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どうしようもないほど、ぽっかりと穴があいた
空虚の部分が何をしても、何を食べても誰といても満たされなくて、飢えた状態が続いているのになんだが、それが、とてつもなく苦しいのに重たいのにイイモノだと錯覚してしまう時がある。
その度に、私はわたしを嫌悪する。

「灼然は、よく私みたいな地雷だけのオンナと飽きもせずにこうして一緒に居てくれるよね。」
ほんと、何気なしに言い放った言葉に嫌な気分になったのか、ソファーに身体を投げていた私を無言で抱き上げてそのまま灼然は歩き始めた

あっ、やべぇ。とは思ったが謝罪する間もなく
抵抗は…しないな。意味がないもの。
「玉響はなんで、自分を大切にしようとか
思わないの?」
「なんで、と問われても私のココロはある意味
あの日で止まっていて動いてはいるけど、動いているだけで…」
問われたから答え始めたが、私が悪いのか?
灼然の顔はどんどんと先程とは違う意味で険しくなっていく一方でどうしたらいいのかが分からずに、先を言い淀んでいると「続き。」と小さく促されてので言葉を紡ぐ。
「興味、関心が人より湧かなくなってしまった」
続けて、「元々、ヒトに興味があったかは曖昧なの。カレだけが特別で私の唯一になる人だと信じていたし、疑う余地もなくずっと一緒だと思っていた…。そう、思っていたの」
言葉を紡ぐ声が自分でも情けないくらいに弱々しくなっていることに気づき無理して笑った。

だからって、流石にこの部屋は
ないんじゃない?

部屋の前まで来て、まるで「現実を見ろ」と言わんばかりに無抵抗に開けられた自室。強盗にでも入られたかのような散らかり具合でカーテンはズタズタ、家具は散乱して数日前に一緒にのんびりと朝の珈琲時間を過ごしていた部屋と同じとは思えないほどに荒れに荒れていた。
所々、寝具付近に血痕があることはバレているんだろうな。と思いつつ、無言を貫く。

「玉響のココロは、きっと1番深いところは
俺では埋められない。でもさ、ある種の願いという名の呪いを俺たちは共有している。」

「タマが望むなら、俺は意に反してタマを
壊してあげる。たまは、玉響は何を望む?」
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