上 下
5 / 47

ループ、4

しおりを挟む
 屋敷内に入ると直に父様の執務室へと向かう。
 当然、剣術指南の許可の為に。
 駄目と言うだろうか?
 確か父様も護衛が要らない程の実力者。
 この国の宰相なのに。
 国王様を護る為だとか何だとか言っていた覚えがある。
 ん?王城って近衛とか騎士とか居るよね?なのに父様が護るの?
 変なの。

 スタスタ早足で執務室の前へ到着すると、重圧感ある扉を叩く。

「父様。いらっしゃいますか?」

 先触れもなく来てしまったから、城へ仕事に行っている可能性がある。
 だから、居るか居ないかの問い掛け。
 『入れ』の言葉で居た事にほっとする。
 一言入れて入室すると、執務机向こう側で持ち帰ってきただろう仕事の書類を見ていた父がいた。

「どうした?」

「仕事中失礼します。先程鍛錬中の護衛隊長キールの所にいたのですが・・・」

「鍛錬中は危ないから近づいてはいけないよ」

「・・・。えと・・・」

「見学なら屋敷からでも見れるだろう?」

「違うのです」

「ん?違う?」

「習いたいのです」

「習う・・・?」

「はい。自衛剣術を」

「危ない事でもするのかな?」

 キールと同じ事を聞かれた。
 するわけないじゃん。
 むしろ危ない目に遭うんだよ。
 何年か後に。

「しません。父様の様に体を鍛えようかと。同じ鍛えるなら護衛術を習う方がいざと言う時に役に立つかな?と思いまして」

「それはいい考えだね。自衛は大事だ」

「それじゃあ・・・」

「構わないよ。ただし、スケジュールは父様とキールが考える。それに合わせてでないと、この話は無しだ」

「はい。ありがとうございます!」

 ほっ。
 これで本当に、いざと言う時身を護れる。
 頑張ろう。

「許可が得られた事をキールに話してきますね」

「なら、キールに執務室ここへと来る様に告げてくれるか?」

「分かりました。では、失礼します」

 ペコリと頭を下げ、満面の笑みを浮かべて退室する。
 小躍こおどりしたい。
 これでループからちょっとでも外れただろうか。
 破滅から遠のいていて欲しいな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

傾国のΩと呼ばれて破滅したと思えば人生をやり直すことになったので、今度は遠くから前世の番を見守ることにします

槿 資紀
BL
 傾国のΩと呼ばれた伯爵令息、リシャール・ロスフィードは、最愛の番である侯爵家嫡男ヨハネス・ケインを洗脳魔術によって不当に略奪され、無理やり番を解消させられた。  自らの半身にも等しいパートナーを失い狂気に堕ちたリシャールは、復讐の鬼と化し、自らを忘れてしまったヨハネスもろとも、ことを仕組んだ黒幕を一族郎党血祭りに上げた。そして、間もなく、その咎によって処刑される。  そんな彼の正気を呼び戻したのは、ヨハネスと出会う前の、9歳の自分として再び目覚めたという、にわかには信じがたい状況だった。  しかも、生まれ変わる前と違い、彼のすぐそばには、存在しなかったはずの双子の妹、ルトリューゼとかいうケッタイな娘までいるじゃないか。  さて、ルトリューゼはとかく奇妙な娘だった。何やら自分には前世の記憶があるだの、この世界は自分が前世で愛読していた小説の舞台であるだの、このままでは一族郎党処刑されて死んでしまうだの、そんな支離滅裂なことを口走るのである。ちらほらと心あたりがあるのがまた始末に負えない。  リシャールはそんな妹の話を聞き出すうちに、自らの価値観をまるきり塗り替える概念と出会う。  それこそ、『推し活』。愛する者を遠くから見守り、ただその者が幸せになることだけを一身に願って、まったくの赤の他人として尽くす、という営みである。  リシャールは正直なところ、もうあんな目に遭うのは懲り懲りだった。番だのΩだの傾国だのと鬱陶しく持て囃され、邪な欲望の的になるのも、愛する者を不当に奪われて、周囲の者もろとも人生を棒に振るのも。  愛する人を、自分の破滅に巻き込むのも、全部たくさんだった。  今もなお、ヨハネスのことを愛おしく思う気持ちに変わりはない。しかし、惨憺たる結末を変えるなら、彼と出会っていない今がチャンスだと、リシャールは確信した。  いざ、思いがけず手に入れた二度目の人生は、推し活に全てを捧げよう。愛するヨハネスのことは遠くで見守り、他人として、その幸せを願うのだ、と。  推し活を万全に営むため、露払いと称しては、無自覚に暗躍を始めるリシャール。かかわりを持たないよう徹底的に避けているにも関わらず、なぜか向こうから果敢に接近してくる終生の推しヨハネス。真意の読めない飄々とした顔で事あるごとにちょっかいをかけてくる王太子。頭の良さに割くべきリソースをすべて顔に費やした愛すべき妹ルトリューゼ。  不本意にも、様子のおかしい連中に囲まれるようになった彼が、平穏な推し活に勤しめる日は、果たして訪れるのだろうか。

王子様と魔法は取り扱いが難しい

南方まいこ
BL
とある舞踏会に出席したレジェ、そこで幼馴染に出会い、挨拶を交わしたのが運の尽き、おかしな魔道具が陳列する室内へと潜入し、うっかり触れた魔具の魔法が発動してしまう。 特殊な魔法がかかったレジェは、みるみるうちに体が縮み、十歳前後の身体になってしまい、元に戻る方法を探し始めるが、ちょっとした誤解から、幼馴染の行動がおかしな方向へ、更には過保護な執事も加わり、色々と面倒なことに――。 ※濃縮版

純情将軍は第八王子を所望します

七瀬京
BL
隣国との戦で活躍した将軍・アーセールは、戦功の報償として(手違いで)第八王子・ルーウェを所望した。 かつて、アーセールはルーウェの言葉で救われており、ずっと、ルーウェの言葉を護符のようにして過ごしてきた。 一度、話がしたかっただけ……。 けれど、虐げられて育ったルーウェは、アーセールのことなど覚えて居らず、婚礼の夜、酷く怯えて居た……。 純情将軍×虐げられ王子の癒し愛

悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ
BL
『魅惑のプリンセス』というタイトルの乙女ゲームに転生した俺。転生したのはいいけど、悪役令嬢の双子の兄だった。

【完結】白い森の奥深く

N2O
BL
命を助けられた男と、本当の姿を隠した少年の恋の話。 本編/番外編完結しました。 さらりと読めます。 表紙絵 ⇨ 其間 様 X(@sonoma_59)

一介の大学生にすぎない僕ですが、ポメ嫁と仔ポメ、まとめて幸せにする覚悟です

月田朋
BL
のうてんきな大学生平太は、祖父の山で親子ポメラニアン二匹に遭遇する。そんな平太が村役場で出会ったのは、かわいくも美人なモカときゃわわな男児マロンの、わけありっぽい親子だった。 パパなのにママみのあるモカに、感じるのは同情&劣情。 はたして親子は何者なのか、聞きたくてもマロンの夜泣きにはばまれ、夜は更けて。二人の恋の行方はいかに。 パパなのにママみのあるかわいいおくさんはお好きですか(大混乱)

処理中です...