あと少しの生命なら

sawa

文字の大きさ
上 下
5 / 14

5

しおりを挟む
お茶会にも夜会にも出たことはないルシファーではあったが、貴族の中では有名であった。

『貴族なのに魔力がない令嬢』
『リディア様と正反対な約立たず』
『外に出ることも叶わない醜い令嬢』


噂は多種多様だが、その全てがセシリアを貶めるような内容で、外に出ないセシリアにも聞こえるほど大きく、セシリアに刻み込むものであった。






セシリアは限界だった。
心も、体も限界だった。何かを言われる度にぎゅっと痛くなる心臓に、四肢を動かす度に身を引き裂かれる程の痛みに、セシリアが無理矢理押さえつけていた体が耐えることはもう不可能だった。




ある朝、セシリアは黒バラのような赤黒い血を吐いた。突然の事で何もわからなかったセシリアは呼吸困難に陥った。

セシリアの食事を持ってきたメイドに血を見られて家族を呼ばれた。家族が部屋に来たのは初めてだった。それなのに、初めて家族が来てくれたことが嬉しく思ってしまった。

家に来た医者には「何を今までなされていたのですか?1度でも医者にかかりましたか?」と、死にそうな顔で言われた。
魔力無しの自分が医者などにかかれるはずがない。外に1人で出られるはずがない。今まで溜め込んでいた痛みや心の叫びが嗚咽のような涙として出た。家族や使用人の前で久しぶりに、声を出して泣いた。

自分の体がどれほど酷いか、周りの人間に知られることとなった。それと同時に、侯爵にセシリアは価値がないと再確認をさせた日だった。





18の誕生日、侯爵の書斎に呼ばれ、「アルフォンス公爵家に嫁げ」と言われた。

アルフォンス公爵家はこの王国で3大公爵家とも呼ばれる家の1つである。特に、アルフォンス公爵家は魔法を使い、研究し、戦う魔術師の家柄であった。
セシリアが嫁げと言われた現当主であるブルーノ・アルフォンスも例に劣らず王国魔術師団の団長を務めている。2人の結婚はすぐに社交界に広まり、それは止まることを知らなかった。絹のように綺麗な銀の長髪で、紫苑のような紫色の瞳を持つ見目麗しいブルーノはいい意味で噂をされ、人気を博している。
それに対して濡鴉のような黒髪に濁ったような灰色の瞳のセシリアは、ブルーノに熱を上げていた令嬢たちの格好の的となった。
これがセシリアの更なる地獄の始まりだったのだろう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

俺のセフレが義妹になった。そのあと毎日めちゃくちゃシた。

ねんごろ
恋愛
 主人公のセフレがどういうわけか義妹になって家にやってきた。  その日を境に彼らの関係性はより深く親密になっていって……  毎日にエロがある、そんな時間を二人は過ごしていく。 ※他サイトで連載していた作品です

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...