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七章 奏歌くんとの七年目
9.花火大会のお誘い
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マネージャーの津島さんが産休に入って、私のマネージャーは園田さんだけになった。これから津島さんが育休から戻って来て、生まれた赤ちゃんが1歳を超えるまでは園田さんとできる限り仲良く頑張って行かなければいけない。
セクハラを起こしそうな海外の演出家の件もなんとかなりそうだったし、私は奏歌くんを招待する秋公演のことを考えていた。
「奏歌くんと沙紀ちゃんの分のチケットを取っておいて欲しいんです」
「秋公演は二人分ですね」
「クリスマスの特別公演は茉優ちゃんとやっちゃんの分も合わせて四人分でお願いしたいです」
はっきりと言葉にしなければ伝わらない。津島さんとの間では長年の付き合いで分かっていることも、園田さんにはもう一度確認しておかなければいけなかった。
「津島さんが海瑠さんはぼーっとしてるって言ってましたが、そんなことないですね」
「そうですか?」
津島さんにも百合にも海香にも、私はできないことだらけの舞台以外才能のない人間のように言われていたが、園田さんは私のことを認めてくれる。
「奏歌くんからも、海瑠さんのことしっかりよろしくお願いしますって言われてますよ」
「え? いつの間に?」
「この前、篠田さんと一緒に帰ったじゃないですか」
蝙蝠になって海外のセクハラ演出家から劇団員を守るために降り立った奏歌くんを、やっちゃんに連絡してお迎えに来てもらったときに、奏歌くんは園田さんのところに寄って、私のことをよろしくと伝えたようなのだ。12歳なのにしっかりしている奏歌くんの行動に胸が高鳴る。
「海瑠さんにあの演出家が仕返しするかもしれないから、ちゃんと見ててって言われました。できる限り見ておきますね」
訳の分からないままに病院に運び込まれて、その間に出番を奪われていた海外の演出家は、それが私が手引きしたことだと気付いているだろう。私を狙ってきたところで、腕力ではワーキャットである私に勝てるわけがないのだが、それでも奏歌くんは私を心配してくれていた。
優しい奏歌くんに感謝しかない。
稽古を終えて部屋に戻ると奏歌くんが待っていてくれた。
「晩ご飯を食べたら帰らなきゃいけないけど、海瑠さんとご飯だけでも食べたくて、来ちゃった」
やっちゃんの作ったウィーン風カツレツと奏歌くんの作ったお味噌汁と炊いてくれたご飯、サラダの晩ご飯に、私は手を洗って席に着く。
ウィーン風カツレツとは豚肉を薄く叩いて伸ばして、チーズの混ざった衣で揚げ焼きして、トマトソースをかけたものだった。奏歌くんに教えてもらってフォークとナイフで切って食べる。冷えていたのを電子レンジで温めたのでちょっとしっとりしていたが充分美味しかった。
「奏歌くん、園田さんに気を付けてくれるように言ってくれたの?」
「逆恨みされるかもしれないからね」
海外のセクハラ演出家が逆恨みして来ても私は平気なのだが、奏歌くんは私を心配してくれている。優しさに胸が暖かくなる。
「明日はやっちゃんと一緒に海瑠さんのお稽古を見に行っても良い?」
「来てくれるの? 美歌さんは良いって?」
「海外の演出家が怪しい動きをするかもしれないって言ったら、行ってあげなさいって言ってたよ。それに母さんはさくらちゃんに夢中なんだ」
保育園も夏休みで休める園児は休むようにお願いされていて、美歌さんも仕事を減らしていてさくらを預かれるようにしているようだ。夜勤の数も最近は減ったという。
「僕を育ててたときには、まだ新米でお金もなくて、すごく大変だったみたいだけど、今はある程度時間に自由が利くようになったみたいなんだ」
