俺は慌てて目を泳がせるが、神たちはそんな俺を怒るようなことはなかった。寛大で助かったといえるだろう。
「それではお父様」
「御前を失礼しますわ」
双子神は一度地面へと足をつけると足首までを隠す薄布を摘まんで腰を落とし、更に頭を下げてから再び宙へ浮き上がるとふわーっとどこかへ去って行ってしまった。目の前で起こった一連の出来事を見ていた俺は、ここで漸く神の誕生の瞬間に立ち会ったのだと気付いた。すごい……!もうこの一言に集約される。神話も詳しくはないけれど、これで太陽が昇る時間と月が昇る時間が出来て、昼と夜が出来るようになるのか。
そうなると天界はどうなるのか、ときょろきょろと周囲に目を走らせてみる。……うーん?今のとこ、変わったことは、ない?あ、いや!空に太陽がある!それで、四阿に影が出来てる!さっきまではなかったものが、そこに存在するようになった不思議。
天体としてはどうなんだろうか……。これってもう、現実っていうよりファンタジーだよね。双子神も主神の髭から生まれたし。でも、これで夜も出来るし、俺もゆっくり休むことが出来るようになるな。……あれ、でも俺、家とかない、じゃん……。それに、俺、仕事もしないでただ起きて、寝るだけの存在になっちゃうんじゃ……!?それって人間としてヤバくない!?
「しゅ、主神様、主神様!」
「なんだ、先ほどから騒々しいな」
「俺、じゃない、私に何か仕事はありませんか!?」
慌てる俺を主神は『なんだこいつ』って目で見てきた。だって働かないと俺、ただのごく潰しじゃん!?それはヤバいと思うんですけど!?
0
お気に入りに追加
20
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
【完結】ハードな甘とろ調教でイチャラブ洗脳されたいから悪役貴族にはなりたくないが勇者と戦おうと思う
R-13
BL
甘S令息×流され貴族が織りなす
結構ハードなラブコメディ&痛快逆転劇
2度目の人生、異世界転生。
そこは生前自分が読んでいた物語の世界。
しかし自分の配役は悪役令息で?
それでもめげずに真面目に生きて35歳。
せっかく民に慕われる立派な伯爵になったのに。
気付けば自分が侯爵家三男を監禁して洗脳していると思われかねない状況に!
このままじゃ物語通りになってしまう!
早くこいつを家に帰さないと!
しかし彼は帰るどころか屋敷に居着いてしまって。
「シャルル様は僕に虐められることだけ考えてたら良いんだよ?」
帰るどころか毎晩毎晩誘惑してくる三男。
エロ耐性が無さ過ぎて断るどころかどハマりする伯爵。
逆に毎日甘々に調教されてどんどん大好き洗脳されていく。
このままじゃ真面目に生きているのに、悪役貴族として討伐される運命が待っているが、大好きな三男は渡せないから仕方なく勇者と戦おうと思う。
これはそんな流され系主人公が運命と戦う物語。
「アルフィ、ずっとここに居てくれ」
「うん!そんなこと言ってくれると凄く嬉しいけど、出来たら2人きりで言って欲しかったし酒の勢いで言われるのも癪だしそもそも急だし昨日までと言ってること真逆だしそもそもなんでちょっと泣きそうなのかわかんないし手握ってなくても逃げないしてかもう泣いてるし怖いんだけど大丈夫?」
媚薬、緊縛、露出、催眠、時間停止などなど。
徐々に怪しげな薬や、秘密な魔道具、エロいことに特化した魔法なども出てきます。基本的に激しく痛みを伴うプレイはなく、快楽系の甘やかし調教や、羞恥系のプレイがメインです。
全8章128話、11月27日に完結します。
なおエロ描写がある話には♡を付けています。
※ややハードな内容のプレイもございます。誤って見てしまった方は、すぐに1〜2杯の牛乳または水、あるいは生卵を飲んで、かかりつけ医にご相談する前に落ち着いて下さい。
感想やご指摘、叱咤激励、有給休暇等貰えると嬉しいです!ノシ
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
皇帝の肉便器
眠りん
BL
この国の皇宮では、皇太子付きの肉便器というシステムがある。
男性限定で、死刑となった者に懲罰を与えた後、死ぬまで壁尻となる処刑法である。
懲罰による身体の傷と飢えの中犯され、殆どが三日で絶命する。
皇太子のウェルディスが十二歳となった時に、肉便器部屋で死刑囚を使った自慰行為を教わり、大人になって王位に就いてからも利用していた。
肉便器というのは、人間のとしての価値がなくなって後は処分するしかない存在だと教えられてきて、それに対し何も疑問に思った事がなかった。
死ねば役目を終え、処分されるだけだと──。
ある日、初めて一週間以上も死なずに耐え続けた肉便器がいた。
珍しい肉便器に興味を持ち、彼の処刑を取り消すよう働きかけようとした時、その肉便器が拘束されていた部屋から逃げ出して……。
続編で、『離宮の愛人』を投稿しています。
※ちょっとふざけて書きました。
※誤字脱字は許してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる