上 下
9 / 54
第1章

9

しおりを挟む
「取り敢えず、ターミア様が本当に旦那様のお子様であるかという証明をしないといけません」 

「そうだな。これだけ関係者がいると怪しくなる。現に、ここからここまでは私と頻繁に会っていた友人達だ」

 お父様がリストの名前をなぞる。
 よく友人と会食などに行かれていたお父様と会っていたという事は、義母ターシャとも出会っていたことになる。
 ターゲットに、勿論されていただろう。
 しかし、格上のお父様が現れたことにより彼等を上手く誘導して、取り入れる様に動いたに違いない、とセバスチャンが言い放つ。

「調べた結果、旦那様の交友関係でここまでの方々がすでに籠絡されていたかと」

 トントンとお父様がなぞられた名前を指さす。

「奴らが会っていた頻度はわかるか?」

「一番多いのが・・・この方です」

 一人の名前が記されたそれは、とある男爵家の現当主。
 分け隔てのないお父様は男爵家だからと差別はなさらない。
 だから、お父様も友人として親しくしていたし、私も何度かお会いした。

「別邸にも度々訪れていたと、男爵家の使用人から証言も得ています」

「・・・仕事が早いな」

「リリアローズ様の為ですので」

「そ、そうか」

 侍女長の入れてくれた紅茶を飲みながら、口を挟まず黙って話を聞いていた。
 纏めると、義母は結婚詐欺紛いな事を繰り返していて、男爵様に辿り着いた。
 その男爵様を使ってご友人方を籠絡。
 で、その中の高位貴族のお父様の後妻におさまった。

「お義母様は公爵家を乗っ取りたかったのですか?」

「そうではないのでしょう。ご自分は公爵夫人、ターミア様は侯爵夫人。悠々自適の贅沢三昧・・・とでも思ったのでは?」

「それでいいのでは?私は家を出ますので、問題ないかと」

「駄目だと言っただろう?私の娘はリリアローズだけだ」

「ですが、お姉様がお父様の娘でないという証拠はまだないでしょう?」

「見つけてみせます」

 どこから出る自信なの?

「頑張ってください。あと、遅くなりましたが学園に行ってきます」

「学園の方へ、お休みの連絡をさせていただきました」

 いつの間に?

「そう。ありがとうございます。でしたら、着替えて参ります」

「そうしなさい。あぁ、後で服飾店にでも行こうか」 

 お父様が謎の提案をしてきました。

「何故です?何か問題でも?」

「大ありだ。リリアローズの服がない!」

「え?ありますよ?ワンピースですが」

「足りないだろう。数枚でどうする?」

「今までやってこれましたよ?」

「・・・」

 何故悲しそうなお顔をなさるのでしょう。
 数枚でも事足りていました。
 だから、大丈夫だと申し上げましたのに。

「父様の我儘だ。付き合っておくれ」

「・・・わかりした。では、用意をいたしますね」

「エントランスで待っているよ」

 パッと笑顔が戻り、お父様は軽やかな足取りで部屋を後にし、残った私は暫し首を傾げる状態が続いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。 そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。 約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。 しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。 もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。 リディアは知らなかった。 自分の立場が自国でどうなっているのかを。

距離を置きましょう? やったー喜んで! 物理的にですけど、良いですよね?

hazuki.mikado
恋愛
婚約者が私と距離を置きたいらしい。 待ってましたッ! 喜んで! なんなら物理的な距離でも良いですよ? 乗り気じゃない婚約をヒロインに押し付けて逃げる気満々の公爵令嬢は悪役令嬢でしかも転生者。  あれ? どうしてこうなった?  頑張って断罪劇から逃げたつもりだったけど、先に待ち構えていた隣りの家のお兄さんにあっさり捕まってでろでろに溺愛されちゃう中身アラサー女子のお話し。 ××× 取扱説明事項〜▲▲▲ 作者は誤字脱字変換ミスと投稿ミスを繰り返すという老眼鏡とハズキルーペが手放せない(老)人です(~ ̄³ ̄)~マジでミスをやらかしますが生暖かく見守って頂けると有り難いです(_ _)お気に入り登録や感想、動く栞、以前は無かった♡機能。そして有り難いことに動画の視聴。ついでに誤字脱字報告という皆様の愛(老人介護)がモチベアップの燃料です(人*´∀`)。*゜+ 皆様の愛を真摯に受け止めております(_ _)←多分。 9/18 HOT女性1位獲得シマシタ。応援ありがとうございますッヽ⁠(⁠*゚⁠ー゚⁠*⁠)⁠ノ

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と

鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。 令嬢から。子息から。婚約者の王子から。 それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。 そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。 「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」 その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。 「ああ、気持ち悪い」 「お黙りなさい! この泥棒猫が!」 「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」 飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。 謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。 ――出てくる令嬢、全員悪人。 ※小説家になろう様でも掲載しております。

婚儀で夫の婚約者を名乗るレディに平手打ちを食らうスキャンダルを提供したのは、間違いなく私です~私を嫌う夫に離縁宣告されるまで妻を満喫します~

ぽんた
恋愛
小国の王女であるがゆえに幼少より人質同然として諸国をたらいまわしされているエリ・サンダーソン。今回、彼女はフォード王国の王家の命により、スタンリー・レッドフォード公爵に嫁ぐことになった。その婚儀中、乱入してきたスタンリーの婚約者を名乗る美貌のレディに平手打ちを食らわされる。どうやらスタンリーは彼女を愛しているらしい。しばらくすると、エリは彼に離縁され、彼は元婚約者を妻にするらしい。 婚儀中に立った離縁フラグ。エリは、覚悟を決める。「それならそれで、いまこのときを楽しもう」と。そして、離縁決定の愛のない夫婦生活が始まる……。 ※ハッピーエンド確約。「間違いなく私」シリーズ(勝手に命名)です。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

処理中です...