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第2章

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「公爵の話では、結構なしたたかさを持っている様だな。魅了魔法を用いて公爵夫人になり、その後公爵家乗っ取り計画がばれて牢に封じられても脱走を試みる。成功した後は男爵家に逃げ込み、お前を使って夜会に参加させて高位貴族の子息を狙わせる・・・。さて、本当に母一人で考えついたのか?」

 こう・・・改めて聞きますと、公爵夫人になれた事が奇跡に聞こえます。
 完全なる犯罪者です。
 お父様と仲睦まじい姿を見せていたあの時のおしとやかさは何処にいったのでしょう。

「私は・・・何も知らない・・・知らないの・・・」

「何も知らずに母親の言う事を全て聞いていたと?仮にお前の言う通り何も知らなかったとして、疑問に思う事はなかったのか?」

「・・・っ」

 言葉をなくしたターミアは項垂れます。
 何も知らないはずはありません。
 現に、公爵家にいた時にターミアは術でウィリアムを魅了したのですから。
 
「お前の見苦しい言い訳はもう聞き飽きた。素直に罪を認め、洗いざらい話す事だ」

 陛下のお言葉に魔術師長様が進んで前に出られました。
 ターミアの前に屈むと顔を上げさせます。
 目線を合わせた瞬間、ターミアから保っていた自我が失われていきます。

「殿下・・・ターミアは大丈夫なのですか?」

 心配になり、思わず殿下に訊ねてしまいました。

「大丈夫。少しだけ自白効果のある魔術を使っているだけだから」

「自白・・・」

「心が弱くないと使えないらしくてね・・・父上の威圧ある質問に精神が耐えきれなかったから、掛かりやすくなったみたいだ」

 魔術師長様の術によりターミアは自分の知っている情報を全て話しました。
 やはり、ターシャのしている事を理解した上で協力していた事、そして課せられた事は高位貴族の御子息達を魅了で取り込み、彼等を使って殿下に近付き、魅了魔法を掛けて王太子妃となる事でした。

「私の妃となれば、次期王妃という事だ。最終目的はそれだろう。国を乗っ取る気満々だな」

 呆れた口調でターミアを睨め付ける殿下に、少しだけ同情します。
 仮に彼女が王太子妃更に王妃となった場合、公務は壊滅的でしょう。
 それに、貴族としての教養、知識、礼儀諸々を病弱を理由に一切勉強してこなかった。
 その上で妃としての教育は、絶対無理です。サボります。
 ですから・・・狙われた殿下に、お気の毒様と言うしかありません。

「魅了魔法に掛からなくてよかったですね」

「そうだな。最愛の人がいるのに魅了魔法を使われたら・・・地獄だ」

 で、殿下・・・最愛と仰いました⁉︎
 その様な方が居られたのですか⁉︎
 なら、その方にパートナーを頼まれたら良かったのでは⁉︎

「殿下⁉︎宜しいのですか⁉︎私などが今夜のパートナーで⁉︎殿下の最愛の方に誤解されるのでは⁉︎」

 アワアワと柄にもなく慌ててしまいます。
 会場に居られるかもしれない殿下の最愛の方に、今からでも交代を・・・

「リリアローズ、落ち着いて。大丈夫。君は気にせず私の隣にいるといい」

「で、ですが・・・」

「大丈夫だって。君が誤解する人は居ないから」

 あ、居られないのですか・・・良かった。
 では、後日改めて誤解を解かれるのですね。
 私も援護した方がいいのでしょうか?
 
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