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2020年8月 ステイホーム! カラオケお嬢様
第8話 気分は大後悔
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その翌週、僕は平日の昼間に再び壬生川さんの実家を訪れていた。
この日は午前中しかオンライン授業がなかったので壬生川さんは実家で一人僕を待っていてくれた。
「今日はどうしたの? 渡したいものがあるって聞いたけど……」
「そうだよ、これは宅配じゃなくて直接渡したいと思って」
2階に上がって彼女の自室に入った僕は、座布団に腰かけている壬生川さんにカバンから取り出したものを見せた。
「こっ、これ、あのワイヤレスマイクじゃない! しかも新品!?」
「うん、割引で24000円ぐらいで買えるみたいだったから勝手に買ってプレゼントします。遅延がどうなるか分からないけど受け取って欲しいです」
「でも、あんたにこんな高いものを買って貰うなんて申し訳ない。せめて半額払わせて」
「大丈夫、これは僕のバイト代から全部出したし、僕らいつも割り勘だから今日ぐらいはプレゼントさせて」
「それなら、まあ……」
僕は研究医養成コース生になった2019年3月から北辰精鋭予備校の答案添削のアルバイトを始めていて、毎月コツコツとやっていたおかげで最終的に30万円ほどの貯金をすることができた。
母には塔也が稼いだバイト代は自分のために使いなさいと言われたが下宿生活の費用は全て仕送りの範囲内で済ませ、バイト代はこれまで大学で必要になる教科書や参考書を買うのにしか使わなかった。
2020年2月に色々あって僕の実家の家計問題は解決されており仕送りの額も月2万円ほど増やして貰えたので今ではアルバイトを減らしているが、自分で稼いだお金を彼女へのプレゼント代に使うなら何も問題はないと思った。
「あれからずっと欲しかったから、プレゼントしてくれて本当に嬉しい。塔也のそういう所、あたしすっごく好き!」
「壬生川さん……」
受け取ったワイヤレスマイクを机に置くと、壬生川さんはガバッという効果音がしそうな勢いで僕に抱きついた。
彼女の柔らかな身体の感触を全身で感じ、優しい香りに鼻腔が満たされる。
この子を自分のものにしたいという思いに駆られ、壬生川さんの身体を強く抱きしめた。
「今日は、お父さんもお母さんもいないから……」
「……」
彼女が言外に込めた意図を理解し、僕は生唾を飲み込みつつ頷いた。
そのまま2人で1階に下りて、初めて一緒にシャワーを浴びた。
服を着て再び彼女の自室に戻ると、2人でベッドに腰かける。
壬生川さんの上着のボタンを一つずつ外しながら、僕は思わず彼女の唇を奪った。
「んっ……」
「好きだ。君のこと……」
その瞬間、壬生川さんは突然両目を見開き、
「ああっ、もう無理! ごめん塔也、そういうの後にさせて!!」
机上に置かれているワイヤレスマイクの箱を開けると、中から取り出した付属品の単3電池2本をマイクに入れた。
USBレシーバーをプレイステイブル4本体のUSB端子に差し込み、彼女はコントローラーを手に取ってゲーム機を起動した。
「えっ、後って……」
「本当にごめん! でもワイヤレスマイク試してみたいでしょ!? 楽しみでうずうずしてるの!!」
壬生川さんは恐るべき素早さでライジングDのアプリを立ち上げ、ワイヤレスマイクの電源を入れて歌い始めた。この前と比べて明らかにゲーム機に慣れている。
「浜辺に、クオーテーション……じっと見つめて、2人はささやくの……」
昔のアイドルグループの曲をしみじみと歌う壬生川さんの姿に、僕の興奮はすっかり冷めていた。
流石は評判のいいワイヤレスマイク、遅延がほとんどない。
「これ最高! 高いだけあるわね!!」
「あはは、ぜひ楽しんでください……」
壬生川さんはそのままノンストップで歌い続け、気づいた時にはピアノ教室の仕事を終えた理香子さんが帰ってきていた。
ちょうど自宅を訪れていた僕に理香子さんは夕食も一緒にどうだいと言ってくれて、その日は壬生川さん一家と夕食を共にしてからバスで帰宅した。
壬生川さんが喜んでくれたのは、本当によかったんだけど……
「ああっ、あの時もっと押してれば……せっかくのチャンスだったのに……」
