361 / 394
十二章 奏歌くんとの十二年目
27.私の争奪戦と退団の宣言
しおりを挟む
始まりは春公演の最中の劇団が発行する雑誌の取材だった。
私と百合と美鳥さんと真月さんで、今回の演目について話し合っていたはずだった。
「シラノ・ド・ベルジュラックとロクサーヌは最終的に結ばれたのかというのは、最後のデュエットダンスを見ていただければ分かると思います」
「生きている間に結ばれなかった二人が、天国に行って結ばれた。そういう形で演出家の先生もラストからのデュエットダンスまでの流れを作り上げていると思います」
始めの方は私も百合も真面目に話していた。
「敵対する貴族はシラノの才能に嫉妬していたのではないかと、私は解釈しました」
「親友のクリスチャンもシラノの才能を尊敬していたと思います」
「シラノの一途な心と詩の才能があれば、ロクサーヌを本気で口説いていたら、簡単にロクサーヌと結ばれていたと思いますよ」
「自分の醜さという引け目がシラノになかったら。そんなものは本当の人間の価値ではないと最後のシラノの死の場面でこの物語は訴えかけてきます」
真月さんと美鳥さんも真面目に演劇の話をしている。
それがどこでどう間違ったのかは分からない。
「海瑠さんはシラノにぴったりの役者でしたね。自分の美しさを知らず、愛されることが分かっていない」
「海瑠さんは本当に素晴らしい男役トップスターですからね」
シラノ・ド・ベルジュラックの話をしていたはずが、いつの間にか私の話にすり替わっていた。熱っぽく私のことを話す美鳥さんと真月さんに、私は何を言えばいいのか分からなくなってしまう。
私が戸惑っている間に、百合も参戦した。
「海瑠のことは5歳のときから知っているんですよ。昔から歌とダンスの才能があって、それ以外ではかなりぼーっとした子でした」
「過去のことは知りませんが、劇団に入ってからの海瑠さんはずっと追いかけていました」
「私も、海瑠さんに憧れて男役を目指したようなものです」
この取材は春公演のシラノ・ド・ベルジュラックの話のはずだ。それなのになんで私の話になっているんだろう。
「ファリネッリの演目で海瑠さんの才能がまた花開いた感じは受けましたね」
「オペラアリアを歌う海瑠さん、あんなに声域が広いとは思ってませんでした」
「あれは、海瑠が毎日ボイストレーニングをしたおかげなんですよ。海瑠は歌とダンスに関してはものすごい努力家なんです。小さな頃も踊れないことがあったり、歌えない歌があったりしたら、遅くまで教室に残って練習していました」
これに関して私は何を言えばいいのだろう。
「シラノ・ド・ベルジュラックの話じゃないの?」
「今大事な話をしているんです」
「海瑠さんのことが一番好きなのは私ですよ」
「相手役の私を差し置いて何を言っているのかしら?」
「いえいえ、私こそが、もう一人の相手役と言われてるんですからね」
ここは私のファンクラブか何かなのだろうか。私の発言は遮られてしまって、真月さんと百合と美鳥さんがどれだけ私を好きかという話題になっている。
「私は海瑠が男役トップスターになるのを待っていたんです。私は海瑠と添い遂げるつもりです!」
「私も海瑠さんと添い遂げますよ」
「美鳥さんは海瑠の相手役じゃないじゃない」
「もう一人の相手役としてちゃんと認められているんです」
「どこでよ?」
「ファンの皆様に」
百合と美鳥さんの言い争いが白熱する中、真月さんがきっぱりと言う。
「海瑠さんは劇団の宝ですよ。ひとり占めできるものではありません」
「女役トップスターとして最長記録を持ってる私は宝じゃないのかしら?」
「百合さんも宝ですけど……私たちは海瑠さんのファンですから」
「何気に私の扱いが酷くない?」
真月さんまで入って来て言い争いは混戦していた。
それでも今回の取材で私と百合と美鳥さんは言わなければいけないことがあった。
「私、瀬川海瑠は、来年の春公演を最後に、退団することを決めました」
「河本百合も海瑠に添い遂げます!」
「美鳥も共に退団します!」
三人で宣言すると取材陣からどよめきがわく。これまで和気藹々と話していた内容から一転、私たちの退団に話題が変わっていた。
「今年の春公演はまだ続いておりますし、秋公演、クリスマスの特別公演もあります。残りの期間もしっかりと男役トップスターを務めさせていただきたいと思っております」
「私も女役トップスター最長記録に終わりを告げる日まで、劇団で精いっぱい輝き続ける役者でありたいと思っております」
「私はお二人と共に退団できることを誇りに思い、最後まで務めあげたいと思っております」
私と百合と美鳥さんが決意を述べると、真月さんがそこに言葉を添える。
「私は劇団最長記録の女役トップスターの百合さんと、長く男役トップスターを務めてくれた海瑠さんと、お二人を支え続けた美鳥さんが退団するにあたって、劇団を支えて行ける人物は誰かと考えた場合、自分しかいないのではないかという考えに至りました。三人を見送った後も、私は劇団に残って劇団を支え続けます。それが、三人から私にできる恩返しだと思っています」
凛として喋る真月さんは次の男役トップスターの風格があった。劇団の経営陣がどう判断するかは分からないけれど、私は真月さんに男役トップスターを譲って退団したいと願っていた。
春公演の千秋楽の日には、奏歌くんは映画館でライブビューイングで公演を見てくれた。最後までデュエットダンス後に美鳥さんが出て来て私の肩を抱いて仲良しをアピールしてカーテンコールまでずっと一緒にいる演出は変わらず、春公演の演目についてはSNSでかなりの盛り上がりを見せたようだった。
「最高ですね……」
「稲荷寿司が?」
「いや、春公演ですよ! 稲荷寿司も最高ですけど!」
バレンタインのディナーショーのときに奏歌くんを楽屋前まで通してくれたお礼に沙紀ちゃんに好物を聞いたら、稲荷寿司だと答えられたので、奏歌くんが作ってくれた稲荷寿司を届けたら、劇団の食堂で一緒に稲荷寿司を食べながら沙紀ちゃんはうっとりとしていた。
「自分の魅力に気付いていない後ろ向きなシラノが、敵対者の貴族を自覚なく振ってしまったんですよ。そのせいで、貴族はシラノを手に入れるために敵対することになって」
「んん? そういう内容じゃないよね?」
「ロクサーヌを狙っているふりをしながら、シラノに近付く敵対者の貴族を、密かに牽制するクリスチャンと友人! 二人もシラノのことを愛していたんです」
「演目が変わってない? ロクサーヌどこいった?」
「何も気付かないシラノを全員が狙っていて、それぞれの手に堕ちていくシラノの総受け! 最高じゃないですか!」
「何を言ってるか分からないんだけど?」
こういう分からない感想がSNSにも溢れているから困るのだ。
私と百合は真剣にシラノのロクサーヌに対する一途な恋の物語だと思って演じている。最後のデュエットダンスでは、二人が天国で結ばれたことを示唆していると思って踊っている。
シラノ・ド・ベルジュラックの史実に同性愛関係の話があっただけに、そういう界隈のひとたちは私と美鳥さんの役をできていると言ったり、敵対する真月さんが実は私の役を愛していたとか言ったりして、妄想した作品をネット上にあげていたりするのだ。
基本的にそういう創作物に劇団は目を瞑っている状態で、そういうひとたちも隠れて活動しているようなのだが、今回は美鳥さんがデュエットダンスの後に私の肩を抱いて仲良しアピールをしたことで、そういう界隈が盛り上がってしまったらしい。
私はシラノのロクサーヌに対する一途な恋の物語だと思っているので、若干齟齬が生じてしまっている。
「沙紀ちゃんにはそういう風に見えたの?」
「見えたんじゃないんです! そうだったんです!」
「えぇ!? 断言!?」
稲荷寿司を咀嚼して飲み込んでから、沙紀ちゃんは力強く宣言していた。沙紀ちゃんのようなひとたちには、それが事実になってしまっているらしい。
気にしないことにはするが、元々は美鳥さんの過激なファンのせいなので、私はちょっとだけそのひとたちを恨んだ。
部屋に帰ると奏歌くんが待っていてくれる。
晩ご飯はお味噌汁とご飯と何だろう。お味噌汁の香りとご飯の炊けるいい匂いが部屋中に満ちていた。
「お帰りなさい、海瑠さん。千秋楽お疲れさまでした」
「ただいま、奏歌くん。沙紀ちゃん、稲荷寿司喜んでたよ」
沙紀ちゃんが話していた件について奏歌くんと話したかったけれど、まずは寛ぎたくて、手と顔を洗って私は椅子に座った。
私と百合と美鳥さんと真月さんで、今回の演目について話し合っていたはずだった。
「シラノ・ド・ベルジュラックとロクサーヌは最終的に結ばれたのかというのは、最後のデュエットダンスを見ていただければ分かると思います」
「生きている間に結ばれなかった二人が、天国に行って結ばれた。そういう形で演出家の先生もラストからのデュエットダンスまでの流れを作り上げていると思います」
始めの方は私も百合も真面目に話していた。
「敵対する貴族はシラノの才能に嫉妬していたのではないかと、私は解釈しました」
「親友のクリスチャンもシラノの才能を尊敬していたと思います」
「シラノの一途な心と詩の才能があれば、ロクサーヌを本気で口説いていたら、簡単にロクサーヌと結ばれていたと思いますよ」
「自分の醜さという引け目がシラノになかったら。そんなものは本当の人間の価値ではないと最後のシラノの死の場面でこの物語は訴えかけてきます」
真月さんと美鳥さんも真面目に演劇の話をしている。
それがどこでどう間違ったのかは分からない。
「海瑠さんはシラノにぴったりの役者でしたね。自分の美しさを知らず、愛されることが分かっていない」
