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後日談

1.始まりは忘れ物(結婚編)

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 激しく龍己を抱いた翌日、春香は鼻歌交じりに大学に行っていた。飲み会で烏龍茶をアルコールの入った烏龍ハイとすり替えられた事件に関しては悪かったのは女性陣であったし、春香にも大学に友人が必要だと感じていて、一応男子たちとの交友は続いていた。
 試験期間中には過去問題集をあさったり、図書館で勉強したりしていたのだが、夏休み明けには男子たちは日に焼けていたり、デレデレの顔だったりして、春香は苦笑しながらその話を聞く。

「彼女ができたんだよ。まだキスもしてないけど」
「夏休みはひたすら泳いでたな。いい海岸があって」
「彼女とキャンプに行きました!」

 嬉しそうに報告してくる男子たちに、春香は自分が龍己と両想いになったことは言えないまま、にこにこと話を聞いていた。昼休みに食堂で盛り上がっているが、春香の今日の昼ご飯はない。お弁当を家に忘れて来てしまったのだ。

「素うどんでよければ奢るよ。独り身の悲しい戸井くんのために」
「それに磯部揚げつけようか?」
「俺は油揚げ付けるよ」

 優しいことを男子たちは言ってくれるのだが、春香は龍己のお弁当以外食べる気がしなかった。龍己のお弁当は春香にとって特別なもので、他に変えられるものはない。

「僕はいいのです。我慢するのです」

 ありがとうと頭を下げると、男子の一人が春香の首筋に気付いた。

「戸井くん、その首……」
「え!?」

 驚いて指さされた場所を押さえる春香は、席を立って洗面所に行っていた。鏡で見るとくっきりと見えるか見えないかの場所に赤い痕がついている。
 いつの間に龍己は春香の首にキスマークを付けたのだろう。
 食堂に戻ってきた春香は言いわけをする。

「虫刺されだったのです。まだ蚊がいてうっとうしいのです」

 色素が薄いわりに童顔で背もそれほど高くない春香の言葉を、男子たちは信じたようだった。

「そうだよな。戸井くんに限って、ないよな」
「エロイこととか知らなそうだもんな」
「純真無垢な戸井くんでいて」

 龍己が聞いたら噎せそうなことを言っていると思ったが、春香は特に反論しなかった。自分は純真無垢ですという顔をしておけば龍己のことを聞かれることもない。
 お弁当がないのでお腹が減って切ない気分にはなって来るが、春香はきゅるきゅると鳴くお腹を宥めて、食堂にいると匂いで更に空腹になりそうだったので椅子から立ち上がった。
 携帯の通知音が鳴ったのはそのときだった。
 見れば龍己からメッセージが入っている。

『お弁当を届けに来た。どこにいる?』

 龍己が大学に来てしまう。
 なんとなく春香は龍己を男子たちに見せたくなくて、図書館前の広場で待ち合わせするつもりでメッセージを打ったが、それより早く龍己は食堂に来てしまった。Vネックの薄い色のシャツを着ていて、首元につけた赤い痕も、鎖骨の噛み痕も、髪の毛のかかるうなじのキスマークもしっかりと見えてしまっている。
 気怠そうにしている様子も色っぽくて春香は慌ててしまった。

「春香。校舎内を適当に歩いてたら食堂があるって案内板に書いてあって来たんだけど、もう昼は食べたのか?」
「まだなのです。龍己さん、仕事で忙しいのにわざわざ届けてくれてありがとうございます」

 お礼を言ってお弁当を受け取ると、同級生の男子たちが近寄って取り囲む。

「戸井くんの……」
「なにこれ、エロイお姉様……ただし、男、みたいな」
「嘘だろ!? 戸井くんにこんなひとがいたなんて」

 三者三様の驚き方をされているが、春香は龍己を隠してしまいたい気分でいっぱいだった。

「春香の友達? 春香とルームシェアしてる速水龍己です。春香をよろしく」
「美人のお姉様、ただし男、に挨拶されちゃった!?」
「なにこの色気!?」
「おっぱい大きい……だと!?」

 好き勝手に喋っている男子たちの目から一刻も早く龍己を引き離したい。春香は龍己の手を引っ張っていた。

「龍己さん、帰りたくなったのです」
「どこか調子が悪いのか?」
「そうじゃなくて……」

 龍己を好奇の目に晒したくない。春香の意図は全く龍己に通じていなかった。言い淀む春香の耳元に龍己が囁きかける。

「シたくなったのか?」

 違うけれど、そんなに低くて甘い声で囁かれてしまうと、春香の下半身も反応せずにはいられなかった。

「そ、そうじゃなくて……」
「分かったよ。帰ろう。車近くの駐車場に停めてるから、校門まで迎えに来る。校門で待ってろ」

 春香の髪をくしゃくしゃと撫でて行ってしまう龍己に、取り残された春香は男子たちに囲まれていた。

「なんだ、あのエロイお方は!?」
「え!? お姉様じゃなくて、春香の方がお嬢様で、抱かれてる?」
「どっちなんだ!? めちゃくちゃ気になる!」

 気になって苦悩している男子たちから逃げるように春香は食堂を出た。


 校門の方に回ると龍己が車を停めて待っている。車に乗り込む間も、春香は周囲の視線が気になって仕方がなかった。
 ドキドキとしながら助手席に乗り込んでシートベルトを締めると、龍己が春香を見て微笑んでいる。

