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最終話 医クラちゃんVSキラキラちゃん
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「ちょっと医クラちゃん、このツイッターの書き込みってどういうこと?」
「えっ、これがどうかしたの?」
ある日の昼休み、医クラちゃんがいつものようにツイッターでイキリ研修医の炎上を眺めているとキラキラちゃんが険しい顔つきで自分のスマホの画面を見せてきました。
キラキラちゃんが示したツイッターの画面には医クラちゃんが昨日の夜に投稿した写真付きツイートが表示されていて、その写真には医クラちゃんが映画館で隣の人と手をつないでいる時の手元だけが写っていました。
「『今日は私の大事な人と映画を見てきました!』って彼氏と行ったみたいな書き方してるけど、これってこの前私と映画に行った時の写真だよね? どうして男の人と行ったみたいに見せかけるの?」
「見せかけるって言われても別に彼氏と行ったなんて書いてないし、このアカウントは身バレしてる訳でもないから別にいいじゃん。それとも何? キラキラちゃんは私とデートでもしてたつもりだったの?」
「そんなこと言ってないよ! だけど私は医クラちゃんが初めて映画に誘ってくれて本当に嬉しかったのに、医クラちゃんがそんな目的で私を誘ったなんて思いたくなかったから! 女友達と行ったってはっきり書いてくれればよかったのに……」
「いちいちうるさいなぁ! それならキラキラちゃんだって私といる時の写真自由に使ってくれていいよ。お互い彼氏いない身なんだから助け合えばいいでしょ?」
完全に修羅場になっていますが要するに医クラちゃんはツイッター上で自分に彼氏がいると見せかける、すなわち「匂わせ」ツイートを偽装するためにキラキラちゃんと映画を見に行った時の写真を悪用し、医クラちゃんと映画を見に行けたことを喜んでいたキラキラちゃんは彼女の目論見に後から気づいてしまったのでした。
「医クラちゃんは分かってない、私の気持ちなんて全然分かってない! もういいよ、そんなこと言うなら医クラちゃんなんて友達じゃない! 学年内で孤立して留年してドロップアウトしちゃえばいいんだ!!」
キラキラちゃんは涙声でそう言い放つと講義室から走り去ってしまい、彼女から初めて本気で怒られた医クラちゃんは苛立ちながらもこの状況に焦りを感じ始めていました。
「医クラちゃん、もうすぐ次の授業始まるけどキラキラちゃんが帰ってくるか心配なんだなあ。とりあえず電話して謝った方がいいと思うんだなあ」
「何で私が謝らなきゃいけないの!? 大体キラキラちゃんはたかが女友達を何だと思ってるの、大学生にもなってベタベタしてバカみたい!!」
「それは流石に言いすぎだと思うんだなあ……」
喧嘩を横から見ていたタローくんがオロオロしながら助言したものの、完全にムキになっている医クラちゃんは聞き入れません。
「しかしだな医クラ、俺はぶっちゃけキラキラが好みだからはっきり言うが普段は他人に嫌われたくないタイプのキラキラがお前に留年しろだの退学になれだの言うのは相当怒ってるぞ。客観的に見てもお前のツイートは配慮が足りなかったと思うし、今日中に仲直りしろとは言わないがお前も少しは譲った方がいいんじゃないか?」
「それはまあ、私だって分かるけど……」
ルサンチくんが珍しく正論を述べていると次の授業の教員が講義室に入ってきて、結局キラキラちゃんは授業の終わり頃に顔を真っ赤にしたまま講義室に戻ってきたのでした。
それから1週間ほど医クラちゃんはキラキラちゃんと1回も話せず、普段は何だかんだで仲良しだった2人が険悪になっているせいで講義室内の空気も気まずいままになっていました。
そんなある日、放課後すぐに帰宅した医クラちゃんは下宿のマンションのベッドに寝転び、キラキラちゃんと関係を修復するにはどうすればいいかを考えました。
いいアイディアが何も思い浮かばず、気まぐれにタブレット端末を開いて定額購読しているニューズウィーク日本版を眺めていると海外の医療制度に関する面白い記事を見かけました。
