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第三章 結婚に向けて
22.エドヴァルドの欲しいもの
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長期の公演を終えて、年末に年越しのために実家に戻って来たツムギは、ダリアとのことを聞かせてくれた。
「王都での公演の間は、お食事に呼んでくださることがあったの。ローズ女王様とリュリュ様と赤ちゃんのユーリ様にも会わせてもらったわ」
「ローズ女王はんの反応はどないやった?」
「ダリア様が男性を愛せないことは気付いてらしたみたい。イサギの妹だから安心って言われちゃった。イサギ、ありがとうね」
空回りをして、魔女騒動で自分の力不足を痛感したが、リュリュの呪いを解く手助けをしたことや、覚えていないが魔女を倒したことなどを、ローズは高く評価してくれていた。妹のために良い兄と認識されていることが嬉しくて、イサギは穏やかに隣りで聞いているエドヴァルドに向き直った。
「エドさんがサナちゃんに呪いをかけられてはるって勘違いしての情けない行動やったけど、ローズ女王はんは、そんな風に考えてくれてて……エドさんが魔女を倒してくれたおかげや」
「いえ、あれは、イサギさんが……いえ、なんでもないです」
自分が倒したのにエドヴァルドが倒したと思い込んでいるのを否定しなかったのは、実の母親を自らの手で王妃の座から引きずり下ろしたという事実に、イサギが傷付くかもしれないという配慮だった。当のイサギの方は、魔女を最早母親とは思ってもいないのだが。
「今年はクリスティアンはテンロウ領の実家で年末年始は過ごすと言っています。どうやら、年が明けたら例の彼女を連れて来るようですよ」
「クリスさんの好きなひとって、どんな方?」
「年上で、医者をしてはる女性やって聞いたけど」
「元は貴族の身分だったようですが、荒れた歓楽街で春をひさぐ女性たちの診療を始めて、お父様が貴族の身分をはく奪されたと聞いています。頭の回転の速い、知識も教養もある女性みたいですよ」
年はクリスティアンより7つ上で、エドヴァルドと同じ年だが、政略結婚では親子どころか祖父母と孫ほど年の離れた相手と結婚する場合もある。エドヴァルドの母親も父親よりも4つ年上なので、問題はないとエドヴァルドは話してくれた。
「年が上だったのもあって、母は早く子どもを産みたいと焦っていたようですが、結婚3年目で私が産まれて、10年目でクリスティアンが産まれて……」
クリスティアンが魔術師として非常に優秀だったから、必死の不妊治療の末の第2子の妊娠出産で、安堵したところで、クリスティアンの離乳食に毒が混ぜられれば、神経質になるのも当然のこと。
「不妊治療を受けていたのも、子どもの産めない女は価値がないと恥になるから、父にも隠していたそうなんです……クリスティアンの彼女が医者で、女性のことについて詳しく説明してくれたと教えたおかげで、ようやく口に出せたようで」
「クリスさんはええひとを見つけはったんやな」
「お父さんが出て行って、二人きりでずっと暮らすのかと思ってたのに、私にはダリア様、イサギにはエドさん、クリスさんにも恋人ができて、テンロウ領のご両親に、ローズ女王陛下とリュリュ様とユーリ様、それにリュリュ様のご両親まで……大家族になったね」
「せやな。モウコ領にはお父ちゃんと奥さんと赤ちゃんもおるし」
二人きりで過ごしていた日々は、毎日の生活に必死で、寂しさを感じることもなかった。ツムギは舞台に打ち込み、イサギは薬草畑で植物を育てつつ、生きているのか死んでいるのか分からないような生活をしてきた。
それが今は、18歳になる日を夢見て、ツムギは劇団で各地を飛び回り、イサギは魔術学校に通って活き活きと過ごしている。
1年半前の生活には、もう戻れそうになかった。
