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第2章 魔術学院受験専門塾
36 魔術転送所
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イクシィの脱走騒ぎはユキナガの活躍により無事解決し、「魔進館」とその講師・塾生たちに迷惑をかけたイクシィは自らの行為を心から詫びた。
その後のイクシィはこれまで通り受験勉強に励み、講師の側も脱走騒ぎ以前は必要に応じて開催していた個人面談を定期的に行うようにするなどの改善を行った結果、それからは大きな問題を起こす生徒は一人も現れなかった。
そうして5か月ほどが過ぎ、年明けを迎えた生徒たちは本格的に入試期間を迎えていた。
ユキナガの提案を受けて生徒たちは魔術転送所を利用して大陸各地の魔術学院を受験して回ることになっており、出願校に応じて生徒たちは3つの群に分けられた。
一つは中央・西部群。この群に属する生徒たちは比較的成績がよく、大陸中央部の魔術学院に加えて西部にある4つの魔術学院を受験することとなる。魔術転送所の利用回数は中央→西部→中央→西部→中央の4回。西部の魔術学院で唯一入試日程が遅いカッソー魔術学院を受験しない場合は中央→西部→中央で2回のみとなる。
一つは中央・東部・西部群。大陸中央部にある入試難度が低い魔術学院に加えて、東部と西部にある魔術学院を受験することとなる。魔術転送所の利用回数は中央→東部→西部→中央で3回。上述のカッソー魔術学院に加えてジーケ会魔術学院など入試日程が遅い魔術学院はいずれも入試難度が高いため受験しない。
最後の一つは大陸全域群。大陸の中央部・北部・東部・西部・南部にある入試難度が低い魔術学院をできるだけ多数受験し、最低でも1校への合格を目指す。魔術転送所の利用回数は中央→北部→東部→南部→西部→中央で5回と最も多い。
魔術転送所の利用には1回につき50万ネイもの高額な費用がかかるが1回の利用料は何人で利用しても共通のため、例えば5人同時に利用する場合は1人当たりの金額は10万ネイということになる。
中央・西部群は亜人語科講師のアシュルアが、中央・東部・西部群はユキナガが、大陸全域群は数術科講師のヨハランが引率して受験地に向かうこととなり、1月上旬の肌寒い日に講師全員と12名の塾生は「魔進館」へと集結していた。
「お前たちは今日から大陸各地の魔術学院を受験して回ることになるが、心配することは何一つない。宿泊する宿屋は既に押さえてあるし、それぞれの群を優秀な先生方が引率してくれる。ここまで頑張ってきたお前たちなら必ずどこかの魔術学院には受かるから、今は落ち着いて体調と気分を整えるんだ。どこの魔術学院でも合格したらすぐに速達で知らせてくれ。それでは検討を祈る!」
来年度の入塾希望者への対応のために数名の講師と共に「魔進館」に残るノールズは、塾長として生徒たちを鼓舞した。
12名の塾生は右手を突き上げてかけ声を上げ、ユキナガは彼らの勇ましい姿を微笑ましく見ていた。
「それではアシュルア先生、中央・西部群の生徒たちをよろしくお願いします。あの3人にはかなりの実力がありますが、それでも受験当日の緊張が問題となります。過度な圧力がかからないよう指導してやってください」
「分かりました。ユキナガ先生は中央・西部群か大陸全域群を担当されると思ってましたけど、やっぱりイクシィ君が心配なんですか?」
生徒たちが長旅の荷物を点検している間に、ユキナガはアシュルアとヨハランを別室に呼んで最後の打ち合わせをしていた。
これからアシュルアは西部に飛びヨハランは北部に飛ぶため、魔術転送所で別の台座に乗った後は中央に戻ってくるまで全員が集合することはない。
「それもありますが、私としては中くらいの成績の生徒が最も心配なのです。中央・西部群の生徒は学力的にどこかの魔術学院には必ず合格しますし、大陸全域群は死に物狂いで頑張るはずなのでかえって心配はありません。一方、中央・東部・西部群の生徒はある程度の学力を持つ分だけ油断が生じがちですから一つも合格できない可能性がなきにしもあらずと言えます。だからこそ私は彼らを見守ることにしたのです」
「なるほど、そのようなお考えがあったのですね。僕も大陸全域群の生徒たちを油断させないよう気を付けて指導します」
ユキナガの考えに感心しつつ言ったヨハランに、ユキナガは頼もしさを感じつつ頷いた。
イクシィはあれから成績を徐々に伸ばしていったが、他の生徒の急成長により現在では12名中4位の成績となっていた。
