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第17話 美味しい美味しいハムエッグ
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「あ、ルーシー。探してたんだよ、もう」
「オマエダレダ?」
「私はクレナ、こっちはスライムさんでしょ。忘れっぽすぎるよ、ルーシーは」
「コッチコッチ」
炎の妖精は、くるりくるりと彼女の回りを飛び回り、楽しげにしている。
炎の妖精は、名前をルーシーと言うらしい。
そして、彼女の名前はクレナと言うのか。知らなかった。
・・・・・・ボクの名前は何だろう?
クレナもスライムさんとしか呼ばないし、名前はないのかな?
・・・・・・少し寂しい。
「オマエダレダ?」
そう聞かれても答えられない。
からだを揺らすくらいしかできない。
答えられたとしても、答える名前は覚えていない。
・・・・・・ボクは一体何者なのだろうか?
今まで考えたこともなかったが、答えは自分の中にはない。
もしクレナやルーシーのように話すことができたら、二人に聞けたのになあ。
「さあ、ルーシー。お部屋に戻って、朝ごはんの支度を手伝ってほしいの」
ひらりとコンロの中へと舞い降りるは炎の妖精。ちょこんと座ると。
「イケニエヲササゲヨ」
そう言ってルーシーは両手をクレナの方へと伸ばして何かを欲しがる様子を見せた。
「はい、召し上がれ」
「オマエダレダ?」
「ギス様の枝だよ。ルーシー大好きでしょ?」
クレナは、コンロの中に潜り込んだルーシーに何か渡していた。
あれは、炭と木片だろうか?
ガリガリと美味しそうに食べているが、なかなかすごい絵面だ。
食べてるのは植物なのに、その様はまるで肉食獣のようだ。
ルーシーは、炎のポニーテールと炎のワンピース以外は、真っ白な人形のような肌をしているので、炭と燃え上がった木片で黒く煤けてしまった。
その顔と身体つきは、美しい大人の女性そのものなので、子供っぽいしゃべり方と仕草は見ていて違和感があるが、決して嫌なものでなく、その無邪気さはむしろ好感が持てた。
ルーシーが炭と木片を食べ終えると、ルーシーはその髪留めを外し、頭をぶるぶると振り回した。
広がった炎の髪が、美しく燃え上がる。
炎のワンピースの裾をタオルのようにして顔を拭き終わる頃、コンロに乗せたフライパンの上に敷いた油がパチパチと音をたて始めた。
「いい火加減だよお、そのままの調子でお願いね」
「ガッテンショウチノスケ」
十分に熱されたフライパンの上へと、分厚く切られたハムが二枚並べられる。
じゅわり、と聞くだけで美味しそうな音がした。
その隙間へと卵が4つ割られて落とされた。
「やっぱり目玉焼きは卵2つ使わないと、目玉焼きじゃないよねえ」
「ぷるぷるぷるぷる!」
激しく同意する。
黄身が一つでは目玉焼きたりえない!
「あ! スライムさん、元に戻ったんですね。良かったあ」
「ぷるるん、ぷるるん」
ああ。自由に動ける喜びよ。
「心なしかいつもより揺れかたにバリエーションがあるような・・・・・・?」
我ながらそう思ったボクは、いつもより激しく動いてみることにした。
「ぽよよん、ぷにょん、ぷるるん」
「な、何かスライムさんが跳ねたり、色んな揺れかたをするようになってる!」
どうやらからだの動かしかたのコツが掴めてきたようだ。
その場で跳び跳ねることもたやすい。
今までよりも複雑なコミュニケーションがとれるように・・・・・・、なる、のかな?
名前も思い出せないし、言葉も話せないけど、少しずつ前進していけるように、努力しよう。
気分が、少し前向きになったところでハムエッグが焼き上がった。香ばしく、食欲をそそる香りが広がっていく。
「オマエダレダ?」
「私はクレナ、こっちはスライムさんでしょ。忘れっぽすぎるよ、ルーシーは」
「コッチコッチ」
炎の妖精は、くるりくるりと彼女の回りを飛び回り、楽しげにしている。
炎の妖精は、名前をルーシーと言うらしい。
そして、彼女の名前はクレナと言うのか。知らなかった。
・・・・・・ボクの名前は何だろう?
クレナもスライムさんとしか呼ばないし、名前はないのかな?
・・・・・・少し寂しい。
「オマエダレダ?」
そう聞かれても答えられない。
からだを揺らすくらいしかできない。
答えられたとしても、答える名前は覚えていない。
・・・・・・ボクは一体何者なのだろうか?
今まで考えたこともなかったが、答えは自分の中にはない。
もしクレナやルーシーのように話すことができたら、二人に聞けたのになあ。
「さあ、ルーシー。お部屋に戻って、朝ごはんの支度を手伝ってほしいの」
ひらりとコンロの中へと舞い降りるは炎の妖精。ちょこんと座ると。
「イケニエヲササゲヨ」
そう言ってルーシーは両手をクレナの方へと伸ばして何かを欲しがる様子を見せた。
「はい、召し上がれ」
「オマエダレダ?」
「ギス様の枝だよ。ルーシー大好きでしょ?」
クレナは、コンロの中に潜り込んだルーシーに何か渡していた。
あれは、炭と木片だろうか?
ガリガリと美味しそうに食べているが、なかなかすごい絵面だ。
食べてるのは植物なのに、その様はまるで肉食獣のようだ。
ルーシーは、炎のポニーテールと炎のワンピース以外は、真っ白な人形のような肌をしているので、炭と燃え上がった木片で黒く煤けてしまった。
その顔と身体つきは、美しい大人の女性そのものなので、子供っぽいしゃべり方と仕草は見ていて違和感があるが、決して嫌なものでなく、その無邪気さはむしろ好感が持てた。
ルーシーが炭と木片を食べ終えると、ルーシーはその髪留めを外し、頭をぶるぶると振り回した。
広がった炎の髪が、美しく燃え上がる。
炎のワンピースの裾をタオルのようにして顔を拭き終わる頃、コンロに乗せたフライパンの上に敷いた油がパチパチと音をたて始めた。
「いい火加減だよお、そのままの調子でお願いね」
「ガッテンショウチノスケ」
十分に熱されたフライパンの上へと、分厚く切られたハムが二枚並べられる。
じゅわり、と聞くだけで美味しそうな音がした。
その隙間へと卵が4つ割られて落とされた。
「やっぱり目玉焼きは卵2つ使わないと、目玉焼きじゃないよねえ」
「ぷるぷるぷるぷる!」
激しく同意する。
黄身が一つでは目玉焼きたりえない!
「あ! スライムさん、元に戻ったんですね。良かったあ」
「ぷるるん、ぷるるん」
ああ。自由に動ける喜びよ。
「心なしかいつもより揺れかたにバリエーションがあるような・・・・・・?」
我ながらそう思ったボクは、いつもより激しく動いてみることにした。
「ぽよよん、ぷにょん、ぷるるん」
「な、何かスライムさんが跳ねたり、色んな揺れかたをするようになってる!」
どうやらからだの動かしかたのコツが掴めてきたようだ。
その場で跳び跳ねることもたやすい。
今までよりも複雑なコミュニケーションがとれるように・・・・・・、なる、のかな?
名前も思い出せないし、言葉も話せないけど、少しずつ前進していけるように、努力しよう。
気分が、少し前向きになったところでハムエッグが焼き上がった。香ばしく、食欲をそそる香りが広がっていく。
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