十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

第四章 最悪の再会と衝撃の宣言

八十六話

「有栖川麗音さん、いらっしゃいますでしょうか？」


　知らない会社。

　知らない人間。

　何故麗音を名指しで？

　そう不安に思ったが、先日千葉の展示会場で行われた業種交流会に麗音を連れて行った事を思い出した。

　その時に名刺交換でもしたのだろう。


「承知いたしました。少々お待ちください」


　俺は電話を保留にし、麗音を呼んだ。


「有栖川、お前に電話だ、桜桃商事のサクライさん」

「はい？……分かりました、代わります」


　麗音はきょとんとした顔をした後、電話に出た。

-
「はい、それではよろしくお願いします」


　麗音が電話を切る。

　ちらりと横目で見ると、麗音は真剣な眼差しでメモに何かを書いていた。


「有栖川、どうだった、新しい案件か？」


　話しかけると麗音ははっとして振り向いた。


「いえ、セールスの電話でした。特に取引をすることもないでしょう」


　そう言って先程書いていたメモをこちらに渡してきた。

　そこには、驚くべき内容が書かれていた。


『桃澤久留美から仕掛けてきた。今週末に会う。このメモは読んだらシュレッダーにかけて』