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四章 奏歌くんとの四年目
5.夏休みの終わり
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奏歌くんが炊いてくれたご飯に、お惣菜を電子レンジで温めて、フリーズドライのお味噌汁をお湯で溶いて、粉茶も淹れて、晩御飯にする。
やっちゃんや美歌さんの心尽くしのお惣菜はいつも美味しかった。
お風呂に入って眠って、朝には蝙蝠になっている奏歌くんに血を上げて人間の姿に戻して、タイマーで炊かれたご飯と、奏歌くんの卵焼きと、糠床に漬けたお野菜、それにお惣菜とフリーズドライのお味噌汁で朝ご飯にする。
「海瑠さん、今日はお家に帰らないといけない」
「ずっといてくれていいのに」
奏歌くんがいてくれる日常が幸福すぎて、私は夏休みが終わるのが惜しくてたまらなかった。三日泊まっては四日家に帰る。そんな一週間を過ごしていた奏歌くんも、もうすぐ夏休みが終わってこんな生活はできなくなる。
夏休みの最後のお泊りの日は私も休みを取って二人で過ごすことにした。
「夏休みの宿題は終わったの?」
「もうほとんど終わってる。一行日記だけは、先に終わらせられないから」
その日にあったことを書く一行日記だけが残っているという奏歌くん。それ以外は宿題も終わらせているのならば、遊びに出かけてもいいのではないか。
奏歌くんが楽しめそうな場所を携帯電話で探す私に、奏歌くんはそれを止めた。
「せっかくだから、お買い物に行って、二人でゆっくり過ごしたいな」
夏休みが終わってしまえば奏歌くんも小学校の二学期が始まる。忙しくなるのだからわざわざ人ごみの中に出かけなくても、二人で過ごしたいという奏歌くんの要望に私は答えるつもりだった。
「何が欲しいの?」
「やっちゃんや茉優ちゃん、沙紀ちゃんが海瑠さんのお部屋に遊びに来るかもしれないでしょう?」
これまでは二人だけの食器で足りていたが、これからは足りなくなるかもしれない。奏歌くんの言い分は最もだった。
「本当は、海瑠さんのお部屋は、僕が独り占めしたいんだけど……」
小さく呟くのが可愛くて私は奏歌くんを抱き締めてしまう。
「特別なときにだけ呼ぶようにしようね」
「うん。僕、嫌な子じゃない?」
「嫌な子じゃないよ。奏歌くん、大好き」
答えると奏歌くんは白い頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んでいた。
ハニーブラウンの髪の毛と目で、肌の白い奏歌くん。色彩もだがやっちゃんの顔立ちも美歌さんの顔立ちも彫りが深いし、どこか日本人離れしたところがある。
奏歌くんの顔立ちは真里さんに似ているので可愛らしくて、彫りはそれほど深くないが、それでもお目目がぱっちりと大きくて特徴的だ。
「奏歌くん、お祖父様の話は聞いたことある?」
「少しだけ。お祖母ちゃんと外国で出会ったんだって。母さんとやっちゃんは、外国で生まれて、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがお別れして、お祖母ちゃんと一緒に日本に戻って来たって」
ということは、奏歌くんには海外の血が入っている可能性があるわけだ。それならばこの色素の薄さも説明が付く。
「お祖母ちゃんが母さんとやっちゃんを置いて海外に行ったのも、お祖父ちゃんのところに行ったんじゃないかって、母さんは言ってた」
人間のお祖父様は残り少ないかもしれない寿命を、無理に血を分け与えて伸ばすことはせずに、奏歌くんのお祖母様は自然のままに生きて死ねるようにお別れをした。しかし、子どもが育ってからもう一度会いに行って残りの年月を一緒に過ごすというのもまたロマンチックかもしれない。
人間を餌としか認識していない真里さんとは全く違う奏歌くんのお祖母様の生き方。それがあったからこそ、美歌さんもやっちゃんも常識人に育ったのだろう。その二人に育てられた奏歌くんはこんなにも男前だ。
「お買い物、行こうか」
「うん、水筒を用意するね」
リュックサックに麦茶の入った水筒を用意する奏歌くん。夏場は特に水分補給に気を付けるように言われているから、出かけるときにはいつも水筒を持ち歩いて麦茶が飲めるようにしている。
