417 / 484
十三章 研究院卒業とキノコブタ
24.歌劇団の春公演
しおりを挟む
歌劇団の公演は今回は大人の恋愛だった。
酒場の歌姫に異国から来た詩人が恋をする。歌姫と詩人は一緒に暮らしだすが、歌姫は自分が妊娠していることを知り、父親が誰か分からないのでお腹の子どもを堕胎しようとする。
お腹の子どもの父親は自分だから結婚して欲しいと詩人は伝えるが、歌姫は詩人の家を出て行ってしまう。
詩人が歌姫を探し出したときに、歌姫は一人で子どもを産んで育てる決意をしていた。詩人は歌姫に故郷に一緒に戻って暮らそうと伝えるが、歌姫は自分の育った場所を離れられないと答える。
最後、列車に乗る詩人を見送る歌姫に、詩人は「次に書く詩は君に捧げる」と約束して故郷に帰るのだった。
かなり難しい題材だったので、原作を読んでわたくしたちは勉強をしていくつもりだったのだが、ミルヴァ様もフローラ様もエミリア様も知りたいことがあるようだった。
「堕胎って、何なの?」
「なんだか、嫌な感じがするのだけれど」
「アイラ様、分かる?」
わたくしも魔法医の端くれである。堕胎の意味は知っているが、そのことをどう伝えればいいのか少しだけ悩んだ。
「堕胎とは、お腹の中にいる赤ちゃんを殺してお腹から出してしまうことです」
「赤ちゃんを!?」
「どうしてそんなことをするの!?」
ショックを受けているエミリア様とフローラ様に、わたくしは静かに伝える。
「赤ちゃんは全員が望まれて生まれて来るわけではありません。訳があって望まれないでお腹に来る赤ちゃんもいるのです。その赤ちゃんを産んでしまうと、母親も子どもも不幸になります。そういう場合には、堕胎という方法が取られます」
「赤ちゃんは生まれてくると嬉しいものではないの? わたくし、らいちゃんが生まれたときも、だーちゃんが生まれたときも、サラが生まれたときも、ティーアが生まれたときも、とても嬉しかった」
「それは男女が愛し合って生まれた子どもたちだからですよ。カールロ様とスティーナ様は愛し合っているし、サロモン先生とヨハンナ様も愛し合っている。けれど、愛し合っていないのに子どもができてしまうこともあるのです」
「そんな悲しいことがあるのね……」
「堕胎は女性の体を傷付けるので、極力しない方がいいことです。ミルヴァ様もフローラ様もエミリア様も、愛している相手以外と子どもを作るようなことがないように、また、早すぎる年齢で子どもを作ることがないように気を付けなければいけませんね」
女性として当然気を付けるべきことをわたくしが伝えると、ミルヴァ様もフローラ様もエミリア様も真剣な眼差しで頷いていた。わたくしの話が終わりかけていると、マウリ様が言葉を添える。
「赤ちゃんを作るのは女性だけの責任じゃないのに、女性が体を苦しめて、女性だけが責任を負わされるなんてやるせないね」
「その通りですね。男性も責任感を持って女性と接するべきですね」
「私は、自分で責任が取れる年になるまで、アイラ様に触れない」
「マウリ、立派ですよ。私もフローラが結婚できる年になるまでは触れないし、フローラ以外に触れることもありません」
マウリ様もハンネス様も、ここにいる男性陣はとてもしっかりしているのだと実感させられる。わたくしはマウリ様とハンネス様のことが誇らしかった。
「女性のお腹に赤ちゃんが来る……私とらいちゃんはどっちに赤ちゃんが来るの?」
「ダーヴィド様とライネ様は結婚してもお腹に赤ちゃんが来ることはありません。どちらも男性だからです」
「私とらいちゃんの間には赤ちゃんは生まれないの?」
「赤ちゃんは生まれませんが、ヨウシア様とオスカリ先生のように、養子をもらうことができます。養子をもらって、その子を自分の子どもとして育てて暮らすことができますよ」
「だーちゃん、私たち、結婚したら養子をもらおう!」
「そうだね、らいちゃん!」
ライネ様とダーヴィド様はまだ子どもができる仕組みというのをきっちりと分かっていないようだった。女性にしか子どもができないことも、ダーヴィド様は今日初めて知ったようだ。ダーヴィド様とライネ様は結婚したら養子をもらうことで納得して話は終わった。
