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十一章 ネイルアートとフィンガーブレスレット
7.まーちゃんのフィンガーブレスレット
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貴族はお茶会に参加するのも大事な交流だ。
ガブリエラちゃんのキルヒマン侯爵家とは、ディッペル家は非常につながりが深い。
母はシュレーゼマン子爵家の娘だったが、ディッペル公爵家に嫁入りするために一度キルヒマン侯爵家の養子になっている。わたくしが生まれた後に前のキルヒマン侯爵夫妻から相談をされて両親は士官学校に進学した後のエクムント様の仕える先をディッペル家に引き受けている。
そのエクムント様はキルヒマン侯爵夫人がカサンドラ様の従姉だったので、辺境伯家の養子となって、今は辺境伯となっている。わたくしは辺境伯であるエクムント様の婚約者だ。
前のキルヒマン侯爵夫妻がいなければ両親の結婚は成立しておらず、わたくしも生まれていないし、クリスタちゃんを引き取ることもなく、当然ふーちゃんとまーちゃんも生まれていないので、前のキルヒマン侯爵夫妻はわたくしたちにとってとても重要な方々だった。
キルヒマン侯爵が代替わりしても、そのご恩は忘れることなく、キルヒマン侯爵家とディッペル公爵家は親しく交流している。
ガブリエラちゃんのお誕生日のお茶会に参加するためにディッペル家に一度帰ると、ふーちゃんとまーちゃんがわたくしとクリスタちゃんのところに駆けて来る。
まーちゃんはわたくしとクリスタちゃんに見せたいものがあるようだ。
「オリヴァー殿が送って下さったのです。フィンガーブレスレット! わたくしのお手手にぴったりなのです!」
小さなまーちゃんの手に合わせて作ってあるフィンガーブレスレットは特注品だろう。オリヴァー殿がどれだけ心を傾けてまーちゃんのために注文してくださったかがよく分かる。
まだ五歳のまーちゃんの手に合うようにサイズを調べてくださったに違いない。
「よかったですね。ガブリエラ嬢のお誕生日にそれを着けていきましょうね」
「はい! オリヴァー殿も招待されていますか?」
「ガブリエラ嬢のお祖母様は辺境伯領の出身なので、オリヴァー殿も招待されていると思いますよ」
「わたくし、会って直接お礼を言いたいのです。着けているところを見て欲しいですし」
小さいがまーちゃんも恋する乙女だった。
まーちゃんのフィンガーブレスレットは最初は白かと思ったのだが、ところどころにきらりと光るものがあって、銀糸が使われているのが分かる。白と銀のグラデーションの紐は高価だろうし、とても貴重なものだと見ていて分かった。飾りのガラスビーズも銀色にきらりと光るようになっている。
「エリザベートお姉様、わたくしの爪をグラデーションに塗ってくださいますか?」
「いいですよ、マリア」
「ありがとうございます」
「クリスタ、マニキュアを貸してくれますか?」
「はい、お姉様。お姉様、わたくしの爪はフレンチに塗ってくださいますか?」
「いいですよ、クリスタ」
子ども部屋にまーちゃんを呼んで、ソファに座ってもらって、フィンガーブレスレットは外してもらって、小さな爪にクリスタちゃんから借りたマニキュア二色でグラデーションを作っていく。
クリスタちゃんにはハインリヒ殿下からもらった少し濃い目のピンクとわたくしの不透明のシェルピンクのマニキュアで爪をフレンチに塗り分けた。
わたくしの爪はわたくしのピンクのマニキュアとクリスタちゃんのピンクのマニキュアでグラデーションにした。
爪も美しく塗って、ドレスも用意して、ガブリエラちゃんのお誕生日に備える。
ガブリエラちゃんのお誕生日ではわたくしとクリスタちゃんとまーちゃんとレーニちゃんは注目の的だった。
「エリザベート嬢の真似をして、わたくしも爪をフレンチに塗り分けてみたのです」
