アレク・プランタン

かえるまる

文字の大きさ
上 下
544 / 722
第2章 幼年編

545 ともに生きる

しおりを挟む


 その日のうち。暗くなる前にグランドに帰ってきたんだ。

 「やっぱピーちゃんはすげぇなぁ」

 「シャーーーなんにも‥‥わよ」

 「褒めてもなんにも出ないわよって」

 「ピーちゃんいつもありがとうね」

 「狐ちゃんこそ、シャつも姫を救ってくれてありがとうね」

 「おぉ~!ピーちゃんの言葉がわかるよ!」

 「「「えっ?!」」」

 「「狐ちゃんすごいわ!グランドでピーちゃんの言葉がわかるのは私(姫)とマル爺だけよ」」

 「へぇーそうなんだ」

 グランドには暗くなる前に帰ってきたんだ。そこにはジョングのほか海人族の大人10人と子どもも10人いたんだ。

 「海洋諸国人とアレクに感謝する。そして海洋諸国人、これまでの我ら海人族のすべての行いを謝罪する。どうか我らを許してほしい」

 「許すもなにも、すべては済んだことよ」

 「ありがとう、ありがとう。うっう‥‥」

 「あなたたちはこれからどうするの?」

 (アレクが言ってたな。どうしたいのか決めるのは自分たちだって)

 「逃した女子どもと合流してから、どこかで住む場所を探そうかと思う。どこか静かで落ち着ける場所を‥‥」

 ジョングたちは安住の地を探してるんだな。

 「姫ちょっといいかしら」

 「レベちゃん?」

 レベちゃんが目配せしたんだ。

 「よかったらあなたたち海人族もグランドに住まない?」

 「「「えっ?」」」

 「グランドは私たち海洋諸国人しか住んでないわ。あなたたちも知ってるとおり、海洋諸国人の男たちはみんな小さいからあなたたちと変わらないでしょ。
 そして私たちは差別なんかしないわ。差別するのが大嫌いな狐ちゃんもいるからね。
 ああアレクちゃんも半分以上グランド島民みたいなもんよ」

 「そ、それはうれしい話なんだが‥‥我らに返せる金などない。見てのとおり弱いだけで役にもたたない獣人だからな」

 「あらあなたたち海人族の泳ぎはすごいじゃない」

 「まぁ泳ぐしか能がない獣人だからな」

 「あなたたち海人族を見込んで。海人族にこそやってもらいたいことがあるのよ」

 レベちゃんがばちこーんとウィンクしたんだ。

 「このグランドにはね、水辺だけに生えるゴームの木があるのよ。そしてこの木が私たちの生活の糧になるの。
 だからあなたたち海人族が水の中から、私たちデグーが陸から協力して守っていってくれないかしら?」

 「それは‥‥?」

 「ええ。私たちと一緒に暮らさない?」

 「「「‥‥」」」

 レベちゃんの話を聞いているうちに、ジョングたちみんなが声を上げて、泣き出したんだ。

 「「「うっ、うっ、うわぁぁぁーーんっ」」」

 泣きながら子どもも大人も海人族のみんながレベちゃんと俺を交互に眺めながら、熱のこもった視線を浴びせていたんだ。

 やっぱり‥‥ジョングたち海人族はレベちゃんと同類だったんだ。ヤバい、ヤバい、ヤバい!俺の尻子玉が抜かれる!嫌だ嫌だ、絶対嫌だ!

 「(団長尻抑えてどうしたんですか?)」

 「(ドン、俺一足早く帰るからね。てか帝都に帰るから)」

 わんわん泣いてる海人族の子どもが声に出して言ったんだ。

 「海人族の言い伝えにね、大きな力持ちのお姉さんと小さな魔法使いのへんたいの男の子が一族の危機に現れるって。みんなをあんじゅうの地に連れてってくれるって」

 「まっ!大きなお姉さんは私しかいないわっ!小さな変態は‥‥狐ちゃんしかいないじゃない!
 だからその言い伝えは本当よ!本当の伝説よおぉぉぉぉ!」

 レベちゃんの高らかな宣言はそのままジョングたち海人族に受け入れられたんだ。

 「「「大きな女神様ありがとう!」」」

 「まっ!かわいい子どもたちは正直でかわいいわぁ!」

 「「「小さなへんたい様もありがとう」」」

 なんだよ!小さな変態って!

