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十一章 奏歌くんとの十一年目
14.さくらの登場とウエディングヴェール
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クリスマスの特別公演の翌日は毎年休みだ。クリスマスイブまで働く劇団員が、クリスマスを家族と過ごせるようにという劇団からの配慮だと聞いていた。
その日は朝から私と奏歌くんはクリスマスとやっちゃんの退職お疲れ様パーティーのための準備をしていた。
ハンモックとテントは畳んで、鳥籠のソファと鳥籠のハンギングチェアも洗濯物を干す部屋に片付けてしまう。オーディオセットは部屋の真ん中にあるのを場所をずらして壁際に持って来て、テーブルと椅子のセットを広いリビングの中央に置く。
ソファとローテーブルのセットは部屋の端の方に置いて、誰でも使えるようにしておく。
家具を片付けてしまうと、私の部屋のリビングがとても広いことに改めて気付かされる。ここで踊るために私はこのマンションを買ったのだが、実際に住んでみると寂しくて踊ることもなかった。
奏歌くんと出会ってからは奏歌くんの手を取って踊ったり、奏歌くんのためにコンサートを開いたり、楽しく過ごせている。だだっ広くて寂しかったリビングにも、ハンモックやテントや鳥籠のソファや鳥籠のハンギングチェア、ソファセットも追加されて、すっかりと広さを感じなくなっていた。
「海瑠さん、ふわふわオムレツを一人分ずつ作る方法があるみたいだよ」
「え? どうやるの?」
奏歌くんが見つけた料理のレシピのサイトを携帯電話で見せてもらうと、小さな深皿に泡立てた卵液を入れてオーブンで焼く形式のようだった。天板に水を張って蒸気で蒸し焼きにすると書いてある。
「うちのオーブントースターでもできるかな?」
「挑戦してみたいけど、この小さな深皿がないんだよね」
私の部屋の食器は奏歌くんと私が使うだけの量しかない。そのことに先に気付けたのは収穫だった。美歌さんとやっちゃんと茉優ちゃんと莉緒さんが来るのならば、取り皿も準備しておかなければいけない。
「一番基本的なことを忘れてたね」
「お皿を買いに行きましょう」
全員分の取り皿と小さな深めの皿を買うために、私と奏歌くんはデパートに出向いていた。初めて出会った頃に食器を買った地下のお店はまだあって、そこで食器を選ぶ。
「耐熱皿で、食洗器対応じゃないといけないからね」
「あ、そっか。オーブンで焼くんだもんね」
「お皿があればプリンとかも簡単に作れるよ」
お皿を選んでいる奏歌くんの話を聞いて、私は猛烈にプリンが食べたくなっていた。
「プリン、食べたいな……」
「難しくないから、プリンも作る?」
「いいの!?」
奏歌くんの負担になってしまうかもしれないとか考えたが、奏歌くんはあっさりとプリンもメニューに加えることを提案してくれた。人数が増えるかもしれないので、お皿は多めに買っておく。葡萄の柄が浮き出ている白いお皿を取り皿用に、白い丸いお皿をふわふわオムレツ用に、ガラスの小さなコップのような耐熱皿をプリン用に買った。
私と奏歌くんの分のお皿はあるが、人数が増えたときのために六人分は買っておく。支払いを終えて部屋に帰る途中で、奏歌くんはスーパーに寄った。
「ふわふわオムレツも、プリンも作るとなると、卵の数が足りなくなるからね」
「どっちも卵が材料だもんね」
卵を買い足して、鶏肉も買って、マンションの部屋に戻る。部屋に戻ると奏歌くんは早速お皿を洗ってプリンの準備をしていた。
お砂糖と水をフライパンに入れてカラメルソースを作ってガラスの耐熱皿に入れる。それから卵と砂糖と牛乳とバニラエッセンスでプリンの卵液を作って、オーブントースターで焼いていた。
「今日はオーブントースターをいっぱい使うから、順番を決めておかなきゃ。次はチキンを焼いて、最後にふわふわオムレツを作ろう」
手際よくプリンを作った奏歌くんは粗熱を取って、冷蔵庫に入れてしまう。お昼ご飯を食べて、料理の続きをしているときに、部屋のインターフォンが鳴って、出てみると海香がさくらを連れて来ていた。