歌劇団の公演は千秋楽のチケットをもらっていた。初日から毎日、ラント領でも辺境伯領でも、立体映像と音を送って毎日公演が流されている。実際に見に来るよりも安いチケットで観劇できる魔法装置のシステムは盛況で、ラント領でも辺境伯領でも毎日お客様が満員になっていたようだ。前回のアンケートや意見を元に魔法装置にも改良を加えて、ますます見やすいようにしているという。
千秋楽が終わればラント領と辺境伯領のアンケート回収に行くのもわたくしの楽しみだった。
千秋楽の日、わたくしたちは馬車で音楽堂まで行った。わたくしとマウリ様とミルヴァ様とエミリア様とダーヴィド様とサラ様とカールロ様とスティーナ様、ハンネス様とフローラ様とライネ様とティーア様とサロモン先生とヨハンナ様、ターヴィ様、サムエル様とウルスラ様と、わたくしたちの一行だけで前の方の席は埋まってしまっていた。
「詩人と歌姫の悲恋の物語なのよ」
「エミリア様はこの物語をご存じですか?」
「少し難しい物語だから、アイラ様が予習しておきましょうって、本を取り寄せてくれたの」
ターヴィ様に説明するエミリア様にサムエル様もウルスラ様も話を聞いている。
「エミリアちゃんは予習してきたんだね」
「そうなるわね。悲しい物語だったわ」
「どんなお話なのか、わたくしも楽しみですね」
明るく夢に溢れる物語ばかりが歌劇ではないのだということを、ヨウシア様はこの物語で見せてくれるつもりなのだろう。美しい歌姫と詩人との悲恋の物語。大人びた題材はわたくしたちの胸にどう響くのか。
幕が上がると酒場のシーンで、酒場のマスターをヨウシア様が演じている。歌姫の歌に、異国からやってきた詩人が一目で恋に落ちる。
原作をなぞるようにして続いていく物語にわたくしは見入っていた。
歌姫が堕胎を決意するシーンでは、彼女の苦しい思いに涙が滲みそうになる。
どうか詩人の手を取って結婚して子どもを産んで欲しいと、原作を知っているが願ってしまう。
詩人の元から出て行った歌姫が一人で子どもを産んで育てようと決意する場面。追いかけて来た詩人が共に故郷に帰ろうと誘っても、歌姫は断ることが分かっているのに、手に汗を握ってしまう。
別れのシーンではわたくしは涙を零していた。マウリ様が隣りの席からわたくしにハンカチを渡してくれるが、マウリ様も一生懸命涙を堪えて、洟を啜っているのが分かった。
幕が下りるとしんみりとした空気の中で拍手喝さいがわき起こる。
拍手に応えて幕が上がり、役者さんたちが揃って舞台の上でお辞儀をする。
「今年の春の公演も無事に千秋楽を迎えることができました。ラント領でご覧の皆様も、辺境伯領でご覧の皆様も、本当にありがとうございました。今回の公演は大人同士の恋愛を描いたものとなりましたがいかがでしたでしょう? 歌劇団が初舞台を踏んでから六年目の挑戦です。これからもたくさんの演目に挑戦していきたいと思います。まだまだ進化する歌劇団に応援をよろしくお願いします!」
ヨウシア様が挨拶をして深々と頭を下げると、もう一度拍手喝さいが巻き起こる。拍手の中でヨウシア様は大きく手を振ってから、お辞儀をしていた。
難しい題材だったが、サラ様もティーア様も、2歳なりに理解したところはあるようだ。
「わたくち、ばいばい」
「だいすち、ばいばい」
最後のシーンをサラ様とティーア様なりに再現してお芝居の役者さんになり切っているのが可愛い。
「サラとティーアもそろそろ、歌の練習に加わっていい頃じゃない?」
歌劇団の公演が終われば、休みになっていた歌の練習も再開される。ヨウシア様がまたヘルレヴィ家にやってくるのだ。
歌の練習にサラ様とティーア様を参加させることに積極的なエミリア様に、わたくしも賛成だった。
「ライネ様もダーヴィド様も小さい頃から参加していましたからね。サラ様とティーア様もできると思います」
「わたくち、みっちゅ!」
「みっちゅよ!」
「まだ2歳ですね。でももうすぐ3歳になりますね」
