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第2章 幼年編
504 汚れ役
しおりを挟むもうすぐ今日も無事に解散ってときの青雲館で。
「団長うちの草が急ぎで団長に会いたいって」
「「「何だよおギン?」」」
ドンとトンの3人と顔を見合わせて不思議がったんだ。
「てか一族でもない俺が草と直接会うのってありなの?」
「ドン兄ちゃん、そんなのって初めてじゃないかな?」
「ああ。俺も聞いたことないな。だいたい俺、繋ぎの草以外何人いるのかさえ知らないし」
「「「うーん?」」」
「私も聞いたことありませんけど顔見知りの草がとっても真剣な顔で言ってますから一応団長に報告しようかと」
すぐに様子を見にいったトンも言ったんだ。
「団長会うだけ会ってくれませんか?草の奴あんなに真剣に言ってるから」
「別にいいけど‥‥」
「アレクさん、すいやせん。草の分際で」
「えっ、何?てか誰が誰に話しても別にいいじゃん。なぁドン」
「ははははそうっすね団長。だってさ草」
「若もありがとうごぜえやす。じゃあ若たちもすいやせん、アレクさんだけにお伝えしなきゃいけねえんで」
そうして俺は草と2人でひそひそ話を始めたんだ。
「(でなんなの?)」
「(はい。アイランド一族のコジローさんからの言伝です)」
「(では明日迎えに
来ますから私についてきてください)」
「(わかったよ)」
▼
翌昼。
「ドン、じゃあ俺ちょっと出かけてくるからな」
「「「団長!(お兄ちゃん!)」」」
「団長‥‥」
「うん。心配ないよ。と言っても心配かけるからなあ‥‥
あっ!そうだ!ドン、お前だけでもついてきてくれよ」
「もちろんです。団長!」
「お兄ちゃん私も行く!」
「絶対ダメだ。お前は待ってろ」
「危ない人たちと会うんでしょ?」
「違うよ」
「うそ!だったら私も行く!私だってオークを倒せる火を放てるわ!」
「それでもダメだ。アリサは待ってろ」
「だってお兄ちゃん!」
「アリサ、お前はまだ対人戦の経験はないだろ?」
「訓練所でやってるもん」
「それは訓練なんだよ。本気で悪意をぶつけてくる人と闘ったことはないだろ?」
「そうだけど‥‥」
「じゃあお前、人にあの火を撃てるか?」
「‥‥」
「ありがとうなアリサ。大丈夫。何も心配しなくていいよ。お兄ちゃんが負けるなんてありえるか?」
「うん。わかった‥‥」
「トン、ハチ、おギン、アリサ、あと幹部連のみんなには悪いけど俺に気にせず始めててくれよ。なに、大したことじゃないんだよ。夕方までに戻ってくるから」
▼
「それで団長どこへ行くんですか?」
「ああ、奴隷商の館潰したことで裏社会の危ない連中がここに目をつけてるんだってさ。危ない奴らの誰からも庇護下に入ってないからって」
「それはたしかにそうでしょうね‥‥」
「でさ、この辺り有数の危ない人の一家と闘ってくれって。そしたら他の危ない人たちにも抑止力になるって」
「そんなことをうちの草が?」
「いや。ドンのところの草さんは連絡してくれただけだよ。話を持ってきたのは俺が知ってる人なんだよね、アイランド一族の人なんだ」
「アイランドの……。
団長、実は言ってませんでしたが、もうすぐうちのガバス一族も団長の兄貴のアイランドの傘下に入るそうです」
「そうなんだ。でね、そのアイランドのコジローさんって言う人、ああ元デグー一族でグランドに住んでるんだけどね、そのコジローさんが今回間を取り持つんだって。コジローさんの話だから信頼できるんだよね」
「団長が信頼してるんなら。大丈夫なんですよね?」
「うん。コジローさんは元冒険者で奥さんがデグー一族なんだよ。俺去年キム先輩たちとグランドに行ってコジローさんにも世話になったんだ。良い人だよ」
「そうなんですね団長」
「それとさドンだけに止めておいて欲しいんだけど‥‥」
「なんですか」
「バァムのところにいた用心棒のナジローさん覚えてる?」
「はい隷属魔法の首輪をしてましたけど、圧倒的に強かったですから」
「ナジローさんはコジローさんの弟なんだよ。俺ナジローさんを殺したからコジローさんにはちゃんと謝らなきゃいけないんだよ」
「団長!だってそれは俺を助けてくれるために……。しかも隷属魔法の首環ですよ。だから団長になんの責任もありませんよ!」
「それでもなんだよドン。俺がナジローさんを殺したのは事実だよ」
「団長‥‥」
「でさ、それともう一つ。ドンについてきてもらったのもいい機会だなって思ってさ」
「いい機会?」
「うん。俺が帝国にいるのってさ、来年の春までじゃん」
「はい‥‥」