「レーニ嬢とても綺麗ですわ」
「マリア嬢もフィンガーブレスレットを着けているのですね。白かと思ったら銀色が混じっているではないですか」
「わたくし、オリヴァー殿から頂いたのです」
マニキュアの塗り方とフィンガーブレスレットに視線が集まっている。
「エリザベート様、クリスタ様、マリア様、フランツ様、レーニ様、デニス様、わたくしのお誕生日にお越しくださってありがとうございます。エリザベート様とクリスタ様とマリア様とレーニ様の着けているその素敵な手の装飾品は何ですか? それに爪も不思議な塗り方をしていますね」
「これはフィンガーブレスレットといって、お姉様が考えたものをエクムント様が製品に仕上げてくださったものです。フィンガーブレスレットという名称はお姉様が考えたのです」
「爪も、エリザベートお姉様が塗って下さったのです。これはフレンチと言って、エリザベートお姉様とクリスタお姉様の爪はグラデーションというのだそうです」
誇らしげに語るクリスタちゃんとまーちゃんにわたくしは恥ずかしくなってしまう。
フィンガーブレスレットの名称もわたくしが考えたのではなくて、前世の記憶を掘り起こしたものだし、フィンガーブレスレット自体わたくしが考えたものではなくて前世でこういうものがあったというのを再現しただけなのだ。
爪もまた同じで、フレンチに塗り分ける方法もグラデーションにする方法も、前世の記憶を使っただけのことだった。
それをわたくしの手柄のように言われてしまうととても恥ずかしい。
「エクムント叔父様、エリザベート様はすごいのですね」
「エリザベート嬢の発想にはいつも驚かされているよ。はい、ガブリエラ。お誕生日おめでとう」
「これは、もしかして、フィンガーブレスレットですか!?」
「きっと欲しがるだろうと思って作らせてきたよ」
「開けていいですか?」
「どうぞ」
受け取った薄い箱を持ってガブリエラちゃんが目を輝かせている。箱を開けると金色の紐で編まれたフィンガーブレスレットが中から出て来た。
ガブリエラちゃんは早速手に着けている。
「これでわたくしもエリザベート様とクリスタ様とマリア様とレーニ様とお揃いになりました。わたくし、流行の最先端です! エクムント叔父様、本当にありがとうございます!」
エクムント様に飛び付くようにしてものすごく喜んでいるガブリエラちゃんに、エクムント様は奢るようなことは決して言わなかった。
「これはフィンガーブレスレットを考えてくれたエリザベート嬢のおかげなのだから、感謝はエリザベート嬢にしなさい」
「ありがとうございます、エリザベート様」
「いえ、わたくしは原案を考えただけで、製品として作り上げたのはエクムント様です」
「エリザベート嬢の発想がなければ存在しなかったものですから。辺境伯領の新しい特産品になりそうです。辺境伯領は本当に素晴らしい人材を手に入れた」
手に入れたとエクムント様が言ってくださった。
観劇のデートをしたときには遠慮していたのに、今ははっきりとわたくしはエクムント様のものだと示してくれている。
エクムント様の言葉に胸をときめかせていると、まーちゃんがオリヴァー殿にお礼を言いに行っていた。
「オリヴァー殿、フィンガーブレスレットとても嬉しいです。こんなにもぴったりで、わたくしの手の大きさがよく分かりましたね」
「私の妹がマリア様と同じ年なのです。妹を参考に作らせました」
「そうだったのですね。わたくし、こんなプレゼントがもらえてとても幸せです」
喜んでいるまーちゃんにオリヴァー殿は目を細めている。まーちゃんは可愛いので妹のように思っているのだろう。
まーちゃんもいつかわたくしのようにオリヴァー殿に恋愛対象として見られないことに悩むのだろうか。
わたくしと似すぎているまーちゃんのことが、姉として心配になる。
年上の褐色の肌の男性を好きになって、幼い頃に婚約をして、それから長い時間を婚約者として過ごしていく。
