遥かな宇宙 久遠の絆

藤原ゆう

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 街の一番高いビルの屋上に立っていた。
 そのあまりの高さに、少女はぶるっと体を震わせた。
 自分が望んで、そこに立ったはずなのに。
 いざという時になると怯んで、怖くなって、引き返そうとしていた。
 もう、すべてにさよならするのだと。
 決意して立った屋上の端っこだったのに。
 
 強い風に身体を持って行かれそうになって、思わず後ろに飛びのいた。
 尻餅をついたけど気にならない。
 こんな痛みなど、ビルの下の地面に落ちた時のことを思ったら蚊に刺されたようなものだ。
 けれど、そこから帰る勇気も持てなかった。
 ここから階段を下りれば、またあの苦しみと向き合わなくてはならなくなる。
 進むことも戻ることもできないまま、少女はしばらく屋上の冷たいコンクリートの上に座っていた。
 
 誰かに呼ばれた気がした。
 立ち上がり、その声の主を探す。
 一歩一歩屋上の端に近付いていることにはきづかないで、彼女は空を見上げたまま声の主を探して足を進めた。
 夜空はなぜだかとても明るくて、まるで彼女に祝福を授けるかのように輝いていた。

「きれい……」

 あれが天国?
 親よりも早く逝ってしまおうとしている私が天国なんかに行けるの?

 そして彼女の足は屋上の端を踏み越えた。
 彼女はそれでも天を仰いだまま。
 地上に落ち行く視線の先で、天の輝きが渦を巻き始めた。
 ぐるぐると高速で回転する渦は、竜巻のように彼女に向かって伸びてきて、その先で彼女をとらえた。
 
 少女を小さな叫びとともに飲み込んだ竜巻は天へと戻る。
 生まれた時と同じように、素早く、静かに――。


***


 高い空を砲台を携えた艦船が飛んで行く。
 地上には車。
 石造りの建物が並ぶ街並みは西洋のどこかのよう。
 行き交う人々は、丈の長いドレスを着ている女性に、山高帽をかぶり、ステッキを持った男性。

 未来と現代と近世が混在するかのような風景に少女は見とれていた。

「ここが、天国……?」
 そう呟きながら。 
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