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プロローグ

平和の国からこんにちは

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私の名前はミヤ( 18 ) 
キリヴァン国の貴族の家に1人っ子として生まれた。 

キリヴァンとはニチホという惑星の主都で、さらに言えば、この世界を守る方々が居られる重要な場所でもある。 

ニチホというこの惑星には、 5 人の柱神(ちゅうしん)と呼ばれる世界を支える役目を持ち、人間ながらに不思議な力を授かった神様にも等しい方々が居られる。 
この 5 つにはそれぞれ役割があって、天・地・空・水・風だ。 
キリヴァンには昔から伝えられる伝承がある。 
【国の危機在りし時、巫女の祈りに応え、天上より舞い降りし天の神が地の神の眠りを醒まし風と空の神と共に水の神の巡りを促し、再び天に還す】 
キリヴァン国に生まれた者は小さい頃からよくこの話を聞かされて育つ。 
それぞれの力が均等に保たれる事により、今の世界があるのだと、この国の民は常に巫女や柱神様に感謝するのだ。

勿論、国の王様にもね? 

「あー…今日もキリヴァンは平和だなぁ…これも日々、世界を平和に保って下さる、柱神様方のおかげだ~」 

私は庭園のベンチに座り、空に向かって手を伸ばしながら呟く。
貴族の娘が、昼間っから庭園でグダグダしているようにも思えるだろうが、 私はこれでも仕事中(今は休憩時間)なのだ。 
貴族の子は 17 の年になると、行儀見習いとしてキリヴァンの王宮にて選ばれし地位の方々に仕える仕事 ( 簡単にいうと侍女や執事 ) に就く。ちなみにキリヴァンの平均結婚年齢は17~26才なので、見た目や運が良ければ見初められ、お偉い方との婚姻も結べるし、この仕事にはいわゆる婚活的な意味合いもあるらしい 

もし、健康で運動が得意なら、剣士や護衛官等、体力は無くとも学力が高ければ宮廷の研究者見習いや学者見習いになれるが… 
私は見た目も学力もそこそこなので早々に高みを目指して専門分野で学ぶのを辞退し、侍女という無難なポジションを選択した。 

私は宰相様付きの侍女が寿引退するグットタイミングな時期に入った為、そのポジションをそのまま頂き、運良く宰相様付きの侍女の 1 人になった。 

同僚関係も非常に友好的で何不自由なく過ごして早1年…最初は侍女という慣れない仕事も性に合っていたのか今ではすっかり落ち着いてきた。 

今まで「仕えられる」立場の貴族の子が急に「仕える」立場になるのは難しいとお思いの方も居る様だが、我がキリヴァンの貴族は他国とは違い、行儀見習いは義務教育の一環として小さい時からマナー全般に至るまで、一通りを教わるので、甘やかされたボンボン・嬢ちゃん以外は皆、抵抗なく職に就く。 

私も仕事の一環として、先程、宰相様から頼まれた書類を巫女様付きの侍女へと渡し終え、そのまま昼食時間を取って良いと許可を貰えた為、庭園にてのんびりと昼食を摂っていた所だ。 


そんな私の感謝の呟きに通りががりの侍女仲間のサラがクスクスと笑いながら後ろから声をかけてきた 

「あら、ミヤ…まだ聞いてないの?どうやら、明日からはそうでもないらしいわよ?」 

サラは 1 つ年上の 19 才で美しいブロンドの髪と緑の綺麗な瞳を持つナイスバディな持ち主だ。 
良いな!と思った皆様、残念!サラは恋人持ち(婚約中)ですよ? 


「え?何かあるの?」 

私は空に伸ばしていた手を降ろしサラに向き直った。 

「えぇ、ヴァスに聞いたんだけど、どうやら近々、巫女がご退位されるみたいなの」 

ヴァスとはサラの恋人で正式名称はセヴァスト( 21 )水の柱神様の護衛官を務める、 若きエリートだ。 

「えぇ?!あの巫女様が?…でもヴァスさんが言うなら本当か…あ~あ、今の巫女様って、お遣いのご褒美って美味しい飴をくれるから好きだったのになぁ」 

残念そうにつぶやくとサラが厭きれた様に眉を顰める 

「あなた… 18 にもなって、飴で喜ぶとか…もう少し色っぽい話題はないの?!」 

「だって…宰相様付きの侍女っていうだけで皆、近寄りがたいらしくてさ~出会いなんてナイナイ!」
 
そう、我がキリヴァン国は王様もお妃様も優秀でお優しく、それでいて美しいお顔立ちが目立つ方々だが、宰相様はそこに輪をかけたように真面目で敏腕。
…ただし顔が『ザ・王子様』ってくらいお綺麗系過ぎて近寄りがたい存在なのだ。 宰相様は34才といういわゆる結婚適齢期を過ぎた大人。大人の色気がムンムンで、艶やかな黒髪長髪にブルーの瞳がこれまた色っぽい。

勿論、お付きの侍女である私達すら、まとめて遠目で見られる程のオーラを持った存在なのだ。 
前任の侍女さん…よく寿退社できたね!!尊敬しちゃうよ!

その為、私は 17 ~ 18才の貴重な青春を色気よりも食い気に走らせたのであった…

「まぁ、分からなくもないわ…宰相様のお顔を毎日眺めていると自然と男性を見る目が養われるわよね…」 

サラは宰相様のお顔を思い浮かべてうっとりとした顔をしている。 

こらこら、恋人持ちよ。 


「おーい、サラ~?戻ってきて~?」 


私はベンチから立ち上がり傍に近寄ってサラを呼び戻す。 

「あら、いけない!私ったら」 
正気に戻ったサラがはっとする 
「大丈夫~?ヴァスに言いつけちゃうよ?」 

ニヤニヤしながらサラを見ると少し焦ったように身を正して答える 

「もう!ちょっと、いい加減にしなさい。今の話はこれでお終い!それより巫女様交代の話よ!」 

話を逸らすサラをニヤニヤとした顔で見ていれば 
サラが突然真面目な顔で呟く 

「今回の巫女様の交代は私達にとっては始めての事…新しい巫女様選定もすぐ行われるらしいからバタバタするみたいよ?」 
へ~そうなんだ? 

でも、特に特別な力もない私には関係ない。 






…………関係ない筈だったのだ… 





そう、
ある晴れた日にその事件は起こった。 
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