「こんにちは、みちるちゃん。きょうはみかさんと、クリスマスパーティーなんでしょう?」
「ごめんね、海瑠。さくらがどうしても行きたいって聞かなくて」
「いいこにしてるから、クリスマスパーティーにさんかさせて! わたし、クリスマスパーティー、したことがないの!」
お願いするさくらに私は奏歌くんの方を振り向いた。
「さくらは小さい頃はクリスマスなんて理解できなかっただろうし、理解できる年になったらかえでが生まれちゃったから、家でご馳走は宙夢さんが作るけど、パーティーみたいなのはしたことがないのよね」
海香はさくらの味方のようだ。
「私も海瑠が生まれてから、海瑠のお世話が大変で両親がパーティーをしてくれなかった記憶があるの。さくらには姉として生まれたら損だなんて思いはさせたくなくて。お願いできないかな?」
「海瑠さん、いいよね? 僕はさくらちゃんが来るの、大歓迎だよ。母さんも喜ぶだろうし」
「私も平気よ。さくら、私たちはお料理の準備があるけど、一人で待っていられる?」
「だいじょうぶ、ほんをもってきたわ」
保育園のときから使っているバッグにぎっしりと本を詰めて持って来ているさくらに、これならば大丈夫だろうと私はさくらを預かることにした。
「美歌さんは仕事だって言うから、この時間しか連れて来れなくて。さくらのことお願いね」
それから、と海香が続けた。
「これ、良かったら使って」
手渡された紙袋の中には大きな箱が入っている。なんなのか分からなかったが受け取って、足早に帰っていく海香を見送り、私はさくらを部屋の中に入れた。さくらは約束した通り、ソファに座って大人しく本を読んでいる。奏歌くんがミルクティーを出すと「ありがとう」とお礼を言っていた。
海香から手渡されたものがなんなのか、私と奏歌くんで箱を開けてみる。中には白いレースの大きな布のようなものが入っていた。
「これって……」
「ウエディングヴェールじゃないかな?」
やっちゃんと茉優ちゃんは結婚式を挙げてからイギリスに行く予定だが、その結婚式も小規模なものになるであろうことは分かり切っていた。やっちゃんのお疲れ様パーティーで茉優ちゃんにウエディングヴェールを被せて愛を誓うのは確かに盛り上がるだろう。
「海香ったら、さすが脚本家ね」
こういう演出も凝っているのだと感心していると、奏歌くんが広げたウエディングヴェールを私にふわりとかけた。
「海瑠さん、綺麗だよ」
「奏歌くん……」
そのまま近いのキスまでしてしまいたかったけれど、残念ながら部屋にはさくらがいて、じっとこっちを見詰めている。仕方がないので私はウエディングヴェールを被ったまま奏歌くんとハグをした。
料理の準備も順調に終わって、ラム肉の香草焼きはチキンの香草焼きに変わって、焼き野菜とふわふわオムレツも出来上がる。
夕方になってくると、やっちゃんと茉優ちゃん、莉緒さん、美歌さんの順番に続々とひとが集まってきた。
「メリークリスマス!」
「やっちゃん、退職お疲れ様!」
「あら、さくらちゃんも来てたの?」
「わたしもパーティーにさんかしたかったの」
声をかけて迎えると、美歌さんがすぐにさくらに気付いていた。
全員が揃って、フルーツティーで乾杯をする。さくらのフルーツティーにはミルクが半分入っていた。
「茉優ちゃん、これ、被ってみて」
海香が貸してくれたウエディングヴェールを茉優ちゃんに被せると、やっちゃんが真っ赤になって照れているのが分かる。莉緒さんが期待する目でやっちゃんと茉優ちゃんを見詰めている。
「ちょっと早いけど、二人の結婚式の予行練習かしらね」
「練習しなくていいよ」
「安彦、男を見せなさい」
茉優ちゃんのウエディングヴェールを美歌さんが捲って顔が見えるようにする。ウエディングヴェールを捲るのは親の役目なのだと知っているのだろう。
「茉優ちゃん、俺とずっと一緒に過ごしてくれるか?」
「はい、安彦さん。安彦さんも私と一緒に過ごしてください」
「誓うよ」
見つめ合う二人に視線が集まる。美歌さんがさくらのお目目を隠していた。
やっちゃんは照れながらも茉優ちゃんの頬に手を当てて、反対側の頬にキスをした。
