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第2章 出会いの街 編

058 5つの”夢” <04/05(金)PM 01:30>

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 ※※※ 注意 ※※※

 ただいま [夢の洞窟] 中です。


 大量だったり、黒かったり、テカってたり…そういうのが苦手な方は、しばらく読み飛ばしていただいた方が良いかと思います。ご注意下さい。

 [夢の洞窟]終了まで『目印』として、『無理矢理サブタイトルに”夢”の文字を付けていこう』と思います。よろしければ参考にして下さい。

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  出会いの街[ヘアルツ]の西(←)の岩山にある[夢の洞窟]を探索中の俺達3人は、『最初の小部屋』で『虫地獄』の中から宝箱を2つも発見し、無事にアイテムを入手する。
 その後、通路の先の2つめの小部屋で、またも2つの宝箱を発見し、1つ目の宝箱のアイテムを入手。もう1つの宝箱を分析中に[夢の洞窟]最後の、唯一の『アクティブモンスター』である『G百足』LV18に急襲を受けるも、なんとか討伐したのだった。


 ズガガ――――ンッ、と爆音と衝撃音が響き渡り、三度みたび地面に叩きつけられた『G百足』は、ようやく100本の足の動きを止め―― 少しずつ霞んで消滅していった。
 それを確認したケイが『鉄の大剣』を軽く振ってから背中に背負い、戦闘BGMが止まる。後には、『1,148G』、『952G』と『百足硬殻』…が落ちていた。

「硬ってぇ~~、よくこんなの倒せるなぁ」
 ヒイラギはドロップの『百足硬殻』を、右手の『鋼の剣』でコンコンと叩いている。
 『百足硬殻』は、『G百足』の通常ドロップで、ヒイラギの攻撃を軽く弾いてみせた『G百足』の体表? だ。その堅固さを活かして防具作製などに利用されるので需要は高く、良い値段で売れる。まぁ『G百足』が強敵、難敵? なので安いと悲しいものがある。ダンジョン自体もアレだしな……はぁ。

「さっさとしまって宝箱を調べろっ」
 例によって? ケイは冷静だ。

「へいへい、そんじゃ預かっとくぞ」
 ヒイラギがチラッと俺の方を見たので、軽くうなずいて「問題無い」事を伝える。それを見てヒイラギが『インベントリ』に『百足硬殻』を収納し、残っている宝箱の方へ向かう。


「さて…… え~と、罠は『爆弾』で、罠LVは28だな」

 「………」先ほど 分析:罠[トラップアナライズ]の≪途中≫で『G百足』の急襲を受けたのだが、スキルを使用した後は、その宝箱に『罠名』と『罠LV』が表示された状態となっているはずだ。そうでないと『同じ宝箱やモンスター』で、『探知』、『分析』の『回数(昇格、転職条件)稼ぎ』…が≪出来てしまう≫からである。

 丁度、俺達のステータス表示とか、ミケネコのペット表示を”ON”にした時みたいな感じ…になっている(はず)。当然? スキルを使用した本人にしか見えない。
 俺の場合、分析:罠[トラップアナライズ]の『スクロール』などを使用すれば、どんな感じなのか? を確かめる事が可能だろう。
 だが『スクロールで罠LVが半減』されても罠LV14である。俺は確実に解除に失敗し、やはり「リア充でも無いのに爆発する」…事になるだろう。何故だっ!


「余裕余裕っと、…解除」
キンッ!
 ヒイラギは難なく解除に成功した。謎の金属音(罠解除成功音)がして、宝箱の前面の錠前が落ち、霞んで消滅していく。

「俺の番…だったよな?」
 一応ヒイラギが俺達の方を振り向いて確認を取る。

「あぁ」
「はい」
 俺達の返事を聞いて、ヒイラギが宝箱をガバッと開ける。宝箱の中から取り出したのは……ヒラヒラした布状のモノ? じっと見つめてみると…、

《名:服(不確定名) 所有者:ヒイラギ 〈警告〉取得すると窃盗となります》

「お! 『服』かぁ」
「服ですねぇ。おめでとうございます」

 「………」『服』類は、俺の『布の服』や、ツカサさんの『シルクの服』等の様に『防具』としても… 商売職、生産職の『普段着』? や、『接客用』? としても使える。つまり幅広く需要があるのでお金になり易い。(まぁ俺の『布の服』は『初期装備』の防御力0だが)
 もっとも『鑑定』の結果次第で、『灰色アイテム、マイナス品』であれば やはり価値的にはゴミなのであるが、+品の場合の人気度は、俺の『弓』とは比べ物にならないだろう。
 それにマイナス品でも、『普段着であれば”防御力”は関係無い』うえ、「『布の服』よりマシだよねー」…という理由で、売らずにそのまま≪自分で使う≫というプレイヤーも多い。

