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最終章 マウリ様との結婚
11.わたくしの26歳のお誕生日
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夏に実る夏苺は寒冷地の辺境伯領で栽培されているが、冬に実る苺は温暖なラント領で栽培されている。
わたくしのお誕生日には毎年クリスティアンが大粒の苺をラント領から持ってきてくれていた。
今年のお誕生日について、カールロ様とスティーナ様はわたくしに言った。
「娘の結婚前の最後のお誕生日だ。ラント家で祝ってもらってもいいのだよ?」
「わたくしとマウリの我が儘で、アイラ様はずっとラント家のご両親と引き離されてきました。最後のお誕生日くらいは一緒に祝ってはどうでしょう?」
ラント家でわたくしのお誕生日が祝われるのは20歳のとき以来ではないだろうか。20歳のときにはエイラ様がわたくしのためにティアラを作ってくださって、わたくしはそれを身につけてラント家でのお誕生パーティーに出た。
成人する18歳も大事なのだが、それよりも十の位の桁が変わる20歳という年齢をラント領ではとても大事にしているようなのだ。
「両親と話してみます」
わたくしは魔法の通信具で両親と話し合うことにした。
「カールロ様とスティーナ様はラント領でお誕生日を祝ってもらったらいいと仰るんです。父上と母上はどう思いますか?」
わたくしの問いかけに父上と母上が微笑んでいる。
『アイラの望む方で構わないよ』
『結婚する前の最後のお誕生日といっても、アイラのお誕生日はこれから何度も来ます。それほど拘らなくてもいいと思うのです』
「わたくしの望むように……」
両親に言われてわたくしは考えた。わたくしは12歳のときからずっとヘルレヴィ領で暮らしている。ヘルレヴィ家はわたくしの我が家のような場所だ。結婚前の最後のお誕生日だからといって、父上と母上とクリスティアンと、ラント家でお誕生日を開くのと、ヘルレヴィ家でお誕生日を開くのとどう違うのだろう。
カールロ様とスティーナ様の心遣いは嬉しかったがわたくしにとってはこのヘルレヴィ家が我が家のようなものだった。
「クリスティアンと父上と母上をヘルレヴィ家にお招きしてお誕生日を開きたいと思います。来てくださいますか?」
『喜んで行くよ』
『アイラ、迎えに来て下さいね』
わたくしはヘルレヴィ家でお誕生日を祝われることを望んだ。
お誕生日の当日にはラント家から両親とクリスティアンを移転の魔法で連れて来る。両親とクリスティアンにはわたくしは見せたい場所があった。
「マウリ様、父上と母上とクリスティアンに、離れの棟を見せてもいいでしょう?」
「いいよ。ご案内します」
マウリ様とわたくしで両親とクリスティアンを離れの棟に案内する。わたくしたち好みに整えられた離れの棟を、両親もクリスティアンもじっくりと見ていた。
「コーヒーを淹れる道具がありますね」
「クリスティアン、知っているのですね」
「はい、僕も欲しくて調べました。ミルヴァ様と結婚したら、僕も買うつもりでした」
コーヒーのドリッパーやコーヒーミルを見てクリスティアンはすぐに気付いたようだ。クリスティアンもコーヒーに興味があったということには驚かないが、ミルヴァ様と結婚するまでは買うのを控えているという事実に少し驚く。
「ミルヴァ様と結婚してからでいいのですか? クリスティアンは興味があるものはすぐに手に入れるイメージがありました」
「僕一人でコーヒーを淹れて飲んでも楽しくないですからね。ミルヴァ様が一緒に飲んでくれてこそ、コーヒーが美味しくなるのだと思います。淹れるのを失敗しても、ミルヴァ様がいてくれたら、きっと笑い話にできます」
頬を染めて話すクリスティアンの様子に、ミルヴァ様との関係が本当に良好なのだということを理解する。一緒にコーヒーを淹れて飲みたい相手など、愛している相手しかいないだろう。愛の告白のような言葉にわたくしが微笑んでいると、クリスティアンが澄ました顔でわたくしに言う。
「ミルヴァ様に言わないでくださいね。内緒で準備しておくんですから」
ミルヴァ様と結婚したら内緒でコーヒーを淹れる道具を買って、ミルヴァ様と試行錯誤して美味しいコーヒーを淹れられるようにする。それを考えるだけで微笑ましくなる。
「言わないよ、クリス様。みー、喜ぶと思う」
「ミルヴァ様は喜ぶでしょうね」
ミルヴァ様がコーヒーを飲んだことがあるのかどうかは分からない。わたくしとマウリ様のように外出したときだけの楽しみにしているのかもしれない。けれど、クリスティアンがミルヴァ様とコーヒーを飲むために道具を準備していたと分かれば喜ぶことは間違いなかった。
「どの部屋もとても綺麗で日当たりがいいね」
「マウリ様とミルヴァ様が閉じ込められていたころは、狭くて寒い場所だったのですが、今はヴァンニ家を治めていらっしゃるヨハンナ様とサロモン先生がご結婚なさったときに改築して、改装して、ご家族で使えるようにしたのです」
「この窓からはウッドデッキがあって、庭にも出られるのですね」
「子どもたちが遊びやすいようにと父上も母上も考えてくれたようです」
マウリ様の喋り方がわたくしの父上と母上の前では自然と敬語になっているのに気付いて、わたくしはマウリ様の成長を感じる。敬語で喋らないマウリ様もとても可愛くて大好きなのだが、敬語で喋ると大人びた雰囲気になって、胸がドキドキしてしまう。
「あー! アイラ様とまー兄上、アイラ様のご両親をお招きしてるー!」
「ダーヴィド様!」
「ダーヴィド、勝手に入って来ちゃダメだよ」
「私もお招きされたかったー!」
ダーヴィド様は離れの棟に興味津々なのである。なんでこんなに興味津々なのかは分からない。
「ダーヴィドはどうしてここに入りたいのかな?」
「ここは、昔、らいちゃんが暮らしていたでしょう? らいちゃんのお部屋が残っているか、見たかったの」
「ライネの部屋か。まだ小さかったから、マルガレータさんと寝ていて、部屋はなかったんじゃないかな」
「そっか……らいちゃんの使ってたカップとか、お皿とかないかな」
ダーヴィド様が離れの棟に妙にこだわる理由はライネ様だった。言われてみると納得できる。
「だーちゃん、アイラ様とまー兄上は、ラント家のご両親と大事な時間をすごされているんだからね」
「私も大事な時間に混ぜて欲しいの!」
「だーちゃんはちょっと違うでしょう?」
ライネ様に手を引かれてダーヴィド様は連れ去られた。ダーヴィド様がいなくなるとわたくしの両親がくすくすと笑っている。
「ヘルレヴィ家の次男様は個性的だと聞いていたけど、可愛いね」
「シルヴェン家のライネ様とお似合いでしたね」
乱入してきたダーヴィド様のこともわたくしの両親は暖かく受け止めていた。
子ども部屋に戻るとお誕生日のケーキが運ばれて来る。真っ赤な苺の乗ったタルトに、サラ様とティーア様の口が妙な形になっている。
「どうされたのですか、サラ様、ティーア様」
「よだれをながしたら、はずかしいの」
「おくちは、きゅっととじておくの」
大好物の苺を前に涎が垂れそうになるのを堪えているために、サラ様とティーア様はお口が妙な形になっているのだった。
「アイラ様、サラとティーアのお顔が変になっちゃうわ」
「早く食べましょう」
「アイラ様のお母様とお父様も一緒ね」
ミルヴァ様がサラ様とティーア様を心配して、フローラ様が早く食べていいと言うように促している。エミリア様はにこにこしてわたくしの両親を見ていた。
「皆様、いただきましょう」
「アイラ様、お誕生日おめでとう!」
「アイラ、お誕生日おめでとう」
「アイラもすっかり大人ですね。結婚が楽しみです」
「いただきますっ!」
「いただきまーす!」
わたくしが号令をかけると、マウリ様がわたくしにお祝いを言ってくださる。両親もわたくしと見つめ合う中、サラ様とティーア様はケーキにかぶりついていた。
「サラ様もティーア様も食いしん坊なんですから」
「おいしいんだもの!」