普段なら明日大学に行った時にキラキラちゃんにその記事の話を聞かせて、キラキラちゃんは決まって医クラちゃんを物知りだと褒めてくれます。
しかし、そんなキラキラちゃんとの関係はもう戻ってこないかも知れないのです。
思い返せばいつもそうでした。高校生物の知識で基礎医学について偉そうに教えて感心してくれるのも、高校倫理の知識で哲学を偉そうに語って目を輝かせてくれるのも、山月記のストーリーを解説しただけで感動してくれるのも、全てはいつも隣にいる意識高い系のキラキラちゃんだけでした。
キラキラちゃんは意識が高い割に実力が伴っていない女子医学生ですが、彼女は自分が知らないことを知っている友達を素直に褒められるという誰でもできそうで簡単にはできない特技を持っていたのです。
意識高い系をバカにしているだけと言いつつ実力が伴っている人を見ると粗捜しをしてしまう医クラちゃんにとって、キラキラちゃんは自分に欠けているものを埋めてくれる大切な友達だったのです。
そして翌日の放課後、医クラちゃんは人が少なくなった後の講義室にキラキラちゃんを呼び出しました。
「医クラちゃん、今日は呼んでくれてありがとう。あのね、私もあの時はひどいことを言っちゃって、つまらないことでしつこく怒ったりして……」
もじもじしながら先に口を開いたキラキラちゃんに、医クラちゃんは感極まって抱きつきました。
「ごめんよおキラキラちゃん! 私、やっぱりキラキラちゃんがいないと生きてけない! だって、だって、どんな医クラ仲間よりもキラキラちゃんが褒めてくれるのが一番嬉しいからぁ! うわーん!!」
「ちょっと医クラちゃん、流石に人前で恥ずかしいよ! よしよし、私はいつでも医クラちゃんの味方だからね」
今日も優しく頭をなでてくれたキラキラちゃんに、医クラちゃんはひたすら号泣するしかありませんでした。
キラキラちゃんのような友達が少しでも周囲にいてくれる限り、医クラちゃんが大学をドロップアウトしてしまうことは絶対にないのです。
「うーん、やはりキラキラ×医クラは尊いな」
「ルサンチくん、女友達でそういうことを考えるのはいけないと思うんだなあ……」
全ての医クラに、幸あれ!!
(おしまい)
「えっ、これがどうかしたの?」
ある日の昼休み、医クラちゃんがいつものようにツイッターでイキリ研修医の炎上を眺めているとキラキラちゃんが険しい顔つきで自分のスマホの画面を見せてきました。
キラキラちゃんが示したツイッターの画面には医クラちゃんが昨日の夜に投稿した写真付きツイートが表示されていて、その写真には医クラちゃんが映画館で隣の人と手をつないでいる時の手元だけが写っていました。
「『今日は私の大事な人と映画を見てきました!』って彼氏と行ったみたいな書き方してるけど、これってこの前私と映画に行った時の写真だよね? どうして男の人と行ったみたいに見せかけるの?」
「見せかけるって言われても別に彼氏と行ったなんて書いてないし、このアカウントは身バレしてる訳でもないから別にいいじゃん。それとも何? キラキラちゃんは私とデートでもしてたつもりだったの?」
「そんなこと言ってないよ! だけど私は医クラちゃんが初めて映画に誘ってくれて本当に嬉しかったのに、医クラちゃんがそんな目的で私を誘ったなんて思いたくなかったから! 女友達と行ったってはっきり書いてくれればよかったのに……」
「いちいちうるさいなぁ! それならキラキラちゃんだって私といる時の写真自由に使ってくれていいよ。お互い彼氏いない身なんだから助け合えばいいでしょ?」
完全に修羅場になっていますが要するに医クラちゃんはツイッター上で自分に彼氏がいると見せかける、すなわち「匂わせ」ツイートを偽装するためにキラキラちゃんと映画を見に行った時の写真を悪用し、医クラちゃんと映画を見に行けたことを喜んでいたキラキラちゃんは彼女の目論見に後から気づいてしまったのでした。
「医クラちゃんは分かってない、私の気持ちなんて全然分かってない! もういいよ、そんなこと言うなら医クラちゃんなんて友達じゃない! 学年内で孤立して留年してドロップアウトしちゃえばいいんだ!!」
