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十章 奏歌くんとの十年目
19.奏歌くんの風邪とバレンタインデーのディナーショー
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奏歌くんを看病するために私はおうどんを作るべく、お出汁と冷凍うどんというものを買って行った。篠田家に着いたのは早朝のことで、美歌さんがバタバタと出勤の準備をしていて、茉優ちゃんも登校の準備をしている。
「奏歌、熱もほとんど下がってますから、海瑠さんの血をあげたら治ると思います。よろしくお願いします」
そうだった。
奏歌くんが小さな頃に熱を出したときにも私の血を飲んだら治ったことがあった。あのときのように血を分け与えれば奏歌くんはすぐに治ってしまうのかもしれない。
「海瑠さん、うつるかもしれないから、治るまで来ない方が良かったのに」
「私は健康だから平気よ。ワーキャットだもの」
リビングでお茶を飲みながら寛いでいる奏歌くんの顔はちょっと赤い気がする。中学生らしいシャツとジーンズ姿にセーターを着ている奏歌くん。私が来るのでパジャマは着替えたのだろう。
「ご飯は食べた?」
「あまり食欲がなくて」
「それなら、私がおうどんを作ってあげるわ」
そう言ったのはよかったけれど、私は冷蔵庫に貼ってある美歌さんの書置きを見てしまったのだった。
『体調がよくなったら梅とじうどんを作って食べなさいね』
梅とじうどん!?
これが奏歌くんの家の病気のときに食べるおうどんのスタンダードなのだろうか。
よき伴侶になるために、奏歌くんの家の伝統ならば守らなければいけない。
「梅とじうどんってなんだろう」
携帯電話で調べると、おうどんを卵とじにして梅干を乗せたものとあった。詳しくレシピを見ていくとできなくはなさそうな気がしてくる。
「挑戦してみよう、梅とじうどん」
決意して私は冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫から卵と梅干を取り出す。お鍋にはお湯を沸かして、もう一つのお鍋では出汁を温める。沸騰したお湯の中に冷凍うどんをいれて、柔らかくなるまで煮る。冷凍だったので沸騰してぼこぼこと泡が出ていた鍋が、一瞬で温度が下がって泡が消えた。
出汁は沸騰させ過ぎないようにしながらおうどんの麺をお湯で温めて、お出汁の中に入れる。
ここからが問題だった。
卵とじにしなければいけない。
卵を握り潰さないように慎重に割って、小さな容器の中で溶きほぐす。
「三つ葉!? 三つ葉ってなに!?」
三つ葉を最後に入れなければいけないようだが、なかったのでネギで代用する。ネギを刻んでいると涙が出そうになったが、私は奏歌くんのためだと思って頑張った。
溶きほぐした卵を回し入れると書いてあるがそれがよく分からない。
「回しながら入れるの? どういうこと?」
かき混ぜながら、何となくどぼどぼと卵を入れてしまったら卵が固まっていく。
「もしかして、鍋の中身を回せってこと?」
鍋に箸を突っ込んでぐるぐる回しながら流し入れていくとなんとなく良い感じになった気がした。器に盛り付けて、梅干を乗せて奏歌くんのところに持っていく。
「梅とじうどん!? 海瑠さんが作ってくれたの!?」
「うん、ちゃんとできてるか分からないけど」
「海瑠さん、お料理もできるようになったんだね」
褒められて嬉しくなって私はにやけてしまった。
奏歌くんがふうふうとおうどんを冷ましながら食べている。唇を尖らせている様子が可愛くて、私は写真におさめたくて仕方がなかった。
溶き卵と梅におうどんを絡めて奏歌くんが食べ終わると、私はソファに座ったまま奏歌くんを招いた。
「血を吸ってもいいよ。風邪なんてすぐに治っちゃうでしょう?」
「唾液で海瑠さんにうつるかもしれない」
「バレンタイン公演まではもう少し時間があるから平気よ。風邪になったら、奏歌くんに看病してもらうから」