莉緒さんが涙をハンカチで拭っている。
「茉優ちゃん、良かったわね」
「ちゃんと結婚式もしますからね」
「何度見ても嬉しいわ」
涙を拭きながら茉優ちゃんを見詰める莉緒さんの眼差しは優しく柔らかなものだった。
その日は朝から私と奏歌くんはクリスマスとやっちゃんの退職お疲れ様パーティーのための準備をしていた。
ハンモックとテントは畳んで、鳥籠のソファと鳥籠のハンギングチェアも洗濯物を干す部屋に片付けてしまう。オーディオセットは部屋の真ん中にあるのを場所をずらして壁際に持って来て、テーブルと椅子のセットを広いリビングの中央に置く。
ソファとローテーブルのセットは部屋の端の方に置いて、誰でも使えるようにしておく。
家具を片付けてしまうと、私の部屋のリビングがとても広いことに改めて気付かされる。ここで踊るために私はこのマンションを買ったのだが、実際に住んでみると寂しくて踊ることもなかった。
奏歌くんと出会ってからは奏歌くんの手を取って踊ったり、奏歌くんのためにコンサートを開いたり、楽しく過ごせている。だだっ広くて寂しかったリビングにも、ハンモックやテントや鳥籠のソファや鳥籠のハンギングチェア、ソファセットも追加されて、すっかりと広さを感じなくなっていた。
「海瑠さん、ふわふわオムレツを一人分ずつ作る方法があるみたいだよ」
「え? どうやるの?」
奏歌くんが見つけた料理のレシピのサイトを携帯電話で見せてもらうと、小さな深皿に泡立てた卵液を入れてオーブンで焼く形式のようだった。天板に水を張って蒸気で蒸し焼きにすると書いてある。
「うちのオーブントースターでもできるかな?」
「挑戦してみたいけど、この小さな深皿がないんだよね」
私の部屋の食器は奏歌くんと私が使うだけの量しかない。そのことに先に気付けたのは収穫だった。美歌さんとやっちゃんと茉優ちゃんと莉緒さんが来るのならば、取り皿も準備しておかなければいけない。
「一番基本的なことを忘れてたね」
「お皿を買いに行きましょう」
全員分の取り皿と小さな深めの皿を買うために、私と奏歌くんはデパートに出向いていた。初めて出会った頃に食器を買った地下のお店はまだあって、そこで食器を選ぶ。
「耐熱皿で、食洗器対応じゃないといけないからね」
「あ、そっか。オーブンで焼くんだもんね」
「お皿があればプリンとかも簡単に作れるよ」
お皿を選んでいる奏歌くんの話を聞いて、私は猛烈にプリンが食べたくなっていた。
「プリン、食べたいな……」
「難しくないから、プリンも作る?」
「いいの!?」
奏歌くんの負担になってしまうかもしれないとか考えたが、奏歌くんはあっさりとプリンもメニューに加えることを提案してくれた。人数が増えるかもしれないので、お皿は多めに買っておく。葡萄の柄が浮き出ている白いお皿を取り皿用に、白い丸いお皿をふわふわオムレツ用に、ガラスの小さなコップのような耐熱皿をプリン用に買った。
私と奏歌くんの分のお皿はあるが、人数が増えたときのために六人分は買っておく。支払いを終えて部屋に帰る途中で、奏歌くんはスーパーに寄った。
「ふわふわオムレツも、プリンも作るとなると、卵の数が足りなくなるからね」
「どっちも卵が材料だもんね」
卵を買い足して、鶏肉も買って、マンションの部屋に戻る。部屋に戻ると奏歌くんは早速お皿を洗ってプリンの準備をしていた。
お砂糖と水をフライパンに入れてカラメルソースを作ってガラスの耐熱皿に入れる。それから卵と砂糖と牛乳とバニラエッセンスでプリンの卵液を作って、オーブントースターで焼いていた。
「今日はオーブントースターをいっぱい使うから、順番を決めておかなきゃ。次はチキンを焼いて、最後にふわふわオムレツを作ろう」
手際よくプリンを作った奏歌くんは粗熱を取って、冷蔵庫に入れてしまう。お昼ご飯を食べて、料理の続きをしているときに、部屋のインターフォンが鳴って、出てみると海香がさくらを連れて来ていた。
「こんにちは、みちるちゃん。きょうはみかさんと、クリスマスパーティーなんでしょう?」
「ごめんね、海瑠。さくらがどうしても行きたいって聞かなくて」
