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その6
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仕事のために一度街から出れば、野宿が狩人の基本だ。怪獣の脅威がある街の外に、宿屋などありはしないからだ。
まあ、狩人になろうという輩は、野宿くらいでは何も感じない。私自身も野宿に異論はないが、その中にどうしても許せないことがあった。
それは食事。街にいる期間より街の外にいる方が長い職業ゆえの問題点。狩人の仕事の友である保存食というヤツは、保存できる期間が長いほど……不味い。
そして怪獣は強いほど長い期間ずっと戦わなければならず、その間ずっと不味い保存食を食べ続けなくてはいけない。
この苦行に私は我慢できなくなった。いや、10年は我慢したんだ。違うな、10年も我慢したんだ。
他の奴らはこれを気にもしない。
奴らは仕事で街から出る前にしこたま遊び、旨いものを食べ、旨い酒を飲み、満足して仕事に出る。また、街に帰ったら旨いものを食べられるからだ。
私は頭おかしいのではないかと思う。でなければ、あの味に満足できる輩がいるわけがない。
保存食の改善を協会に何度訴えても、改善されるのは栄養価と保存期間。頭がおかしいだろ?
だから、自分でやることにした。保存食の改善ではなく、街の外での食事の改善を。
これが私がやりたい事であり、やらなければならない事でもある。何としても美味しい食事をだ。
「……草は草味」
「……花は花味」
「果物はまあ甘いか。うっ、これはシブい……」
まずは、このように採取してきた物をそのまま食べる。図鑑には味までは記載されていないからだ。
食べたものはノートにその味を書き込む。
図鑑と照らし合わせることで、素材の味を確認できるようにする。
「次は加熱して各種食べてみよう。味に変化があるだろうからな」
台所に立ったことなど人生の中で一度もないが、火をつけフライパンで炒めるくらいはできるだろう。
よく酒場やらで調理しているところは見ているんだ。何も難しいことなどない。
「ただいまー」
「──外に出ろ、爆発する!」
どこがいけないのか分からないが、変な臭いがしたと思ったら、フライパンから火が出た。
その火を消火しようとフライパンから離れたところ、火は天井付近まで上がり、爆発するに至る。長年の勘だがまず間違いなく爆発する。
「──はっ!? なっ──」
そんな場面にタイミング悪く、休みだからとやって来たヤツを押し倒し、爆発から身を守る。
予想通り爆発は起き、台所は大破し真っ黒に焦げてしまった。
「ふう、間一髪だった」
「なななななな、何が間一髪だ! どうやったら台所が爆発するんだ!? 火はキミの専門だろう。じゃなくて、コレクションが!」
台所には運び入れられた食器棚があり、中にはコレクションだという食器があった。
食器棚はもれなく今の爆発に巻き込まれたから、あったという表現があっているだろう。
「あーーっ、コ、コレクションが……」
「ごめんなさい」
「──ごめんですむか! 一生かかっても弁償してもらうからな!」
一生かかっても言われた時は恐怖を感じたが、買い直したところで大した額ではなかった。台所も完璧に修理してもらったが、こちらも大した額ではなかった。
まあ、狩人になろうという輩は、野宿くらいでは何も感じない。私自身も野宿に異論はないが、その中にどうしても許せないことがあった。
それは食事。街にいる期間より街の外にいる方が長い職業ゆえの問題点。狩人の仕事の友である保存食というヤツは、保存できる期間が長いほど……不味い。
そして怪獣は強いほど長い期間ずっと戦わなければならず、その間ずっと不味い保存食を食べ続けなくてはいけない。
この苦行に私は我慢できなくなった。いや、10年は我慢したんだ。違うな、10年も我慢したんだ。
他の奴らはこれを気にもしない。
奴らは仕事で街から出る前にしこたま遊び、旨いものを食べ、旨い酒を飲み、満足して仕事に出る。また、街に帰ったら旨いものを食べられるからだ。
私は頭おかしいのではないかと思う。でなければ、あの味に満足できる輩がいるわけがない。
保存食の改善を協会に何度訴えても、改善されるのは栄養価と保存期間。頭がおかしいだろ?
だから、自分でやることにした。保存食の改善ではなく、街の外での食事の改善を。
これが私がやりたい事であり、やらなければならない事でもある。何としても美味しい食事をだ。
「……草は草味」
「……花は花味」
「果物はまあ甘いか。うっ、これはシブい……」
まずは、このように採取してきた物をそのまま食べる。図鑑には味までは記載されていないからだ。
食べたものはノートにその味を書き込む。
図鑑と照らし合わせることで、素材の味を確認できるようにする。
「次は加熱して各種食べてみよう。味に変化があるだろうからな」
台所に立ったことなど人生の中で一度もないが、火をつけフライパンで炒めるくらいはできるだろう。
よく酒場やらで調理しているところは見ているんだ。何も難しいことなどない。
「ただいまー」
「──外に出ろ、爆発する!」
どこがいけないのか分からないが、変な臭いがしたと思ったら、フライパンから火が出た。
その火を消火しようとフライパンから離れたところ、火は天井付近まで上がり、爆発するに至る。長年の勘だがまず間違いなく爆発する。
「──はっ!? なっ──」
そんな場面にタイミング悪く、休みだからとやって来たヤツを押し倒し、爆発から身を守る。
予想通り爆発は起き、台所は大破し真っ黒に焦げてしまった。
「ふう、間一髪だった」
「なななななな、何が間一髪だ! どうやったら台所が爆発するんだ!? 火はキミの専門だろう。じゃなくて、コレクションが!」
台所には運び入れられた食器棚があり、中にはコレクションだという食器があった。
食器棚はもれなく今の爆発に巻き込まれたから、あったという表現があっているだろう。
「あーーっ、コ、コレクションが……」
「ごめんなさい」
「──ごめんですむか! 一生かかっても弁償してもらうからな!」
一生かかっても言われた時は恐怖を感じたが、買い直したところで大した額ではなかった。台所も完璧に修理してもらったが、こちらも大した額ではなかった。
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