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ループ、20

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 本日より休学。
 予定になかったので、家庭教師を呼ぼうにも急に決まらない。
 取り敢えず、決まるまでは鍛錬しよう。そうしよう。

「今日から宜しくお願いします」

 キールに教えを請うために礼をする。

「まぁ・・・状況が状況ですし。くれぐれも怪我のない様にお願いします」

「防衛の仕方は熟練まで上げたいかな?」

「熟練なんて、ないです」

「あれぇ?」

「リオン様・・・」

 訓練場には面白半分で入ってはいけない。怪我するからね。
 咎める目つきで私を見るキールに苦笑いをする。

「御免なさい。真面目にします」

「ホント、冗談抜きでお願いしますね。擦り傷一つ付いただけでもお叱りを受けそうなのに・・・」

「父様には私がちゃんと納得してもらうから安心してよ」

「わかりました。では、おさらいとして走り込みしましょうか」

「そこから⁉︎」

「基本ですからね。これは大事です。さぁ、行きますよ」

 渋る私の手を取り、駆け足を始めたキールに促されて走り出した。



 え?訓練場走るんじゃなかったの?
 何で屋敷の周り走ったのかな?

「き、キール?」

 ハアハアと肩で息を吐く私の横では、平然と立ってこちらを見ていたキール。
 鍛え方の差ですか?

「鍛え方の差です」

「思考を、読まないで、貰えるか、な・・・」

 フゥフゥ吐く息が治らない。
 騎士って本当に体力あるんだなぁと感心する。

「リオン様。これくらいでへばっていては逃げ切れませんよ?」

 やっと整い始めた息を一度大きく吸って吐く。

「逃げ切る前提なんだね」

「防衛はです」

「へぇ」

 聞いた事ないな。自論かな?

「まぁいいや。次はどうするの?」

「少し休憩を取ったのち、軽く素振りしましょう」

「因みに、その素振りは何回やるのかな?」

「500を3セット」

「ん⁉︎き、休憩挟んでいいんだよね?」

「仕方ない。再開初日なので、休憩入れましょう」

「・・・有難う御座います」

 ガクリと項垂れて、熟練者を目指すのは止めておこうと思った。

 
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