好みといい、状況といい、まーちゃんとわたくしは似すぎていて、血は争えないものだと思っていた。
ガブリエラちゃんのキルヒマン侯爵家とは、ディッペル家は非常につながりが深い。
母はシュレーゼマン子爵家の娘だったが、ディッペル公爵家に嫁入りするために一度キルヒマン侯爵家の養子になっている。わたくしが生まれた後に前のキルヒマン侯爵夫妻から相談をされて両親は士官学校に進学した後のエクムント様の仕える先をディッペル家に引き受けている。
そのエクムント様はキルヒマン侯爵夫人がカサンドラ様の従姉だったので、辺境伯家の養子となって、今は辺境伯となっている。わたくしは辺境伯であるエクムント様の婚約者だ。
前のキルヒマン侯爵夫妻がいなければ両親の結婚は成立しておらず、わたくしも生まれていないし、クリスタちゃんを引き取ることもなく、当然ふーちゃんとまーちゃんも生まれていないので、前のキルヒマン侯爵夫妻はわたくしたちにとってとても重要な方々だった。
キルヒマン侯爵が代替わりしても、そのご恩は忘れることなく、キルヒマン侯爵家とディッペル公爵家は親しく交流している。
ガブリエラちゃんのお誕生日のお茶会に参加するためにディッペル家に一度帰ると、ふーちゃんとまーちゃんがわたくしとクリスタちゃんのところに駆けて来る。
まーちゃんはわたくしとクリスタちゃんに見せたいものがあるようだ。
「オリヴァー殿が送って下さったのです。フィンガーブレスレット! わたくしのお手手にぴったりなのです!」
小さなまーちゃんの手に合わせて作ってあるフィンガーブレスレットは特注品だろう。オリヴァー殿がどれだけ心を傾けてまーちゃんのために注文してくださったかがよく分かる。
まだ五歳のまーちゃんの手に合うようにサイズを調べてくださったに違いない。
「よかったですね。ガブリエラ嬢のお誕生日にそれを着けていきましょうね」
「はい! オリヴァー殿も招待されていますか?」
「ガブリエラ嬢のお祖母様は辺境伯領の出身なので、オリヴァー殿も招待されていると思いますよ」
「わたくし、会って直接お礼を言いたいのです。着けているところを見て欲しいですし」
小さいがまーちゃんも恋する乙女だった。
まーちゃんのフィンガーブレスレットは最初は白かと思ったのだが、ところどころにきらりと光るものがあって、銀糸が使われているのが分かる。白と銀のグラデーションの紐は高価だろうし、とても貴重なものだと見ていて分かった。飾りのガラスビーズも銀色にきらりと光るようになっている。
「エリザベートお姉様、わたくしの爪をグラデーションに塗ってくださいますか?」
「いいですよ、マリア」
「ありがとうございます」
「クリスタ、マニキュアを貸してくれますか?」
「はい、お姉様。お姉様、わたくしの爪はフレンチに塗ってくださいますか?」
「いいですよ、クリスタ」
子ども部屋にまーちゃんを呼んで、ソファに座ってもらって、フィンガーブレスレットは外してもらって、小さな爪にクリスタちゃんから借りたマニキュア二色でグラデーションを作っていく。
クリスタちゃんにはハインリヒ殿下からもらった少し濃い目のピンクとわたくしの不透明のシェルピンクのマニキュアで爪をフレンチに塗り分けた。
わたくしの爪はわたくしのピンクのマニキュアとクリスタちゃんのピンクのマニキュアでグラデーションにした。
爪も美しく塗って、ドレスも用意して、ガブリエラちゃんのお誕生日に備える。
ガブリエラちゃんのお誕生日ではわたくしとクリスタちゃんとまーちゃんとレーニちゃんは注目の的だった。
「エリザベート嬢の真似をして、わたくしも爪をフレンチに塗り分けてみたのです」
「レーニ嬢とても綺麗ですわ」
「マリア嬢もフィンガーブレスレットを着けているのですね。白かと思ったら銀色が混じっているではないですか」
「わたくし、オリヴァー殿から頂いたのです」
マニキュアの塗り方とフィンガーブレスレットに視線が集まっている。
「エリザベート様、クリスタ様、マリア様、フランツ様、レーニ様、デニス様、わたくしのお誕生日にお越しくださってありがとうございます。エリザベート様とクリスタ様とマリア様とレーニ様の着けているその素敵な手の装飾品は何ですか? それに爪も不思議な塗り方をしていますね」
「これはフィンガーブレスレットといって、お姉様が考えたものをエクムント様が製品に仕上げてくださったものです。フィンガーブレスレットという名称はお姉様が考えたのです」
「爪も、エリザベートお姉様が塗って下さったのです。これはフレンチと言って、エリザベートお姉様とクリスタお姉様の爪はグラデーションというのだそうです」
誇らしげに語るクリスタちゃんとまーちゃんにわたくしは恥ずかしくなってしまう。
フィンガーブレスレットの名称もわたくしが考えたのではなくて、前世の記憶を掘り起こしたものだし、フィンガーブレスレット自体わたくしが考えたものではなくて前世でこういうものがあったというのを再現しただけなのだ。
爪もまた同じで、フレンチに塗り分ける方法もグラデーションにする方法も、前世の記憶を使っただけのことだった。
それをわたくしの手柄のように言われてしまうととても恥ずかしい。
「エクムント叔父様、エリザベート様はすごいのですね」
「エリザベート嬢の発想にはいつも驚かされているよ。はい、ガブリエラ。お誕生日おめでとう」
「これは、もしかして、フィンガーブレスレットですか!?」
「きっと欲しがるだろうと思って作らせてきたよ」
「開けていいですか?」
「どうぞ」
受け取った薄い箱を持ってガブリエラちゃんが目を輝かせている。箱を開けると金色の紐で編まれたフィンガーブレスレットが中から出て来た。
ガブリエラちゃんは早速手に着けている。
「これでわたくしもエリザベート様とクリスタ様とマリア様とレーニ様とお揃いになりました。わたくし、流行の最先端です! エクムント叔父様、本当にありがとうございます!」
エクムント様に飛び付くようにしてものすごく喜んでいるガブリエラちゃんに、エクムント様は奢るようなことは決して言わなかった。
「これはフィンガーブレスレットを考えてくれたエリザベート嬢のおかげなのだから、感謝はエリザベート嬢にしなさい」
「ありがとうございます、エリザベート様」
「いえ、わたくしは原案を考えただけで、製品として作り上げたのはエクムント様です」
「エリザベート嬢の発想がなければ存在しなかったものですから。辺境伯領の新しい特産品になりそうです。辺境伯領は本当に素晴らしい人材を手に入れた」
手に入れたとエクムント様が言ってくださった。
観劇のデートをしたときには遠慮していたのに、今ははっきりとわたくしはエクムント様のものだと示してくれている。
エクムント様の言葉に胸をときめかせていると、まーちゃんがオリヴァー殿にお礼を言いに行っていた。
「オリヴァー殿、フィンガーブレスレットとても嬉しいです。こんなにもぴったりで、わたくしの手の大きさがよく分かりましたね」
「私の妹がマリア様と同じ年なのです。妹を参考に作らせました」
「そうだったのですね。わたくし、こんなプレゼントがもらえてとても幸せです」
喜んでいるまーちゃんにオリヴァー殿は目を細めている。まーちゃんは可愛いので妹のように思っているのだろう。
まーちゃんもいつかわたくしのようにオリヴァー殿に恋愛対象として見られないことに悩むのだろうか。
わたくしと似すぎているまーちゃんのことが、姉として心配になる。
年上の褐色の肌の男性を好きになって、幼い頃に婚約をして、それから長い時間を婚約者として過ごしていく。
好みといい、状況といい、まーちゃんとわたくしは似すぎていて、血は争えないものだと思っていた。
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