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第16話 赤い羽根

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 折り畳まれたからだは、バラバラになった時よりも早く元に戻っていくが、まだ動けそうもなかった。

「ここで少し待っていてくださいね。すぐに用意してしまいますから」

 ボクはテーブルの真ん中に置かれた。
 彼女が少しの間ボクをじっと見つめた後、悲しそうに遠ざかっていく。

 ・・・うぅん、ダメだ。
 いつもみたいに返事ができない。
 無視したわけじゃないよ?
 まあ、ここは大人しく見守っているとしよう。
 今日の朝ごはんは何だろう?
 楽しみだ。

「えっと・・・、今日はハムエッグにしようかな。卵に、ハム、あとトマトとトーストに朝はやっぱり牛乳で」
 彼女の独り言から想像するだけでよだれがあふれそうだ。出ないけれど。

 地下から持ってきた食材をテーブルに並べ、彼女はコンロへと近づいた。

「あれ?」

 彼女が何かを探している。
 近づいた彼女はコンロの近くで何かを探しているようだが、何を探しているんだろう?

「どこだろう? あれえ?」

 何か火を点けるための道具だろうか?
 ボクもあたりを見てみるが、彼女が何を探しているのか、見当もつかない。
 うぅん、いつもすぐに火を点けていた気がするのだけれど・・・。

 というか、こんな状態でも回りの状況を見ることができるし、三百六十度の視界があるというのはとても便利だなあ、などと思っていると。

「オマエダレダ?」

 突然誰かに話しかけられた。
 しかし、声はすれども姿は見えない。

「コッチコッチ」

 声の方向、テーブルの端。
 テーブルの縁から腕と顔だけがこちらを見ていた。

 小人、だろうか?

 そう思ったが次の瞬間、それは空中へと羽ばたいた。

 彼女の手のひらほどの大きさしかない、背に羽の生えた存在。

 ポニーテールの髪と、その身にまとう衣、そして背で羽ばたく羽根は赤々と燃える炎でできていた。

 はじめて見てもそれが何かわかる。

 炎の妖精、あるいは炎の精霊と呼ぶべき存在が、宙を泳ぎ、こちらを見ていた。
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