「おいしいから、ついつい、たべちゃうの!」
美味しいものをたっぷり食べて育っているサラ様もティーア様も肌艶もよく、肉付きもいい。立派な4歳児だった。
わたくしもソファに座って、ケーキと紅茶をいただくことにした。
わたくしのお誕生日には毎年クリスティアンが大粒の苺をラント領から持ってきてくれていた。
今年のお誕生日について、カールロ様とスティーナ様はわたくしに言った。
「娘の結婚前の最後のお誕生日だ。ラント家で祝ってもらってもいいのだよ?」
「わたくしとマウリの我が儘で、アイラ様はずっとラント家のご両親と引き離されてきました。最後のお誕生日くらいは一緒に祝ってはどうでしょう?」
ラント家でわたくしのお誕生日が祝われるのは20歳のとき以来ではないだろうか。20歳のときにはエイラ様がわたくしのためにティアラを作ってくださって、わたくしはそれを身につけてラント家でのお誕生パーティーに出た。
成人する18歳も大事なのだが、それよりも十の位の桁が変わる20歳という年齢をラント領ではとても大事にしているようなのだ。
「両親と話してみます」
わたくしは魔法の通信具で両親と話し合うことにした。
「カールロ様とスティーナ様はラント領でお誕生日を祝ってもらったらいいと仰るんです。父上と母上はどう思いますか?」
わたくしの問いかけに父上と母上が微笑んでいる。
『アイラの望む方で構わないよ』
『結婚する前の最後のお誕生日といっても、アイラのお誕生日はこれから何度も来ます。それほど拘らなくてもいいと思うのです』
「わたくしの望むように……」
両親に言われてわたくしは考えた。わたくしは12歳のときからずっとヘルレヴィ領で暮らしている。ヘルレヴィ家はわたくしの我が家のような場所だ。結婚前の最後のお誕生日だからといって、父上と母上とクリスティアンと、ラント家でお誕生日を開くのと、ヘルレヴィ家でお誕生日を開くのとどう違うのだろう。
カールロ様とスティーナ様の心遣いは嬉しかったがわたくしにとってはこのヘルレヴィ家が我が家のようなものだった。
「クリスティアンと父上と母上をヘルレヴィ家にお招きしてお誕生日を開きたいと思います。来てくださいますか?」
『喜んで行くよ』
『アイラ、迎えに来て下さいね』
わたくしはヘルレヴィ家でお誕生日を祝われることを望んだ。
お誕生日の当日にはラント家から両親とクリスティアンを移転の魔法で連れて来る。両親とクリスティアンにはわたくしは見せたい場所があった。
「マウリ様、父上と母上とクリスティアンに、離れの棟を見せてもいいでしょう?」
「いいよ。ご案内します」
マウリ様とわたくしで両親とクリスティアンを離れの棟に案内する。わたくしたち好みに整えられた離れの棟を、両親もクリスティアンもじっくりと見ていた。
「コーヒーを淹れる道具がありますね」
「クリスティアン、知っているのですね」
「はい、僕も欲しくて調べました。ミルヴァ様と結婚したら、僕も買うつもりでした」
コーヒーのドリッパーやコーヒーミルを見てクリスティアンはすぐに気付いたようだ。クリスティアンもコーヒーに興味があったということには驚かないが、ミルヴァ様と結婚するまでは買うのを控えているという事実に少し驚く。
「ミルヴァ様と結婚してからでいいのですか? クリスティアンは興味があるものはすぐに手に入れるイメージがありました」
「僕一人でコーヒーを淹れて飲んでも楽しくないですからね。ミルヴァ様が一緒に飲んでくれてこそ、コーヒーが美味しくなるのだと思います。淹れるのを失敗しても、ミルヴァ様がいてくれたら、きっと笑い話にできます」
頬を染めて話すクリスティアンの様子に、ミルヴァ様との関係が本当に良好なのだということを理解する。一緒にコーヒーを淹れて飲みたい相手など、愛している相手しかいないだろう。愛の告白のような言葉にわたくしが微笑んでいると、クリスティアンが澄ました顔でわたくしに言う。
「ミルヴァ様に言わないでくださいね。内緒で準備しておくんですから」
