302 / 394
十章 奏歌くんとの十年目
28.百合の望むランチと真尋さんの劇団
しおりを挟む
稽古場に行って一番にしたことは、百合に詰め寄ることだった。
詰め寄られて百合は引かずににこにこと笑っている。
「アロマキャンドル、ロマンチックな夜にって何よ! イランイランって、新婚の初夜のベッドに撒く花なんて調べて出てきたら、奏歌くんとちょっと気まずかったじゃない!」
「ダーリンと気まずかったの!? やだ、ダーリンったら大人になっちゃったのねー。可愛い可愛いダーリンが海瑠のこと意識するようになったなんて素敵ー!」
私は百合に文句を言いたいのに、百合は私の言葉に喜んでしまっていた。どうすれば私のあの気まずさが伝わるかと考えたが、百合なので無理だろうと理解して私は諦めることにした。
代わりに別の話題に切り替える。
「百合が真尋さんからチケットもらってる日って、私と同じかな?」
「うん、同じ日だって真尋さん言ってたわよ」
「多少不本意ではあるけれど、アロマキャンドルのお礼にランチを奢ってあげるわよ」
「え!? 本当!? やったー! 一緒に行きましょうね!」
ランチの言葉に百合は弱かった。喜んで飛び跳ねる百合も私と同じ年かと思うと不思議な気分になってくる。
「百合も34歳なのよね……」
「待って、海瑠、私は33歳よ?」
「あ、そうか、誕生日まだだったっけ?」
同じ劇団で長く一緒に公演しているが、私は百合のお誕生日のお茶会やディナーショーに招かれたことはない。百合の方は私のお誕生日のお茶会やディナーショーに客演してくれるのだが、どうして私が呼ばれないのかを不思議に思ったこともなかった。
「私、なんで百合のお誕生日のお茶会やディナーショーに呼ばれないの?」
「劇団の男役が出て来ると存在感がありすぎるからね。私のディナーショーやお茶会は女役だけの妖精さんの集いみたいにしてるのよ」
お誕生日のお茶会やディナーショーに関しては百合の拘りがあったようだった。それを聞くとそうなのかと理解することができる。
「百合の誕生日っていつだっけ?」
「えぇ!? そこから!? 毎年お茶会とディナーショーやってるわよ? なにより、海瑠とは5歳からの付き合いだった気がするんだけど」
「ごめん、私、興味ないこと覚えないから」
あっさりと答えると百合から「そういうところよ、海瑠!」と言われてしまった。
「私は早生まれなの! 二月が誕生日だから、バレンタインのお茶会とディナーショーに合わせてもらってるのよ」
「早生まれってなに?」
「一月、二月、三月に生まれた子どもを、早生まれって言うのよ。なんでかはよく知らないけど」
理由はよく分からないが、二月生まれの百合は早生まれと呼ばれているようだ。バレンタインデーのお茶会とディナーショーにお誕生日を合わせているのならば、私が百合のお誕生日にずっと気付いていなかったのも仕方がないと言えるだろう。百合のお誕生日のお茶会とディナーショーとバレンタインデーのお茶会とディナーショーが合わさっていたのならば、私のような鈍い人間が気付かないはずだ。
「バレンタインデーと合わせてたんなら、私が気付くわけないでしょう!」
「胸張って言わないでよね!」
怒られてしまったが、私なのでどうしようもない。
とりあえずは、真尋さんの公演には百合と一緒に行くことに決まった。
六月の始めの土曜日、私は奏歌くんと一緒にマンションのエントランスで百合の車を待っていた。百合がやってくると、車に乗せてもらって目的地に向かう。
百合からのランチのリクエストは、高級レストランでもなんでもなかった。
「百合さん、リクエスト通りお弁当作って来たよ」
「嬉しい! グレープフルーツもある?」
「あるよ。綺麗に剥けたのを入れて来た」
ずっと奏歌くんの作る私のお弁当を羨ましがっていた百合は、自分で作れるにも関わらず、お礼のランチは奏歌くんのお弁当を要求してきたのだ。
「自分で作れるけど、奏歌くんのがいいの?」
「他人が作ったお料理は最高なのよ! ダーリンのお弁当なんて気軽に食べられないでしょう? すっごく楽しみにしてきたんだからね」
嬉しそうなので水を差す気はないが、百合のお弁当も綺麗に作られていて、グレープフルーツを剥いて来たこともあったはずだが、それも百合は奏歌くんがした方がいいと思っているのだろうか。