サラ様とティーア様の3歳のお誕生日も間近に迫っている。二人ともその日を心待ちにしているようだった。
酒場の歌姫に異国から来た詩人が恋をする。歌姫と詩人は一緒に暮らしだすが、歌姫は自分が妊娠していることを知り、父親が誰か分からないのでお腹の子どもを堕胎しようとする。
お腹の子どもの父親は自分だから結婚して欲しいと詩人は伝えるが、歌姫は詩人の家を出て行ってしまう。
詩人が歌姫を探し出したときに、歌姫は一人で子どもを産んで育てる決意をしていた。詩人は歌姫に故郷に一緒に戻って暮らそうと伝えるが、歌姫は自分の育った場所を離れられないと答える。
最後、列車に乗る詩人を見送る歌姫に、詩人は「次に書く詩は君に捧げる」と約束して故郷に帰るのだった。
かなり難しい題材だったので、原作を読んでわたくしたちは勉強をしていくつもりだったのだが、ミルヴァ様もフローラ様もエミリア様も知りたいことがあるようだった。
「堕胎って、何なの?」
「なんだか、嫌な感じがするのだけれど」
「アイラ様、分かる?」
わたくしも魔法医の端くれである。堕胎の意味は知っているが、そのことをどう伝えればいいのか少しだけ悩んだ。
「堕胎とは、お腹の中にいる赤ちゃんを殺してお腹から出してしまうことです」
「赤ちゃんを!?」
「どうしてそんなことをするの!?」
ショックを受けているエミリア様とフローラ様に、わたくしは静かに伝える。
「赤ちゃんは全員が望まれて生まれて来るわけではありません。訳があって望まれないでお腹に来る赤ちゃんもいるのです。その赤ちゃんを産んでしまうと、母親も子どもも不幸になります。そういう場合には、堕胎という方法が取られます」
「赤ちゃんは生まれてくると嬉しいものではないの? わたくし、らいちゃんが生まれたときも、だーちゃんが生まれたときも、サラが生まれたときも、ティーアが生まれたときも、とても嬉しかった」
「それは男女が愛し合って生まれた子どもたちだからですよ。カールロ様とスティーナ様は愛し合っているし、サロモン先生とヨハンナ様も愛し合っている。けれど、愛し合っていないのに子どもができてしまうこともあるのです」
「そんな悲しいことがあるのね……」
「堕胎は女性の体を傷付けるので、極力しない方がいいことです。ミルヴァ様もフローラ様もエミリア様も、愛している相手以外と子どもを作るようなことがないように、また、早すぎる年齢で子どもを作ることがないように気を付けなければいけませんね」
女性として当然気を付けるべきことをわたくしが伝えると、ミルヴァ様もフローラ様もエミリア様も真剣な眼差しで頷いていた。わたくしの話が終わりかけていると、マウリ様が言葉を添える。
「赤ちゃんを作るのは女性だけの責任じゃないのに、女性が体を苦しめて、女性だけが責任を負わされるなんてやるせないね」
「その通りですね。男性も責任感を持って女性と接するべきですね」
「私は、自分で責任が取れる年になるまで、アイラ様に触れない」
「マウリ、立派ですよ。私もフローラが結婚できる年になるまでは触れないし、フローラ以外に触れることもありません」
マウリ様もハンネス様も、ここにいる男性陣はとてもしっかりしているのだと実感させられる。わたくしはマウリ様とハンネス様のことが誇らしかった。
「女性のお腹に赤ちゃんが来る……私とらいちゃんはどっちに赤ちゃんが来るの?」
「ダーヴィド様とライネ様は結婚してもお腹に赤ちゃんが来ることはありません。どちらも男性だからです」
「私とらいちゃんの間には赤ちゃんは生まれないの?」
「赤ちゃんは生まれませんが、ヨウシア様とオスカリ先生のように、養子をもらうことができます。養子をもらって、その子を自分の子どもとして育てて暮らすことができますよ」
「だーちゃん、私たち、結婚したら養子をもらおう!」
「そうだね、らいちゃん!」
ライネ様とダーヴィド様はまだ子どもができる仕組みというのをきっちりと分かっていないようだった。女性にしか子どもができないことも、ダーヴィド様は今日初めて知ったようだ。ダーヴィド様とライネ様は結婚したら養子をもらうことで納得して話は終わった。