昇給したのと、今までに貯めていたお金に、真里さんからの養育費もきっちりともらって、美歌さんの生活はそれほど苦しいものではなくなっている。真里さんからの養育費は奏歌くんの将来のための学費として積み立てていると奏歌くんは話してくれた。
「僕の口座にも父さん、物凄い大金を入れてたからね」
「最近はないの?」
「最近は父さんの姿も見ないし……運命に出会って幸せなんじゃない?」
シャツの首筋に見えていた首輪のようなチョーカーを着けた真里さんの姿が浮かんだけれど、真里さんも相手に執着するタイプのようだしきっと幸せなのだろうと頭から打ち消す。真里さんに関してはもう私たちに関わって欲しくなかった。
「明日、見に来てくれたら嬉しいな。奏歌くんがいると安心するし」
「うん、やっちゃんと一緒に行くね」
約束をして、奏歌くんは晩御飯を食べて片付けを終えると、美歌さんが迎えに来て帰って行った。
夏休みも残り少なくなっている。残りの日々を奏歌くんとどう過ごすか、私はまだ奏歌くんとできることがあるのではないかと考えていた。
奏歌くんはしたいこと、欲しいものなどないのだろうか。
奏歌くんとしたことがないことで、やってみたいこと。私も考えてみるがなかなか浮かばない。
次の日の朝に百合の車で劇団に送ってもらう途中で、私は信号待ちのときにちょうど見える位置にあった掲示板に貼られているポスターが目に留まった。ワーキャットの視力で見てみると、「花火大会」と書いてある。その他に「盆踊り」とも書いてある。
「花火大会と盆踊りってなに?」
運転している百合に聞くと、視線は前方から放さないままで百合が答えてくれた。
「この街の川べりで花火を上げるのよ。毎年、ドーンって音がして、光が見えるの、気付いてなかった?」
「全然」
全く興味がなかったせいか、私はこの街で毎年花火大会があっているのも知らなかった。
「盆踊りは街の広場でみんなで踊るの」
「踊るって、バレエとか?」
「全然違うわよ。もっと和風の踊りなんだけど……説明は難しいわね」
稽古場に行ったら実践で教えてくれるという百合に、私は大人しく稽古場まで車に乗せてもらって行った。稽古場に着くと百合が楽屋にやって来て、盆踊りを教えてくれる。バレエとは全く違う動きに私は興味津々だった。
「奏歌くんと行きたいわ」
「私も一緒に連れてってよ!」
「えー百合も?」
この感じだと海香と宙夢さんとさくらと美歌さんとやっちゃんと茉優ちゃんと百合と私と奏歌くんの大人数になりそうな予感しかしない。それでも楽しければそれでいいかと思う。
稽古場に来ているはずの奏歌くんを探していると、廊下に海外のセクハラ演出家が立っていた。横を通り過ぎようとする私に、外国語でなにかぶつぶつ言いながら通らせないように壁際に追い詰めてくる。
「なんの用? 警備員を呼ぶわよ?」
「オマエノセイデ!」
私より長身で男性なので体付きもがっしりとした海外の演出家が、私の胸倉を掴み上げる。ひとに危害を加えてはいけないと叩き込まれている私は、何か壊して威嚇できるものを探して手を彷徨わせるが、近くになにもない。
「海瑠さん! 海瑠さんから手を放せ!」
凛とした声が響いて、奏歌くんが弾丸のように海外の演出家に身体ごとぶつかる。よろけた海外の演出家は私から手を放した。
「ジャマナがきダ!」
振り上げた拳が奏歌くんの顔を殴る前に、奏歌くんの目が赤く光った。
「二度と海瑠さんにも劇団のひとにも、迷惑をかけるな!」
赤い目で睨まれた海外の演出家がガタガタと震えて床に膝をつく。頭を抱えるようにしている海外の演出家を睨み付けて、奏歌くんは私の手を取った。
「海瑠さん、大丈夫?」
真里さんがひとを操ることができると奏歌くんに教えたときの技を使ったのだろう。海外の演出家はもう私のことなど視界に入っていないようで、「ひぃっ!」と怯えた声を出して走って逃げだしていた。
