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自覚

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各々が面談を終えた日、奏に気分転換に放課後出かけようと言われたが私は自分の中になんとも言えない黒いモヤと言うか複雑な想いがあったため、誘いを断った。家にも帰らずに辿り着いた場所はいつもの場所、楽明堂だった。

「やっぱり、落ち着くなぁ」

誰に聞かれるわけでもなく入ってすぐに口から溢れた言葉。以前とは売場が変わっているかは
分からないが真っ先に向かったのは天音凌様の
特設エリアだった。新刊と私の1番好きな本、
【箱庭の世界】を手に取った。天音様は独特な書き手で本人が書きたい時に書くと公言しているようにジャンルに囚われない人なのだと本を読むたびに私は再認識して読むたびに憧れも含めて好きな気持ちが大きくなる。
【箱庭の世界】は、感情を抑えつけられていた主人公がその生き方をやめるところからはじまる。自分らしく生きるために諦めるのではなく己の個性を見つけ出し探し出した自分自身と向き合い世界を広げていく。という自分の感情と今までの見たくない、知らない自身と出会うための物語でもあるのだ。だからこそ、私はまた
この本を読む必要がおくあると思った。
新刊のあらすじを読み、家に帰ればあるのだが
【箱庭の世界】と共に購入した。

未だに帰る気持ちにはなれず、行く場所もなくただ目的地もなく横断歩道で信号待ちをしているときに流花ちゃんと隣にいる顔見知りになった男性、立花さんを見てしまった。
探していたわけではなく、たまたま見てしまったのだ。2人が一緒の姿を、学校以外で。

「あーあ、つらいな」

ぽつりと溢れた言葉。
今日は独り言が多いな。と自分に呆れるような渇いた笑いが出てきた。

面談の際に立花さんに「考えすぎな部分があるのかもしれないね」とは言われていて少しだけモヤッとした気持ちがあったが、今、はっきりした。私は考えすぎではないのだ。
多分、出会った時から立花さんのことが好きになってしまってたんだ。だからこそ、考えすぎではないよ。気になるから普段以上にあなたの言葉に耳を傾けて聞いているからこそ、受け止める言葉ひとつひとつが重たかったのかもしれない。仮説でしかないけど、この想いは私だけが知っているものにしておこうと決めた。

信号が青になり、人々が歩き始める流れに沿って、また当てもなく歩き出す。初恋は実らないって本当なんだな。とか気づくのが早かったら
出会うのが…とか女々しい考えが頭の中を浅ましい思考がグルグルと回る中、再び辿り着いた場所は楽明堂。どれだけ私はあの人のことが好きなんだろうか、自覚してしまった自分が嫌になった
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