「だからさ、せっかくドンたちとみんなでつくった狂犬団も青雲館も俺最後まで面倒‥いや違うな、最後まで一緒に関われないんだよね」
「はい団長‥‥」
「今日のような話って、ひょっとしたら今後もあるかもしれないじゃん。
まぁだいたい帝都学園生ならみんな強いから問題ないとは思うけど、小さな子どもたちは心配なんだよね。
本職の危ない人たちが相手なら、海洋諸国出身のドンやトンたちしか立ち向かえないじゃん。こっちにはあの口だけ達者な子狸もいるし」
「はははは」
「だからさ、今日を含めて今後来年までに危ない人たちとの荒事は俺がするからさ」
「団長が?」
「うん。ドンは海洋諸国出身だから荒事はそれなりに見聞きしてるじゃん?」
「まぁ一応‥‥」
「俺、他の団員たちにそんなことするのを見せたくないんだよね。
だからそんな荒事は俺がやるから、ドンは俺を見ておいてくれよ。俺が自分の力を過信しないように。やり過ぎならやり過ぎだって言ってほしいし」
「団長そんな荒事は俺が!」
「いやダメなんだよドン。
無垢な子どもたちを教えるのはお前たちがちゃんとした学園生だからこそできるんだよ」
(俺はな‥‥ドン、お前ほど心が綺麗じゃないんだよ……)
(できうるなら俺はずっとこの団長についていきたい‥‥)
「団長‥‥わかりました。団長がこの帝都にいる間、俺はしっかりと団長のやることを見て受け継いでいきます」
「頼むねドン」
「はい団長」
「でもさ、どこに行ってもさ、訳の分からない難癖つけてくる頭のおかしな奴っているんだよな」
「ええ団長」
「本当はそんな奴らとも会話しながらお互いを理解し合っていくもんだって思うよ。だけどさ‥‥」
「言葉が通じない馬鹿もいっぱいいますからね」
「今回もさ、コジローさんからは多少暴れても構わないってさ」
「でも団長の多少ですからね‥‥」
「俺狂犬じゃないからやたらに殺したりはしないよ!」
「そうですね、はい」
なんだよその事務的な言い方!
「じゃあ行こうかドン」
「はい団長」
「団長待ってください。僕も連れてってほしいっす!」
「「ハチ!」」
「お前どこに隠れてたんだよ!」
「ハチ危ないぞ?」
「団長がいるじゃないっすか」
「ハチ‥‥お前‥‥またなんか悪どいこと考えてんな?」
「し、し、し、失礼っすよ団長」
「そうよハチ!あんた碌でもないこと考えてんでしょ?」
あっ!アリサまでついてきたのかよ!
「アリサ先輩ちょっとかわいいからって僕に失礼じゃないっすか!?」
「なによ子狸!なんか文句あるの?!」
「くっ‥‥」
「言ってみなさいよ!ほらほら早く!」
「ぐはっ‥‥」
あっ!ハチの奴目が喜んでるよ!
「(ハチ、アリサみたいなかわいい子からの暴言は効くだろ?)」
「(効くっす団長!キツいけど‥‥それがいいっす)」
「「(だよな/そうっす)」」
「(団長、でも僕アリサ先輩よりコウメの暴言のほうがさらに効くっす)」
「(ハチ‥‥お前歪んでるな)」
「バカ!お兄ちゃんもよ!この変態ども!」
ガンッッッ!
ガンッッッ!
ハチと2人、アリサに思いきり頭を叩かれた……。
「(痛いけど気持ちいいっす団長‥‥)」
「焼くぞ子狸!」
「ダメ!マジでやめてくださいっす!アリサ先輩!」
「じゃあアリサは待ってろよ」
「お兄ちゃん早く帰ってきてね!」
「ああ」
ーーーーーーーーーーー
コジローさんとガバスの草の話によれば帝都の裏社会の連中は、バァムの館跡にまだ何かしらの旨みが残ってると思い込んでいるらしいんだ。
だから昔コジローさんが出入りしていた帝都裏社会の最大手の一家を黙らせることができたら青雲館や狂犬団にとって今後はいい抑止力になるんだって。
なるほどな、だから殺さない程度にやれって言うんだな。
「ハチハイポーション持ってるか?」
「がってんだ!団長がそう言うと思って持ってきたっすよ」
「すげえな。お前のそういうところ」
「えへへへ。コウメから聞いたっすもん。団長がコウメから回復魔法習ってるって」
「なんだよコウメ情報からかよ!」
「僕コウメの情報なら最優先で知りたいっすから!」
「ハチ‥‥お前やっぱそっちの人になるんだな‥‥」
「団長が前に言ってたグランドのお姉さんのことも忘れてないっすよ!巨乳のお姉さんに僕頭を埋めたいっす!」
「はははは‥‥まあレベちゃんは胸囲はすごいからね‥‥」
「で、いくつ持ってきた?」
「父ちゃんから3つくすねてきたっす」
「ありがとなハチ」
「でも父ちゃんは毎度ありって言ってたっすよ?」
「それはくすねたとは言わねぇんだよ!この子狸め!」
「痛い痛い痛い!団長頭ぐりぐりしないで!」
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