「奏歌くん、助けてくれてありがとう」
「海瑠さんが無事で良かった」
ぎゅっと私の身体に抱き付いてくる奏歌くんの華奢な体を抱き留める。
「ねぇ、花火大会に行かない? 盆踊りにも」
抱き付いた奏歌くんの耳に囁くと、ぱっと顔を上げてハニーブラウンの目が輝いた。
セクハラを起こしそうな海外の演出家の件もなんとかなりそうだったし、私は奏歌くんを招待する秋公演のことを考えていた。
「奏歌くんと沙紀ちゃんの分のチケットを取っておいて欲しいんです」
「秋公演は二人分ですね」
「クリスマスの特別公演は茉優ちゃんとやっちゃんの分も合わせて四人分でお願いしたいです」
はっきりと言葉にしなければ伝わらない。津島さんとの間では長年の付き合いで分かっていることも、園田さんにはもう一度確認しておかなければいけなかった。
「津島さんが海瑠さんはぼーっとしてるって言ってましたが、そんなことないですね」
「そうですか?」
津島さんにも百合にも海香にも、私はできないことだらけの舞台以外才能のない人間のように言われていたが、園田さんは私のことを認めてくれる。
「奏歌くんからも、海瑠さんのことしっかりよろしくお願いしますって言われてますよ」
「え? いつの間に?」
「この前、篠田さんと一緒に帰ったじゃないですか」
蝙蝠になって海外のセクハラ演出家から劇団員を守るために降り立った奏歌くんを、やっちゃんに連絡してお迎えに来てもらったときに、奏歌くんは園田さんのところに寄って、私のことをよろしくと伝えたようなのだ。12歳なのにしっかりしている奏歌くんの行動に胸が高鳴る。
「海瑠さんにあの演出家が仕返しするかもしれないから、ちゃんと見ててって言われました。できる限り見ておきますね」
訳の分からないままに病院に運び込まれて、その間に出番を奪われていた海外の演出家は、それが私が手引きしたことだと気付いているだろう。私を狙ってきたところで、腕力ではワーキャットである私に勝てるわけがないのだが、それでも奏歌くんは私を心配してくれていた。
優しい奏歌くんに感謝しかない。
稽古を終えて部屋に戻ると奏歌くんが待っていてくれた。
「晩ご飯を食べたら帰らなきゃいけないけど、海瑠さんとご飯だけでも食べたくて、来ちゃった」
やっちゃんの作ったウィーン風カツレツと奏歌くんの作ったお味噌汁と炊いてくれたご飯、サラダの晩ご飯に、私は手を洗って席に着く。
ウィーン風カツレツとは豚肉を薄く叩いて伸ばして、チーズの混ざった衣で揚げ焼きして、トマトソースをかけたものだった。奏歌くんに教えてもらってフォークとナイフで切って食べる。冷えていたのを電子レンジで温めたのでちょっとしっとりしていたが充分美味しかった。
「奏歌くん、園田さんに気を付けてくれるように言ってくれたの?」
「逆恨みされるかもしれないからね」
海外のセクハラ演出家が逆恨みして来ても私は平気なのだが、奏歌くんは私を心配してくれている。優しさに胸が暖かくなる。
「明日はやっちゃんと一緒に海瑠さんのお稽古を見に行っても良い?」
「来てくれるの? 美歌さんは良いって?」
「海外の演出家が怪しい動きをするかもしれないって言ったら、行ってあげなさいって言ってたよ。それに母さんはさくらちゃんに夢中なんだ」
保育園も夏休みで休める園児は休むようにお願いされていて、美歌さんも仕事を減らしていてさくらを預かれるようにしているようだ。夜勤の数も最近は減ったという。
「僕を育ててたときには、まだ新米でお金もなくて、すごく大変だったみたいだけど、今はある程度時間に自由が利くようになったみたいなんだ」
昇給したのと、今までに貯めていたお金に、真里さんからの養育費もきっちりともらって、美歌さんの生活はそれほど苦しいものではなくなっている。真里さんからの養育費は奏歌くんの将来のための学費として積み立てていると奏歌くんは話してくれた。