私に照らし合わせて考えると、自分がお弁当を作れるようになる日は想像できないが、できるようになっても奏歌くんにお願いしてしまいそうな自分がいた。やはり私も奏歌くんのお弁当は特別だと思っているようだ。
車で辿り着いたのは森林公園だった。公園の東屋のベンチに座って、強くなってきた日差しを避けながらお弁当を広げる。三角と丸と俵型のおにぎりが入っていて、おかずは鯵の南蛮漬けと、卵焼きと、ポテトサラダグラタンと、ブロッコリーと、豚肉と玉ねぎを甘辛く炒めたものが入っていた。
「おにぎりは三角が鮭、丸が梅、俵型が佃煮海苔だよ」
「全部美味しそう。そっちのタッパーはグレープフルーツ?」
「うん! 五個入りを全部剥いてきた」
お弁当箱の重箱の他に持って来ているタッパーを指さして問いかける百合に、奏歌くんが笑顔で答える。もうすぐ16歳なのに素直で優しいところは変わっていないと、私は奏歌くんを誇らしく思う。
「卵焼きは海瑠さんも手伝ってくれたんだよ」
「海瑠、卵が焼けるの!?」
「巻けないけど、卵を割るのは手伝ったわよ」
私が手伝ったことまで主張してくれる奏歌くんは本当に紳士だ。
紙皿に奏歌くんが取り分けてくれて私はお弁当を食べた。百合も奏歌くんもしっかりと食べている。高校生になってから奏歌くんは以前よりももっと食べるようになった気がしていた。私も奏歌くんと出会ってから食べるようになった方だが、奏歌くんは成長に合わせて食べる量が増えて来て、男の子だということを感じさせる。
食べ終わるとタッパーが開けられて、黄色に輝くグレープフルーツの剥かれた身が現れた。それを大事に食べて、私たちは真尋さんの公演に向かった。
真尋さんの劇団の公演は、童話の中の主人公たちの物語だった。
シンデレラと白雪姫と赤ずきんが出て来て、自分たちの物語についての愚痴を言い合う。
「王子様に見初められてめでたしめでたしなんて、男に人生を捧げるなんて、信じられないわよね。結婚するまではいいけど、結婚は終わりじゃなくて全ての始まりでしかないのに」
「私なんて、死んでる間に王子様のキスで目覚めて、お嫁にされるのよ? 死体にキスするなんて絶対王子様は正常な人間じゃないわ!」
「狼に丸のみにされて無事なはずないわよね。私、絶対死んでると思うんだけど」
言い合ってそれぞれに対策を話し合って、シンデレラと白雪姫と赤ずきんは物語の中に戻って来る。
シンデレラは王子様に頼ることなく、継母の家を出て一人で自立して、鍛えた家事スキルを使って家政婦として住み込みで働き出す。家政婦として働き出した家の主人が子持ちで妻を失っていて、結婚して一緒に働き、自分の継子たちには優しくするラストを迎える。
白雪姫は毒林檎を食べずに、王子様が来ても断って、小人たちとずっと平和に暮らすことを選ぶ。
赤ずきんは自分で狩猟のスキルを手に入れて、狼を退治して英雄として村で語り継がれるようになる。
それぞれの童話の主人公の生き様を変えた物語はとても面白かった。
真尋さんはシンデレラの王子様という配役だった。外見だけでシンデレラに惚れてしまう王子様という立ち位置がコミカルで面白かった。
女性の団員が主人公の物語だったが、真尋さんもいい味を出していたとても楽しく見ることができた。
「真尋さん、今日はありがとう」
「兄さん、すごく面白かったよ」
「すごくよかったわ」
公演が終わると楽屋に通してもらって真尋さんにご挨拶をする。
「今日は本当に来てくれてありがとうございました」
お礼を言われて私たちも頭を下げる。
奏歌くんのお弁当と楽しい観劇で、とてもいい日になった土曜日だった。
詰め寄られて百合は引かずににこにこと笑っている。
「アロマキャンドル、ロマンチックな夜にって何よ! イランイランって、新婚の初夜のベッドに撒く花なんて調べて出てきたら、奏歌くんとちょっと気まずかったじゃない!」
「ダーリンと気まずかったの!? やだ、ダーリンったら大人になっちゃったのねー。可愛い可愛いダーリンが海瑠のこと意識するようになったなんて素敵ー!」
私は百合に文句を言いたいのに、百合は私の言葉に喜んでしまっていた。どうすれば私のあの気まずさが伝わるかと考えたが、百合なので無理だろうと理解して私は諦めることにした。