笑い話にしてしまうと奏歌くんの緊張も解れる。微笑んで私の前に来て首に噛み付いた。血を吸われている間の恍惚とした感覚の後で、奏歌くんが口を放して、ソファの正面の席に座り直した。
体温計を脇に挟むとピピッという電子音が鳴って、奏歌くんの熱を表示する。見せてもらった体温計の表示は平熱になっていた。
「奏歌くんよかった。インフルエンザでも私、きっと血を分けに来たと思う」
「インフルエンザだったら劇団のひとに迷惑をかけるからやめてね」
「奏歌くんが苦しんでると思うと気が気じゃないもの」
インフルエンザでも治せるくらいの力が運命のひとである私の血にはあるのかもしれない。それを願っての発言だったが、奏歌くんは心配そうにハニーブラウンの眉を下げていた。
「僕のために無茶をしないで」
私のことをどこまでも思ってくれる奏歌くんは優しい。
やっぱり男前だと惚れ直してしまう。
風邪も落ち着いたので奏歌くんはリビングに勉強道具を持って来て、高校から出された課題をやっていた。私も座って脚本を読む。バレンタインのお茶会とディナーショーのための短い演目が用意されていて、その台詞や演出を完璧に覚えてはいるが、一応確認は怠らないようにしなければいけない。
「海瑠さんのバレンタインのディナーショー、僕も行くんだからね。楽しみにしてるから、中止になるかもしれないようなことは避けてね」
ぽつりと呟いた奏歌くんに、私は不謹慎ながら浮かれてしまった。自分のインフルエンザがうつって、悪化して長引いたら私がバレンタインデーのディナーショーに出られないのではないかと、奏歌くんは心配してくれていたのだ。それだけ私の公演を楽しみにしてくれて、大事に思ってくれることが嬉しい。
「海瑠さん、六月に兄さんの劇団で公演があるんだって」
「真尋さんの劇団? 冬の公演は行けなかったもんね」
「うん。兄さんにお願いして、チケット取ってもらわない?」
その頃には奏歌くんは高校生になっていて、17歳も目前になっている。
少し先のことだが、それだけにスケジュールはまだまだ空けられた。
「一緒に行こうか」
「兄さんの劇団も応援したいんだ」
私の劇団だけではなくて、奏歌くんは真尋さんの劇団も応援したいと考えている。私の所属する劇団よりも規模は小さいけれど、真尋さんの劇団も全国ツアーを行ったり、精力的に活動しているようだ。
真尋さんの劇団を応援するというのはちょっとだけ妬けるけれど、真尋さんは奏歌くんのお兄さんなのだから仕方がない。
六月の予定が決まって私は津島さんに話をしないといけないと思っていた。
奏歌くんの風邪も無事に治って、私に日常が戻って来る。
バレンタインデーのお茶会とディナーショーの日は、雨だった。
午前中のお茶会は大盛況で終わった。残るディナーショーだが、午後からなので奏歌くんのためにも時間を延長せずに終わらせたいと考えていた。午前中のお茶会が少し時間がオーバーしてしまったのだ。
それもお客様が何度もアンコールをくださったからという嬉しい理由だったが、ディナーショーはお客様の帰りのこともあるので、あまり延長はできない。
時間を過ぎることがないように、アンコールまで計算された公演時間で終わらせることが私の目標だった。
ディナーショーの本番が始まると、まず私のファリネッリの女装した姿でのオペラアリアから始まる。それが終わって、美鳥さんと真月さんが歌って踊っている間に着替えて、化粧も髪型も変えて、次の歌のために出て来る。
衣装替えも、三人でのトークも問題なく終わった。
「本日は足元のお悪い中お越しいただきありがとうございました。これからも当劇団とわたくし、瀬川海瑠を応援してください」
「美鳥もお願いします!」
「真月もね!」
最後の挨拶を終えても拍手が鳴りやまない。
アンコールの曲はもう歌い終えていた。
なにかしないとお客様は帰れない雰囲気だったので、私は美鳥さんと真月さんと顔を見合わせて頷き合った。