 「そのアレク‥‥俺たちでじゃんけんをして俺が負けたから、その俺がお前の変態の相手を‥」

 「要らねぇーし!ぜったい絶対要らねぇーし!」

 「それよかジョング、お前俺の尻子玉取ったりしねぇよな?絶対嫌だかんな!」

 「尻子玉?なんだそれは?」

 「「はぁ?」」


―――――――――――――――


その後、迫害されてきた海人族の真実を知ったデグー一族は、自身の境遇も相まって、また海人族とガタロとの違いも理解できたことにより、差別の元となる偏見も解消できたんだ。

 姫はグランドの北東の一角を、海人族が暮らす占有地とした。

 「焦っちゃダメなのよぉ!」

 レベちゃんの助言もあり、これからは少しずつ双方の理解度は増していくだろう。

 海人族の主な仕事はゴームの木の水中から見守ることとなる。
 陸からは草、水中からは海人族の共同戦線の警らは完璧となった。

 いつしかグランドを襲う船はいなくなったことが、観光地としての評価も一層増した。「女子旅、学生旅行はグランド」が評判となるのであった。


 帝国と大国からの領事館設置の話も進んでいる。大国は魔法学校まで開設してくれるそうなんだ。
 法国は神父様とシスターを増員してくれるというし、エルファニアからはエルフさんと診療所も作ってくれるんだって。グランドはますます発展するんじゃないかな。

 夜、ジョングたち海人族もそろって参加する宴席になった。

 「狐ちゃん、あのときは助けてくれてありがとうね」

 エロかわいい女将さんが言ったんだ。

 「えっ?あのとき?」

 「わからないの?」

 「ん?」

 「フフフ」

 女将さんが猫仮面を付けて言ったんだ。

 「助けてくれてありがとにゃん」

 ギュッッ!

 う、腕に弾力があたる。い、いい匂いがする……。

 「うっ、うっ、うっ‥‥」

 「姐さんダメだ!コイツにそんなことしちや!」

 コジローさんの静止は少し遅かったんだ。



















 ブッシュュュューーーッッ!

 アレクのこの姿を見たジョングたち海人族の皆が納得したらしい。

 「やっぱり魔法使いの変態だ‥‥」



―――――――――――――――



いつもご覧いただき、ありがとうございます!
「☆」や「いいね」のご評価、フォローをいただけるとモチベーションにつながります。
どうかおひとつ、ポチッとお願いします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ
ファンタジー
高校一年生となったばかりの「霧崎レア」は学校の授業中、自分の前の席に座るクラスメイトの男子が机から1冊の書物を取り出す。表紙は真っ黒でタイトルさえも刻まれていない書物をクラスメイトの男子が開いた瞬間、表紙に魔法陣が浮き上がり、教室は閃光に包まれた。 次にレアは目を覚ますと、自分の他に3人のクラスメイトが床に魔法陣が刻まれた煉瓦製の建物の中に存在する事を知り、さらにローブを纏った老人の集団に囲まれている事を知る。彼等が言うにはここは異世界の「ヒトノ帝国」という国家らしく、レアを含めた4人の高校生たちは世界を救う勇者として召喚されたという。 勇者として召喚された4人は「ステータス」という魔法を扱えるようになり、この魔法は自分の現在の能力を数値化した「能力値」最も肉体に適している「職業」最後に強さを表す「レベル」を表示する画面を視界に生み出せるようになった。だが、レア以外の人間達は希少な職業に高い能力値を誇っていたが、彼の場合は一般人と大して変わらない能力値である事が判明する。他の人間は「剣の加護」「魔法の加護」といった特別な恩恵を受けているのに対し、レアだけは「文字の加護」と呼ばれる書き記された文字を変換するという謎の能力だった。 勇者として召喚された他のクラスメイトが活躍する中、レアだけは帝国の人間から無能と判断されて冷遇される。しかし、様々な実験を経てレアは自分の能力の隠された本当の力に気付く。文字変換の能力はステータスにも有効であり、彼は自分の能力を改竄して馬鹿にされていた人間達から逆に見上げられる立場となる―― ※文字変換シリーズの最初の作品のリメイクです。世界観はこれまでのシリーズとは異なります。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~

天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。 現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。

処理中です...