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はしれニノン
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私は駅の階段を駆け上がると、勢いよく改札を出て街へ飛び出す。
すれ違う人は私の顔を見て驚いた様子だった。
それはまあ、こんなに号泣した女の子が駆け抜けていったら、誰だって驚くだろう。
しかも、泣いているのに笑っているのだ。
変人と間違われても文句は言えない。
走っている私の脳内には、アヤカとの思い出が駆け巡っていた。
小中高と一緒に過ごした日々。
軽音楽部に入部して、一緒に楽器を見に行ったこと。
メグミとリョウコとの出会い。
「最強仲良し四人組」として、楽しく過ごした毎日。
思い返される辛い思い出も、苦しい思い出も、いつだって仲間と一緒だから乗り越えてこれた。
そんな大切な仲間と離れ離れになるなんて考えたくなかった。
「いくなよぉ・・・ばかぁ・・・」
アヤカの言葉が思い返される。
私は心のどこかで、引き留めて欲しいと思っていたのだ。
それなのにアヤカの奴は気をつかって、そんなことは一切言ってくれなかった。
彼女は本当に私の事を理解しているのだろうか。
まったく、親友が聞いて呆れる。
アヤカの気持ちを十分理解した上で、私はそんな、ふざけた考えを巡らせる。
走り続けてどんなに息が切れても、今は止まることはできそうになかった。
「はあ、はあ、・・・もしもし? プロデューサーさんですか?」
私は走りながら、事務所のプロデューサーへ電話をかけた。
「ごめんなさい! わたしやっぱり自信がないのでっ、・・・申し訳ないんですけど、デビューの話は無かったことにしてください!!」
電話の向こうから、素っ頓狂な声が聞こえた。
何か言っているようだったが、全く頭に入ってこない。
「本当にすいません!! 私には、・・・私の輝きたい場所が、もうすでにあるんで!!」
そう言い放って、私は電話を切った。
たぶん電話を折り返してくると思ったので、電源はオフにする。
「はあっ、はあっ、お願い間に合って!!」
私は走り続けた。
そうして休むことなく目的地に向い、行きつけのライブハウスに到着する。
地下に向う階段を駆け下りて、入り口の扉を勢いよく開いた。
「うわっ、びっくりした!」
肩で息をしながら扉の中を確認すると、受付にはスタッフのケンジさんが間の抜けた顔で立っていた。
彼はこのライブハウスのスタッフで、日頃からお世話になっている。
「どうしたのニノンちゃん。そんな汗だくで。・・・てゆうか久しぶりだね。聞いたよ、メジャーデビューするんだって?」
嬉しそうにそう言ったケンジさんは、私にお祝いの言葉をかけてくる。
別に彼が悪い訳では無かったが、今は非常に鬱陶しかった。
「ごめん、急いでるから通してくれません? お金は後で払いますから!」
息を切らしながら言う私を見て、ケンジさんは嬉しそうな顔をしてから微かに笑う。
「しょうがないな、ニノンちゃんだから特別だよっ」
「あっ、ありがとうございます!」
私はお礼をいって奥へと進む。
「ニノンちゃんが居なくなったら、あのバンドも寂しくなるかと思ったけど。どうやらそんな心配はいらないみたいだね」
背後からケンジさんがそう言うのが聞こえた。
控室に向かう通路に差し掛かり、私は大切なことを思い出して少しだけ後方へと戻っていく。
「ケンジさんのギター。借りていいですか!?」
「はいはい、いいですよ。ニノンちゃんだから特別ね」
私の無理なお願いに、ケンジさんはニヤケながら頷いてくれた。
すれ違う人は私の顔を見て驚いた様子だった。
それはまあ、こんなに号泣した女の子が駆け抜けていったら、誰だって驚くだろう。
しかも、泣いているのに笑っているのだ。
変人と間違われても文句は言えない。
走っている私の脳内には、アヤカとの思い出が駆け巡っていた。
小中高と一緒に過ごした日々。
軽音楽部に入部して、一緒に楽器を見に行ったこと。
メグミとリョウコとの出会い。
「最強仲良し四人組」として、楽しく過ごした毎日。
思い返される辛い思い出も、苦しい思い出も、いつだって仲間と一緒だから乗り越えてこれた。
そんな大切な仲間と離れ離れになるなんて考えたくなかった。
「いくなよぉ・・・ばかぁ・・・」
アヤカの言葉が思い返される。
私は心のどこかで、引き留めて欲しいと思っていたのだ。
それなのにアヤカの奴は気をつかって、そんなことは一切言ってくれなかった。
彼女は本当に私の事を理解しているのだろうか。
まったく、親友が聞いて呆れる。
アヤカの気持ちを十分理解した上で、私はそんな、ふざけた考えを巡らせる。
走り続けてどんなに息が切れても、今は止まることはできそうになかった。
「はあ、はあ、・・・もしもし? プロデューサーさんですか?」
私は走りながら、事務所のプロデューサーへ電話をかけた。
「ごめんなさい! わたしやっぱり自信がないのでっ、・・・申し訳ないんですけど、デビューの話は無かったことにしてください!!」
電話の向こうから、素っ頓狂な声が聞こえた。
何か言っているようだったが、全く頭に入ってこない。
「本当にすいません!! 私には、・・・私の輝きたい場所が、もうすでにあるんで!!」
そう言い放って、私は電話を切った。
たぶん電話を折り返してくると思ったので、電源はオフにする。
「はあっ、はあっ、お願い間に合って!!」
私は走り続けた。
そうして休むことなく目的地に向い、行きつけのライブハウスに到着する。
地下に向う階段を駆け下りて、入り口の扉を勢いよく開いた。
「うわっ、びっくりした!」
肩で息をしながら扉の中を確認すると、受付にはスタッフのケンジさんが間の抜けた顔で立っていた。
彼はこのライブハウスのスタッフで、日頃からお世話になっている。
「どうしたのニノンちゃん。そんな汗だくで。・・・てゆうか久しぶりだね。聞いたよ、メジャーデビューするんだって?」
嬉しそうにそう言ったケンジさんは、私にお祝いの言葉をかけてくる。
別に彼が悪い訳では無かったが、今は非常に鬱陶しかった。
「ごめん、急いでるから通してくれません? お金は後で払いますから!」
息を切らしながら言う私を見て、ケンジさんは嬉しそうな顔をしてから微かに笑う。
「しょうがないな、ニノンちゃんだから特別だよっ」
「あっ、ありがとうございます!」
私はお礼をいって奥へと進む。
「ニノンちゃんが居なくなったら、あのバンドも寂しくなるかと思ったけど。どうやらそんな心配はいらないみたいだね」
背後からケンジさんがそう言うのが聞こえた。
控室に向かう通路に差し掛かり、私は大切なことを思い出して少しだけ後方へと戻っていく。
「ケンジさんのギター。借りていいですか!?」
「はいはい、いいですよ。ニノンちゃんだから特別ね」
私の無理なお願いに、ケンジさんはニヤケながら頷いてくれた。
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