「本当はね、麦茶じゃない方がいいんだって」
「どういうこと?」
「麦茶は悪くなりやすいから、烏龍茶とか緑茶の方が殺菌作用があっていいんだけど、僕は麦茶が一番飲みやすいから」
麦茶は悪くなりやすい。
それは初めて聞いたことだった。
麦で作られているから雑菌の餌となる栄養素が入っていて、悪くなりやすいのだと調べたサイトには書いてあった。
「烏龍茶や緑茶にはカフェインがあるから、あまり飲んじゃダメって言われてるし」
紅茶も特別におやつのときだけで、それも9歳になるまではミルクで半分に割らないといけなかった。カフェインは子どもには刺激が強すぎるのだ。
「ノンカフェインのルイボスティーを飲んでみたことがあるけど、味があまり好きじゃなかった」
「麦茶を劣化させないように気を付けようね」
飲んでみて味がおかしかったら飲まないとか奏歌くんは美歌さんとやっちゃんと約束をしているようだった。何か奏歌くんが飲めるものでカフェインの入っていないものはないものか。
デパートで探してみようと決めた。
デパートに行くと、以前にお皿やマグカップを買った雑貨のお店に行く。奏歌くんはマグカップとお菓子用のお皿とグラスを探していた。
シンプルなグラスに、お花の柄のマグカップ、同じお花の柄のお皿を二組ずつ選ぶと、奏歌くんが私に聞く。
「これでいいかな?」
「可愛いと思うよ」
奏歌くんの決めたものを買ってから、私は地下二階の食品売り場に行った。お茶を売っているお店を覗くと声をかけられる。
「試飲いかがですか?」
「ひゃ!?」
思わず奏歌くんの後ろに隠れてしまった私に、奏歌くんが小さな紙コップを受け取っていた。綺麗な赤い水色のハーブティーは飲んでみると、甘酸っぱくてなかなか美味しい。
「これ、好きかも」
「僕も」
二人で顔を見合わせて、店員さんに聞いてみる。
「これ、カフェイン入ってますか?」
店員さんは丁寧に答えてくれた。
「ローズヒップとハイビスカスをブレンドしたハーブティーです。ベースがルイボスティーなので、ノンカフェインですよ」
「ルイボスティー!? これ、ルイボスティーなの!?」
奏歌くんが驚きの声を上げている。
「ルイボスティーなのに、嫌いな感じじゃなかった」
「これ、ティーバッグありますか?」
「ティーバッグもありますよ」
ティーバッグのハーブティーを私と奏歌くんは買ってみることにした。
おやつのシュークリームも買って帰ると、さっそくティーバッグでハーブティーを淹れてみる。甘酸っぱい香りが部屋中に広がった。
「これだったら、奏歌くんも何杯でも飲めるね」
「基本は麦茶でいいんだけどね」
紅茶は一日に一杯までと決められている奏歌くんがもっと頻繁にティータイムを楽しめるようになるかもしれない。
お茶のお店で勇気を出して買って良かったと私は思った。
シュークリームは上が切り取ってあって、中にたっぷりと生クリームとカスタードが入っているタイプのものなので、上を手で持って生クリームとカスタードを掬って食べる。ある程度生クリームとカスタードが減ってきたら、下の生地を持って食べる。
奏歌くんに教えてもらった食べ方でお皿を汚す大惨事にならずにシュークリームを食べ終えることができた。
おやつの後には奏歌くんとDVDを見て、歌って踊って過ごす。
夕方が近付くにつれて私は寂しい気持ちを抑えきれなくなってきていた。
ダンスの途中で奏歌くんを抱き上げると、くるくると回る。回転して奏歌くんは「きゃー!」と声を上げて笑っていた。
踊り終わると奏歌くんに鳥籠のソファに座ってもらって、猫の姿になってお膝の上に頭を乗せる。
「僕も大きくなったら海瑠さんと海外に行くのかもしれない」
毛皮を撫でながら奏歌くんが呟く。
そのときには、沙紀ちゃんとも百合とも離れなければいけない。
奏歌くんもそれまでに培った人間関係を全部捨てて、海外に行かなければいけないかもしれない。
「寂しくないかな?」
「分からない……でも、海瑠さんは一緒だよ」
奏歌くんが大きくなって、普通の人間との寿命の差が明白になる前に、奏歌くんは住む場所を変えなければいけない。私の方もその覚悟をしてずっと生きて来た。
6歳で自分が吸血鬼だと知った奏歌くんは、9歳にして自分の将来を考えている。
