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第2章

間話 ターシャ視点

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 失敗したわ。
 あの馬鹿ターミア、よりにもよってまたウィリアムに呪術を使うなんて‼︎
 ホント馬鹿‼︎
 早々に切らないと、私達も危ないわ。
 
 丁度男爵がまだ術に掛かってるから匿う手伝いをさせるようだし、便乗しましょう。





 ジジイの商会長を我慢して籠絡した甲斐があったわ。
 息子がイケメンだから。
 しかも、野心家で私と思考が似ていたから意気投合しちゃった。
 知り合いの舞台俳優とかいうのに合わされたのは意味がわからなかったけど、今なら分かる。
 
 貴族の役柄をやる際に、実際に体験したらしい俳優はノウハウを私に伝授した。
 その時点で商会長の息子・ノヴァは今回の計画を既に練り上げていたの。
 金持ちになるなら、何でもいいわ。
 まぁ、今回の役柄で貴族のフリをしなければならないのが面倒だけど。





 夜会とやらで紹介された男爵は気が小さそうな男だった。
 ちょっと色目を使ったら焦っちゃってさ。
 下町の酒場なんかに行けば、軽くあしらわれるくらいなのに。

 ノヴァに寝ろと言われたから、普段から持たされている睡眠薬をそれとなく酒に混ぜて飲ませたら、簡単に引っかかった。
 馬鹿ねぇ。
 子供でも、渡された物を安易に口に入れるなって習うのに・・・知り合って間もない女からの飲み物をってね。ウフフ。
 簡易の休憩場所に三人で運んで犯ったフリをしたら、朝真っ青な顔をして責任取るなんて言ってた。
 ノヴァ達に報告したら大笑いしてた。
 勿論、私も。

 ノヴァが兄のフリして、『責任はいい。その代わり商会に有利な貴族を紹介して欲しい』て言ったら了承してた。
 ちょっと考えればわかるでしょ?それが馬鹿な要求だって事に。
 妹が汚されたのに責任はいいから貴族を紹介しろなんて、普通言う?
 ホント、馬鹿。





 律儀に自分が参加している夜会に私を連れて行った男爵。
 いきなりノヴァが行くと警戒されるからって私が行く事になった。
 パートナーでね。
 で、この男・・・貴族としての身分ほぼ最下層の割には公爵家の人間と親交があった。
 そこには驚いた。
 当然、紹介してもらって、アピールしまくったわ。
 持って生まれた美貌に感謝ね。
 そして落ちたわ、公爵家当主・アーノルド様。
 妻を亡くして傷心していた所を突いてやったら、まぁ簡単に落ちた。
 
 それから二人だけで逢瀬が開始された。
 その際に渡された魅了魔術を封じてある魔術道具。
 より、私に夢中になるらしいから、使わない手はないわね。

 会って数回でプロポーズ。
 使った私が言うのもなんだけど・・・魅了魔術って怖いわね。
 教会に婚姻届けを出して公爵家へ引っ越した。
 当然、既にいたターミアも連れて。

 アーノルドには何年も付き合った挙句出来た子だと思い込ませておいたから、実子だと公爵が娘に紹介していた。
 驚いていたけど、既に婚姻届と親子証明を提出したからとアーノルドに言われて落ち込んでいた。
 気の毒だけど、私達が幸せになる為だもの・・・我慢してもらうわ。





 馬鹿娘ターミアの所為で計画がパァよ‼︎
 調子に乗って公爵家で魅了魔術使いまくってリリアローズと婚約者ウィリアムとの破棄問題から私達のしている事が薄々バレ始めた。
 証拠がないからまだ大丈夫だとノヴァが言うからチャンスをあげた。
 けど、よりにもよってウィリアムと王家主催の夜会に行くなんて‼︎
 捕まった挙句、証拠も掴まれた。
 ノヴァはターミアを切り捨てると言い出した。
 一応は実の娘なんだから助け出すと言うのを待っていたけど・・・躊躇いなく私達だけで王国から逃げ出す事になった。
 人質ではないけれど、男爵にも
 まぁ、ここまでくれば私達の仲間だと思われているわね。

 王家からの追手を巻いて、ノヴァがある貴族を頼って国境を越えた。
 怨恨を残した私達は、このままでは終わらないわ。
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