全くもって後悔が尽きず、その日の夜に僕は下宿のベッドに潜り込んでジタバタしていた。
この日は午前中しかオンライン授業がなかったので壬生川さんは実家で一人僕を待っていてくれた。
「今日はどうしたの? 渡したいものがあるって聞いたけど……」
「そうだよ、これは宅配じゃなくて直接渡したいと思って」
2階に上がって彼女の自室に入った僕は、座布団に腰かけている壬生川さんにカバンから取り出したものを見せた。
「こっ、これ、あのワイヤレスマイクじゃない! しかも新品!?」
「うん、割引で24000円ぐらいで買えるみたいだったから勝手に買ってプレゼントします。遅延がどうなるか分からないけど受け取って欲しいです」
「でも、あんたにこんな高いものを買って貰うなんて申し訳ない。せめて半額払わせて」
「大丈夫、これは僕のバイト代から全部出したし、僕らいつも割り勘だから今日ぐらいはプレゼントさせて」
「それなら、まあ……」
僕は研究医養成コース生になった2019年3月から北辰精鋭予備校の答案添削のアルバイトを始めていて、毎月コツコツとやっていたおかげで最終的に30万円ほどの貯金をすることができた。
母には塔也が稼いだバイト代は自分のために使いなさいと言われたが下宿生活の費用は全て仕送りの範囲内で済ませ、バイト代はこれまで大学で必要になる教科書や参考書を買うのにしか使わなかった。
2020年2月に色々あって僕の実家の家計問題は解決されており仕送りの額も月2万円ほど増やして貰えたので今ではアルバイトを減らしているが、自分で稼いだお金を彼女へのプレゼント代に使うなら何も問題はないと思った。
「あれからずっと欲しかったから、プレゼントしてくれて本当に嬉しい。塔也のそういう所、あたしすっごく好き!」
「壬生川さん……」
受け取ったワイヤレスマイクを机に置くと、壬生川さんはガバッという効果音がしそうな勢いで僕に抱きついた。
彼女の柔らかな身体の感触を全身で感じ、優しい香りに鼻腔が満たされる。
この子を自分のものにしたいという思いに駆られ、壬生川さんの身体を強く抱きしめた。
「今日は、お父さんもお母さんもいないから……」
「……」
彼女が言外に込めた意図を理解し、僕は生唾を飲み込みつつ頷いた。
そのまま2人で1階に下りて、初めて一緒にシャワーを浴びた。
服を着て再び彼女の自室に戻ると、2人でベッドに腰かける。
壬生川さんの上着のボタンを一つずつ外しながら、僕は思わず彼女の唇を奪った。
「んっ……」
「好きだ。君のこと……」
その瞬間、壬生川さんは突然両目を見開き、
「ああっ、もう無理! ごめん塔也、そういうの後にさせて!!」
机上に置かれているワイヤレスマイクの箱を開けると、中から取り出した付属品の単3電池2本をマイクに入れた。
USBレシーバーをプレイステイブル4本体のUSB端子に差し込み、彼女はコントローラーを手に取ってゲーム機を起動した。
「えっ、後って……」
「本当にごめん! でもワイヤレスマイク試してみたいでしょ!? 楽しみでうずうずしてるの!!」
壬生川さんは恐るべき素早さでライジングDのアプリを立ち上げ、ワイヤレスマイクの電源を入れて歌い始めた。この前と比べて明らかにゲーム機に慣れている。
「浜辺に、クオーテーション……じっと見つめて、2人はささやくの……」
昔のアイドルグループの曲をしみじみと歌う壬生川さんの姿に、僕の興奮はすっかり冷めていた。
流石は評判のいいワイヤレスマイク、遅延がほとんどない。
「これ最高! 高いだけあるわね!!」
「あはは、ぜひ楽しんでください……」
壬生川さんはそのままノンストップで歌い続け、気づいた時にはピアノ教室の仕事を終えた理香子さんが帰ってきていた。
ちょうど自宅を訪れていた僕に理香子さんは夕食も一緒にどうだいと言ってくれて、その日は壬生川さん一家と夕食を共にしてからバスで帰宅した。
壬生川さんが喜んでくれたのは、本当によかったんだけど……
「ああっ、あの時もっと押してれば……せっかくのチャンスだったのに……」
全くもって後悔が尽きず、その日の夜に僕は下宿のベッドに潜り込んでジタバタしていた。
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