「奏歌くん、ずっと一緒にいてね」
お迎えが来るまでの時間、私は奏歌くんの膝に頭を乗せて撫でてもらっていた。
やっちゃんや美歌さんの心尽くしのお惣菜はいつも美味しかった。
お風呂に入って眠って、朝には蝙蝠になっている奏歌くんに血を上げて人間の姿に戻して、タイマーで炊かれたご飯と、奏歌くんの卵焼きと、糠床に漬けたお野菜、それにお惣菜とフリーズドライのお味噌汁で朝ご飯にする。
「海瑠さん、今日はお家に帰らないといけない」
「ずっといてくれていいのに」
奏歌くんがいてくれる日常が幸福すぎて、私は夏休みが終わるのが惜しくてたまらなかった。三日泊まっては四日家に帰る。そんな一週間を過ごしていた奏歌くんも、もうすぐ夏休みが終わってこんな生活はできなくなる。
夏休みの最後のお泊りの日は私も休みを取って二人で過ごすことにした。
「夏休みの宿題は終わったの?」
「もうほとんど終わってる。一行日記だけは、先に終わらせられないから」
その日にあったことを書く一行日記だけが残っているという奏歌くん。それ以外は宿題も終わらせているのならば、遊びに出かけてもいいのではないか。
奏歌くんが楽しめそうな場所を携帯電話で探す私に、奏歌くんはそれを止めた。
「せっかくだから、お買い物に行って、二人でゆっくり過ごしたいな」
夏休みが終わってしまえば奏歌くんも小学校の二学期が始まる。忙しくなるのだからわざわざ人ごみの中に出かけなくても、二人で過ごしたいという奏歌くんの要望に私は答えるつもりだった。
「何が欲しいの?」
「やっちゃんや茉優ちゃん、沙紀ちゃんが海瑠さんのお部屋に遊びに来るかもしれないでしょう?」
これまでは二人だけの食器で足りていたが、これからは足りなくなるかもしれない。奏歌くんの言い分は最もだった。
「本当は、海瑠さんのお部屋は、僕が独り占めしたいんだけど……」
小さく呟くのが可愛くて私は奏歌くんを抱き締めてしまう。
「特別なときにだけ呼ぶようにしようね」
「うん。僕、嫌な子じゃない?」
「嫌な子じゃないよ。奏歌くん、大好き」
答えると奏歌くんは白い頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んでいた。
ハニーブラウンの髪の毛と目で、肌の白い奏歌くん。色彩もだがやっちゃんの顔立ちも美歌さんの顔立ちも彫りが深いし、どこか日本人離れしたところがある。
奏歌くんの顔立ちは真里さんに似ているので可愛らしくて、彫りはそれほど深くないが、それでもお目目がぱっちりと大きくて特徴的だ。
「奏歌くん、お祖父様の話は聞いたことある?」
「少しだけ。お祖母ちゃんと外国で出会ったんだって。母さんとやっちゃんは、外国で生まれて、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがお別れして、お祖母ちゃんと一緒に日本に戻って来たって」
ということは、奏歌くんには海外の血が入っている可能性があるわけだ。それならばこの色素の薄さも説明が付く。
「お祖母ちゃんが母さんとやっちゃんを置いて海外に行ったのも、お祖父ちゃんのところに行ったんじゃないかって、母さんは言ってた」
人間のお祖父様は残り少ないかもしれない寿命を、無理に血を分け与えて伸ばすことはせずに、奏歌くんのお祖母様は自然のままに生きて死ねるようにお別れをした。しかし、子どもが育ってからもう一度会いに行って残りの年月を一緒に過ごすというのもまたロマンチックかもしれない。
人間を餌としか認識していない真里さんとは全く違う奏歌くんのお祖母様の生き方。それがあったからこそ、美歌さんもやっちゃんも常識人に育ったのだろう。その二人に育てられた奏歌くんはこんなにも男前だ。
「お買い物、行こうか」
「うん、水筒を用意するね」
リュックサックに麦茶の入った水筒を用意する奏歌くん。夏場は特に水分補給に気を付けるように言われているから、出かけるときにはいつも水筒を持ち歩いて麦茶が飲めるようにしている。
「本当はね、麦茶じゃない方がいいんだって」
「どういうこと?」
「麦茶は悪くなりやすいから、烏龍茶とか緑茶の方が殺菌作用があっていいんだけど、僕は麦茶が一番飲みやすいから」
