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第2作 アオハル・イン・チェインズ 桜の朽木に虫の這うこと(二)
第54話 湾岸で
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30分ほどで、ウツロは坊松区湾岸の港へと到着した。
あたりはすっかりと暮れなずんできて、人影も見当たらない。
そこからの案内は、万城目日和の「殺気」がしてくれた。
おそらくこれも、「あえて」だろう。
ウツロは周囲を警戒しながら、一番奥に位置する廃工場の倉庫へと入った。
「万城目日和っ――!」
さびついたシャッターはぱっくりと口を開けており、彼はそこから中に向かって叫んだ。
「約束どおりやってきたぞ! みんなをどこへやった!?」
倉庫の中は暗くてよく見えないが、かなりの広さがあるようだ。
「どうした、万城目日和! 姿を現さないか!」
ウツロは襲撃に備えながら、ゆっくりとその足を踏み入れた。
「んっ――!?」
突然飛び込んできた光に、彼は反射的に顔を隠した。
倉庫内の明かりが、すべてつけられたのだ。
「うっ……」
手をそっとどけると、奥のほうが視界に入った。
「みんなっ……!」
平らに敷き詰められたコンテナ群の上に、気を失った数名が倒れている。
真田龍子、南柾樹、星川雅、そして刀子朱利と氷潟夕真も。
それはあたかも、ステージの上に乗せられた見世物のように映った。
「そんな、刀子と氷潟まで……おい、みんな、大丈夫かっ!」
駆け寄ろうとしたところで、ウツロはピタリと足を止めた。
「ステージ」の左下。
だだっ広い倉庫内のライトアップからは、死角になっている部分。
開かれた搬入口の闇の奥から、強烈なオーラが漂ってくる。
「そこにいるな、万城目日和! 出てこい! 姿を見せろ!」
コツ、コツ……
靴の鳴る音が、少しずつこちらへ近づいてくる。
「……」
ウツロは生温かい汗を垂らし、その場所を凝視した。
「やっと会えたな、ウツロ。いや、正確には、万城目日和としては、か」
ぬうっと現れたその人物は、挑発するように語りかけた。
「やはり、おまえだったのか、万城目日和の正体は……!」
あたりはすっかりと暮れなずんできて、人影も見当たらない。
そこからの案内は、万城目日和の「殺気」がしてくれた。
おそらくこれも、「あえて」だろう。
ウツロは周囲を警戒しながら、一番奥に位置する廃工場の倉庫へと入った。
「万城目日和っ――!」
さびついたシャッターはぱっくりと口を開けており、彼はそこから中に向かって叫んだ。
「約束どおりやってきたぞ! みんなをどこへやった!?」
倉庫の中は暗くてよく見えないが、かなりの広さがあるようだ。
「どうした、万城目日和! 姿を現さないか!」
ウツロは襲撃に備えながら、ゆっくりとその足を踏み入れた。
「んっ――!?」
突然飛び込んできた光に、彼は反射的に顔を隠した。
倉庫内の明かりが、すべてつけられたのだ。
「うっ……」
手をそっとどけると、奥のほうが視界に入った。
「みんなっ……!」
平らに敷き詰められたコンテナ群の上に、気を失った数名が倒れている。
真田龍子、南柾樹、星川雅、そして刀子朱利と氷潟夕真も。
それはあたかも、ステージの上に乗せられた見世物のように映った。
「そんな、刀子と氷潟まで……おい、みんな、大丈夫かっ!」
駆け寄ろうとしたところで、ウツロはピタリと足を止めた。
「ステージ」の左下。
だだっ広い倉庫内のライトアップからは、死角になっている部分。
開かれた搬入口の闇の奥から、強烈なオーラが漂ってくる。
「そこにいるな、万城目日和! 出てこい! 姿を見せろ!」
コツ、コツ……
靴の鳴る音が、少しずつこちらへ近づいてくる。
「……」
ウツロは生温かい汗を垂らし、その場所を凝視した。
「やっと会えたな、ウツロ。いや、正確には、万城目日和としては、か」
ぬうっと現れたその人物は、挑発するように語りかけた。
「やはり、おまえだったのか、万城目日和の正体は……!」
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