三人で出て、私がファリネッリのオペラアリアを歌う。最後の部分で美鳥さんと真月さんが失神するご婦人の客の演技をやってくれた。
笑いと拍手に包まれてディナーショーが終わる。
楽屋に行くと、奏歌くんとやっちゃんが来てくれた。
「奏歌、熱もほとんど下がってますから、海瑠さんの血をあげたら治ると思います。よろしくお願いします」
そうだった。
奏歌くんが小さな頃に熱を出したときにも私の血を飲んだら治ったことがあった。あのときのように血を分け与えれば奏歌くんはすぐに治ってしまうのかもしれない。
「海瑠さん、うつるかもしれないから、治るまで来ない方が良かったのに」
「私は健康だから平気よ。ワーキャットだもの」
リビングでお茶を飲みながら寛いでいる奏歌くんの顔はちょっと赤い気がする。中学生らしいシャツとジーンズ姿にセーターを着ている奏歌くん。私が来るのでパジャマは着替えたのだろう。
「ご飯は食べた?」
「あまり食欲がなくて」
「それなら、私がおうどんを作ってあげるわ」
そう言ったのはよかったけれど、私は冷蔵庫に貼ってある美歌さんの書置きを見てしまったのだった。
『体調がよくなったら梅とじうどんを作って食べなさいね』
梅とじうどん!?
これが奏歌くんの家の病気のときに食べるおうどんのスタンダードなのだろうか。
よき伴侶になるために、奏歌くんの家の伝統ならば守らなければいけない。
「梅とじうどんってなんだろう」
携帯電話で調べると、おうどんを卵とじにして梅干を乗せたものとあった。詳しくレシピを見ていくとできなくはなさそうな気がしてくる。
「挑戦してみよう、梅とじうどん」
決意して私は冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫から卵と梅干を取り出す。お鍋にはお湯を沸かして、もう一つのお鍋では出汁を温める。沸騰したお湯の中に冷凍うどんをいれて、柔らかくなるまで煮る。冷凍だったので沸騰してぼこぼこと泡が出ていた鍋が、一瞬で温度が下がって泡が消えた。
出汁は沸騰させ過ぎないようにしながらおうどんの麺をお湯で温めて、お出汁の中に入れる。
ここからが問題だった。
卵とじにしなければいけない。
卵を握り潰さないように慎重に割って、小さな容器の中で溶きほぐす。
「三つ葉!? 三つ葉ってなに!?」
三つ葉を最後に入れなければいけないようだが、なかったのでネギで代用する。ネギを刻んでいると涙が出そうになったが、私は奏歌くんのためだと思って頑張った。
溶きほぐした卵を回し入れると書いてあるがそれがよく分からない。
「回しながら入れるの? どういうこと?」
かき混ぜながら、何となくどぼどぼと卵を入れてしまったら卵が固まっていく。
「もしかして、鍋の中身を回せってこと?」
鍋に箸を突っ込んでぐるぐる回しながら流し入れていくとなんとなく良い感じになった気がした。器に盛り付けて、梅干を乗せて奏歌くんのところに持っていく。
「梅とじうどん!? 海瑠さんが作ってくれたの!?」
「うん、ちゃんとできてるか分からないけど」
「海瑠さん、お料理もできるようになったんだね」
褒められて嬉しくなって私はにやけてしまった。
奏歌くんがふうふうとおうどんを冷ましながら食べている。唇を尖らせている様子が可愛くて、私は写真におさめたくて仕方がなかった。
溶き卵と梅におうどんを絡めて奏歌くんが食べ終わると、私はソファに座ったまま奏歌くんを招いた。
「血を吸ってもいいよ。風邪なんてすぐに治っちゃうでしょう?」
「唾液で海瑠さんにうつるかもしれない」
「バレンタイン公演まではもう少し時間があるから平気よ。風邪になったら、奏歌くんに看病してもらうから」
笑い話にしてしまうと奏歌くんの緊張も解れる。微笑んで私の前に来て首に噛み付いた。血を吸われている間の恍惚とした感覚の後で、奏歌くんが口を放して、ソファの正面の席に座り直した。
体温計を脇に挟むとピピッという電子音が鳴って、奏歌くんの熱を表示する。見せてもらった体温計の表示は平熱になっていた。