麦茶は悪くなりやすい。
それは初めて聞いたことだった。
麦で作られているから雑菌の餌となる栄養素が入っていて、悪くなりやすいのだと調べたサイトには書いてあった。
「烏龍茶や緑茶にはカフェインがあるから、あまり飲んじゃダメって言われてるし」
紅茶も特別におやつのときだけで、それも9歳になるまではミルクで半分に割らないといけなかった。カフェインは子どもには刺激が強すぎるのだ。
「ノンカフェインのルイボスティーを飲んでみたことがあるけど、味があまり好きじゃなかった」
「麦茶を劣化させないように気を付けようね」
飲んでみて味がおかしかったら飲まないとか奏歌くんは美歌さんとやっちゃんと約束をしているようだった。何か奏歌くんが飲めるものでカフェインの入っていないものはないものか。
デパートで探してみようと決めた。
デパートに行くと、以前にお皿やマグカップを買った雑貨のお店に行く。奏歌くんはマグカップとお菓子用のお皿とグラスを探していた。
シンプルなグラスに、お花の柄のマグカップ、同じお花の柄のお皿を二組ずつ選ぶと、奏歌くんが私に聞く。
「これでいいかな?」
「可愛いと思うよ」
奏歌くんの決めたものを買ってから、私は地下二階の食品売り場に行った。お茶を売っているお店を覗くと声をかけられる。
「試飲いかがですか?」
「ひゃ!?」
思わず奏歌くんの後ろに隠れてしまった私に、奏歌くんが小さな紙コップを受け取っていた。綺麗な赤い水色のハーブティーは飲んでみると、甘酸っぱくてなかなか美味しい。
「これ、好きかも」
「僕も」
二人で顔を見合わせて、店員さんに聞いてみる。
「これ、カフェイン入ってますか?」
店員さんは丁寧に答えてくれた。
「ローズヒップとハイビスカスをブレンドしたハーブティーです。ベースがルイボスティーなので、ノンカフェインですよ」
「ルイボスティー!? これ、ルイボスティーなの!?」
奏歌くんが驚きの声を上げている。
「ルイボスティーなのに、嫌いな感じじゃなかった」
「これ、ティーバッグありますか?」
「ティーバッグもありますよ」
ティーバッグのハーブティーを私と奏歌くんは買ってみることにした。
おやつのシュークリームも買って帰ると、さっそくティーバッグでハーブティーを淹れてみる。甘酸っぱい香りが部屋中に広がった。
「これだったら、奏歌くんも何杯でも飲めるね」
「基本は麦茶でいいんだけどね」
紅茶は一日に一杯までと決められている奏歌くんがもっと頻繁にティータイムを楽しめるようになるかもしれない。
お茶のお店で勇気を出して買って良かったと私は思った。
シュークリームは上が切り取ってあって、中にたっぷりと生クリームとカスタードが入っているタイプのものなので、上を手で持って生クリームとカスタードを掬って食べる。ある程度生クリームとカスタードが減ってきたら、下の生地を持って食べる。
奏歌くんに教えてもらった食べ方でお皿を汚す大惨事にならずにシュークリームを食べ終えることができた。
おやつの後には奏歌くんとDVDを見て、歌って踊って過ごす。
夕方が近付くにつれて私は寂しい気持ちを抑えきれなくなってきていた。
ダンスの途中で奏歌くんを抱き上げると、くるくると回る。回転して奏歌くんは「きゃー!」と声を上げて笑っていた。
踊り終わると奏歌くんに鳥籠のソファに座ってもらって、猫の姿になってお膝の上に頭を乗せる。
「僕も大きくなったら海瑠さんと海外に行くのかもしれない」
毛皮を撫でながら奏歌くんが呟く。
そのときには、沙紀ちゃんとも百合とも離れなければいけない。
奏歌くんもそれまでに培った人間関係を全部捨てて、海外に行かなければいけないかもしれない。
「寂しくないかな?」
「分からない……でも、海瑠さんは一緒だよ」
奏歌くんが大きくなって、普通の人間との寿命の差が明白になる前に、奏歌くんは住む場所を変えなければいけない。私の方もその覚悟をしてずっと生きて来た。
6歳で自分が吸血鬼だと知った奏歌くんは、9歳にして自分の将来を考えている。
「奏歌くん、ずっと一緒にいてね」
お迎えが来るまでの時間、私は奏歌くんの膝に頭を乗せて撫でてもらっていた。
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