上 下
22 / 54
第2章

11

しおりを挟む
 次の週。とある噂を耳にしました。
 ウィリアムが登校している、と。
 かなりお休みしていた様ですが、大丈夫なのでしょうか?
 幼馴染としては、多少心配する部分はありますが・・・先日の件あって様子を伺いに行く事はしませんでした。

 次の授業の為に教室の移動をしていると、曲がり角からフラリと誰かが出てきました。
 咄嗟にマリオが庇ってくれていなかったら、ぶつかる所でした。

「リリアローズ様、お怪我は?」

「大丈夫、ありがとう・・・って、ウィリアム?」

 相手はウィリアムだった様で、力尽きてペタリとその場に座り込んでいました。

「ウィリアム?大丈夫ですか?」

「・・・リリアローズか」

 私の顔を見てガッカリされました。
 その態度に少しだけマリオの気配がピリっとしますが、気にせず声を掛けます。

「どうしました?気分がすぐれないのですか?暫く休まれていた様ですが、無理をされたのでは?」

「いや・・・問題ない・・・すまない」

 億劫そうに立ち上がりながらも力なく笑い、手を上げて歩いて行ってしまいました。
 一体彼に何があったのでしょう?

「体調の問題ではなさそうですね」

「そうなのですか?私には悪そうに見えたのですけれど」

「精神に引きずられての体調不良みたいです」

 精神?悩みでもあるのでしょうか?
 私との婚約は無かったこととなり、ターミアと恋愛を楽しんでいるのかと思いましたが・・・。

あの二人ターシャ、ターミアは、今や犯罪者扱いですからね。呑気に恋愛ごっこしている筈がないでしょう?」

「・・・私の思考を読むのはやめなさい」

「顔に出ていますよ」

 本気でポーカーフェイスのレベルを上げた方がいいのかしら?





 今日の授業を終え、帰り支度を始めていると廊下側から喧騒けんそうの声が聞こえてきました。
 皆にも聞こえていたらしく廊下に出ると、原因はもっと外で、どうやら中庭からでした。
 窓から覗き込むと、小さな人集りが出来ており、何名かが一人の生徒を止めている風でした。

「行ってみましょう」

「危ないと判断したら、そこから引き離しましからね」

 お父様に言われた事を覚えていたらしいマリオは心配顔をしながらも後をついて来ます。
 異変があったら、知らせないといけませんけらね。

 行儀が悪いとわかっていますが、走って中庭に辿り着きます。
 肩で息を整える私の隣には平然と立つマリオ。
 無言で脇腹をパンチをしておきました。

 歩いて近づき、聞こえてくる声は男子生徒。
 怒鳴ると言うより必死に懇願している様に大きな声で叫んでいます。
 その声に聞き覚えが。

「また、ウィリアム様ですね」

 溜息と共に溢したマリオの呟きを耳に広い、私も二回目の邂逅に目を見張ってウィリアムを見つめてしまいました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

私をもう愛していないなら。

水垣するめ
恋愛
 その衝撃的な場面を見たのは、何気ない日の夕方だった。  空は赤く染まって、街の建物を照らしていた。  私は実家の伯爵家からの呼び出しを受けて、その帰路についている時だった。  街中を、私の夫であるアイクが歩いていた。  見知った女性と一緒に。  私の友人である、男爵家ジェーン・バーカーと。 「え?」  思わず私は声をあげた。  なぜ二人が一緒に歩いているのだろう。  二人に接点は無いはずだ。  会ったのだって、私がジェーンをお茶会で家に呼んだ時に、一度顔を合わせただけだ。  それが、何故?  ジェーンと歩くアイクは、どこかいつもよりも楽しげな表情を浮かべてながら、ジェーンと言葉を交わしていた。  結婚してから一年経って、次第に見なくなった顔だ。  私の胸の内に不安が湧いてくる。 (駄目よ。簡単に夫を疑うなんて。きっと二人はいつの間にか友人になっただけ──)  その瞬間。  二人は手を繋いで。  キスをした。 「──」  言葉にならない声が漏れた。  胸の中の不安は確かな形となって、目の前に現れた。  ──アイクは浮気していた。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

旦那様、最後に一言よろしいでしょうか?

甘糖むい
恋愛
白い結婚をしてから3年目。 夫ライドとメイドのロゼールに召使いのような扱いを受けていたエラリアは、ロゼールが妊娠した事を知らされ離婚を決意する。 「死んでくれ」 夫にそう言われるまでは。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

処理中です...