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第2章
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集まりの一番外にいた生徒に話を聞く為声を掛けます。
「これは、どうなさったのです?」
私が誰だかわかった男子生徒は恐縮した態度で事のあらましを簡単に説明してくれました。
「突然、彼女を抱き締めて『ターミア、会いたかったっ』と叫び出したんです」
彼が指し示すのは怯えた女生徒。
その彼女を守る様に友人と思わしき数名の女生徒達がウィリアムから隠す様に囲んでいました。
「ターミアと言ったのですか?」
「え?あ、はい。確かにその名前を口に出していました」
「リリアローズ様」
恐らくマリオも同じ考えなのでしょう。
目線だけを向けると意図を汲んだのか、マリオは影を呼び寄せました。
勿論、誰にも気付かれずに。
「失礼しますね」
少しだけ近付く為に前へと進むと、男子生徒が言っていた通り、ウィリアムはうわごとの様に女生徒に向かってターミアの名前を呼び続けていました。
「ターミア、何故突然会ってくれなくなったんだ⁉︎嗚呼、また贈り物が欲しいのかい?また宝石なんかどうだろう?希少価値の高い物が入ったと連絡が来てね。今度一緒に見に行こう」
先程会った時よりも顔色が悪く、かと言って目は血走って爛々と輝いている。
愛おしい人との再会に喜ぶかの如くウィリアムは女生徒に更に話しかけています。
「ウィリアム」
二人の間に入り込み、ウィリアムに向き直ります。
その間に女生徒を連れて行く様に寄り添っていた彼女等に告げました。
「リリアローズ‼︎なぜ邪魔をするっ」
「邪魔ではありません。それに彼女はターミアではありません」
「嘘を言うな‼︎ターミア‼︎ターミアぁ‼︎」
「しっかりなさい‼︎」
振りかぶってウィリアムの頬を叩く。
軽くしたつもりでしたが、少しだけ赤くなってしまいました。
「彼女は関係ない方です。大体、ターミアは学園に通ってはいなかったでしょう?何故、学園にいると思ったのです?」
「あ・・・」
叩かれた事によって正気を取り戻したのか、ウィリアムは項垂れてしまいました。
暴れる事がないと判断した男子生徒達はウィリアムを解放し、それでももしもの時のためにその場に留まってくれています。
「ウィリアム。貴方、学園を休んでいたのでしょう?何故休んでいたのです?」
「・・・何も手に付かなくて・・・」
「何も手に付かなくて?それは何故です?」
「ターミアが・・・ターミアと連絡が取れなくて・・・」
「リリアローズ様」
虚な目で呟くウィリアムを一瞥したマリオが後ろから声を掛けてきます。
「禁断症状でしょうか?」
「わかりません。重症化するとは聞きましたが、禁断症状が出るとは聞いてません」
「公爵家に連れ帰りましょうか?」
「そうですね。このままと言う訳にもいきませんから。お願い出来ますか?」
「わかりました。影に回収させます」
「・・・保護してくださいね」
一言多いマリオに、溜息しか出ません。
「これは、どうなさったのです?」
私が誰だかわかった男子生徒は恐縮した態度で事のあらましを簡単に説明してくれました。
「突然、彼女を抱き締めて『ターミア、会いたかったっ』と叫び出したんです」
彼が指し示すのは怯えた女生徒。
その彼女を守る様に友人と思わしき数名の女生徒達がウィリアムから隠す様に囲んでいました。
「ターミアと言ったのですか?」
「え?あ、はい。確かにその名前を口に出していました」
「リリアローズ様」
恐らくマリオも同じ考えなのでしょう。
目線だけを向けると意図を汲んだのか、マリオは影を呼び寄せました。
勿論、誰にも気付かれずに。
「失礼しますね」
少しだけ近付く為に前へと進むと、男子生徒が言っていた通り、ウィリアムはうわごとの様に女生徒に向かってターミアの名前を呼び続けていました。
「ターミア、何故突然会ってくれなくなったんだ⁉︎嗚呼、また贈り物が欲しいのかい?また宝石なんかどうだろう?希少価値の高い物が入ったと連絡が来てね。今度一緒に見に行こう」
先程会った時よりも顔色が悪く、かと言って目は血走って爛々と輝いている。
愛おしい人との再会に喜ぶかの如くウィリアムは女生徒に更に話しかけています。
「ウィリアム」
二人の間に入り込み、ウィリアムに向き直ります。
その間に女生徒を連れて行く様に寄り添っていた彼女等に告げました。
「リリアローズ‼︎なぜ邪魔をするっ」
「邪魔ではありません。それに彼女はターミアではありません」
「嘘を言うな‼︎ターミア‼︎ターミアぁ‼︎」
「しっかりなさい‼︎」
振りかぶってウィリアムの頬を叩く。
軽くしたつもりでしたが、少しだけ赤くなってしまいました。
「彼女は関係ない方です。大体、ターミアは学園に通ってはいなかったでしょう?何故、学園にいると思ったのです?」
「あ・・・」
叩かれた事によって正気を取り戻したのか、ウィリアムは項垂れてしまいました。
暴れる事がないと判断した男子生徒達はウィリアムを解放し、それでももしもの時のためにその場に留まってくれています。
「ウィリアム。貴方、学園を休んでいたのでしょう?何故休んでいたのです?」
「・・・何も手に付かなくて・・・」
「何も手に付かなくて?それは何故です?」
「ターミアが・・・ターミアと連絡が取れなくて・・・」
「リリアローズ様」
虚な目で呟くウィリアムを一瞥したマリオが後ろから声を掛けてきます。
「禁断症状でしょうか?」
「わかりません。重症化するとは聞きましたが、禁断症状が出るとは聞いてません」
「公爵家に連れ帰りましょうか?」
「そうですね。このままと言う訳にもいきませんから。お願い出来ますか?」
「わかりました。影に回収させます」
「・・・保護してくださいね」
一言多いマリオに、溜息しか出ません。
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