「春香にも友達がいるんだな」
「友達というか……まぁ、そんな感じなのです」
「同じ年の男子とか、目移りされないか心配だけどな」
「え!?」

 龍己の言葉に春香が龍己を見ると、龍己はもう正面を向いて運転し始めていた。自分の書いた小説以外には嫉妬しないであろう龍己が、春香の周囲にいる同年代の男子に警戒している。そのことに春香は大きな驚きを感じていた。
 もう公証役場にも行ったし、春香が二十歳になったらパートナー制も申し込むのだから、二人は将来を約束した仲である。ただの友達の男子とは全く違う。

「僕が女性より男性の方が好きだからって、誰にでも節操がないとは思わないでください」
「そりゃそうだよな。春香にも好みがあるだろう」
「僕の好みは龍己さんなのです」

 答えると龍己が上機嫌になるのが分かる。
 家に戻って玄関からバスルームの直行して、春香は龍己とシャワーを浴びた。行為の前にシャワーを浴びるとき、龍己は必ずシャワーで後ろを綺麗に洗うのだが、指で後孔を開いてシャワーのお湯を入れている様子が色っぽくて春香は中心を反応させてしまう。

「ふっ! うぁっ……!」

 息を漏らしているのも色っぽい。

「龍己さん、早くシたいのです」
「もう少しだから、春香は先に髪を乾かしているといい」
「龍己さんに乾かして欲しいのです」

 龍己とお風呂に入るときには春香は必ず龍己に髪を乾かしてもらう。それほど長く伸ばしていないからすぐに乾くので、ドライヤーはあまり使わない主義だったが、龍己の指が優しく春香の髪を梳いて乾かしてくれるのはとても気持ちがいいのだ。

「春香は俺がいないとダメだな」
「そうなのですよ。お弁当を忘れたらお腹がぺこぺこでしたし」
「先に腹ごしらえをするか?」

 問いかけられて、春香はあれだけお腹が減っていたのにそれが気にならなくなっている自分に気付いた。

「先に龍己さんが食べたいのです」

 お弁当はその後で。
 春香の言葉に龍己は納得して、春香の髪を乾かして、自分の髪も乾かして、寝室に行った。ベッドの上で龍己がローションを手に取るのに、春香がそれを手から奪ってしまう。
 ベッドの上に龍己を倒すとローションを手に取って後孔に塗り込めていく春香。指を差し込むとシャワーで解された内壁が心地よく絡み付いてくる。
 コンドームを取ろうとした春香の手を龍己が止めた。

「後でちゃんと洗うから、生でシてくれ」
「で、でも……」
「春香を直に感じたいんだ」

 最近龍己はコンドームをつけて抱き合うことを嫌がるようになった。春香も生でやる方が気持ちいいのだが、龍己の体には負担になるので気を付けていたが、こんなに熱っぽく強請られると従うしかない。
 ローションに濡れた指を後孔から引き抜いて、春香の中心の切っ先を宛がう。
 ずぷりと遠慮なく奥まで貫けば、自分で脚を開いて手で支えている龍己がびくびくと跳ねながら感じているのが分かる。内壁が蠢いて搾り取られそうになって、春香はぐっと堪えた。
 まだ達したくはない。
 腰を打ち付けるようにぎりぎりまで引いて、最奥まで押し込んでいると、龍己の喉から嬌声が漏れる。

「あぁっ! はるかぁっ! いいっ! もっとぉ!」
「龍己さんは欲張りなのですね。こっちも欲しいのですか?」

 胸の方に手をやって淡い色の乳首をきゅっと摘まむと、中が蠢いて絶頂しているのが分かる。くりくりと乳首を弄り、胸全体を揉みながら腰を動かして行けば、龍己の半ば勃ち上がった中心からとろとろと白濁が零れているのが分かる。
 龍己はもう春香に抱かれて勢いよく白濁を飛ばして達することはなくなっていた。龍己の中心を擦り上げても、半分萎えたような状態である。

「もうすっかり僕の女なのです」
「はるかの、おんなにしてぇ! もっと、もっとイかせて!」

 抱かれているときは素直に快感を求める龍己は、春香にとってはものすごく可愛い。そのままがつがつと貪ってしまってから、春香は次からお弁当を忘れるようなことは絶対にしないようにしようと誓っていた。
 抱かれた後の色っぽい龍己を他の人間に見られるなんて、冗談じゃない。

「龍己さんは隙だらけだから、お仕置きなのです」

 きゅっと龍己の中心の根元を握って堰き止めると、腰の動きも止めてしまうと、龍己が泣き顔になる。

「くるしぃっ! ゆるしてぇ!」
「次からはあんな隙だらけな格好で大学に来ないのですよ」
「いかないぃ! いかないから、イかせてぇ!」
「あんな薄い色のシャツを着て、乳首が透けたらどうするのですか?」
「もうきないぃ! だから、イかせてぇ!」

 龍己が大人しく返事をしたのを確認して春香は龍己の中心を堰き止める手を外して、腰の動きを再開していた。
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