「そういえば、1月の終わりにエドさんの誕生日があるんやけど、ツムギは帰って来られるか?」
「イサギ、そういうとこよ?」
「そ、そういうとこ? どういうとこや?」
「イサギとエドさんは婚約者で恋人なんでしょう? 私はお邪魔はしません」
誕生日を家族で祝うつもりでツムギもクリスティアンも、なんなら養父やシュイ、テンロウ領のご両親まで呼ぶつもりだったイサギに、ツムギの言葉は衝撃的だった。
今年の1月の誕生日を、エドヴァルドはイサギに教えもしなかった。教えないままに、自分とお揃いの手袋とマフラーをくれた。
盛大に祝うよりも、慎ましやかなエドヴァルドは、イサギと二人きりで誕生日を過ごすことを選んでくれていたのだと、今更ながらに気付く。
「エド、しゃん!」
「は、はい?」
「ふ、たり、きりで、誕生日……」
「祝ってくださいますか?」
向き直って問いかければ、嬉し気に頬を染めるエドヴァルドがいて、これが正解だったのだとイサギはツムギに感謝した。
盛大に祝うのは自分の誕生日にして、エドヴァルドの誕生日は二人きりで恋人同士、ゆっくりと密やかに祝う。
理解はできたが、恋人同士の誕生日の祝い方など、イサギには分からない。
「ツムギ、料理は俺がした方がええんやろか?」
「一緒にしたらいいじゃない。それも楽しみの一つよ」
「プレゼントは何がええんやろ?」
「イサギが選んだものなら、何でも喜んでくれると思うけどな」
エドヴァルドが席を外した隙に聞いてみると、料理はエドヴァルドとすることにしても、プレゼントに関しては全く参考にならない答えが返って来る。
テンロウ領の領主の長男で、何十人もの使用人に囲まれて、魔術具に至っては前の国王から賜ったものまであるエドヴァルド。持っていないものを考える方が難しい。
「婚約指輪は作ったやろ、魔術具は持ってはる、文房具も趣味がええのを揃えてはるし、ネックレスは前に作った……日傘もプレゼントした……何を持ってないんやろ」
「私の話ですか?」
お茶を淹れて来てくれたエドヴァルドが戻って来たのに、イサギは慌ててソファからずり落ちた後で、床に座り込んでしゅんと肩を落とす。
「1年以上エドさんと暮らしとるのに、欲しいものの一つも分からへん。俺は、婚約者失格や」
「そんなに物欲がないんですよね。欲しいものは言う前に与えられて来たので、何が欲しいか、私もはっきり分かっていなくて」
「色は何色が好きや?」
「青系統は似合うと言われてますけど、何色でも好きですね」
「食べ物も好き嫌いないって言うてたもんなぁ」
「食べ物は量が少ないと困るんですけど、それ以外にすごく甘いものは好んで食べないくらいでしょうか」
「匂いは?」
「シトラス系と森林系の匂いが好きですが、ハーブの匂いも好きですよ」
「全然参考にならへん!」
頭を抱えたイサギは、諦めてツムギにマユリのチケットの話をした。年明けのセイリュウ領での公演のチケットを、マユリのために確保してくれるように、連絡はしていたのだ。
用意していたチケットは、マユリとご両親の分が入っていて、イサギはツムギに深く感謝した。自分で取ろうともしたのだが、付加価値が付いているとかで、とにかくチケット争奪戦は熾烈で、般若のような形相で売り場に殺到する群衆に、とても売り場の列に並ぶことすらできずに震えていたイサギだった。
そのチケットでイサギは閃いた。
「チケット……!」
「それだ!」
双子は目だけで会話をする。
エドヴァルドの弟のクリスティアンは、王都で音楽会が開かれるようになったのをとても喜んでいた。前国王がローズとダリアを産んだ後に亡くなった王妃のために喪に服していて、賑やかな催し物は一切許可されず、音楽会が開かれたとしても鎮魂歌しか許されていなかった20年、魔術で音楽会の様子を録音した物を聞いて、クリスティアンはオーケストラの演奏に憧れていたのだという。