 ヒイラギは『斥候せっこう』である、『みならい斥候』系はステータス、職補正が弱いのであるが、「運(LUC)に補正がある」…と言われていた。『蟻酸』?、『服』…とかなり”良い感じ”だし、やはり運(LUC)は無視ムシ出来ない要素なのか? まぁまだ『鑑定』してみないと良い! …とも断言は出来ないのだが。
 隠しパラメータの『運』に補正がかかる…と言われる『ウサギの足』が、”幸運のお守り”として100,000Gほどで取り引きされる…のもわかる気がする。ワラにもすがりたい。
 しかし「いざ購入」…となると、「100,000Gという値段に本当に見合うのか?」、「100,000Gには”もっと有意義”な使い道があるのでは無いか?」…と葛藤かっとうする事になり、結局は買わないのだ。
 何かの間違いで拾ったりしたら≪喜んで装備する≫のだが…タダは素晴らしい。


「さっさと次に行くぞ」
「そうですね」
 俺達がそう話しながら部屋の出口の方へ移動しようとしていると、ヒイラギが『服(不確定名)』を『インベントリ』に収納しながら…、

「お~、ちょっと待ってくれ」
 と、俺達を呼び止めた。

「ケイ、お前『鋼のメイス』拾ってたよな? アレ貸してくれ」
「? あぁ…」
 首を傾げながらもケイは『インベントリ』から『鋼のメイス』を取り出しヒイラギに差し出す。

「おぅ、この[夢の洞窟]の間、借りるわ」
「あぁ? わかった」
 ヒイラギは装備していた『鋼の剣』を『インベントリ』に収納して、ケイから『鋼のメイス』を受け取り(装備して)、少し振り回してみてから腰に提げた。

 「………」『鋼の剣』は『切断』系の武器である。そして『鋼のメイス』は『打撃、衝撃』系の武器である。一般的なゲームでは”微妙”、”僧侶用”の武器、”儀礼用の道具”の様な扱いが多いのであるが、TJOでは『防御貫通攻撃』という概念があるために、メイスなどの鈍器? にも しっかりと『存在価値』がある。

 通常、ゲームなどでは「見た目の良い、格好良い武器を強く見せたい」という意図?(※個人の感想です)で、こういった≪見た目がイマイチ≫な武器が≪おざなり≫に扱われている事が多い様に思える。
 だが、そもそも人類の歴史上、中世などの命を賭けた戦場で≪使われ続けてきた≫由緒正しい武器なのだ。命を賭ける武器に『微妙な儀礼道具』を選ぶわけが無い。

 俺だって「戦場に行け」と言われて選べるなら、アサルトライフル、(スナイパーライフル、対物ライフル)、RPG、(ヘビーマシンガン)、サブマシンガン、(ショットガン)、手榴弾、C4爆薬、ハンドガン、コンバットナイフ…など、頼れそうな物を持てるだけ選ぶだろう。釘バットや日本刀、レイピア、まして七支刀シチシトウなどは絶対に選ばない。


 メイスにも先端が、菱形ひしがた、トゲトゲの鉄球型、鉄球型、花びらの様な形状、マツボックリ状、マンゴー型?? …と色々な形状の物がある。
 TJOでのメイスは『鉄球』型。棒の先に『鉄球』が付いた様なシンプルな形状をしている。≪両端に鉄球が付いたタイプのダンベル≫をイメージして、片方の球が取れたみたいな感じだ。

 おそらく菱形の様な形状か、トゲトゲの鉄球のメイス(モルゲンステルン?)が一番ポピュラーではあるだろう。
 それは人類の歴史において「敵が、『人間だった』から」…に他ならない。

 「人が人を殺す」、「相手を威圧する」には、そういった形状は効果的だが、今回の様に『鉄板そのものの様な外殻』を持つモンスターと戦う場合、トゲも花びら型も無用で邪魔なだけである。(木材程度であれば効果があるだろうが)