「僕の口座にも父さん、物凄い大金を入れてたからね」
「最近はないの?」
「最近は父さんの姿も見ないし……運命に出会って幸せなんじゃない?」
シャツの首筋に見えていた首輪のようなチョーカーを着けた真里さんの姿が浮かんだけれど、真里さんも相手に執着するタイプのようだしきっと幸せなのだろうと頭から打ち消す。真里さんに関してはもう私たちに関わって欲しくなかった。
「明日、見に来てくれたら嬉しいな。奏歌くんがいると安心するし」
「うん、やっちゃんと一緒に行くね」
約束をして、奏歌くんは晩御飯を食べて片付けを終えると、美歌さんが迎えに来て帰って行った。
夏休みも残り少なくなっている。残りの日々を奏歌くんとどう過ごすか、私はまだ奏歌くんとできることがあるのではないかと考えていた。
奏歌くんはしたいこと、欲しいものなどないのだろうか。
奏歌くんとしたことがないことで、やってみたいこと。私も考えてみるがなかなか浮かばない。
次の日の朝に百合の車で劇団に送ってもらう途中で、私は信号待ちのときにちょうど見える位置にあった掲示板に貼られているポスターが目に留まった。ワーキャットの視力で見てみると、「花火大会」と書いてある。その他に「盆踊り」とも書いてある。
「花火大会と盆踊りってなに?」
運転している百合に聞くと、視線は前方から放さないままで百合が答えてくれた。
「この街の川べりで花火を上げるのよ。毎年、ドーンって音がして、光が見えるの、気付いてなかった?」
「全然」
全く興味がなかったせいか、私はこの街で毎年花火大会があっているのも知らなかった。
「盆踊りは街の広場でみんなで踊るの」
「踊るって、バレエとか?」
「全然違うわよ。もっと和風の踊りなんだけど……説明は難しいわね」
稽古場に行ったら実践で教えてくれるという百合に、私は大人しく稽古場まで車に乗せてもらって行った。稽古場に着くと百合が楽屋にやって来て、盆踊りを教えてくれる。バレエとは全く違う動きに私は興味津々だった。
「奏歌くんと行きたいわ」
「私も一緒に連れてってよ!」
「えー百合も?」
この感じだと海香と宙夢さんとさくらと美歌さんとやっちゃんと茉優ちゃんと百合と私と奏歌くんの大人数になりそうな予感しかしない。それでも楽しければそれでいいかと思う。
稽古場に来ているはずの奏歌くんを探していると、廊下に海外のセクハラ演出家が立っていた。横を通り過ぎようとする私に、外国語でなにかぶつぶつ言いながら通らせないように壁際に追い詰めてくる。
「なんの用? 警備員を呼ぶわよ?」
「オマエノセイデ!」
私より長身で男性なので体付きもがっしりとした海外の演出家が、私の胸倉を掴み上げる。ひとに危害を加えてはいけないと叩き込まれている私は、何か壊して威嚇できるものを探して手を彷徨わせるが、近くになにもない。
「海瑠さん! 海瑠さんから手を放せ!」
凛とした声が響いて、奏歌くんが弾丸のように海外の演出家に身体ごとぶつかる。よろけた海外の演出家は私から手を放した。
「ジャマナがきダ!」
振り上げた拳が奏歌くんの顔を殴る前に、奏歌くんの目が赤く光った。
「二度と海瑠さんにも劇団のひとにも、迷惑をかけるな!」
赤い目で睨まれた海外の演出家がガタガタと震えて床に膝をつく。頭を抱えるようにしている海外の演出家を睨み付けて、奏歌くんは私の手を取った。
「海瑠さん、大丈夫?」
真里さんがひとを操ることができると奏歌くんに教えたときの技を使ったのだろう。海外の演出家はもう私のことなど視界に入っていないようで、「ひぃっ!」と怯えた声を出して走って逃げだしていた。
「奏歌くん、助けてくれてありがとう」
「海瑠さんが無事で良かった」
ぎゅっと私の身体に抱き付いてくる奏歌くんの華奢な体を抱き留める。
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