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二章 龍王と王配の二年目

15.ヨシュアの誕生日の夜

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 ヨシュアの誕生日の夜は特別な夜にしたかった。
 侍従長に取り寄せさせた特に香りのいい香油を寝台の枕元に置いて、ヨシュアを押し倒すようにして寝台に倒れ込むと口付けを受けながらヨシュアが結界を展開していくのが分かる。
 天蓋の幕が降ろされた寝台は二人だけの世界になった。

「今日は、全部わたしにさせてください」

 初めて肌を交わしてから、龍王はヨシュアに導かれてばかりだった。それも気持ちよかったし、ヨシュアに受け入れられている安心感があったから嫌ではなかったのだが、たまには龍王の方がヨシュアを快感に導きたい。
 願うように言えばヨシュアは唇の両端を持ち上げて微笑む。

「いいよ。おいで?」

 こうして「おいで」と言われるのがどれだけ龍王にとっては下半身に響くかをヨシュアは知らない。低く甘いいい声で発せられるその言葉は、龍王の存在を全て肯定しているようだった。

 自己肯定感が低い方ではないが、子種がないという理由で王族としては欠陥品という劣等感のある龍王。ヨシュアとの行為に関しては、子種がないことは全く関係がなかった。

 とろりとした香油の小瓶の蓋を開けて、蜂蜜色の香油を手の平に垂らしていくと、甘い香りが寝台の中に満ちる。全部すると言っているのだが、寝間着を脱がせるのは龍王より体格のいいヨシュアの手助けなしにはできずに、結局手は借りてしまった。
 一糸纏わぬ姿になっているヨシュアの脚の間に体を滑り込ませて、受け入れる場所に香油を垂らしていくと、それだけで興奮してくる。

「その香油……」
「特別なものを用意させました。嫌ですか?」
「嫌ではないけど、媚薬の効果があるものが少し入っているね」
「ヨシュアを感じさせたくて」

 慣らすのも自分でしたいと龍王が意気込んでいたら、侍従長が特別な香油を準備してくれた。痛みがないようにして、快感を増すというものだった。それを使うかは最後まで悩んだのだが、自分の技術だけでヨシュアを快感に導けるか自信がなかったので頼ることにしたのだ。

「いいけど、おれの中に塗り込めて、星宇が中に入れたら、星宇も媚薬に触れることになるよ?」
「多少は平気だと思います。ヨシュアを気持ちよくさせるのが今日は重要なのです」

 ヨシュアの言葉に躊躇いがないではなかったが、ヨシュアの中に指を差し込むと、熱くきつく締め付けてきて、それだけで下半身が反応してしまう。
 侍従長はなぜか、「王配陛下にお話になって、お任せになるとよろしいかと」と言っていたが、今日はどうしても龍王が全てしたかったので、下半身の熱に耐えながら、指を動かす。
 どうしてもヨシュアの指よりも細いし、長さも短いので奥までは届かないが、二本目を差し込んでゆっくりとかき回すと、ヨシュアの息が上がっている気がする。

「……ふっ……あっ……」
「ここ、悦いですか?」
「んんっ……」

 ヨシュアが声を上げたあたりを指で押し上げると、ヨシュアの逞しい中心がぴくぴくと反応して透明な雫を垂らす。
 感じているのを目の当たりにして、下半身が持たなくなりそうで、龍王はヨシュアの胸に吸い付いた。胸の飾りを舐めて、舌で転がしながらヨシュアの中を探る指も止めずにいると、ヨシュアの唇から艶めかしい喘ぎ声が聞こえる。

「星宇、どうじに、したら……ふっ、あぁっ!」

 悦いのだろうとかりっと胸の飾りを甘噛みして、差し込む指を増やしていくと、ヨシュアの体が反って、龍王に胸を押し付けるようになってくる。
 指が三本。それを基準にして入れられるかどうかを確かめるのだと侍従長は初めの説明で言っていたが、ヨシュアの指が三本入った状態と、龍王の指が三本入った状態では全く違う。
 ヨシュアの指は龍王のものよりも太くて長い。身長差が頭半分以上あるのだから仕方がないのだが、手の大きさも指の太さや長さも龍王とヨシュアは全く違う。

 龍王の指三本で入るのか。

 真剣に考えている間も下半身は張りつめてくる。

「星宇? どうした?」

 動きを止めた龍王にヨシュアが訝し気に聞いてくる。

「入れたいのですが、わたしの指三本よりもヨシュアの指三本の方が太いから、このままで入るのかと……」
「初めてじゃないんだから入ると思うよ。何度も星宇のことは受け入れている」

 優しく諭されて、香油に濡れた指を引き抜いて、龍王は手早く自分の寝間着を脱いだ。下着は身に着けておらず、寝間着の下衣を龍王の中心の高ぶりが押し上げて、少し濡らしていた。