「海瑠さんは本当に素晴らしい男役トップスターですからね」
シラノ・ド・ベルジュラックの話をしていたはずが、いつの間にか私の話にすり替わっていた。熱っぽく私のことを話す美鳥さんと真月さんに、私は何を言えばいいのか分からなくなってしまう。
私が戸惑っている間に、百合も参戦した。
「海瑠のことは5歳のときから知っているんですよ。昔から歌とダンスの才能があって、それ以外ではかなりぼーっとした子でした」
「過去のことは知りませんが、劇団に入ってからの海瑠さんはずっと追いかけていました」
「私も、海瑠さんに憧れて男役を目指したようなものです」
この取材は春公演のシラノ・ド・ベルジュラックの話のはずだ。それなのになんで私の話になっているんだろう。
「ファリネッリの演目で海瑠さんの才能がまた花開いた感じは受けましたね」
「オペラアリアを歌う海瑠さん、あんなに声域が広いとは思ってませんでした」
「あれは、海瑠が毎日ボイストレーニングをしたおかげなんですよ。海瑠は歌とダンスに関してはものすごい努力家なんです。小さな頃も踊れないことがあったり、歌えない歌があったりしたら、遅くまで教室に残って練習していました」
これに関して私は何を言えばいいのだろう。
「シラノ・ド・ベルジュラックの話じゃないの?」
「今大事な話をしているんです」
「海瑠さんのことが一番好きなのは私ですよ」
「相手役の私を差し置いて何を言っているのかしら?」
「いえいえ、私こそが、もう一人の相手役と言われてるんですからね」
ここは私のファンクラブか何かなのだろうか。私の発言は遮られてしまって、真月さんと百合と美鳥さんがどれだけ私を好きかという話題になっている。
「私は海瑠が男役トップスターになるのを待っていたんです。私は海瑠と添い遂げるつもりです!」
「私も海瑠さんと添い遂げますよ」
「美鳥さんは海瑠の相手役じゃないじゃない」
「もう一人の相手役としてちゃんと認められているんです」
「どこでよ?」
「ファンの皆様に」
百合と美鳥さんの言い争いが白熱する中、真月さんがきっぱりと言う。
「海瑠さんは劇団の宝ですよ。ひとり占めできるものではありません」
「女役トップスターとして最長記録を持ってる私は宝じゃないのかしら?」
「百合さんも宝ですけど……私たちは海瑠さんのファンですから」
「何気に私の扱いが酷くない?」
真月さんまで入って来て言い争いは混戦していた。
それでも今回の取材で私と百合と美鳥さんは言わなければいけないことがあった。
「私、瀬川海瑠は、来年の春公演を最後に、退団することを決めました」
「河本百合も海瑠に添い遂げます!」
「美鳥も共に退団します!」
三人で宣言すると取材陣からどよめきがわく。これまで和気藹々と話していた内容から一転、私たちの退団に話題が変わっていた。
「今年の春公演はまだ続いておりますし、秋公演、クリスマスの特別公演もあります。残りの期間もしっかりと男役トップスターを務めさせていただきたいと思っております」
「私も女役トップスター最長記録に終わりを告げる日まで、劇団で精いっぱい輝き続ける役者でありたいと思っております」
「私はお二人と共に退団できることを誇りに思い、最後まで務めあげたいと思っております」
私と百合と美鳥さんが決意を述べると、真月さんがそこに言葉を添える。
「私は劇団最長記録の女役トップスターの百合さんと、長く男役トップスターを務めてくれた海瑠さんと、お二人を支え続けた美鳥さんが退団するにあたって、劇団を支えて行ける人物は誰かと考えた場合、自分しかいないのではないかという考えに至りました。三人を見送った後も、私は劇団に残って劇団を支え続けます。それが、三人から私にできる恩返しだと思っています」
凛として喋る真月さんは次の男役トップスターの風格があった。劇団の経営陣がどう判断するかは分からないけれど、私は真月さんに男役トップスターを譲って退団したいと願っていた。
春公演の千秋楽の日には、奏歌くんは映画館でライブビューイングで公演を見てくれた。最後までデュエットダンス後に美鳥さんが出て来て私の肩を抱いて仲良しをアピールしてカーテンコールまでずっと一緒にいる演出は変わらず、春公演の演目についてはSNSでかなりの盛り上がりを見せたようだった。
「最高ですね……」
「稲荷寿司が?」
「いや、春公演ですよ! 稲荷寿司も最高ですけど!」
バレンタインのディナーショーのときに奏歌くんを楽屋前まで通してくれたお礼に沙紀ちゃんに好物を聞いたら、稲荷寿司だと答えられたので、奏歌くんが作ってくれた稲荷寿司を届けたら、劇団の食堂で一緒に稲荷寿司を食べながら沙紀ちゃんはうっとりとしていた。
「自分の魅力に気付いていない後ろ向きなシラノが、敵対者の貴族を自覚なく振ってしまったんですよ。そのせいで、貴族はシラノを手に入れるために敵対することになって」
「んん? そういう内容じゃないよね?」
「ロクサーヌを狙っているふりをしながら、シラノに近付く敵対者の貴族を、密かに牽制するクリスチャンと友人! 二人もシラノのことを愛していたんです」
「演目が変わってない? ロクサーヌどこいった?」
「何も気付かないシラノを全員が狙っていて、それぞれの手に堕ちていくシラノの総受け! 最高じゃないですか!」
「何を言ってるか分からないんだけど?」
こういう分からない感想がSNSにも溢れているから困るのだ。
私と百合は真剣にシラノのロクサーヌに対する一途な恋の物語だと思って演じている。最後のデュエットダンスでは、二人が天国で結ばれたことを示唆していると思って踊っている。
シラノ・ド・ベルジュラックの史実に同性愛関係の話があっただけに、そういう界隈のひとたちは私と美鳥さんの役をできていると言ったり、敵対する真月さんが実は私の役を愛していたとか言ったりして、妄想した作品をネット上にあげていたりするのだ。
基本的にそういう創作物に劇団は目を瞑っている状態で、そういうひとたちも隠れて活動しているようなのだが、今回は美鳥さんがデュエットダンスの後に私の肩を抱いて仲良しアピールをしたことで、そういう界隈が盛り上がってしまったらしい。
私はシラノのロクサーヌに対する一途な恋の物語だと思っているので、若干齟齬が生じてしまっている。
「沙紀ちゃんにはそういう風に見えたの?」
「見えたんじゃないんです! そうだったんです!」
「えぇ!? 断言!?」
稲荷寿司を咀嚼して飲み込んでから、沙紀ちゃんは力強く宣言していた。沙紀ちゃんのようなひとたちには、それが事実になってしまっているらしい。
気にしないことにはするが、元々は美鳥さんの過激なファンのせいなので、私はちょっとだけそのひとたちを恨んだ。
部屋に帰ると奏歌くんが待っていてくれる。
晩ご飯はお味噌汁とご飯と何だろう。お味噌汁の香りとご飯の炊けるいい匂いが部屋中に満ちていた。
「お帰りなさい、海瑠さん。千秋楽お疲れさまでした」
「ただいま、奏歌くん。沙紀ちゃん、稲荷寿司喜んでたよ」
沙紀ちゃんが話していた件について奏歌くんと話したかったけれど、まずは寛ぎたくて、手と顔を洗って私は椅子に座った。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません
野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、
婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、
話の流れから婚約を解消という話にまでなった。
ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、
絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
聖女は妹ではありません。本物の聖女は、私の方です
光子
恋愛
私の双子の妹の《エミル》は、聖女として産まれた。
特別な力を持ち、心優しく、いつも愛を囁く妹は、何の力も持たない、出来損ないの双子の姉である私にも優しかった。
「《ユウナ》お姉様、大好きです。ずっと、仲良しの姉妹でいましょうね」
傍から見れば、エミルは姉想いの可愛い妹で、『あんな素敵な妹がいて良かったわね』なんて、皆から声を掛けられた。
でも違う、私と同じ顔をした双子の妹は、私を好きと言いながら、執着に近い感情を向けて、私を独り占めしようと、全てを私に似せ、奪い、閉じ込めた。
冷たく突き放せば、妹はシクシクと泣き、聖女である妹を溺愛する両親、婚約者、町の人達に、酷い姉だと責められる。
私は妹が大嫌いだった。
でも、それでも家族だから、たった一人の、双子の片割れだからと、ずっと我慢してきた。
「ユウナお姉様、私、ユウナお姉様の婚約者を好きになってしまいました。《ルキ》様は、私の想いに応えて、ユウナお姉様よりも私を好きだと言ってくれました。だから、ユウナお姉様の婚約者を、私に下さいね。ユウナお姉様、大好きです」
――――ずっと我慢してたけど、もう限界。
好きって言えば何でも許される免罪符じゃないのよ?
今まで家族だからって、双子の片割れだからって我慢してたけど、もう無理。
丁度良いことに、両親から家を出て行けと追い出されたので、このまま家を出ることにします。
さようなら、もう二度と貴女達を家族だなんて思わない。
泣いて助けを求めて来ても、絶対に助けてあげない。
本物の聖女は私の方なのに、馬鹿な人達。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。
ユユ
恋愛
幼い頃から築いてきた彼との関係は
愛だと思っていた。
何度も“好き”と言われ
次第に心を寄せるようになった。
だけど 彼の浮気を知ってしまった。
私の頭の中にあった愛の城は
完全に崩壊した。
彼の口にする“愛”は偽物だった。
* 作り話です
* 短編で終わらせたいです
* 暇つぶしにどうぞ
転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます
藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!
2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です
2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました
2024年8月中旬第三巻刊行予定です
ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。
高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。
しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。
だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。
そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。
幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。
幼い二人で来たる追い出される日に備えます。
基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています
2023/08/30
題名を以下に変更しました
「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」
書籍化が決定しました
2023/09/01
アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります
2023/09/06
アルファポリス様より、9月19日に出荷されます
呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております
2024/3/21
アルファポリス様より第二巻が発売されました
2024/4/24
コミカライズスタートしました
2024/8/12
アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です
駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜
あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』
という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。
それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。
そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。
まず、夫が会いに来ない。
次に、使用人が仕事をしてくれない。
なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。
でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……?
そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。
すると、まさかの大激怒!?
あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。
────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。
と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……?
善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。
────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください!
◆本編完結◆
◆小説家になろう様でも、公開中◆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる