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第2章 魔術学院受験専門塾
47 魔力暴走
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「あんたたちが、あんたたちが俺を無理に受験させなけりゃ俺はこんな目に遭わずに済んだんだ! だから俺はあんたに復讐しに来たんだ!!」
「そうだったのか。……本当に、辛かったね」
「分かったようなこと言うんじゃねえ! くそっ、くそぉっ!!」
ミングルはユキナガに向けて再び攻撃魔術を行使しようとしたが魔術師見習いですらないミングルには十分な魔力も技能もなく、彼は既に持てる魔力を使い果たしていた。
右手をかざすだけで何もできない彼に歩み寄り、ユキナガは静かに口を開いた。
「ミングル君。君の立場は確かに気の毒だが君はまだ魔術学生であるはずだ。君の実家は10年目の学費も払えるはずだし『エンペリアルの輪廻』に回数制限はない。ならばなぜ前を向いて勉学に励み、無事に卒業しようとしないんだ」
「俺にはもう無理なんだよ! 『魔進館』で勉強を叩き込まれて辛うじてエンペリアルに入れただけで、俺は魔術師になんてなれないんだ。このまま何者にもなれずに終わるぐらいなら、いっそ……」
「それで私を殺して犯罪者になって、一体君に何が残る。留年を繰り返す君を許し、学費を払ってくれた両親に申し訳ないと思わないのか。魔術師になれないと思うならさっさと自主退学して別の道を探すべきだが、1年間の受験生活で複数の魔術学院に合格できた君に魔術師になれる能力がないはずがない! 私は、いや私たち講師は君たちをただ魔術学院に入学させているだけじゃないんだ!!」
「……」
ユキナガをはじめとする「魔呪進館」の講師たちは全ての塾生を1年間でどこかの魔術学院に合格させることを至上命題としているが、彼らは塾生を合格させるだけでなく塾生が進学後に魔術師の道を歩んでいけるだけの素養を育むことも常に念頭に置いている。
受験生活の終盤まで塾生に自学自習を継続して行わせていることはその表れであり、「魔呪進館」での全寮制の生活を生き抜いた卒業生はたとえ留年しても必ず魔術師になれるとユキナガは信じていた。
「君は今、自分自身の生きる目標を見失っている。今日ここで起きたことは全て忘れるから、今すぐ実家に戻りご両親に必ず魔術師になると決意を伝えるんだ。今後のことが心配なら卒業生相手でも面談を行うから、どうか破れかぶれにならないで欲しい。君の人生はまだ終わっていないんだ」
「……先生、ごめんなさい。俺、毎日が辛くて辛くて、とんでもないことを考えてました。ユキナガ先生に八つ当たりしたって、何も解決しないのに……」
ミングルはそこまで話すとその場にくずおれて号泣し始めた。
彼の近くに歩み寄りどうにか立ち直らせようとしたユキナガだが、彼はミングルが異様な状態になり始めたことに気づいた。
「んっ……ぐうっ……ぐ、があああああっ……」
「ミングル君、大丈夫か!? まさか、魔力暴走……?」
ミングルは頭から地面に転がり、白目をむいてのたうち回り始めた。
魔力暴走とは魔術師でない者が不完全な状態で高度な魔術を行使した場合に起きる現象だった。
この状態に至った人間はやがて自らの魔力で自らを攻撃し、死に至る。
暴走する自らの魔力に命を奪われようとしているかつての教え子に、ユキナガは彼を危機から救うべく意を決した。
「そうだったのか。……本当に、辛かったね」
「分かったようなこと言うんじゃねえ! くそっ、くそぉっ!!」
ミングルはユキナガに向けて再び攻撃魔術を行使しようとしたが魔術師見習いですらないミングルには十分な魔力も技能もなく、彼は既に持てる魔力を使い果たしていた。
右手をかざすだけで何もできない彼に歩み寄り、ユキナガは静かに口を開いた。
「ミングル君。君の立場は確かに気の毒だが君はまだ魔術学生であるはずだ。君の実家は10年目の学費も払えるはずだし『エンペリアルの輪廻』に回数制限はない。ならばなぜ前を向いて勉学に励み、無事に卒業しようとしないんだ」
「俺にはもう無理なんだよ! 『魔進館』で勉強を叩き込まれて辛うじてエンペリアルに入れただけで、俺は魔術師になんてなれないんだ。このまま何者にもなれずに終わるぐらいなら、いっそ……」
「それで私を殺して犯罪者になって、一体君に何が残る。留年を繰り返す君を許し、学費を払ってくれた両親に申し訳ないと思わないのか。魔術師になれないと思うならさっさと自主退学して別の道を探すべきだが、1年間の受験生活で複数の魔術学院に合格できた君に魔術師になれる能力がないはずがない! 私は、いや私たち講師は君たちをただ魔術学院に入学させているだけじゃないんだ!!」
「……」
ユキナガをはじめとする「魔呪進館」の講師たちは全ての塾生を1年間でどこかの魔術学院に合格させることを至上命題としているが、彼らは塾生を合格させるだけでなく塾生が進学後に魔術師の道を歩んでいけるだけの素養を育むことも常に念頭に置いている。
受験生活の終盤まで塾生に自学自習を継続して行わせていることはその表れであり、「魔呪進館」での全寮制の生活を生き抜いた卒業生はたとえ留年しても必ず魔術師になれるとユキナガは信じていた。
「君は今、自分自身の生きる目標を見失っている。今日ここで起きたことは全て忘れるから、今すぐ実家に戻りご両親に必ず魔術師になると決意を伝えるんだ。今後のことが心配なら卒業生相手でも面談を行うから、どうか破れかぶれにならないで欲しい。君の人生はまだ終わっていないんだ」
「……先生、ごめんなさい。俺、毎日が辛くて辛くて、とんでもないことを考えてました。ユキナガ先生に八つ当たりしたって、何も解決しないのに……」
ミングルはそこまで話すとその場にくずおれて号泣し始めた。
彼の近くに歩み寄りどうにか立ち直らせようとしたユキナガだが、彼はミングルが異様な状態になり始めたことに気づいた。
「んっ……ぐうっ……ぐ、があああああっ……」
「ミングル君、大丈夫か!? まさか、魔力暴走……?」
ミングルは頭から地面に転がり、白目をむいてのたうち回り始めた。
魔力暴走とは魔術師でない者が不完全な状態で高度な魔術を行使した場合に起きる現象だった。
この状態に至った人間はやがて自らの魔力で自らを攻撃し、死に至る。
暴走する自らの魔力に命を奪われようとしているかつての教え子に、ユキナガは彼を危機から救うべく意を決した。
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