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刹那編①
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「構って!構って!構ってー!!」
朝霧に会えたことの余韻に浸る暇もなく帰宅してからすぐに妹に突撃された。妹だが今だけは愚妹と言わせてもらいたい衝動に駆られてしまう。
「いってぇ!帰ってきて早々に抱きつくんじゃねぇ。はーなーれーろー!」
「いやーだぁー!帰ってきたらおにぃが居ないから寂しかったんだけど!?どこに行ってたの?」
「いやいや!お前もこっちの友達に会いに行くって朝イチで出かけていただろうが。俺に構うな。親父にでも構ってもらえよ。なんなら、母さんたちの手伝いをしろ!」
あーだーこーだと玄関先で揉めていると奥からばぁちゃんが来て俺たちに軽くげんこつをしてから、「手洗いうがいをしたら、居間においで」と言われた。兄妹揃って本気で怒ったばぁちゃんは怖いという認識のため黙って洗面所へと向かった。言われた通り居間に行くと日本酒を呑んで上機嫌な親父と台所仕事がひと段落ついたのか母さんもばぁちゃんも揃っていた。
「ただいま。」
俺がそう言うとみんな「おかえり」と返してくれた。各々の地元の友人がこっちにいるため親父が呑んでいる日本酒も近況報告然り再会を果たしに行った際に頂いた物らしい。母さんは母さんで明日町の方へ行きママ友?と出掛けるらしい。愚妹は知らん。
「ご飯とお風呂、どっちにするかい?」
「ご飯が先がいい!
その後にスイカ食べたいなぁー。
おばぁちゃんが作ってくれたスイカ美味しいから食べたーい!」
依の言葉にばぁちゃんは頷き台所へと消えた。
依は母さんに「もう少し大人しくしていなさい。」と嗜められていたが特に気にする様子もなく親父に「暇なんだけど。」とだる絡みしに移動してた。俺はと言うと居間から出て廊下の突き当たり右のじぃちゃんがいる仏間へと行こうと腰を上げた。
「俺、じぃちゃんのとこに行ってくる。」
「逐一報告しなくても家に居ることが分かっていれば大丈夫だから、気にしないでいいのよ」
母さんの言葉に短い返事をしてから俺はじぃちゃんのところへ向かう。背に聴こえるハズのない鈴の音を聴いたが気にしない。気にしたらこの音は負けなのだ。
「じぃちゃん、ただいま。
帰ってきてから挨拶したけど依に愚妹に邪魔されたからまた来ちゃった。俺は相変わらず元気だから気にしなくても大丈夫だよ。今年も特別な相手には会えたし、会いたいこっちでの友達がいるから明日も出掛けるんだ。今年は例年より早く休みに入ったから灯籠祭りの数日後には帰るけど、夏の間お世話になります!」
何気ない俺と返事のないじぃちゃんとの会話。
だが、風が吹き抜けるわけがないのにふわっと優しい風が流れた。「ただいま」俺は少し目頭が熱くなりながらもう一度言った。
朝霧に会えたことの余韻に浸る暇もなく帰宅してからすぐに妹に突撃された。妹だが今だけは愚妹と言わせてもらいたい衝動に駆られてしまう。
「いってぇ!帰ってきて早々に抱きつくんじゃねぇ。はーなーれーろー!」
「いやーだぁー!帰ってきたらおにぃが居ないから寂しかったんだけど!?どこに行ってたの?」
「いやいや!お前もこっちの友達に会いに行くって朝イチで出かけていただろうが。俺に構うな。親父にでも構ってもらえよ。なんなら、母さんたちの手伝いをしろ!」
あーだーこーだと玄関先で揉めていると奥からばぁちゃんが来て俺たちに軽くげんこつをしてから、「手洗いうがいをしたら、居間においで」と言われた。兄妹揃って本気で怒ったばぁちゃんは怖いという認識のため黙って洗面所へと向かった。言われた通り居間に行くと日本酒を呑んで上機嫌な親父と台所仕事がひと段落ついたのか母さんもばぁちゃんも揃っていた。
「ただいま。」
俺がそう言うとみんな「おかえり」と返してくれた。各々の地元の友人がこっちにいるため親父が呑んでいる日本酒も近況報告然り再会を果たしに行った際に頂いた物らしい。母さんは母さんで明日町の方へ行きママ友?と出掛けるらしい。愚妹は知らん。
「ご飯とお風呂、どっちにするかい?」
「ご飯が先がいい!
その後にスイカ食べたいなぁー。
おばぁちゃんが作ってくれたスイカ美味しいから食べたーい!」
依の言葉にばぁちゃんは頷き台所へと消えた。
依は母さんに「もう少し大人しくしていなさい。」と嗜められていたが特に気にする様子もなく親父に「暇なんだけど。」とだる絡みしに移動してた。俺はと言うと居間から出て廊下の突き当たり右のじぃちゃんがいる仏間へと行こうと腰を上げた。
「俺、じぃちゃんのとこに行ってくる。」
「逐一報告しなくても家に居ることが分かっていれば大丈夫だから、気にしないでいいのよ」
母さんの言葉に短い返事をしてから俺はじぃちゃんのところへ向かう。背に聴こえるハズのない鈴の音を聴いたが気にしない。気にしたらこの音は負けなのだ。
「じぃちゃん、ただいま。
帰ってきてから挨拶したけど依に愚妹に邪魔されたからまた来ちゃった。俺は相変わらず元気だから気にしなくても大丈夫だよ。今年も特別な相手には会えたし、会いたいこっちでの友達がいるから明日も出掛けるんだ。今年は例年より早く休みに入ったから灯籠祭りの数日後には帰るけど、夏の間お世話になります!」
何気ない俺と返事のないじぃちゃんとの会話。
だが、風が吹き抜けるわけがないのにふわっと優しい風が流れた。「ただいま」俺は少し目頭が熱くなりながらもう一度言った。
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