キラキラちゃんは涙声でそう言い放つと講義室から走り去ってしまい、彼女から初めて本気で怒られた医クラちゃんは苛立ちながらもこの状況に焦りを感じ始めていました。
「医クラちゃん、もうすぐ次の授業始まるけどキラキラちゃんが帰ってくるか心配なんだなあ。とりあえず電話して謝った方がいいと思うんだなあ」
「何で私が謝らなきゃいけないの!? 大体キラキラちゃんはたかが女友達を何だと思ってるの、大学生にもなってベタベタしてバカみたい!!」
「それは流石に言いすぎだと思うんだなあ……」
喧嘩を横から見ていたタローくんがオロオロしながら助言したものの、完全にムキになっている医クラちゃんは聞き入れません。
「しかしだな医クラ、俺はぶっちゃけキラキラが好みだからはっきり言うが普段は他人に嫌われたくないタイプのキラキラがお前に留年しろだの退学になれだの言うのは相当怒ってるぞ。客観的に見てもお前のツイートは配慮が足りなかったと思うし、今日中に仲直りしろとは言わないがお前も少しは譲った方がいいんじゃないか?」
「それはまあ、私だって分かるけど……」
ルサンチくんが珍しく正論を述べていると次の授業の教員が講義室に入ってきて、結局キラキラちゃんは授業の終わり頃に顔を真っ赤にしたまま講義室に戻ってきたのでした。
それから1週間ほど医クラちゃんはキラキラちゃんと1回も話せず、普段は何だかんだで仲良しだった2人が険悪になっているせいで講義室内の空気も気まずいままになっていました。
そんなある日、放課後すぐに帰宅した医クラちゃんは下宿のマンションのベッドに寝転び、キラキラちゃんと関係を修復するにはどうすればいいかを考えました。
いいアイディアが何も思い浮かばず、気まぐれにタブレット端末を開いて定額購読しているニューズウィーク日本版を眺めていると海外の医療制度に関する面白い記事を見かけました。
普段なら明日大学に行った時にキラキラちゃんにその記事の話を聞かせて、キラキラちゃんは決まって医クラちゃんを物知りだと褒めてくれます。
しかし、そんなキラキラちゃんとの関係はもう戻ってこないかも知れないのです。
思い返せばいつもそうでした。高校生物の知識で基礎医学について偉そうに教えて感心してくれるのも、高校倫理の知識で哲学を偉そうに語って目を輝かせてくれるのも、山月記のストーリーを解説しただけで感動してくれるのも、全てはいつも隣にいる意識高い系のキラキラちゃんだけでした。
キラキラちゃんは意識が高い割に実力が伴っていない女子医学生ですが、彼女は自分が知らないことを知っている友達を素直に褒められるという誰でもできそうで簡単にはできない特技を持っていたのです。
意識高い系をバカにしているだけと言いつつ実力が伴っている人を見ると粗捜しをしてしまう医クラちゃんにとって、キラキラちゃんは自分に欠けているものを埋めてくれる大切な友達だったのです。
そして翌日の放課後、医クラちゃんは人が少なくなった後の講義室にキラキラちゃんを呼び出しました。
「医クラちゃん、今日は呼んでくれてありがとう。あのね、私もあの時はひどいことを言っちゃって、つまらないことでしつこく怒ったりして……」
もじもじしながら先に口を開いたキラキラちゃんに、医クラちゃんは感極まって抱きつきました。
「ごめんよおキラキラちゃん! 私、やっぱりキラキラちゃんがいないと生きてけない! だって、だって、どんな医クラ仲間よりもキラキラちゃんが褒めてくれるのが一番嬉しいからぁ! うわーん!!」
「ちょっと医クラちゃん、流石に人前で恥ずかしいよ! よしよし、私はいつでも医クラちゃんの味方だからね」
今日も優しく頭をなでてくれたキラキラちゃんに、医クラちゃんはひたすら号泣するしかありませんでした。
キラキラちゃんのような友達が少しでも周囲にいてくれる限り、医クラちゃんが大学をドロップアウトしてしまうことは絶対にないのです。
「うーん、やはりキラキラ×医クラは尊いな」
「ルサンチくん、女友達でそういうことを考えるのはいけないと思うんだなあ……」
全ての医クラに、幸あれ!!
(おしまい)
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