「いいこにしてるから、クリスマスパーティーにさんかさせて! わたし、クリスマスパーティー、したことがないの!」
お願いするさくらに私は奏歌くんの方を振り向いた。
「さくらは小さい頃はクリスマスなんて理解できなかっただろうし、理解できる年になったらかえでが生まれちゃったから、家でご馳走は宙夢さんが作るけど、パーティーみたいなのはしたことがないのよね」
海香はさくらの味方のようだ。
「私も海瑠が生まれてから、海瑠のお世話が大変で両親がパーティーをしてくれなかった記憶があるの。さくらには姉として生まれたら損だなんて思いはさせたくなくて。お願いできないかな?」
「海瑠さん、いいよね? 僕はさくらちゃんが来るの、大歓迎だよ。母さんも喜ぶだろうし」
「私も平気よ。さくら、私たちはお料理の準備があるけど、一人で待っていられる?」
「だいじょうぶ、ほんをもってきたわ」
保育園のときから使っているバッグにぎっしりと本を詰めて持って来ているさくらに、これならば大丈夫だろうと私はさくらを預かることにした。
「美歌さんは仕事だって言うから、この時間しか連れて来れなくて。さくらのことお願いね」
それから、と海香が続けた。
「これ、良かったら使って」
手渡された紙袋の中には大きな箱が入っている。なんなのか分からなかったが受け取って、足早に帰っていく海香を見送り、私はさくらを部屋の中に入れた。さくらは約束した通り、ソファに座って大人しく本を読んでいる。奏歌くんがミルクティーを出すと「ありがとう」とお礼を言っていた。
海香から手渡されたものがなんなのか、私と奏歌くんで箱を開けてみる。中には白いレースの大きな布のようなものが入っていた。
「これって……」
「ウエディングヴェールじゃないかな?」
やっちゃんと茉優ちゃんは結婚式を挙げてからイギリスに行く予定だが、その結婚式も小規模なものになるであろうことは分かり切っていた。やっちゃんのお疲れ様パーティーで茉優ちゃんにウエディングヴェールを被せて愛を誓うのは確かに盛り上がるだろう。
「海香ったら、さすが脚本家ね」
こういう演出も凝っているのだと感心していると、奏歌くんが広げたウエディングヴェールを私にふわりとかけた。
「海瑠さん、綺麗だよ」
「奏歌くん……」
そのまま近いのキスまでしてしまいたかったけれど、残念ながら部屋にはさくらがいて、じっとこっちを見詰めている。仕方がないので私はウエディングヴェールを被ったまま奏歌くんとハグをした。
料理の準備も順調に終わって、ラム肉の香草焼きはチキンの香草焼きに変わって、焼き野菜とふわふわオムレツも出来上がる。
夕方になってくると、やっちゃんと茉優ちゃん、莉緒さん、美歌さんの順番に続々とひとが集まってきた。
「メリークリスマス!」
「やっちゃん、退職お疲れ様!」
「あら、さくらちゃんも来てたの?」
「わたしもパーティーにさんかしたかったの」
声をかけて迎えると、美歌さんがすぐにさくらに気付いていた。
全員が揃って、フルーツティーで乾杯をする。さくらのフルーツティーにはミルクが半分入っていた。
「茉優ちゃん、これ、被ってみて」
海香が貸してくれたウエディングヴェールを茉優ちゃんに被せると、やっちゃんが真っ赤になって照れているのが分かる。莉緒さんが期待する目でやっちゃんと茉優ちゃんを見詰めている。
「ちょっと早いけど、二人の結婚式の予行練習かしらね」
「練習しなくていいよ」
「安彦、男を見せなさい」
茉優ちゃんのウエディングヴェールを美歌さんが捲って顔が見えるようにする。ウエディングヴェールを捲るのは親の役目なのだと知っているのだろう。
「茉優ちゃん、俺とずっと一緒に過ごしてくれるか?」
「はい、安彦さん。安彦さんも私と一緒に過ごしてください」
「誓うよ」
見つめ合う二人に視線が集まる。美歌さんがさくらのお目目を隠していた。
やっちゃんは照れながらも茉優ちゃんの頬に手を当てて、反対側の頬にキスをした。
莉緒さんが涙をハンカチで拭っている。
「茉優ちゃん、良かったわね」
「ちゃんと結婚式もしますからね」
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