 力を込めて叩きつけた『打撃力』を、効果的に外殻に伝え、内部に『衝撃』を加えるには、『球形』が理想だ。トゲも菱形も当たり方、角度により、せっかくの打撃、衝撃力を変な方向に拡散、分散し逃がしてしまう。

 『鉄板』を、トゲ付き鉄球と、鉄球で攻撃する様子をイメージしてみてもらいたい。どちらがより効果的に衝撃を加えられるだろうか? トゲの付いた鉄球で鉄板を殴ろう物なら、当たり方によっては、妙な角度に弾かれて怪我をしてしまうかも知れない。ガタガタした物で硬い物を殴るのは怖いモノだ。
 また相手が『硬く堅固』であるほど、突起などの飾りは武器自身の『もろさ』、『壊れ易さ』と『威力の低下』に繋がるだろう。人間を叩くなら『釘バット』が良いかも知れないが、お堂の鐘を叩くなら『ただのバット』の方が良いはずだ。そしてお堂の鐘を『ナイフ』や『刀』で攻撃する事の虚しさもおわかりかと思う。

 …話がそれてしまったが、ともかくTJOの鈍器類、「メイスちゃんは”息をしている”」…という話だ。 先生? に助けをわない様に。


「まぁ『Gカマド』LV16は、ケイが一撃で倒せるからな。コイツなら『G百足』LV18にも効くだろ」
 ヒイラギが腰に提げた『鋼のメイス』を、ポンポンと叩きながらそう言った。

「……そういう事か」
「なるほど、そうですね」

 「………」この[夢の洞窟]に出現するモンスターは『全部で5種類』である。
 『非アクティブモンスター』の『Gフライ』LV10、『G亀』LV12、『Gブラック』LV14、『Gカマド』LV16。そして唯一の『アクティブモンスター』である『G百足』LV18だ。

 その中で”ダンジョンの外”にも生息していた…『陸海空3軍の覇者』達はLV10~LV14なので、『狂戦士』LV15のケイが倒す事が出来ず、≪無視≫するしかない。
 ひたすらゆっくり移動して追い立てては、自主的? に退散していただき「席(道)を譲ってもらうだけ」…の存在だ。ようするに『居ても居なくても関係無い』存在なのだ… 「居なくて良い存在なのだあぁぁぁ」…… ほんと居なくていいのに。

 討伐対象の残り2種の内『G竈』LV16は、ケイが一刀両断してしまう。…つまりヒイラギが戦闘に参加する可能性があるのは『G百足』LV18だけになる。だから他の4種の事は考えず、『G百足』に対して効果的な武器である『鋼のメイス』に変更した…という訳である。


「もういいだろう、次に行くぞ」
「お~悪い悪い、行こう」
「行きましょう」
 悪臭地獄、虫地獄なのはキツイのだが、たった2部屋で宝箱4つである。「SAN値も回復する」…と言うものだ。(※TJOにSAN値や正気度といった概念はありません)
 俺達は小部屋を後にして、またゆっくりと虫達を追い立てながら、狭い虫通路を進み始めるのだった。視界の右下の方へ意識を向けると<04/05(金)PM 01:41>と表示されていた。


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LV:12(非公開)
職業:みならい僧侶(偽装公開)(僧侶)
サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)
所持金:4,961G
武器:なし
防具:布の服
所持品:12/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×21、バリ好きー(お得用)90%、樽(中)90%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ、鉄の斧、青銅のブーツ、賞金首の首輪[†カムイ†]懸賞金:94,000G、鬼王丸×2、弓(不確定名)


分析:罠[トラップアナライズ] 宝箱等に仕掛けられた罠の種類と罠LVを識別し、罠LVを半減させる(小数点以下切捨て)
  補足:ミミックだった場合は、そのミミックのLVも識別する、ただしミミックのLVは半減出来ない。


「ちなみにメイスが鉄球、球形と言っても、水晶玉みたいにツルツルでは無いぞ。紙やすりみたいに表面はザラザラしている」
「なんで~?」
「あんまりツルツルで摩擦が無いと、滑って衝撃がうまく伝わらない…というのもあるが、単に作りが雑で粗いからだ」
「てきとう~」
「そうだな。まぁその分、お手頃価格になっている」

「いまなら まくらかばーも2まいついてくる~?」
「…付いてこない」
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