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第20話 大きな声の毛むくじゃらな大男

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「いやぁああっ! 殺さないでくださあぁいっ! 」

 地下室の中で発せられた毛むくじゃらな大男の叫びは、反響と増幅を繰り返して、音と波の攻撃となった。

 クレナは耐えきれず、ボクから手を離し、両耳を抑えて動けずにいる。

 ボクはといえば、クレナに放り出されるがまま、ぽよんぱよん、と転がって雪男の方へと近づいてしまう。

 大男の叫びは、巨大な音と振動で回りの全てを攻撃していたが、ボクは大きい音を感じるに過ぎなかったため、ノーダメージだ。耳に鼓膜などの器官がないからだろうか?

 それはともかく、早く止めないと。
     
 しかし、どうやったら? 

 大男のからだは、地下室に体育座りですっぽり収まるほどに大きい。
 その手は、ボクどころかクレナさえ握り潰せそうだ。

「助けてえっ! あああっ! 許してえっ!」

 大男は、一体何を言っているのだろうか?

 殺さないで、助けて、許して?

 ・・・・・・なぜかすごく怯えている?

 ・・・・・・うーん。クレナだったら、こうするのが正解なんだけど。

 握り潰されたりしないかな?

 ボクは大男に近づいて、そのガタガタ震える手にぴとっ、とくっついた。

「ひいっ!」

 大男は、恐怖でもはや悲鳴さえ出ないらしい。
 まあ、静かでいいか。
 ボクはその毛むくじゃらの手にくっつき、ぷにぷに、と優しく撫でてやった。
 クレナが怖い夢を見ている時にしてやるように、は難しいが(ボクの方が怖いし! )、なるべく優しくしてやった。

「ひっ、ひっ、ひっ、ひっ? な、なん」
「ぷにぷに」
「はっ、ひっ」
「ぷにぷに」
「ひぃ・・・・・・、ひぃ・・・・・・」
「ぷにぷに」
「・・・・・・」
「ぷにぷに」

「落ち着きましたか、ローマ」
 クレナが近づいて来て言った。

「ローマが初対面の相手に対して恐怖しか感じない超絶臆病者なのをすっかり忘れていました。まあでも、結果的には二人の絆が深まったようで何より何より! あっはっは」

 あっはっはじゃないよ、クレナ。

「ぷにぷに」
 いつまでやっていたらいいんだろうか、これ。
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