歌劇団の公演は千秋楽のチケットをもらっていた。初日から毎日、ラント領でも辺境伯領でも、立体映像と音を送って毎日公演が流されている。実際に見に来るよりも安いチケットで観劇できる魔法装置のシステムは盛況で、ラント領でも辺境伯領でも毎日お客様が満員になっていたようだ。前回のアンケートや意見を元に魔法装置にも改良を加えて、ますます見やすいようにしているという。
千秋楽が終わればラント領と辺境伯領のアンケート回収に行くのもわたくしの楽しみだった。
千秋楽の日、わたくしたちは馬車で音楽堂まで行った。わたくしとマウリ様とミルヴァ様とエミリア様とダーヴィド様とサラ様とカールロ様とスティーナ様、ハンネス様とフローラ様とライネ様とティーア様とサロモン先生とヨハンナ様、ターヴィ様、サムエル様とウルスラ様と、わたくしたちの一行だけで前の方の席は埋まってしまっていた。
「詩人と歌姫の悲恋の物語なのよ」
「エミリア様はこの物語をご存じですか?」
「少し難しい物語だから、アイラ様が予習しておきましょうって、本を取り寄せてくれたの」
ターヴィ様に説明するエミリア様にサムエル様もウルスラ様も話を聞いている。
「エミリアちゃんは予習してきたんだね」
「そうなるわね。悲しい物語だったわ」
「どんなお話なのか、わたくしも楽しみですね」
明るく夢に溢れる物語ばかりが歌劇ではないのだということを、ヨウシア様はこの物語で見せてくれるつもりなのだろう。美しい歌姫と詩人との悲恋の物語。大人びた題材はわたくしたちの胸にどう響くのか。
幕が上がると酒場のシーンで、酒場のマスターをヨウシア様が演じている。歌姫の歌に、異国からやってきた詩人が一目で恋に落ちる。
原作をなぞるようにして続いていく物語にわたくしは見入っていた。
歌姫が堕胎を決意するシーンでは、彼女の苦しい思いに涙が滲みそうになる。
どうか詩人の手を取って結婚して子どもを産んで欲しいと、原作を知っているが願ってしまう。
詩人の元から出て行った歌姫が一人で子どもを産んで育てようと決意する場面。追いかけて来た詩人が共に故郷に帰ろうと誘っても、歌姫は断ることが分かっているのに、手に汗を握ってしまう。
別れのシーンではわたくしは涙を零していた。マウリ様が隣りの席からわたくしにハンカチを渡してくれるが、マウリ様も一生懸命涙を堪えて、洟を啜っているのが分かった。
幕が下りるとしんみりとした空気の中で拍手喝さいがわき起こる。
拍手に応えて幕が上がり、役者さんたちが揃って舞台の上でお辞儀をする。
「今年の春の公演も無事に千秋楽を迎えることができました。ラント領でご覧の皆様も、辺境伯領でご覧の皆様も、本当にありがとうございました。今回の公演は大人同士の恋愛を描いたものとなりましたがいかがでしたでしょう? 歌劇団が初舞台を踏んでから六年目の挑戦です。これからもたくさんの演目に挑戦していきたいと思います。まだまだ進化する歌劇団に応援をよろしくお願いします!」
ヨウシア様が挨拶をして深々と頭を下げると、もう一度拍手喝さいが巻き起こる。拍手の中でヨウシア様は大きく手を振ってから、お辞儀をしていた。
難しい題材だったが、サラ様もティーア様も、2歳なりに理解したところはあるようだ。
「わたくち、ばいばい」
「だいすち、ばいばい」
最後のシーンをサラ様とティーア様なりに再現してお芝居の役者さんになり切っているのが可愛い。
「サラとティーアもそろそろ、歌の練習に加わっていい頃じゃない?」
歌劇団の公演が終われば、休みになっていた歌の練習も再開される。ヨウシア様がまたヘルレヴィ家にやってくるのだ。
歌の練習にサラ様とティーア様を参加させることに積極的なエミリア様に、わたくしも賛成だった。
「ライネ様もダーヴィド様も小さい頃から参加していましたからね。サラ様とティーア様もできると思います」
「わたくち、みっちゅ!」
「みっちゅよ!」
「まだ2歳ですね。でももうすぐ3歳になりますね」
サラ様とティーア様の3歳のお誕生日も間近に迫っている。二人ともその日を心待ちにしているようだった。
0
お気に入りに追加
389
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
今さら後悔しても知りません 婚約者は浮気相手に夢中なようなので消えてさしあげます
神崎 ルナ
恋愛
旧題:長年の婚約者は政略結婚の私より、恋愛結婚をしたい相手がいるようなので、消えてあげようと思います。
【奨励賞頂きましたっ( ゚Д゚) ありがとうございます(人''▽`)】 コッペリア・マドルーク公爵令嬢は、王太子アレンの婚約者として良好な関係を維持してきたと思っていた。
だが、ある時アレンとマリアの会話を聞いてしまう。
「あんな堅苦しい女性は苦手だ。もし許されるのであれば、君を王太子妃にしたかった」
マリア・ダグラス男爵令嬢は下級貴族であり、王太子と婚約などできるはずもない。
(そう。そんなに彼女が良かったの)
長年に渡る王太子妃教育を耐えてきた彼女がそう決意を固めるのも早かった。
何故なら、彼らは将来自分達の子を王に据え、更にはコッペリアに公務を押し付け、自分達だけ遊び惚けていようとしているようだったから。
(私は都合のいい道具なの?)
絶望したコッペリアは毒薬を入手しようと、お忍びでとある店を探す。
侍女達が話していたのはここだろうか?
店に入ると老婆が迎えてくれ、コッペリアに何が入用か、と尋ねてきた。
コッペリアが正直に全て話すと、
「今のあんたにぴったりの物がある」
渡されたのは、小瓶に入った液状の薬。
「体を休める薬だよ。ん? 毒じゃないのかって? まあ、似たようなものだね。これを飲んだらあんたは眠る。ただし」
そこで老婆は言葉を切った。
「目覚めるには条件がある。それを満たすのは並大抵のことじゃ出来ないよ。下手をすれば永遠に眠ることになる。それでもいいのかい?」
コッペリアは深く頷いた。
薬を飲んだコッペリアは眠りについた。
そして――。
アレン王子と向かい合うコッペリア(?)がいた。
「は? 書類の整理を手伝え? お断り致しますわ」
※お読み頂きありがとうございます(人''▽`) hotランキング、全ての小説、恋愛小説ランキングにて1位をいただきました( ゚Д゚)
(2023.2.3)
ありがとうございますっm(__)m ジャンピング土下座×1000000
※お読みくださり有難うございました(人''▽`) 完結しました(^▽^)
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
時間が戻った令嬢は新しい婚約者が出来ました。
屋月 トム伽
恋愛
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。(リディアとオズワルド以外はなかった事になっているのでifとしてます。)
私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。
婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。
レオン様の誕生日パーティーで、私はエスコートなしで行くと、婚約者のレオン様はアリシア男爵令嬢と仲睦まじい姿を見せつけられた。
一人壁の花になっていると、レオン様の兄のアレク様のご友人オズワルド様と知り合う。
話が弾み、つい地がでそうになるが…。
そして、パーティーの控室で私は襲われ、倒れてしまった。
朦朧とする意識の中、最後に見えたのはオズワルド様が私の名前を叫びながら控室に飛び込んでくる姿だった…。
そして、目が覚めると、オズワルド様と半年前に時間が戻っていた。
レオン様との婚約を避ける為に、オズワルド様と婚約することになり、二人の日常が始まる。
ifとして、時間が戻る前の半年間を時々入れます。
第14回恋愛小説大賞にて奨励賞受賞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる