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始まりのバレンタイン
る、ルイちゃんのチョコレート講座。その6。
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き、今日のルイちゃんのチョコレート講座は、カカオマスからチョコレートを作ります。
これは、カカオ豆からチョコレートを作るための、予行練習的な位置付けだと思われます。
ざ、材料は、カカオマスにカカオバターと砂糖。あとの材料は自分で調べてください。
そして勝手にやってください。そして美味しく作ってください。そして食べてください。
今日が終わると、日曜日の休みを挟んで月曜日には、カカオ豆からチョコレート作ることになりました。
いよいよ来週はバレンタインです。ギリギリな日程ですが、ちゃんとやると誓ったので頑張ります!
や、やべぇ……もう話すことがない……。
グッとまとめすぎたな。これで今回は逃げられると思っていたのに……仕方ない。
キミたち、どうしたのか聞いてくれるかい?
俺は素バレして落ち込むお姫様を、元気付けるとまではいかなくても気晴らしくらいにはなるだろうと、ルイちゃんのチョコレート講座に誘ったんだ。
もちろんルイにメールで許可も取った。お姫様とか、異世界とかって言うわけにはいかないので、友達を一緒に連れて行ってもいいかと。
『いいよ』
返事はこれだけだった。ルイは長文は返してこないし、『いいよ』ってことはいいんだろう?
そう解釈して、俺はお姫様も連れてきたんだ。
だけど、なんだこの状況……。
落ち込むお姫様はそのままだし、ルイは見るからに不機嫌だ。
昨日、俺をからかって楽しそうだったルイちゃんは、どこにいってしまったのでしょうか?
ま、まさか。俺は、またなんかやらかしたのか?
現在、ルイの家の茶の間に3人。
俺とお姫様が隣同士、ルイが正面という位置に座っている。
その俺たちの前には、おばちゃんの用意してくれたジュースとお菓子がある。あるだけで誰も口をつけないけどね!
初対面の彼女たちの間をとり持たないといけない俺は、完全に予期せぬ状況に変な汗をかいています。誰か助けてください。
いったいなんなんでしょうか。この空間は。ただ、このままではいつまでも先に進まない。俺がなんとかしなくてはいけないんだよね?
「ルイ、こちらはヒメちゃんだ。同じクラスなんだ。超が付くお嬢様だからスーパー世間知らずだけど、悪いやつではない。仲良くしてやってくれ」
こんなところだろう。お嬢様と言っておけば、世間知らずは全部それで誤魔化せる。
同じクラスって言ったのも、考えがあってのことだ。
俺と同じクラスと言わなかったのが重要で、最悪の場合には妹と同じクラスとか、親戚の子と同じクラスとか。言い訳ができるように考えてのことだ。
「そんで、こっちがルイ。お菓子学校に通っていて、俺にチョコレートを教えてくれている。家はお隣さんで和菓子屋さんだ。少し口が悪いが悪いやつではない。仲良くしてやってくれ」
言葉を選ばないといけない。
何故なら、不用意な発言は死を招く。
そんな気が、ひしひしとするからだ。
「ほとんど同じじゃん」
「他に褒めるとこないの?」
2人からの視線が俺に集まり、変な汗の量がかなり増えている。だって、単純に二倍の圧力なんだよ!
どっちか1人でも強いのに、まさか2人を一緒に相手をしないといけなくなるとは……。誰か代わってくれないだろうか?
「お前、聞いてんのか!」
「ちゃんと紹介しなさいよ!」
ううっ……。2人の視線は俺しか見てない。
3人いるのに、俺だけが2人から責められるとか。
すごく逃げだしたいです。というか、一度逃げます!
「──ちょっとお手洗いに行ってきます!」
2人の返事を待たずに茶の間を飛び出す。
向かう先はお手洗いなどではなく、おばちゃんのいる和菓子屋さん。
おばちゃんに何かアドバイスをもらおうと思って。
「──おばちゃん助けてくれ! 俺はどうしたらいいんだ!」
「死ぬしかないわ……」
「──ええっ!?」
どこかに消えたおっちゃんの代わりに、店番をしているおばちゃんは、開口一番に『死ぬしかない』と言う! なんで!?
「いい、れいちゃん。わざとやってないんだったら、死ぬしか選択肢は無い。わざとやってるなら、ぶっころされるしかない。以上よ。ご愁傷様です」
「その選択肢なに? どっちにしても結果は同じじゃん。俺、デスりたくないよ。ルイは何で不機嫌なのか教えてよ」
「全く分かってないのよね。この子……」
「分からないから聞きにきたんだよ?」
ルイは何故あんなに不機嫌なのか。皆目見当がつかないから、助けを求めにきたんだ。
俺がもし、これの答えを自分で導き出せる男なら、バレンタインにやらかしてないと思うし。
「しょうがない……。では、問題です。れいちゃんの家に女の子が1人で遊びに来ます。しかし、その女の子は、当日のギリギリになって、友達を一緒に連れて来たいと言います。どうしますか?」
「『なんで連れてくんだよ!』と思いつつも、しょうがないから『いいよ』って言う」
来てしまったもんはしょうがないし、追い返しては後がまずい。何より、家に来るような女の子にそんな対応はしない。
よって、仕方なく認めるだろう。
「次に、女の子とその友達がやって来ました。しかし、友達は女の子ではなく男の子でした。どうする?」
「『舐めてるのか?』って思って不機嫌になる。『もう帰れや!』思うかもしれない。何より、『どういうつもりで男連れてきてんだよ!』って思う」
「はい、正解。まさにその通りです! では、その答えを自分に置き換えて考えてください。れいちゃんが女の子で、ルイが男の子ってことね。ヒントはブーメランです」
……ブーメラン? 投げたら戻ってくるあれ? 今のの、俺の部分をルイにして考える……。
遊びに来る俺が急に友達を連れてきて、その友達は女の子であったと……──そういうことかーーーーっ!
「──でもでも! ルイは『いいよ』って言ったんだよ! メールでだけど……」
「本気にすんなよ! 気を使えよ! 空気を読めよ!」
「……ううっ、どう収拾をつければいいの?」
「最初に言ったじゃない。死ぬしかないわ。流石よね。女の子の家に女の子連れて来るとかwwww」
「ヒメちゃんも可哀想だったんだよ! 落ち込んでて!」
『──俺のせいだけど!』この部分は言わない。絶対に言えない。
やらかしにやらかしを重ねるわけにはいかない。
「ルイに伝えたの。それ?」
「メールでなら……」
「あら、なら大丈夫なんじゃない? あの子は口下手だからねー。飛び出してきた、れいちゃんの行動は良かったんじゃない? ほら、戻った。戻った!」
全然、大丈夫な気がしないんだけど!?
ギスギスしてる空間に入っていくのとか無理なんだけど。
つーかさ、セバスは分かってたんなら、ちゃんと止めろや! だが、この責任は押し付けられない……。
次回に続くが、きっとギスギスしてる。
もう、家に帰りたい。
これは、カカオ豆からチョコレートを作るための、予行練習的な位置付けだと思われます。
ざ、材料は、カカオマスにカカオバターと砂糖。あとの材料は自分で調べてください。
そして勝手にやってください。そして美味しく作ってください。そして食べてください。
今日が終わると、日曜日の休みを挟んで月曜日には、カカオ豆からチョコレート作ることになりました。
いよいよ来週はバレンタインです。ギリギリな日程ですが、ちゃんとやると誓ったので頑張ります!
や、やべぇ……もう話すことがない……。
グッとまとめすぎたな。これで今回は逃げられると思っていたのに……仕方ない。
キミたち、どうしたのか聞いてくれるかい?
俺は素バレして落ち込むお姫様を、元気付けるとまではいかなくても気晴らしくらいにはなるだろうと、ルイちゃんのチョコレート講座に誘ったんだ。
もちろんルイにメールで許可も取った。お姫様とか、異世界とかって言うわけにはいかないので、友達を一緒に連れて行ってもいいかと。
『いいよ』
返事はこれだけだった。ルイは長文は返してこないし、『いいよ』ってことはいいんだろう?
そう解釈して、俺はお姫様も連れてきたんだ。
だけど、なんだこの状況……。
落ち込むお姫様はそのままだし、ルイは見るからに不機嫌だ。
昨日、俺をからかって楽しそうだったルイちゃんは、どこにいってしまったのでしょうか?
ま、まさか。俺は、またなんかやらかしたのか?
現在、ルイの家の茶の間に3人。
俺とお姫様が隣同士、ルイが正面という位置に座っている。
その俺たちの前には、おばちゃんの用意してくれたジュースとお菓子がある。あるだけで誰も口をつけないけどね!
初対面の彼女たちの間をとり持たないといけない俺は、完全に予期せぬ状況に変な汗をかいています。誰か助けてください。
いったいなんなんでしょうか。この空間は。ただ、このままではいつまでも先に進まない。俺がなんとかしなくてはいけないんだよね?
「ルイ、こちらはヒメちゃんだ。同じクラスなんだ。超が付くお嬢様だからスーパー世間知らずだけど、悪いやつではない。仲良くしてやってくれ」
こんなところだろう。お嬢様と言っておけば、世間知らずは全部それで誤魔化せる。
同じクラスって言ったのも、考えがあってのことだ。
俺と同じクラスと言わなかったのが重要で、最悪の場合には妹と同じクラスとか、親戚の子と同じクラスとか。言い訳ができるように考えてのことだ。
「そんで、こっちがルイ。お菓子学校に通っていて、俺にチョコレートを教えてくれている。家はお隣さんで和菓子屋さんだ。少し口が悪いが悪いやつではない。仲良くしてやってくれ」
言葉を選ばないといけない。
何故なら、不用意な発言は死を招く。
そんな気が、ひしひしとするからだ。
「ほとんど同じじゃん」
「他に褒めるとこないの?」
2人からの視線が俺に集まり、変な汗の量がかなり増えている。だって、単純に二倍の圧力なんだよ!
どっちか1人でも強いのに、まさか2人を一緒に相手をしないといけなくなるとは……。誰か代わってくれないだろうか?
「お前、聞いてんのか!」
「ちゃんと紹介しなさいよ!」
ううっ……。2人の視線は俺しか見てない。
3人いるのに、俺だけが2人から責められるとか。
すごく逃げだしたいです。というか、一度逃げます!
「──ちょっとお手洗いに行ってきます!」
2人の返事を待たずに茶の間を飛び出す。
向かう先はお手洗いなどではなく、おばちゃんのいる和菓子屋さん。
おばちゃんに何かアドバイスをもらおうと思って。
「──おばちゃん助けてくれ! 俺はどうしたらいいんだ!」
「死ぬしかないわ……」
「──ええっ!?」
どこかに消えたおっちゃんの代わりに、店番をしているおばちゃんは、開口一番に『死ぬしかない』と言う! なんで!?
「いい、れいちゃん。わざとやってないんだったら、死ぬしか選択肢は無い。わざとやってるなら、ぶっころされるしかない。以上よ。ご愁傷様です」
「その選択肢なに? どっちにしても結果は同じじゃん。俺、デスりたくないよ。ルイは何で不機嫌なのか教えてよ」
「全く分かってないのよね。この子……」
「分からないから聞きにきたんだよ?」
ルイは何故あんなに不機嫌なのか。皆目見当がつかないから、助けを求めにきたんだ。
俺がもし、これの答えを自分で導き出せる男なら、バレンタインにやらかしてないと思うし。
「しょうがない……。では、問題です。れいちゃんの家に女の子が1人で遊びに来ます。しかし、その女の子は、当日のギリギリになって、友達を一緒に連れて来たいと言います。どうしますか?」
「『なんで連れてくんだよ!』と思いつつも、しょうがないから『いいよ』って言う」
来てしまったもんはしょうがないし、追い返しては後がまずい。何より、家に来るような女の子にそんな対応はしない。
よって、仕方なく認めるだろう。
「次に、女の子とその友達がやって来ました。しかし、友達は女の子ではなく男の子でした。どうする?」
「『舐めてるのか?』って思って不機嫌になる。『もう帰れや!』思うかもしれない。何より、『どういうつもりで男連れてきてんだよ!』って思う」
「はい、正解。まさにその通りです! では、その答えを自分に置き換えて考えてください。れいちゃんが女の子で、ルイが男の子ってことね。ヒントはブーメランです」
……ブーメラン? 投げたら戻ってくるあれ? 今のの、俺の部分をルイにして考える……。
遊びに来る俺が急に友達を連れてきて、その友達は女の子であったと……──そういうことかーーーーっ!
「──でもでも! ルイは『いいよ』って言ったんだよ! メールでだけど……」
「本気にすんなよ! 気を使えよ! 空気を読めよ!」
「……ううっ、どう収拾をつければいいの?」
「最初に言ったじゃない。死ぬしかないわ。流石よね。女の子の家に女の子連れて来るとかwwww」
「ヒメちゃんも可哀想だったんだよ! 落ち込んでて!」
『──俺のせいだけど!』この部分は言わない。絶対に言えない。
やらかしにやらかしを重ねるわけにはいかない。
「ルイに伝えたの。それ?」
「メールでなら……」
「あら、なら大丈夫なんじゃない? あの子は口下手だからねー。飛び出してきた、れいちゃんの行動は良かったんじゃない? ほら、戻った。戻った!」
全然、大丈夫な気がしないんだけど!?
ギスギスしてる空間に入っていくのとか無理なんだけど。
つーかさ、セバスは分かってたんなら、ちゃんと止めろや! だが、この責任は押し付けられない……。
次回に続くが、きっとギスギスしてる。
もう、家に帰りたい。
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