代わりに別の話題に切り替える。
「百合が真尋さんからチケットもらってる日って、私と同じかな?」
「うん、同じ日だって真尋さん言ってたわよ」
「多少不本意ではあるけれど、アロマキャンドルのお礼にランチを奢ってあげるわよ」
「え!? 本当!? やったー! 一緒に行きましょうね!」
ランチの言葉に百合は弱かった。喜んで飛び跳ねる百合も私と同じ年かと思うと不思議な気分になってくる。
「百合も34歳なのよね……」
「待って、海瑠、私は33歳よ?」
「あ、そうか、誕生日まだだったっけ?」
同じ劇団で長く一緒に公演しているが、私は百合のお誕生日のお茶会やディナーショーに招かれたことはない。百合の方は私のお誕生日のお茶会やディナーショーに客演してくれるのだが、どうして私が呼ばれないのかを不思議に思ったこともなかった。
「私、なんで百合のお誕生日のお茶会やディナーショーに呼ばれないの?」
「劇団の男役が出て来ると存在感がありすぎるからね。私のディナーショーやお茶会は女役だけの妖精さんの集いみたいにしてるのよ」
お誕生日のお茶会やディナーショーに関しては百合の拘りがあったようだった。それを聞くとそうなのかと理解することができる。
「百合の誕生日っていつだっけ?」
「えぇ!? そこから!? 毎年お茶会とディナーショーやってるわよ? なにより、海瑠とは5歳からの付き合いだった気がするんだけど」
「ごめん、私、興味ないこと覚えないから」
あっさりと答えると百合から「そういうところよ、海瑠!」と言われてしまった。
「私は早生まれなの! 二月が誕生日だから、バレンタインのお茶会とディナーショーに合わせてもらってるのよ」
「早生まれってなに?」
「一月、二月、三月に生まれた子どもを、早生まれって言うのよ。なんでかはよく知らないけど」
理由はよく分からないが、二月生まれの百合は早生まれと呼ばれているようだ。バレンタインデーのお茶会とディナーショーにお誕生日を合わせているのならば、私が百合のお誕生日にずっと気付いていなかったのも仕方がないと言えるだろう。百合のお誕生日のお茶会とディナーショーとバレンタインデーのお茶会とディナーショーが合わさっていたのならば、私のような鈍い人間が気付かないはずだ。
「バレンタインデーと合わせてたんなら、私が気付くわけないでしょう!」
「胸張って言わないでよね!」
怒られてしまったが、私なのでどうしようもない。
とりあえずは、真尋さんの公演には百合と一緒に行くことに決まった。
六月の始めの土曜日、私は奏歌くんと一緒にマンションのエントランスで百合の車を待っていた。百合がやってくると、車に乗せてもらって目的地に向かう。
百合からのランチのリクエストは、高級レストランでもなんでもなかった。
「百合さん、リクエスト通りお弁当作って来たよ」
「嬉しい! グレープフルーツもある?」
「あるよ。綺麗に剥けたのを入れて来た」
ずっと奏歌くんの作る私のお弁当を羨ましがっていた百合は、自分で作れるにも関わらず、お礼のランチは奏歌くんのお弁当を要求してきたのだ。
「自分で作れるけど、奏歌くんのがいいの?」
「他人が作ったお料理は最高なのよ! ダーリンのお弁当なんて気軽に食べられないでしょう? すっごく楽しみにしてきたんだからね」
嬉しそうなので水を差す気はないが、百合のお弁当も綺麗に作られていて、グレープフルーツを剥いて来たこともあったはずだが、それも百合は奏歌くんがした方がいいと思っているのだろうか。
私に照らし合わせて考えると、自分がお弁当を作れるようになる日は想像できないが、できるようになっても奏歌くんにお願いしてしまいそうな自分がいた。やはり私も奏歌くんのお弁当は特別だと思っているようだ。
車で辿り着いたのは森林公園だった。公園の東屋のベンチに座って、強くなってきた日差しを避けながらお弁当を広げる。三角と丸と俵型のおにぎりが入っていて、おかずは鯵の南蛮漬けと、卵焼きと、ポテトサラダグラタンと、ブロッコリーと、豚肉と玉ねぎを甘辛く炒めたものが入っていた。
「おにぎりは三角が鮭、丸が梅、俵型が佃煮海苔だよ」
「全部美味しそう。そっちのタッパーはグレープフルーツ?」
「うん! 五個入りを全部剥いてきた」
