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プロローグ的な?
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気持ち良い微睡を邪魔するような眩しさを感じる。
もう朝か、としぱしぱする目を腕で擦ってからゆっくりと開けば目に入るのはちょっと古ぼけた壁で、隣に感じない温もりにシーツを掌で撫でてみる。
うん、もう冷たい。
一緒に寝ていたはずの人物はもう起きて何かしら行動を始めているのだろう。
まだ眠気が勝る思考で色々慣れたなとぼんやりと思う。
見える景色にも、隣で誰かが眠ることも、その人物が行動を始めてもびっくりしなくなったことも……どうにか慣れてきた。
ベッドに肘をついて上半身を起こすも、軽いこの体では重みに軋む音も聞こえない。
あの人が乗ったらいい音がしてたんだけどな、なんて思って自分の手を見下ろす。
小さいなぁ、とちょっとため息が溢れた。
不意に窓の方へと顔を向けてみれば太陽の光が目に痛い。
でも、こんな風にゆっくりできる世界に、腕で目元を覆いつつも無意識に口元が緩む。
「異世界サイコー……」
さて、ゆっくりできるからといってモタモタしているわけにもいかない。
ベッドから下りて自分用の小さな革靴に、これまた小さな足を突っ込む。
自分の意識と、それに見合わない小さな体との差異にもようやく慣れたな、なんて思いながら同行人のカバンへと向かい中からゴワゴワするタオルを取り出す。
それを持って年季の入ったドアへと向かい、自分の目線にある鍵を外してよっこいしょ、と開く。
この体になって約一週間、慣れてきたとは言ってもまだちょっとおぼつかない所も多い。
ま、慣れざるを得ないんだけどね。
ちょっと暗い廊下を歩き、階段を下りていくと数組の人が席について食事を取っているのが視界に入る。
静かに歩いてたつもりだけど、音がしたのかもしくは気配とやらでも感じたのか、何人かはこちらに視線を向けた。
いつもなら何も思わない視線も、ちょっと今の状態では怯んでしまうのだけど……。
でも、視線の合った人は柔らかく微笑んでくれたから、胸を撫で下ろす。
そんなあたしの様子に、敵意がないよと教えてくれているのか子供が好きなのか、小さく手を振ってくれた。
━━誰にでもホイホイ愛想振りまくのはやめた方がいい。拐われるぞ。
そんな言葉が不意に思い出された。
現在の保護者であるあの人の言いつけは守りたいけど、かと言って無視するのもよくないのでは?と視線を泳がせるけど、やっぱり無視はよくないよなと微笑んでくれた人に小さく頭を下げておく。
愛想よくしたわけでもないし無視をしたわけでもない、ちょうどいい所だろうと思う。
それでも居心地が良いわけではないので早足で移動をする。
向かう先は、この宿の女将さんの所だ。
「おや、もう起きたのかい?」
近付くあたしに気づいた女将さんはわざわざカウンターを拭いていた手を止めてこちらへと顔を向けてくれた。
少しふくよかで抱きしめられた時は、その柔らかさと包容力と温かさに何故か泣いてしまった。
女性の包容力は男性のとはまた違ったものなのだな、と実感したものだ。
とかちょっと大人らしいことを考えて、昨日大泣きした醜態は記憶の隅へと追いやることにする。
恥ずかしいからね。
……こんなことになって二回目の大泣きだったのは秘密だ。
もう朝か、としぱしぱする目を腕で擦ってからゆっくりと開けば目に入るのはちょっと古ぼけた壁で、隣に感じない温もりにシーツを掌で撫でてみる。
うん、もう冷たい。
一緒に寝ていたはずの人物はもう起きて何かしら行動を始めているのだろう。
まだ眠気が勝る思考で色々慣れたなとぼんやりと思う。
見える景色にも、隣で誰かが眠ることも、その人物が行動を始めてもびっくりしなくなったことも……どうにか慣れてきた。
ベッドに肘をついて上半身を起こすも、軽いこの体では重みに軋む音も聞こえない。
あの人が乗ったらいい音がしてたんだけどな、なんて思って自分の手を見下ろす。
小さいなぁ、とちょっとため息が溢れた。
不意に窓の方へと顔を向けてみれば太陽の光が目に痛い。
でも、こんな風にゆっくりできる世界に、腕で目元を覆いつつも無意識に口元が緩む。
「異世界サイコー……」
さて、ゆっくりできるからといってモタモタしているわけにもいかない。
ベッドから下りて自分用の小さな革靴に、これまた小さな足を突っ込む。
自分の意識と、それに見合わない小さな体との差異にもようやく慣れたな、なんて思いながら同行人のカバンへと向かい中からゴワゴワするタオルを取り出す。
それを持って年季の入ったドアへと向かい、自分の目線にある鍵を外してよっこいしょ、と開く。
この体になって約一週間、慣れてきたとは言ってもまだちょっとおぼつかない所も多い。
ま、慣れざるを得ないんだけどね。
ちょっと暗い廊下を歩き、階段を下りていくと数組の人が席について食事を取っているのが視界に入る。
静かに歩いてたつもりだけど、音がしたのかもしくは気配とやらでも感じたのか、何人かはこちらに視線を向けた。
いつもなら何も思わない視線も、ちょっと今の状態では怯んでしまうのだけど……。
でも、視線の合った人は柔らかく微笑んでくれたから、胸を撫で下ろす。
そんなあたしの様子に、敵意がないよと教えてくれているのか子供が好きなのか、小さく手を振ってくれた。
━━誰にでもホイホイ愛想振りまくのはやめた方がいい。拐われるぞ。
そんな言葉が不意に思い出された。
現在の保護者であるあの人の言いつけは守りたいけど、かと言って無視するのもよくないのでは?と視線を泳がせるけど、やっぱり無視はよくないよなと微笑んでくれた人に小さく頭を下げておく。
愛想よくしたわけでもないし無視をしたわけでもない、ちょうどいい所だろうと思う。
それでも居心地が良いわけではないので早足で移動をする。
向かう先は、この宿の女将さんの所だ。
「おや、もう起きたのかい?」
近付くあたしに気づいた女将さんはわざわざカウンターを拭いていた手を止めてこちらへと顔を向けてくれた。
少しふくよかで抱きしめられた時は、その柔らかさと包容力と温かさに何故か泣いてしまった。
女性の包容力は男性のとはまた違ったものなのだな、と実感したものだ。
とかちょっと大人らしいことを考えて、昨日大泣きした醜態は記憶の隅へと追いやることにする。
恥ずかしいからね。
……こんなことになって二回目の大泣きだったのは秘密だ。
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