エドヴァルドにおやすみなさいを言ってから、ツムギとアイコンタクトをして、部屋で合流する。
通信の魔術具を使って、ツムギが繋げたのは、ダリアのところだった。
「ダリア様、お願いがあります」
『ツムギ様がお願いなんて、珍しくてドキドキしますわ』
「イサギとエドさんのために、王都の音楽会のチケットを確保していただけませんでしょうか?」
「じょ、女王はんに、そないなこと頼んでええの!?」
『イサギ様はツムギ様のお兄様で、エドヴァルド様はわたくしの従兄ですのよ。家族のようなものではないですか。素晴らしいオペラがエドヴァルド様の誕生日近くに開催されますの。チケット、お送りしますわね』
音楽会や演劇や舞踏の開催者となっている一国の女王であるダリアは、チケットなど手に入れるのは容易い。代金をと言っても『エドヴァルド様のお誕生日お祝いと思って、受け取ってください』と送られて来たチケットを、イサギはただで貰うことしかできなかった。
何度もお礼を言って、通信を切った後に、ツムギにもお礼を言う。
「俺一人やったら思い付きもせんかった」
「お誕生日にデートなんて、ロマンチックじゃない。楽しんでね」
「ツムギも、ダリア女王はんとのこと、幸せにな」
ダリアの家族に紹介されて、歓迎されているのならば、18歳になれば結婚も当然考えられているのだろう。ローズとサナの結婚が重なったときに、サナがローズの結婚の式典が終わるまで結婚を我慢したように、イサギも18歳になってすぐにはエドヴァルドと結婚ができないかもしれない。
待つのはつらいが、妹が幸せになるのは嬉しい。
「セイリュウ領での公演の間はここから通うけど、1月の下旬には王都に戻らなきゃいけないのよね。しっかりね、イサギ」
「何をしっかりするか分からへんけど、頑張る」
キスもした。膝枕もした。
この先がどうなるのか、イサギにはよく分からないが、18歳になるまで分からない方が悶々としなくてすむのかもしれないし、エドヴァルドが18歳になれば全部教えてくれると言っているのでそれを信頼して、イサギは無理に知識を求めようとはしていなかった。
「王都での公演の間は、お食事に呼んでくださることがあったの。ローズ女王様とリュリュ様と赤ちゃんのユーリ様にも会わせてもらったわ」
「ローズ女王はんの反応はどないやった?」
「ダリア様が男性を愛せないことは気付いてらしたみたい。イサギの妹だから安心って言われちゃった。イサギ、ありがとうね」
空回りをして、魔女騒動で自分の力不足を痛感したが、リュリュの呪いを解く手助けをしたことや、覚えていないが魔女を倒したことなどを、ローズは高く評価してくれていた。妹のために良い兄と認識されていることが嬉しくて、イサギは穏やかに隣りで聞いているエドヴァルドに向き直った。
「エドさんがサナちゃんに呪いをかけられてはるって勘違いしての情けない行動やったけど、ローズ女王はんは、そんな風に考えてくれてて……エドさんが魔女を倒してくれたおかげや」
「いえ、あれは、イサギさんが……いえ、なんでもないです」
自分が倒したのにエドヴァルドが倒したと思い込んでいるのを否定しなかったのは、実の母親を自らの手で王妃の座から引きずり下ろしたという事実に、イサギが傷付くかもしれないという配慮だった。当のイサギの方は、魔女を最早母親とは思ってもいないのだが。
「今年はクリスティアンはテンロウ領の実家で年末年始は過ごすと言っています。どうやら、年が明けたら例の彼女を連れて来るようですよ」
「クリスさんの好きなひとって、どんな方?」
「年上で、医者をしてはる女性やって聞いたけど」
「元は貴族の身分だったようですが、荒れた歓楽街で春をひさぐ女性たちの診療を始めて、お父様が貴族の身分をはく奪されたと聞いています。頭の回転の速い、知識も教養もある女性みたいですよ」
年はクリスティアンより7つ上で、エドヴァルドと同じ年だが、政略結婚では親子どころか祖父母と孫ほど年の離れた相手と結婚する場合もある。エドヴァルドの母親も父親よりも4つ年上なので、問題はないとエドヴァルドは話してくれた。
「年が上だったのもあって、母は早く子どもを産みたいと焦っていたようですが、結婚3年目で私が産まれて、10年目でクリスティアンが産まれて……」
クリスティアンが魔術師として非常に優秀だったから、必死の不妊治療の末の第2子の妊娠出産で、安堵したところで、クリスティアンの離乳食に毒が混ぜられれば、神経質になるのも当然のこと。
「不妊治療を受けていたのも、子どもの産めない女は価値がないと恥になるから、父にも隠していたそうなんです……クリスティアンの彼女が医者で、女性のことについて詳しく説明してくれたと教えたおかげで、ようやく口に出せたようで」
「クリスさんはええひとを見つけはったんやな」
「お父さんが出て行って、二人きりでずっと暮らすのかと思ってたのに、私にはダリア様、イサギにはエドさん、クリスさんにも恋人ができて、テンロウ領のご両親に、ローズ女王陛下とリュリュ様とユーリ様、それにリュリュ様のご両親まで……大家族になったね」
「せやな。モウコ領にはお父ちゃんと奥さんと赤ちゃんもおるし」
二人きりで過ごしていた日々は、毎日の生活に必死で、寂しさを感じることもなかった。ツムギは舞台に打ち込み、イサギは薬草畑で植物を育てつつ、生きているのか死んでいるのか分からないような生活をしてきた。
それが今は、18歳になる日を夢見て、ツムギは劇団で各地を飛び回り、イサギは魔術学校に通って活き活きと過ごしている。
1年半前の生活には、もう戻れそうになかった。
「そういえば、1月の終わりにエドさんの誕生日があるんやけど、ツムギは帰って来られるか?」
「イサギ、そういうとこよ?」
「そ、そういうとこ? どういうとこや?」
「イサギとエドさんは婚約者で恋人なんでしょう? 私はお邪魔はしません」
誕生日を家族で祝うつもりでツムギもクリスティアンも、なんなら養父やシュイ、テンロウ領のご両親まで呼ぶつもりだったイサギに、ツムギの言葉は衝撃的だった。
今年の1月の誕生日を、エドヴァルドはイサギに教えもしなかった。教えないままに、自分とお揃いの手袋とマフラーをくれた。
盛大に祝うよりも、慎ましやかなエドヴァルドは、イサギと二人きりで誕生日を過ごすことを選んでくれていたのだと、今更ながらに気付く。
「エド、しゃん!」
「は、はい?」
「ふ、たり、きりで、誕生日……」
「祝ってくださいますか?」
向き直って問いかければ、嬉し気に頬を染めるエドヴァルドがいて、これが正解だったのだとイサギはツムギに感謝した。
盛大に祝うのは自分の誕生日にして、エドヴァルドの誕生日は二人きりで恋人同士、ゆっくりと密やかに祝う。
理解はできたが、恋人同士の誕生日の祝い方など、イサギには分からない。
「ツムギ、料理は俺がした方がええんやろか?」
「一緒にしたらいいじゃない。それも楽しみの一つよ」
「プレゼントは何がええんやろ?」
「イサギが選んだものなら、何でも喜んでくれると思うけどな」
エドヴァルドが席を外した隙に聞いてみると、料理はエドヴァルドとすることにしても、プレゼントに関しては全く参考にならない答えが返って来る。
テンロウ領の領主の長男で、何十人もの使用人に囲まれて、魔術具に至っては前の国王から賜ったものまであるエドヴァルド。持っていないものを考える方が難しい。
「婚約指輪は作ったやろ、魔術具は持ってはる、文房具も趣味がええのを揃えてはるし、ネックレスは前に作った……日傘もプレゼントした……何を持ってないんやろ」
「私の話ですか?」
お茶を淹れて来てくれたエドヴァルドが戻って来たのに、イサギは慌ててソファからずり落ちた後で、床に座り込んでしゅんと肩を落とす。
「1年以上エドさんと暮らしとるのに、欲しいものの一つも分からへん。俺は、婚約者失格や」