ミルヴァ様と結婚したら内緒でコーヒーを淹れる道具を買って、ミルヴァ様と試行錯誤して美味しいコーヒーを淹れられるようにする。それを考えるだけで微笑ましくなる。
「言わないよ、クリス様。みー、喜ぶと思う」
「ミルヴァ様は喜ぶでしょうね」
ミルヴァ様がコーヒーを飲んだことがあるのかどうかは分からない。わたくしとマウリ様のように外出したときだけの楽しみにしているのかもしれない。けれど、クリスティアンがミルヴァ様とコーヒーを飲むために道具を準備していたと分かれば喜ぶことは間違いなかった。
「どの部屋もとても綺麗で日当たりがいいね」
「マウリ様とミルヴァ様が閉じ込められていたころは、狭くて寒い場所だったのですが、今はヴァンニ家を治めていらっしゃるヨハンナ様とサロモン先生がご結婚なさったときに改築して、改装して、ご家族で使えるようにしたのです」
「この窓からはウッドデッキがあって、庭にも出られるのですね」
「子どもたちが遊びやすいようにと父上も母上も考えてくれたようです」
マウリ様の喋り方がわたくしの父上と母上の前では自然と敬語になっているのに気付いて、わたくしはマウリ様の成長を感じる。敬語で喋らないマウリ様もとても可愛くて大好きなのだが、敬語で喋ると大人びた雰囲気になって、胸がドキドキしてしまう。
「あー! アイラ様とまー兄上、アイラ様のご両親をお招きしてるー!」
「ダーヴィド様!」
「ダーヴィド、勝手に入って来ちゃダメだよ」
「私もお招きされたかったー!」
ダーヴィド様は離れの棟に興味津々なのである。なんでこんなに興味津々なのかは分からない。
「ダーヴィドはどうしてここに入りたいのかな?」
「ここは、昔、らいちゃんが暮らしていたでしょう? らいちゃんのお部屋が残っているか、見たかったの」
「ライネの部屋か。まだ小さかったから、マルガレータさんと寝ていて、部屋はなかったんじゃないかな」
「そっか……らいちゃんの使ってたカップとか、お皿とかないかな」
ダーヴィド様が離れの棟に妙にこだわる理由はライネ様だった。言われてみると納得できる。
「だーちゃん、アイラ様とまー兄上は、ラント家のご両親と大事な時間をすごされているんだからね」
「私も大事な時間に混ぜて欲しいの!」
「だーちゃんはちょっと違うでしょう?」
ライネ様に手を引かれてダーヴィド様は連れ去られた。ダーヴィド様がいなくなるとわたくしの両親がくすくすと笑っている。
「ヘルレヴィ家の次男様は個性的だと聞いていたけど、可愛いね」
「シルヴェン家のライネ様とお似合いでしたね」
乱入してきたダーヴィド様のこともわたくしの両親は暖かく受け止めていた。
子ども部屋に戻るとお誕生日のケーキが運ばれて来る。真っ赤な苺の乗ったタルトに、サラ様とティーア様の口が妙な形になっている。
「どうされたのですか、サラ様、ティーア様」
「よだれをながしたら、はずかしいの」
「おくちは、きゅっととじておくの」
大好物の苺を前に涎が垂れそうになるのを堪えているために、サラ様とティーア様はお口が妙な形になっているのだった。
「アイラ様、サラとティーアのお顔が変になっちゃうわ」
「早く食べましょう」
「アイラ様のお母様とお父様も一緒ね」
ミルヴァ様がサラ様とティーア様を心配して、フローラ様が早く食べていいと言うように促している。エミリア様はにこにこしてわたくしの両親を見ていた。
「皆様、いただきましょう」
「アイラ様、お誕生日おめでとう!」
「アイラ、お誕生日おめでとう」
「アイラもすっかり大人ですね。結婚が楽しみです」
「いただきますっ!」
「いただきまーす!」
わたくしが号令をかけると、マウリ様がわたくしにお祝いを言ってくださる。両親もわたくしと見つめ合う中、サラ様とティーア様はケーキにかぶりついていた。
「サラ様もティーア様も食いしん坊なんですから」
「おいしいんだもの!」
「おいしいから、ついつい、たべちゃうの!」
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