「奏歌くんよかった。インフルエンザでも私、きっと血を分けに来たと思う」
「インフルエンザだったら劇団のひとに迷惑をかけるからやめてね」
「奏歌くんが苦しんでると思うと気が気じゃないもの」
インフルエンザでも治せるくらいの力が運命のひとである私の血にはあるのかもしれない。それを願っての発言だったが、奏歌くんは心配そうにハニーブラウンの眉を下げていた。
「僕のために無茶をしないで」
私のことをどこまでも思ってくれる奏歌くんは優しい。
やっぱり男前だと惚れ直してしまう。
風邪も落ち着いたので奏歌くんはリビングに勉強道具を持って来て、高校から出された課題をやっていた。私も座って脚本を読む。バレンタインのお茶会とディナーショーのための短い演目が用意されていて、その台詞や演出を完璧に覚えてはいるが、一応確認は怠らないようにしなければいけない。
「海瑠さんのバレンタインのディナーショー、僕も行くんだからね。楽しみにしてるから、中止になるかもしれないようなことは避けてね」
ぽつりと呟いた奏歌くんに、私は不謹慎ながら浮かれてしまった。自分のインフルエンザがうつって、悪化して長引いたら私がバレンタインデーのディナーショーに出られないのではないかと、奏歌くんは心配してくれていたのだ。それだけ私の公演を楽しみにしてくれて、大事に思ってくれることが嬉しい。
「海瑠さん、六月に兄さんの劇団で公演があるんだって」
「真尋さんの劇団? 冬の公演は行けなかったもんね」
「うん。兄さんにお願いして、チケット取ってもらわない?」
その頃には奏歌くんは高校生になっていて、17歳も目前になっている。
少し先のことだが、それだけにスケジュールはまだまだ空けられた。
「一緒に行こうか」
「兄さんの劇団も応援したいんだ」
私の劇団だけではなくて、奏歌くんは真尋さんの劇団も応援したいと考えている。私の所属する劇団よりも規模は小さいけれど、真尋さんの劇団も全国ツアーを行ったり、精力的に活動しているようだ。
真尋さんの劇団を応援するというのはちょっとだけ妬けるけれど、真尋さんは奏歌くんのお兄さんなのだから仕方がない。
六月の予定が決まって私は津島さんに話をしないといけないと思っていた。
奏歌くんの風邪も無事に治って、私に日常が戻って来る。
バレンタインデーのお茶会とディナーショーの日は、雨だった。
午前中のお茶会は大盛況で終わった。残るディナーショーだが、午後からなので奏歌くんのためにも時間を延長せずに終わらせたいと考えていた。午前中のお茶会が少し時間がオーバーしてしまったのだ。
それもお客様が何度もアンコールをくださったからという嬉しい理由だったが、ディナーショーはお客様の帰りのこともあるので、あまり延長はできない。
時間を過ぎることがないように、アンコールまで計算された公演時間で終わらせることが私の目標だった。
ディナーショーの本番が始まると、まず私のファリネッリの女装した姿でのオペラアリアから始まる。それが終わって、美鳥さんと真月さんが歌って踊っている間に着替えて、化粧も髪型も変えて、次の歌のために出て来る。
衣装替えも、三人でのトークも問題なく終わった。
「本日は足元のお悪い中お越しいただきありがとうございました。これからも当劇団とわたくし、瀬川海瑠を応援してください」
「美鳥もお願いします!」
「真月もね!」
最後の挨拶を終えても拍手が鳴りやまない。
アンコールの曲はもう歌い終えていた。
なにかしないとお客様は帰れない雰囲気だったので、私は美鳥さんと真月さんと顔を見合わせて頷き合った。
三人で出て、私がファリネッリのオペラアリアを歌う。最後の部分で美鳥さんと真月さんが失神するご婦人の客の演技をやってくれた。
笑いと拍手に包まれてディナーショーが終わる。
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