「そんなに物欲がないんですよね。欲しいものは言う前に与えられて来たので、何が欲しいか、私もはっきり分かっていなくて」
「色は何色が好きや?」
「青系統は似合うと言われてますけど、何色でも好きですね」
「食べ物も好き嫌いないって言うてたもんなぁ」
「食べ物は量が少ないと困るんですけど、それ以外にすごく甘いものは好んで食べないくらいでしょうか」
「匂いは?」
「シトラス系と森林系の匂いが好きですが、ハーブの匂いも好きですよ」
「全然参考にならへん!」
頭を抱えたイサギは、諦めてツムギにマユリのチケットの話をした。年明けのセイリュウ領での公演のチケットを、マユリのために確保してくれるように、連絡はしていたのだ。
用意していたチケットは、マユリとご両親の分が入っていて、イサギはツムギに深く感謝した。自分で取ろうともしたのだが、付加価値が付いているとかで、とにかくチケット争奪戦は熾烈で、般若のような形相で売り場に殺到する群衆に、とても売り場の列に並ぶことすらできずに震えていたイサギだった。
そのチケットでイサギは閃いた。
「チケット……!」
「それだ!」
双子は目だけで会話をする。
エドヴァルドの弟のクリスティアンは、王都で音楽会が開かれるようになったのをとても喜んでいた。前国王がローズとダリアを産んだ後に亡くなった王妃のために喪に服していて、賑やかな催し物は一切許可されず、音楽会が開かれたとしても鎮魂歌しか許されていなかった20年、魔術で音楽会の様子を録音した物を聞いて、クリスティアンはオーケストラの演奏に憧れていたのだという。
エドヴァルドにおやすみなさいを言ってから、ツムギとアイコンタクトをして、部屋で合流する。
通信の魔術具を使って、ツムギが繋げたのは、ダリアのところだった。
「ダリア様、お願いがあります」
『ツムギ様がお願いなんて、珍しくてドキドキしますわ』
「イサギとエドさんのために、王都の音楽会のチケットを確保していただけませんでしょうか?」
「じょ、女王はんに、そないなこと頼んでええの!?」
『イサギ様はツムギ様のお兄様で、エドヴァルド様はわたくしの従兄ですのよ。家族のようなものではないですか。素晴らしいオペラがエドヴァルド様の誕生日近くに開催されますの。チケット、お送りしますわね』
音楽会や演劇や舞踏の開催者となっている一国の女王であるダリアは、チケットなど手に入れるのは容易い。代金をと言っても『エドヴァルド様のお誕生日お祝いと思って、受け取ってください』と送られて来たチケットを、イサギはただで貰うことしかできなかった。
何度もお礼を言って、通信を切った後に、ツムギにもお礼を言う。
「俺一人やったら思い付きもせんかった」
「お誕生日にデートなんて、ロマンチックじゃない。楽しんでね」
「ツムギも、ダリア女王はんとのこと、幸せにな」
ダリアの家族に紹介されて、歓迎されているのならば、18歳になれば結婚も当然考えられているのだろう。ローズとサナの結婚が重なったときに、サナがローズの結婚の式典が終わるまで結婚を我慢したように、イサギも18歳になってすぐにはエドヴァルドと結婚ができないかもしれない。
待つのはつらいが、妹が幸せになるのは嬉しい。
「セイリュウ領での公演の間はここから通うけど、1月の下旬には王都に戻らなきゃいけないのよね。しっかりね、イサギ」
「何をしっかりするか分からへんけど、頑張る」
キスもした。膝枕もした。
この先がどうなるのか、イサギにはよく分からないが、18歳になるまで分からない方が悶々としなくてすむのかもしれないし、エドヴァルドが18歳になれば全部教えてくれると言っているのでそれを信頼して、イサギは無理に知識を求めようとはしていなかった。
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