 ヨシュアの後ろに中心を宛がうと、濡れたそこが開閉して龍王を誘うようにぱくぱくしている。ゆっくりと腰を進めたいのに、今にも爆発してしまいそうで、必死に息を詰めながら龍王はヨシュアの中に入る。
 全部納めたところで、一番奥にこつんと当たった感触がして、龍王はそれだけでもう限界だった。

「あっ! あぁっ! 出るっ!」
「んっ……だして?」
「くっ……」

 いつもよりもきつい締め付けに白濁を吐き出せば、ヨシュアの中心からもとろとろと白濁が零れているのが分かる。
 吐き出したすぐだが、龍王はすぐに形を取り戻し、ヨシュアの胸の飾りを摘まみながら腰を打ち付ける。吐き出した白濁と蜂蜜色の香油が混ざって、龍王が腰を動かすたびに泡立って行くのが分かる。

 龍族は多淫と言われているが、龍王の精力も並々ならぬものであるらしい。それを受け止めるヨシュアの体力も尋常ではない。

 ヨシュアの中に溢れるほど注ぎ込んで、龍王はヨシュアの胸の上に倒れた。ヨシュアの腹もヨシュアが出した白濁で汚れていて、龍王もヨシュアも汗だくでどちらともいえない体液にまみれていた。

 いつもはこのまま意識を失ってしまうのだが、今日はヨシュアの誕生日であるし、最後までヨシュアの後始末をしたいと、龍王は必死に閉じそうになる瞼を開いていた。体が重くなかなか起き上がれない。
 ヨシュアが龍王を胸に抱いたまま、結界を解いて天蓋の幕の外に手を差し出す。

「ネイサン、濡れた布を」

 いつもはこうやってヨシュアに後始末されているのかと思いながら、龍王が必死に体を起こしてヨシュアの手から布を取ると、ヨシュアの体を拭っていく。
 全身を拭うのは無理で、何度か布を取り替えて、白濁で汚れた部分だけ拭っていくと、ヨシュアが龍王の肩に寝間着をかけて、体を包んでしまった。
 ヨシュアの方は簡単に寝間着を着た状態で、龍王を抱き上げて湯殿まで歩いて行く。ヨシュアが歩くたびに幾筋も足を伝って、白濁が零れ落ちていくのだが、龍王がそれを目にしたのは初めてだった。

「よ、ヨシュア、わたしは自分で歩くから」
「歩けるか?」

 降ろされると足ががくがくして歩けないことに気付いてしまった龍王は、結局ヨシュアに抱き上げられて湯殿まで行った。湯殿では椅子に座って、ヨシュアに壁に手をついてもらう。

 壁に手をついて尻を突き出すような格好になったヨシュアの後ろに指を差し入れて、白濁と香油を掻き出していくと、ヨシュアが甘い吐息を漏らす。

「ぁっ……ふっ……」

 誘われているような気がするのだが、龍王はもう腰が立たないし、白濁も出ないので泣く泣く無心でヨシュアの中を綺麗にするのに集中した。
 お湯で体を流して、簡単に体と髪を洗って、龍王はヨシュアに抱き上げられて湯船に浸かる。湯船の中でヨシュアの脚の間に納まっていると、気だるい疲れで眠くてたまらなくなる。
 うとうととすると湯船の中で溺れそうになる龍王を、ヨシュアが抱き留めてくれる。

「ヨシュアは、どうして、そんなに平気なのですか……」
「鍛え方が違うのかな」
「わたしだって龍のはずなのに」

 不満を述べつつもそれ以上は無理で、ほとんど眠ったまま寝間着を着せられて、清潔な布団に変えられた寝台に寝かされて、龍王はヨシュアの胸にもたれかかって眠ってしまった。
 目が覚めたときにはかなり時間が経っていたが、まだ夜明け前だった。

 部屋の空気が入れ替えられて、しんと冷えているのに気付いて身を起こした龍王に、ヨシュアも目を覚ます。長い髪が絡まないようにヨシュアの手によって龍王の髪は編まれていたし、ヨシュアも髪を編んで垂らしていた。

「どうした? 水か? 手洗いか?」
「いえ……あ、水は欲しいかもしれません」

 喉が渇いていることに気付いた龍王が言えば、ヨシュアが枕元に置いてあった水差しから水を注いで硝子の器に入れてくれる。手渡されて檸檬の香りがする水を一気に飲み干し、龍王はもう一度ヨシュアの胸に寄り添った。

「ヨシュアは温かい……」
「星宇は足先が冷えてる。おれの脚に足をくっつけて寝たらいい」

 深く抱き寄せられて、龍王はヨシュアの体温に安心して再び目を閉じた。
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