お弁当箱の重箱の他に持って来ているタッパーを指さして問いかける百合に、奏歌くんが笑顔で答える。もうすぐ16歳なのに素直で優しいところは変わっていないと、私は奏歌くんを誇らしく思う。
「卵焼きは海瑠さんも手伝ってくれたんだよ」
「海瑠、卵が焼けるの!?」
「巻けないけど、卵を割るのは手伝ったわよ」
私が手伝ったことまで主張してくれる奏歌くんは本当に紳士だ。
紙皿に奏歌くんが取り分けてくれて私はお弁当を食べた。百合も奏歌くんもしっかりと食べている。高校生になってから奏歌くんは以前よりももっと食べるようになった気がしていた。私も奏歌くんと出会ってから食べるようになった方だが、奏歌くんは成長に合わせて食べる量が増えて来て、男の子だということを感じさせる。
食べ終わるとタッパーが開けられて、黄色に輝くグレープフルーツの剥かれた身が現れた。それを大事に食べて、私たちは真尋さんの公演に向かった。
真尋さんの劇団の公演は、童話の中の主人公たちの物語だった。
シンデレラと白雪姫と赤ずきんが出て来て、自分たちの物語についての愚痴を言い合う。
「王子様に見初められてめでたしめでたしなんて、男に人生を捧げるなんて、信じられないわよね。結婚するまではいいけど、結婚は終わりじゃなくて全ての始まりでしかないのに」
「私なんて、死んでる間に王子様のキスで目覚めて、お嫁にされるのよ? 死体にキスするなんて絶対王子様は正常な人間じゃないわ!」
「狼に丸のみにされて無事なはずないわよね。私、絶対死んでると思うんだけど」
言い合ってそれぞれに対策を話し合って、シンデレラと白雪姫と赤ずきんは物語の中に戻って来る。
シンデレラは王子様に頼ることなく、継母の家を出て一人で自立して、鍛えた家事スキルを使って家政婦として住み込みで働き出す。家政婦として働き出した家の主人が子持ちで妻を失っていて、結婚して一緒に働き、自分の継子たちには優しくするラストを迎える。
白雪姫は毒林檎を食べずに、王子様が来ても断って、小人たちとずっと平和に暮らすことを選ぶ。
赤ずきんは自分で狩猟のスキルを手に入れて、狼を退治して英雄として村で語り継がれるようになる。
それぞれの童話の主人公の生き様を変えた物語はとても面白かった。
真尋さんはシンデレラの王子様という配役だった。外見だけでシンデレラに惚れてしまう王子様という立ち位置がコミカルで面白かった。
女性の団員が主人公の物語だったが、真尋さんもいい味を出していたとても楽しく見ることができた。
「真尋さん、今日はありがとう」
「兄さん、すごく面白かったよ」
「すごくよかったわ」
公演が終わると楽屋に通してもらって真尋さんにご挨拶をする。
「今日は本当に来てくれてありがとうございました」
お礼を言われて私たちも頭を下げる。
奏歌くんのお弁当と楽しい観劇で、とてもいい日になった土曜日だった。
0
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
最強幼女は惰眠を求む! 〜神々のお節介で幼女になったが、悠々自適な自堕落ライフを送りたい〜
フウ
ファンタジー
※30話あたりで、タイトルにあるお節介があります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
これは、最強な幼女が気の赴くままに自堕落ライフを手に入を手に入れる物語。
「……そこまでテンプレ守らなくていいんだよ!?」
絶叫から始まる異世界暗躍! レッツ裏世界の頂点へ!!
異世界に召喚されながらも神様達の思い込みから巻き込まれた事が発覚、お詫びにユニークスキルを授けて貰ったのだが…
「このスキル、チートすぎじゃないですか?」
ちょろ神様が力を込めすぎた結果ユニークスキルは、神の域へ昇格していた!!
これは、そんな公式チートスキルを駆使し異世界で成り上が……らない!?
「圧倒的な力で復讐を成し遂げる?メンド臭いんで結構です。
そんな事なら怠惰に毎日を過ごす為に金の力で裏から世界を支配します!」
そんな唐突に発想が飛躍した主人公が裏から世界を牛耳る物語です。
※やっぱり成り上がってるじゃねぇか。 と思われたそこの方……そこは見なかった事にした下さい。
この小説は「小説家になろう」 「カクヨム」でも公開しております。
上記サイトでは完結済みです。
上記サイトでの総PV1000万越え!
私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪
百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。
でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。
誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。
両親はひたすらに妹をスルー。
「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」
「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」
無理よ。
だって私、大公様の妻になるんだもの。
大忙しよ。
都合のいい女は卒業です。
火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。
しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。
治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。
どちらが王家に必要とされているかは明白だった。
「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」
だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。
しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。
この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。
それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。
だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。
「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。
そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。
自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。
そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。
高貴な血筋の正妻の私より、どうしてもあの子が欲しいなら、私と離婚しましょうよ!
ヘロディア
恋愛
主人公・リュエル・エルンは身分の高い貴族のエルン家の二女。そして年ごろになり、嫁いだ家の夫・ラズ・ファルセットは彼女よりも他の女性に夢中になり続けるという日々を過ごしていた。
しかし彼女にも、本当に愛する人・ジャックが現れ、夫と過ごす夜に、とうとう離婚を切り出す。
(完結〉恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに
にのまえ
恋愛
夏のおとずれ告げる王城主催の舞踏会。
この舞踏会に、婚約者のエスコートなく来ていた、公爵令嬢カサンドラ・マドレーヌ(18)は酔って庭園にでてきた。
酔いを冷ましながらバラ園の中を歩き、大昔国を護った、大聖女マリアンヌの銅像が立つ噴水の側で。
自分の婚約者の皇太子アサルトと、妹シャリィの逢瀬を見て、カサンドラはシャックを受ける。
それと同時にカサンドラの周りの景色が変わり、自分の悲惨な未来の姿を垣間見る。
私、一度死んで……時が舞い戻った?
カサンドラ、皇太子と婚約の破棄します。
嫉妬で、妹もいじめません。
なにより、死にたくないので逃げまぁ〜す。
エブリスタ様で『完結』しました話に
変えさせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる