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会議

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官邸危機管理センター。

クライドルが到着したのは正午前だった。
「岸よ、ニュースを見た。かなりまずい事になってしまったな。」
「ああ、しかもこれはまだ非公式だが、勇者か魔法使いが使った。魔法のパフォーマンスがあった。
威力は30キロトン、広島原爆以上だ。」
クライドルは額に手を当て、少し考える。
「岸よ、資料の提供をお願いしたい。以前伝えたと思うが、私の知識は軍事に関する専門のものは無い。
一般人からの記憶で何となくは分からなくもないのだが、その、30キロトンとは実際どのくらいの威力のものなのか、映像などで見せてくれないだろうか。
彼らの攻撃魔法の最大威力は大体は把握できているつもりだ、しかし、中々この世界での事象で説明する事が難しいのだ。この様な知識を、私たちに提供するのは躊躇われる事だとも分かっているが、可能な限り協力したいのだ。」
「分かった、直ぐに資料を準備される。」

「岸よ、それからもう一つまずい事が有るのだ。」
クライドルから切り出すまずい事。
岸はスーツを整え、頭を撫でつけた。
「勇者達とその所属する国家である聖クラリス帝国の事はある程度知っているであろう。」
「ああ。勇者とは最も領土を奪い取り、魔族を倒したものに与えられる称号とか言っていた。その為帝国というのはかなりの拡大路線、覇権主義の国だと考えている。」
「その認識で間違いない。そして問題はそこからだ、我々の元の世界は土地がとても痩せていてな、魔力を補充し続けなければ食糧生産が追い付かないなので、他の国はあまり拡大路線を取らない、というより取れないのだ。
広げても魔力を与え続けねばならないからな、なので帝国以外は、こちらの言葉で言えば焼き畑農業をするような感じで、魔族領を狙ってくることは有った。魔力豊富な魔族領は、人族が魔力を補充しなくても2.3年は作物を育てる事ができるからな。」
ああ、もう嫌な予感しかしない。クライドルはまずい事と前置きをしてくれていたが、心臓によくない。
岸は一度呼吸を整える。
「それで、帝国が拡大路線を続ける事が出来る理由が、リリーだ。岸の言うところの修道服の女だ。
奴は大聖魔法といわれる、神のごとき力を大地に対して行使できる。北朝鮮というのは、食糧事情に問題のある国なのだろう。
しかも、奴隷という名称ではないが、それに近いを扱いを受けている者達もいるという。
こちらの、政治について精通していない私だが、この組み合わせは非常に不味いと思うのだ。」

ああ、不味い。とても不味い。疑似核兵器に、食糧事情が改善された北朝鮮。その後の行動が未知数すぎる。
最悪、ミニ中国の出来上がりか。直情的なトップがいる分、更に性質が悪いかもしれない。
そんな戦力を手に入れたら、タカ派の軍部もさらに勢いづくだろう。

その後、簡単に昼食を済ませ戻ってきた時に、先ほどクライドルが依頼した30キロトンの爆発によるシミレーション映像が用意されていた。
場所は都内、新宿で爆発した場合である、
モニターを見ながら頷くクライドル。
「岸よ。爆弾というのは、威力に比べて下向きの力はないみたいだな。横と上に向かって爆風と熱をまき散らすような感じか。」
「そ、そう言うものらしい。」
「そうか、ならば勇者の全力はこの倍の被害が出ると思った方が良い。原爆の爆発というのは、岸達も以前見たであろうミリスの大魔法に近い被害の出方の様だ、あれは敵に囲まれた時に無差別に殺傷するための魔法で、全方位の攻撃魔法だ。今日行使したのも、ミリスが全力で放ったあの時の大魔法だろう。」
「出力が倍ではなくて、被害が倍なのか。」
岸は愕然とした。古谷幕僚長に至っては顔色が無くなっている。
「どういうものかというと、更に私の知識には…。すまん、これはアニメの知識になってしまうが国民的アニメのワイバーンボールというのをご存知ですか。」
「ああ、それ位は知っている。息子が好きで見ていた。」
「よかった、話が早い。それに出てくる必殺技のワニワニ波、あのような攻撃ができます。別の言い方をすると指向性のレーザーと言いますか。
それを、上空から真下に放った場合。まず、並の核シェルター等は用をなさないでしょう。あ、核シェルターの強度についても不勉強ではあるので、ペンタゴンの地下何階まで行くとか、ホワイトハウスのバンカーも破壊できるとかまではちょっとわからないのですが。」
岸は息子が見ていたアニメを思い出した。そういえばそんな手からビームのようなものを出していた。
「まあ、それでですね。地下100メートルくらいですかね、そこら辺まで到達すると、今度はドンっと爆発します。
一点でのエネルギーの解放ですね。なので、ミリスが行使した魔法と違って今度は地下から地上に向かって爆発する事になります。巨大クレーターみたいなのが残る事になるでしょうね。
その時の被害が、勇者の全力だと2倍という事です。因みに残念ですがミリスも使えます、出力は劣りますが。」
「しゃ、射程距離は。水平に撃った場合はどれくらい威力を保って飛ぶのですか。」
古谷幕僚長が青い顔で尋ねる。
尋ねたい意味が分かったため、クライドルも少し俯き、首を振って答える。
「約40キロで威力が三分の一から四分の一というところです。残念ながら、ソウルは射程範囲内という事です。」
最悪から最悪へ。もう他の表現が出てこない状況だ。
事前準備もなく突然二発の小型核兵器並のエネルギーが、ソウルで弾ける可能性があるという事か。
古谷幕僚長は椅子に深く腰掛けぐったりしている。
岸は片手で頭を抱えたまま頭を振った。
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