それでも絶対的な学力は十分に高く、本人と父親には中央・西部群での受験も提案したが念には念を入れたいという本人の意向を尊重して結局は中央・東部・西部群に所属することとなっていた。
その後のイクシィはこれまで通り受験勉強に励み、講師の側も脱走騒ぎ以前は必要に応じて開催していた個人面談を定期的に行うようにするなどの改善を行った結果、それからは大きな問題を起こす生徒は一人も現れなかった。
そうして5か月ほどが過ぎ、年明けを迎えた生徒たちは本格的に入試期間を迎えていた。
ユキナガの提案を受けて生徒たちは魔術転送所を利用して大陸各地の魔術学院を受験して回ることになっており、出願校に応じて生徒たちは3つの群に分けられた。
一つは中央・西部群。この群に属する生徒たちは比較的成績がよく、大陸中央部の魔術学院に加えて西部にある4つの魔術学院を受験することとなる。魔術転送所の利用回数は中央→西部→中央→西部→中央の4回。西部の魔術学院で唯一入試日程が遅いカッソー魔術学院を受験しない場合は中央→西部→中央で2回のみとなる。
一つは中央・東部・西部群。大陸中央部にある入試難度が低い魔術学院に加えて、東部と西部にある魔術学院を受験することとなる。魔術転送所の利用回数は中央→東部→西部→中央で3回。上述のカッソー魔術学院に加えてジーケ会魔術学院など入試日程が遅い魔術学院はいずれも入試難度が高いため受験しない。
最後の一つは大陸全域群。大陸の中央部・北部・東部・西部・南部にある入試難度が低い魔術学院をできるだけ多数受験し、最低でも1校への合格を目指す。魔術転送所の利用回数は中央→北部→東部→南部→西部→中央で5回と最も多い。
魔術転送所の利用には1回につき50万ネイもの高額な費用がかかるが1回の利用料は何人で利用しても共通のため、例えば5人同時に利用する場合は1人当たりの金額は10万ネイということになる。
中央・西部群は亜人語科講師のアシュルアが、中央・東部・西部群はユキナガが、大陸全域群は数術科講師のヨハランが引率して受験地に向かうこととなり、1月上旬の肌寒い日に講師全員と12名の塾生は「魔進館」へと集結していた。
「お前たちは今日から大陸各地の魔術学院を受験して回ることになるが、心配することは何一つない。宿泊する宿屋は既に押さえてあるし、それぞれの群を優秀な先生方が引率してくれる。ここまで頑張ってきたお前たちなら必ずどこかの魔術学院には受かるから、今は落ち着いて体調と気分を整えるんだ。どこの魔術学院でも合格したらすぐに速達で知らせてくれ。それでは検討を祈る!」
来年度の入塾希望者への対応のために数名の講師と共に「魔進館」に残るノールズは、塾長として生徒たちを鼓舞した。
12名の塾生は右手を突き上げてかけ声を上げ、ユキナガは彼らの勇ましい姿を微笑ましく見ていた。
「それではアシュルア先生、中央・西部群の生徒たちをよろしくお願いします。あの3人にはかなりの実力がありますが、それでも受験当日の緊張が問題となります。過度な圧力がかからないよう指導してやってください」
「分かりました。ユキナガ先生は中央・西部群か大陸全域群を担当されると思ってましたけど、やっぱりイクシィ君が心配なんですか?」
生徒たちが長旅の荷物を点検している間に、ユキナガはアシュルアとヨハランを別室に呼んで最後の打ち合わせをしていた。
これからアシュルアは西部に飛びヨハランは北部に飛ぶため、魔術転送所で別の台座に乗った後は中央に戻ってくるまで全員が集合することはない。
「それもありますが、私としては中くらいの成績の生徒が最も心配なのです。中央・西部群の生徒は学力的にどこかの魔術学院には必ず合格しますし、大陸全域群は死に物狂いで頑張るはずなのでかえって心配はありません。一方、中央・東部・西部群の生徒はある程度の学力を持つ分だけ油断が生じがちですから一つも合格できない可能性がなきにしもあらずと言えます。だからこそ私は彼らを見守ることにしたのです」
「なるほど、そのようなお考えがあったのですね。僕も大陸全域群の生徒たちを油断させないよう気を付けて指導します」
ユキナガの考えに感心しつつ言ったヨハランに、ユキナガは頼もしさを感じつつ頷いた。
イクシィはあれから成績を徐々に伸ばしていったが、他の生徒の急成長により現在では12名中4位の成績となっていた。
それでも絶対的な学力は十分に高く、本人と父親には中央・西部群での受験も提案したが念には念を入れたいという本人の意向を尊重して結局は中央・東部・西部群に所属することとなっていた。
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